「あぁ、クレア・・・、クレア・・・」  
 皆が寝静まっている宇宙船ディプロの一室で、女性の艶かしい声がする。  
「ふあぁ、んはぁ、あふぅ・・・」  
 布団の上で自慰を行っている彼女。赤髪のグリムゾン・ブレイドの通り名をもつ、  
ネル・ゼルファーだった。  
片方の手で秘裂を弄り、もう片方の手で胸を揉みしだく。  
「イイよクレア・・・もっと私を虐めておくれ」  
彼女の頭には今、もう一人のグリムゾン・ブレイドであり、夜に抱かれていた  
相手でもある、クレア・ラーズバードと行為をしていることの妄想で占められている。  
「聞いてごらんよクレア、私のアソコがぐちゅぐちゅいってるよ・・・。  
んあっ、あっ、あはっ、もうイキそうだよ・・・!」  
 胸を揉んでいた手を下腹部に移動させて陰核を刺激し、  
秘裂を指先でかき回すスピードが速くなっていく。  
「んうぅぅぅううう―――!?」  
 そして彼女は絶頂を迎えた。身体は快楽で満たされた、がしかし、  
心は何か虚しいものが残っていた。  
「はぁっ、はぁっ・・・やっぱりオナニーじゃ物足りないよ。実際に抱き合いたいよ・・・」  
 ここしばらくクレアと会ってないネルは、切なそうに、あさっての方向を見ていた。  
 
「ではこれから、聖殿カナンの攻略法について話し合うわよ」  
「確か150ポイント溜まれば、折れた魔剣が手に入って、ボイドを自分たちの  
クリエイターとして、登録できるんだよね」  
 翌朝、ディプロの会議室で、アイテムクリエーションについて話し合うことになった。  
各人、思い思いの場所に座っている。  
「100ポイントよフェイト。もうダムダ・ムーダみたいに頭がボケてしまったのかしら?」  
「そんなにキツク言わなくてもいいだろマリア。ちょっと昨日のプレイが激しすぎた  
からといって、げふぅっ!?」  
 この場を仕切っているのがマリア・トレイター。クォークのリーダーであり、  
戦闘では銃と足技を得意としている。  
 その足技をまともに喰らって、もんどりうって倒れたのが、フェイト・ラインゴット。  
剣での攻撃を得意としているが、今は丸腰のためにやられ放題だ。  
「おいおい、こんなところで夫婦漫才かよ。ミラージュ、俺たちも負けてらんねえぞ」  
「あらあら、ダメですよクリフ。こんなところで胸を揉まないでください」  
 クリフ・フィッターは肉弾戦を得意としていて、前衛での盾役としては欠かせない人材だ。  
ただし、攻撃を受けすぎてしまったのか、最近はスケベなことしか考えられなくなってる。  
 彼のセクハラにあっているのが、ミラージュ・コースト。縁の下の力持ち的存在だが、  
彼女こそ最強伝説という噂もちらほら聞く。彼女が戦闘に参加していればもっと楽に  
旅を進めていられただろうに。  
「あらためて思うんだけど、よくこんなメンバーで、今まで生き残ってこられたね・・・」  
 誰にも聞こえないように、ネルは一人つぶやく。彼女は機動力を生かした戦術を  
得意とするが、最近は黒鷹旋要員として使われているのが悩みの種だ。  
 
