暗闇の中に、ぼうと人影が浮かぶ。長髪とも短髪とも呼べない微妙な髪の長さ。  
やや細身の体躯。とはいえ脂肪をナイフで削った感のあるその手足に、華奢な  
印象を持つことは難しい。  
 
 暗闇に浮かぶ、青い髪の青年。直刀を腰溜めに構えたその姿は、ひどく自然体で  
あるくせに微塵の隙も見つけられない。頭髪と同じく青色の瞳。切れ長の目に  
収まるそれは、青年の気性を反映してか、湖面のように控えめに瞬いている。  
 
 人影、直刀を持つ青年が動く。ゆるりとした動作で、ぞっとするほどに素早く  
間合いを詰める。瞬きをする間もなく刀圏に入られた。その同時、下段からの  
切り上げが自分を襲う。こちらを退かせるための明らかな誘い手。だが、あえて  
自分はそれに乗った。青年の剣先が頂点に達した瞬間、右足を半歩踏み込む。  
期を測ったように、再び襲い掛かってくる直刀。両腕を跳ね上げ、強引にそれを  
鍔元で受け止める。痺れる手。軋む奥歯。が、その衝撃に寸前で耐えることに  
成功する。  
 
 噛んだ刀身部分を支点にし、青年の剣を受け流す。耳障りな音。散る火花。爆発  
する殺意。唇に浮かぶ歪な微笑み。受け流しの勢いを殺さぬまま、その場で  
くるりと体を回す。左足を軸足とし、回転の勢いを加えた胴薙ぎの一閃。自分を  
して会心の一撃であった。肉を、骨を断つ感触までも予感する。しかし、  
 
 そこに青い髪の青年はいなかった。愕然と目を見開く。頭上に感じる風。視線を  
上げる。彼はそこにいた。飛び上がった姿勢のまま、無慈悲なほど正確な狙いで、  
肩越しに構えた直刀がこちらの頭蓋を叩き砕い――  
 
 アルベルは瞼を開いた。先ほどまで目前にいたフェイトの姿が、跡形もなく  
消える。鉄甲の覆っていない片手で、額に浮かんでいる脂汗を乱暴に拭う。汗を  
かいていたのは、ここの気温のせいではない。忌々しくそれを認めた。くそったれ、  
これで何度俺はあいつに……  
 
「また負けたのか? 小僧」  
 
 揶揄を多分に含んだ声が鳴り響く。この溶岩洞の主である、老竜の声が。  
 
「……黙れ」  
「想像の中でさえ勝てぬとはな。これでは実戦でも同じ事か」  
「黙れと言ったろうがデカイだけの糞蝿が」  
 
 その老竜の正体を知るものが聞けば目を剥くであろう言葉を、平然とアルベルは  
口にする。それは蛮勇か、あるいは何も考えていないだけか。  
 
 声を殺していまだに笑い続けている老竜から、アルベルは目をそらし、刀を構え  
直した。幼い頃に学んだ基本の型を、丁寧に一つずつ繰り返す。架空の剣を受け、  
払い、巻き込む。転じて架空の敵に打ち込み、斬りつけ、薙ぎ、刺突を見舞う。  
無心に、無心に、ただ無心に。  
 
 いや。無心であるべきなのに、今はそれができない。どうしても一人の男の  
姿が浮かんでしまう。『あの時』からずっと。その事実が、尚更アルベルを  
苛立たせた。  
 
「チッ!」  
 
 感情に任せて刀を振り終え、アルベルはふてくされた様に腰を下ろす。手綱の  
取れない自分の心が、ひどく不快であった。  
 
「どうした? 今日はもう終いか?」  
「…………」  
 
 聞こえてきた声をあからさまに無視し、そっぽを向く。何を言っても喜ばせる  
だけと思いとった態度だが、豪快な笑い声が帰ってきたところから考えるに、結局  
同じ事であったのかもしれない。  
 