「昨日のスライムプレイは見てて、鳥肌が立つほど感動したよ。ぜひ今日も、ぐはぁっ!?」  
「これ以上口を開くと、グラビティ・ビュレットの無限コンボを発動するわよ」  
 あっちで青髪の二人がいちゃいちゃ。  
「あぁぁ、そこですクリフ。もっと擦ってください」  
「やれやれ、俺のいない間にオナニーのしすぎで敏感になっちまったか?」  
 こっちで金髪の二人がいちゃいちゃ。  
「やれやれ・・・、ここは会議室じゃなくてラブホテルかい?」  
すっかりネルは呆れてしまい、額に指を当てて嘆息する。  
そこに会議室にいた最後の一人が声をかけてきた。  
「ネルさん、隣に座ってもいいかな?」  
「ソフィアかい?かまわないよ、座りな」  
 ソフィアと呼ばれたこの少女。本名はソフィア・エスティードといい、  
メンバーの中で唯一上級魔法が使え、物語のヒロインという肩書きを持っているはずだが、  
どうにも影が薄い。魔法少女というスキルも、ハートをがっちり掴み損なっている(誰の?)。  
「はぁ〜、いいなあ四人とも。あんなに仲がよくて」  
 椅子に座ったソフィアが、うらやましそうに恋人通しの戯れを見る。  
一般的に暴力をふるわれたり、セクハラを受けたりしていることが、  
仲がいいとは言い難いものがあるが。  
「まったくだね、私がクレアと離れ離れなのを知っているはずなのに、  
よくもまあ、見せつけてくれるじゃないのさ」  
「でもネルさんは好きな人が、待っているだけでもいいと思うよ」  
「どういう意味だい?」  
 
「わたしにはフェイトがもういないから・・・」  
「あっ・・・」  
 ネルは自分の失言を悔いた。マリアに踏みつけられて、嬉しそうに喘いでいるフェイト。  
彼は以前、横に座っているソフィアと付き合っていたのだ。  
幼馴染のころから、ずっとフェイトを思い続けていたソフィア。ずっと妹としか  
見てくれない彼に対して、文字通り身体を張って抱かれ、はれて恋人通しの関係に  
なったのがつい最近のことだと聞く。  
 しかし事情はよく分からないが、その後すぐにフェイトは、  
マリアと一緒になることを選んだ。ソフィアはまた一人ぼっちに逆戻りしたのだ。  
しかも、フェイトは二度と帰ってこない。  
「悪かったね、謝るよ・・・」  
「いいのネルさん。わたしに魅力が無かったのが悪いんだもん」  
 自分の姿を一瞥してから、ソフィアはマリアの方へ顔を向ける。  
現在彼女は、フェイトの首根っこを掴んで、罵倒していた。  
「マリアさんって綺麗だよね。フェイトとお似合いだよ。  
目はきりっとしてカッコいいし、髪は流れるようにサラサラだし、  
ウエストはくびれが大きいし、足はキュって引き締まってて細いんだもん。  
わたしなんか全然敵わないよ。・・・胸はわたしのほうが大きいけど」  
 そこだけは譲れないのか、ソフィアは胸を寄せて、マリアの贔屓目に見ても貧しい胸を、  
優越感に浸って見る。  
「確かにソフィアって巨乳だね」  
 巨乳なんて代物じゃない、爆乳だ。ネルが今まで見た胸の中で、間違いなく  
一番大きいサイズだ。いったい何を食べればあんなに大きくなるのか。  
「うん、でもこれだけ大きいと肩がすぐこったりして、いろいろと大変だよ」  
 ソフィアがネルの方へ、身体の向きを変えて言った。下を向くと彼女の豊満な胸が  
視界にまともに入り、ネルは思わず唾を飲み込んだ。  
(ほんと、威圧されそうな胸だよ。揉んでみたら、どれだけ弾力があるんだろうね。  
あぁぁ、顔を埋めてみたくなったよ)  
「どうしたの、ネルさん?わたしの胸をじっと見て」  
 ソフィアの言葉で、ネルはハッと我に返る。まずい、不審な眼で見られている。  
何とか誤魔化さないといけない。  
 
「い、いやね、そのピンク色の服がよく似合ってるね、と思ってたんだよ」  
「そうなの?うれしいなあ、この服とってもお気に入りなんだよ。  
ディプロにきてから、すぐに着替えちゃった。ありがとう、ネルさん!」  
 褒められてソフィアは思わず抱きついた。圧縮された胸の感触が、  
ネルの身体に伝わってくる。魅力的な刺激に、ネルは思わずため息が漏れる。  
「ふあぁ、気持ち良いよ・・・」  
「えっ、何か言った?」  
 ネルより小柄なため、ソフィアは見上げて顔を見合わせる。  
上目遣いのつぶらな瞳を見て、ネルの理性が破壊されようとする感覚がした。  
「何でもないよ・・・ちょっとトイレに行ってもいいかい?」  
「うん、いいよ。話の内容は、わたしが代わりに聞いておくね」  
「ああ、お願いするよ」  
 そう言った後、ネルは逃げるように会議室を出ていった。  
「はぁっ、はぁっ・・・。まずいね、あの瞳を見ると、思わず食べてしまいそうに  
なったよ。・・・こんな感じになってはいけないんだ」  
 自室に戻り、ベットに倒れこんだネルは、煩悩を吐き出すように発する。  
無論、ここでいう食べてしまいそうとは、ソフィアを煮て食すことではない。  
 ネルは布団のシーツを強く握り締めると、うめくように言った。  
「私にはクレアしかいないんだ、クレアしか・・・」  
 ちなみに会議室は乱交となったため、話の進展は無かった。 
 
 結局ネルは、ディプロ内でアイテムクリエーションを、夜まで行うことになった。  
無我夢中で作成をしたため、それなりにいいものがたくさん出来た。  
特に料理の成功率は抜群だったため、保存しておく分と、自分で食べた分を差し引いても、  
メニューが余ってしまった。  
「どうしようかねえ・・・これ以上食べるとプロポーションに影響が出るし、  
せっかく作ったのに捨てるなんてもったいないしね・・・」  
カレーライスに高級中華スープ、それにツナサラダ。ネルの眼前にはこの三品が  
威勢良く並んである。彼女の自信作だ、別腹があれば間違いなく食べてしまうだろう。  
「フェイトたちに分けてあげようかね・・・」  
 他の人に自分の作った料理を、美味しそうに食べてもらうのは気分がいいことだ。  
我ながらいい考えだと思う。  
「ただ、今の時間帯に尋ねるのは、非常に危険なんだよね」  
 別にフェイトたちが野獣のように暴れまわっているから、危険なのではない。  
いや、ある意味野獣か。恋人に対して、個人的に襲いかかっているのだから。  
ちなみにネルも、この後ベッドの上で食後の運動を行おうと思っていたところだ。  
「そう考えると、他の船民も怪しいんだよね」  
 どうもこの船は、閉鎖的空間に男女がいるせいか、カップルの割合が異常に多い。  
フェイト達ならまだしも、ほとんど会話のしたことの無い男女の、営み中を邪魔しては、  
お互いに気分を損ねてしまう。リーベルは独り身なのは確定だが、嫌いなのであげたくない。  
 
「となると残りは・・・」  
 あえて選択肢を避けていたが、もう彼女しか残っていない。そう、ソフィアだ。  
「もしも美味しく食べてもらって、お礼にわたしを食べて、なんていわれたら  
どうするんだい。断る自身が無いね」  
 彼女に告白されるシーンを想像し、断る台詞を三パターンほど思い浮かべたが、  
すぐに考えていることが、取り越し苦労だと気づく。  
「な、何を考えているんだい私は!私と違って、ソフィアはノーマルな娘なんだよ。  
そんなこというのはありえないじゃないかい」  
 ネルは赤面しながら、かぶりを振る。そうだ、単に仲間に食事を提供する  
だけではないか。普通に渡して、普通にその場を立ち去れば良いだけの話だ。  
「そうと決まれば、さっそく行こう」  
 そう言って料理を持った手は、緊張で汗がにじんでいた。  
 