 新たな舌打ちを一つ打ち、仰向けに寝転がる。眼を閉じれば浮かぶ人影。そして  
また不快になるという悪循環。吐き気がするほどに忌々しいことだ。だが、こうも  
思ってしまう。誰か一人の事をこうまで考えつづけた事が、今まで有っただろうかと。  
 
「糞が。いったい何だってんだ……」  
「それは恋ね」  
 
 唐突に。全くもって予期も予想もしていなかった声が突然きこえた。  
 
 妙に身体のラインが出るスーツを着た女性が、いきなりそこに立っていた。  
プラチナブロンドの短髪。目鼻のはっきりした端麗な容姿。年の頃は二十代後半か。  
一度でも会ったことがあれば忘れそうもない女性だが、生憎と初対面であった。  
 
「だ、誰だお前は?」  
「ブレアよ」  
「……誰?」  
 
 質問には答えず、ブレアと名乗った女性は謎めいた微笑を覗かせる。  
 
「私は感動しているの、アルベド君」  
「アルベルだ」  
「ただのデータでしかなかったあなた達が恋愛感情を、それも同姓に対するという  
複雑なものまで持てるなんて」  
「とりあえずそこは訂正させろ」  
「それも当の本人が自覚していないなんて! ビバ王道! 最近めっきり廃れて  
るけど、やっぱりこーゆーのにはプラトニックで背徳感がないとね!」  
「いやたぶんこれはライバルに対する純粋な対抗心とかだと……」  
「あなたの望み、叶えて上げましょう!」  
「聞けよ人の話」  
 
 一方的に話し終えたブレアなる女性は、今度は耳元で何かぼそぼそと言って  
いる。断片的に「適当にパラメーターを」「……を変えるだけで」などという  
言葉が聞こえてきたが、意味は分からなかった。と、またしても唐突に振り向き、  
彼女は告げる。  
 
「おめでとう! アルベラ君!」  
「それはインド映画のヒロインだ」  
「変身!」  
「は?」  
 
 その糞女(もうこう呼んでしまおう)がこちらを指差したとたん、いきなり  
自分の身体が青い光に包まれる。あまりにもあまりのことに、声さえ出ない。  
そして光の爆発が収縮した瞬間、  
 
「おめでとう! アルベロ君! これで性別の壁は取り払われたわ!」  
 
 身体が一回り小さくなっていた。腕も細くなっていた。他にも……いや、現実  
逃避はよそう。つまり、要するに、自分の身体が、女に、なって、いた。  
 
「…………」  
「じゃあフェイト君とお幸せに! 私達はあなたのことを応援しているからね!」  
 
 アルベルの思考回路が停止している間に、その糞女は光と共に消えていった。  
 
「古来より……」  
 
 背後から。錆を含んだ重々しい声が聞こえた。茫然自失としていたアルベルが  
ほとんど条件反射だけで振りかえる。人も身では決して叶えられない長い月日を  
生きた老竜が、他の生命を圧する眼光を見せながら身を起こした。  
 
 両翼を広げ、竜族の侯爵は言う。  
 
「神話の中で竜は女好きと決まっておる」  
「……は?」  
 
 鋭い眼光のまま、完全に女のものとなったアルベルの肢体を、嘗め回すように  
鑑賞した後、  
 
「……そそる」  
 
 器用に頬だけを染めて、にゅるんとキノコ型の触手を何本も生やしはじめた。  
 
「う、うそ、まさか……!」  
「そそるぅぅぅぅぅぅ!!」  
「イヤァァァァァァ!!」  
 
 結構その気になっているアルベルの悲鳴であった。  
 
フェイト「アルベル? なんでお前がこんな所に……」  
アルベル「遅ぇんだよ阿保がぁぁぁぁぁぁ!!」  
フェイト「え? あれ? 僕おこられてる?」  
 
 
ソフィア「チッ。ブレアも分かってね―なー」  
マリア「まったく。アルベル×フェイトもの描いてたのに無駄になっちゃった」  
ネル「あたしは別の描いてたからいいや」  
マリア「何を?」  
ネル「若ロキシ×幼フェイト」  
ソフィア・マリア「キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!」 

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