「ソフィア、いるかい?」  
 ソフィアの個室でネルはノックをしたが、返事が返ってこない。  
「部屋には居ないのかい・・・?」  
 そう呟きながら開閉ボタンを押すと、ドアが開いた。  
「鍵が開いているなら勝手にお邪魔するよ」  
 中に入って最初に聞いたもの、それはシャワーの音だった。  
「ふんふんふふ〜ん、ふふふんふんふふ〜ん♪」  
 以前ボス戦で流れていた、変なラップのメロディーを口ずさみながら、  
ソフィアは身体を清めていた。  
 傍目から見ては死角になっているが、実はディプロの各個室には、  
トイレとバスルームが備え付けられているのだ。  
「入浴中なら、聞こえなくても仕方が無いね。料理は机の上にでも置いて、  
さっさと立ち去ろうと―――」  
 ネルが言葉を中断したのには訳がある。ある物が視界に入って心を奪われたからだ。  
「ソ、ソフィアのブラジャーだよ・・・」  
 バスルームの目の前に、彼女の脱いだ衣服の上に、ソフィアの脱ぎたてホヤホヤの  
ブラジャーが置かれてあった。  
「だ、だからどうだって言うんだい!下着なら私だって身に着けているよ!」  
数秒の間、意識が釘付けになっていたが、慌てて意識を取り戻す。  
「それにしても大きなブラジャーだねえ、何カップなんだろうね?」  
 自然と足がバスルームの方へ向かっていた。気が付いたときには、バスルームの  
前に立っていた。  
 
「こ、これはあくまで、ブラのサイズが知りたいという興味本位なのさ、  
決してやましい考えで見るわけでは無いんだよ」  
 適当に理由をつけたネルはひざまずき、ブラジャーを手にとり掲げてみた。色は清楚な純白だ。  
「ほんと大きいねえ、このブラジャーの中にごはんを詰めて、おにぎりを作ったら  
とても一日では食べきれないよ」  
 そんなことを言いながら、しげしげといろいろな角度から眺めていたが、  
無意識のうちに鼻を近づけていったことに気づく。  
「ば、馬鹿なことをするんじゃないよ!匂いを嗅ごうとするなんて、それこそ変態の  
することじゃないかい!」  
 慌てて、両腕を伸ばしブラジャーを遠ざける。だが、すぐに腕を曲げて顔の近くに  
持ってくる。ネルは忍耐力が強いはずなのだが、今回に限ってはゴッサムよりもへタレであった。  
「でも、せっかくここまで来たんだ、ばれなきゃいいのさ。・・・いくよ」  
 ソフィアの乳首に密着していたであろう個所に、ネルは鼻を近づけ、思いっきり吸った。  
そのとたん、甘い感覚が鼻から伝わってくる。  
「ん〜、いい匂いがするねえ、母性の香りがするよ。でもちょっと匂いがきつい気が  
するよ、ソフィアったら汗っかきなのかい?」  
 若干の疑問を抱きつつも、ネルは反対側も吸って、芳香を満喫した。  
「さてさて、ブラジャーは充分楽しんだことだし、お次はパンツを調べてみようか。  
いったいどんなパンツを履いているんだろうね?」  
 今の言葉をクレアが聞いたら何と思うのだろうか。とりあえず今はここにいないので、  
問題ない。ソフィアのストッキングを取り除くと、果たして目当てのものが見つかった。  
「か、可愛いねえ、くまさんパンツかい」  
 ブラジャーと同様に真っ白なパンツのお尻の部分に、デフォルメされたクマの絵が一枚、  
でかでかとプリントされている。微笑んでるクマの絵につられて、ネルも微笑んだ。  
いや、むしろ表情はニヤついていた。  
「これを普段ソフィアが履いているのかい。似合ってるねえ、見てみたいねえ」  
 スカートをたくし上げて、パンツを見せているソフィアを想像しながら、  
パンツの向きを変えていたネルは、ある異変に気がつく。  
 
「そういえば、かなり湿っているねえ・・・ひょっとして」  
 ネルはひとつの結論を導き出した。これならブラジャーの匂いがきつかったのも合点がいく。  
「さっきソフィアはオナニーしていたんだね。それもかなり激しく」  
 間違いない、自分もよく自慰行為をしているので、湿り気の範囲でどのくらい  
おこなったかが良くわかる。  
「可哀想に、やっぱりフェイトのことが忘れられないんだね。私が慰めてあげたいよ―――」  
「誰かいるの?」  
 身体の汚れた部分も綺麗に洗い流し、入浴を終えて扉を開けようとしたソフィア。  
くもりガラスなのでよく見えないが、確かに人影がひとつ見えていた。  
「わ、私だよ、ネルだよ。料理が余っていたのでソフィアにプレゼントしようと思って  
持ってきたのさ。うわっと!?」  
「どうしたの、ネルさん?」  
「すまないね、つい滑って転んでしまったよ。おまけに勢いあまってソフィアの衣服を  
散らかしてしまったよ。すぐに片付けるからね」  
「いいですよ、わたしが片付けるから。ネルさんにそんなことさせるなんて悪いよ」  
「そうかい、それじゃあ失礼するよ」  
 ネルは勢い良くこの部屋から退散した。それこそわき目も振らずに。  
「変なの、何もダッシュで出て行かなくてもいいのに」  
 バスタオルを一枚巻いた姿で、扉を開けたソフィアは首をかしげた。  
しかしすぐに、テーブルの上に置かれたメニューに眼が釘付けになる。  
「すごぉ〜い!カレーライスと高級中華スープ、それにツナサラダもある!  
うれしいな、全部わたしの大好物だよ!ネルさん、わたしの好み知ってるのかなあ?」  
 眼をキラキラさせて喜ぶソフィア。冷静に考えれば、ネルがソフィアの衣服を  
撒き散らすのはかなり違和感のあることだが、好物を目の前にした彼女にとっては  
どうでもよかった。  
 
「私の馬鹿!なんてことをしでかしてくれたんだい!」  
 自室に戻っていくうちにすっかり冷静になったネルは、布団を両手で叩いて激しく  
後悔した。眼には涙も浮かべている。  
「もうお終いだよ!あんなアドリブではすぐにばれてしまうね!  
明日からソフィアは私のことを変態扱いするのさ!そうに決まっているよ!」  
 ひとしきり後悔し終わった後、ネルはシミュレーターに行き、滝に打たれる  
イメージプレイを選択して、懺悔を行なった。そして、ほぼ日課となっている自慰行為も  
行なわずに、ベッドに横たわるとすぐに眠りについた。  
 ちなみにフェイトとクリフの部屋では、美女と野獣がベッドの上でプロレスを  
していたことを、付け加えておく。 
 
「アリアスに行くというのかい!?」  
 翌日の朝、ネルの部屋にソフィアが入ってきて、開口一番アリアスへ出発しようと  
言ってきたのだ。  
「そうだよ、わたしとネルさんで行くんだよ」  
「けど、聖殿カナン攻略はどうするんだい?この世界を救うためには、  
セフィラが必要なんだろう?」  
 彼女たちの最終目的は、自分たちの住むエターナルスフィアの崩壊をもくろむ  
ルシファーを、説得して止めさせることだ。そのルシファーのいる場所に行くためには、  
聖殿カナンの奥に祭られている、セフィラが必要不可欠になっている。  
「う〜ん、でも話し合いが一向に進まないし、仮に聖殿カナンに行くとしても、  
戦闘に参加できるのは三人までだから、わたしたちがいなくても特に問題ないよ」  
「そりゃあ、そうだけどね。けど、勝手にパーティーから抜けることを、  
フェイトたちが許してくれると思うのかい?」  
「うん、さっき貰ってきたよ」  
 ソフィアが服の中に手を入れ、胸の谷間をまさぐると、中から一枚の封筒を取り出した。  
(な、なんてところに入れているんだい・・・)  
 そういえば彼女がアイテムを取り出すのは、いつも胸の谷間からだったような気がする。  
ソフィアの谷間は四次元空間につながっているのかもしれない。  
 ただ、今は胸の谷間について議論する場合ではない。ネルは封筒から手紙を取り出し、  
内容に目を通し始めた。  
「なになに・・・、『拝啓ネルさんへ、フェイトです。ネルさんの黒鷹旋は僕たちの  
レベルを上げるのに凄く役立っています。もしネルさんがいないと、黒鷹旋無しに  
どうやって経験値を集めればいいのか、考えただけでもぞっとします。ありがとう  
黒鷹旋!最高だよ黒鷹旋!』・・・私は黒鷹旋のおまけだってのかい!?」  
「ネルさん、落ち着いて!きっと褒めてくれることも書いてあるよ!?」  
 顔に血管を浮かべて、手紙を破り捨てようとするネル。慌ててソフィアは彼女を  
なだめて、続きを読むように説得する。  
 
「そうだね、フェイトに鏡面刹(大)を使うのは、全部読んでからでも遅くは無いね」  
 怒りが静まらないのか、ネルは現時点で覚えている最強の技を、フェイトに  
喰らわせようとしていた。そんなネルの殺気に、ソフィアはガクガクブルブル震えていた。  
「続きを読もうかい・・・『そんなネルさんも、戦いの毎日で身体にがたが出てきている  
ことが、僕にも見えてきました。どうかアリアスで骨休めをして、体調を取り戻して  
ください。その間僕たちはシミュレーターでイメージプレイをしておきます。  
シミュレーターって凄いんですよ!ナースプレイやバスガイドプレイが思いのままに、  
再現できるんです!これさえあれば、マリアと一生楽しめます!』・・・こ、こいつは  
本当に世界を救う気があるのかい?小一時間問い詰めたくなってきたよ・・・!」  
 手紙を持つネルの手がプルプルと震える。どうやら彼には持てる技をすべて使って、  
直撃させる必要がありそうだ。  
「とりあえず、最後まで読もうか・・・『でも、なるべく早く帰ってきてくださいね。  
身体も心もまだまだ未熟な僕たちがここまで生きてこられたのは、ネルさんのおかげ  
なんです。ネルさんの能力の高さと、黒鷹旋ばかり使わされても文句ひとつ言わない  
忍耐力には感服します。僕たちのまとめ役になってくれて、本当にありがとう  
ございました。これからも僕たちを助けてください。  
PS.クレアさんとの仲、応援してますよ』・・・まったく、  
嬉しいこと言ってくれるじゃないの」  
 目に涙が滲んできた。ネルは涙を拭き取り、手紙を大事に懐にしまうと、部屋を出た。  
「さて、それじゃあ遠慮なく、休暇を満喫させてもらうよ!・・・クレア、もうすぐ会えるよ」  
 ネルは威勢良く言ったものの、クレアのことを思い、すぐに顔がほころんだ。  
 ちなみにフェイトとマリアは、シミュレーターでご主人様とメイドのプレイの  
真っ最中だった。 
 
「そういえば、なんであんたが私について来るんだい?アリアスにいい思い出でも  
あるのかい?」  
 アリアスへ行く道中、ネルはふと思い出したように、彼女の横を歩くソフィアに尋ねた。  
その後すぐ体力回復のために、酔迎を瓶ごと一気にぐびぐびと飲む。  
「だって、わたしネルさんのこと好きだもん」  
「ブハッ、な、何だって!?」  
「もう、汚いよネルさん、お酒を吐き出しちゃうなんて。もう少し落ち着いてよ」  
「あ、ああ、すまないね」  
 これが落ち着いていられるか。恋愛感情を持ち始めた相手が、告白してきたんだ。  
身体中が火照るのがネル自分にも、はっきりとわかる。  
「ネルさんって素敵だよね。かっこいいし、優しいし、強いし、料理は上手だし。  
わたしのお姉さんだったらいいなあって、いつも思ってたんだよ」  
「なるほど、そういう意味かい・・・」  
 ネルの無念さが顔に滲み出る。恋愛感情では無くて、憧れにも似た姉妹感情だったのかと。  
まあ普通、異性を好きな人が、急に同性を好きになることは考えにくい。  
それに私にはクレアがいる。他の人と浮気をするのはあってはならないのだ。  
ソフィアのことはきっぱりあきらめようと、ネルは決心した。  
「お姉さんみたいなネルさんが、危ない目にあってほしくないの。だから、ネルさんを  
サポートするために、ついてきたんだけど・・・迷惑かなあ?」  
 心配そうな顔で、ネルを見つめるソフィア。こんな切ない顔をこれ以上悲しめたら、  
アペリス様からの天罰が下るに違いない。  
 
「迷惑だなんてとんでもないよ。あんたが居てくれるおかげで、ずいぶん楽しく旅を  
させてもらってるよ。是非、これからもずっと着いてきてもらいたいね」  
 ソフィアの目線の高さまで頭を下げ、彼女の髪をやさしく撫でながら、ネルは  
にっこりと微笑んだ。  
「ほんと!?うれしいな、ネルさんに頼りにされちゃった」  
「よかったよ、笑顔を取り戻してくれて。それじゃあ一緒に行こうか」  
「うん。あっ、でもクレアさんを見つけたら、すぐに退散するからね。再開のキスを  
したりするのを、邪魔したくないもん。ねえ、出会ったらすぐにエッチをするの?」  
「ば、馬鹿!何言ってるんだろうね、この娘は」  
 再び、ネルの顔が赤くなる。思わず、クレアとのプレイの妄想に頭が支配される。  
「やっぱり最初は普通に・・・、でも鞭の感触も思い出したいし・・・、  
野外で行なう刺激も早く味わいたいね・・・」  
 そんな淫らなことを考えていたために、ネルは背後から迫りくる敵に直前まで  
気がつかなかった。  
 
「キュルゥァァァァァッ!」  
「敵かい!?」  
「そんな、後ろからだなんて!?」  
 ネルたちの背後から、巨大な怪鳥のモンスターが襲い掛かる。  
「くっ、訃霞!」  
 とっさ怪鳥の方向に毒性の煙幕を張ったが、あまり効果は無く、すぐに突き破って  
向かってくる。  
「ギュガァァァァァッ!」  
「ぐわあぁぁぁっ!」  
 ガッツを消費して、防御が出来なかったネルは、怪鳥の体当たりをまともに喰らい、  
後方に吹き飛ばされる。  
「ネルさん!?」  
 ネルの安否を心配するソフィア。だが、他人の心配をしている場合ではない。  
怪鳥が標的をソフィアに変更したのだ。  
「ギョグァッ、グァッ、グァッ!」  
「きゃんっ、あんっ、あぐぅっ・・・」  
 怪鳥の足の爪が、容赦なくソフィアに襲い掛かる。もともとHPの少ないソフィア、  
あっという間に瀕死の状態になる。連続して攻撃を受けているので、魔法やアイテムを  
使って回復することが出来ない。  
「死にたくなければソフィアから離れな!」  
 体勢を立て直したネルが、怪鳥に叫ぶ。上目遣いで怪鳥を見る表情は、並みの人間ならば足がすくんで動けなくなるだろう。  
「ギョガッ、ギュハァァァッ!」  
「きゃあああぁぁっぁぁっ!」  
 しかし、頭の鈍い怪鳥はそんなことにはお構いなく、ソフィアにとどめの一撃を与えた。  
ソフィアは悲鳴をあげた後、そのままピクリとも動かなくなる。  
 
「よくも・・・!」  
 ネルの身体がわなわなと震える。目つきが細くなり、殺戮者のものとなる。  
この時点で怪鳥の命が亡くなることが決定した。  
「よくも私のソフィアを傷つけてくれたねえ!」  
 怒りでステータスがパワーアップしたネル。普段ではありえないコンボを、怪鳥に叩き込む。  
「凍牙!影祓い!肢閃刀!訃霞!雷煌破!風陣!これでお終いだよ、鏡面刹!」  
 怒涛のネルの攻撃に、怪鳥は断末魔をあげることさえも許されずに絶命した。  
「過信は己の身を滅ぼすんだよ、覚えときな!」  
 ネルは、人差し指を上に突き出した右手を顔の前に持ってゆき、勝利宣言を行う。  
ちなみに自分は黒鷹旋要員では終わらないというプライドからか、意識的に黒鷹旋は  
使わなかった。  
「ソフィア!大丈夫かい!?」  
 ネルはソフィアの安否を確認するために、彼女の上に馬乗りになって胸に耳を当てた。  
「よかった・・・ちゃんと鼓動が聞こえるよ」  
 最悪の事態は免れたと、ネルはホッと胸を撫で下ろした。ちなみにソフィアの頭上に、  
三つの星がピヨピヨと回っており、気絶だということは明白だったが、今のネルには  
アウト・オブ・眼中だった。  
 
「ん、うぅぅぅん・・・」  
「気がついたかい?」  
「ネルさん・・・。あれ、どうしてわたしのおっぱいを触ってるの?」  
 言われてみて気が付いた。そういえば少しでも心音を聞き逃すまいと思い、  
外側にどかせるために、乳房を思いっきり掴んでいたのだ。しかも馬乗りになって。  
ネルは焦った、この状況でどうすればソフィアに不快感を与えずにすむのか。  
「あ、いや、これは、その・・・」  
「いいよ、ネルさんにならこうされても」  
「えっ、それはどういう―――?」  
「ねえ、重いよネルさん。早くどいてほしいんだけど」  
「あ、ああ、そうだね。今どくよ」  
ネルは立ち上がって、ソフィアが自由に動けるように避けた。  
(どういうことなんだい、さっきの言葉の意味は。胸を触っても良いだなんて・・・?)  
 思いがけないソフィアの反応に、ネルは戸惑いを隠せない。  
「フェアリーライトォッ!・・・これでよしと。それじゃあ行こう、アリアスは  
もうすぐだよ!」  
 回復呪文を使って元気になったソフィアが、ネルの手を握って、先へ進むように促す。  
ネルは思考がうまくまとまらないまま、彼女に連れられていった。  
 ちなみに、そんな出来事があったとはまったく知る由の無い、クリフとミラージュ。  
現在、電車内で欲求不満のOLに痴漢を行なうプレイに、二人は白熱している。 
 
「ようやくここまで来たよクレア・・・、もうすぐ会えるね」  
 アリアスにある軍事拠点の屋敷の前に、ネルはたどり着いた。ここに愛しいクレアが  
待っているのだ。クレアとの愛し合った日々を思い出し、興奮で身体が震えてきた。  
「ついに感動の再会だね!クレアさん驚くだろうなあ」  
 ソフィアも祝福の言葉を投げかけてくれる。  
「そうだね、クレアに連絡を取らずに来たからね。どれだけびっくりするかが楽しみだよ」  
「ネルさん、ひとつお願いしてもいいかな?」  
「なんだい、ソフィア」  
「クレアさん、たぶん部屋の中にいるよね。だったら再会の瞬間を、ドアの外から  
こっそりと見てていいかな?」  
 ネルは最初は奇妙なお願いをしてきたと思った。しかしすぐにその考えを改める。  
妹が姉の喜ぶ姿を見たいと思うのは、別に不思議でもなんでもない。よって、  
快諾することにした。  
「もちろんかまわないさ。だけど、二人きりになりたいタイミングは分かってるだろうね?」  
「うん、部屋の中が甘い雰囲気になったら、この屋敷から立ち去るね」  
「ああ、よろしく頼むよ」  
 ソフィアに確認を取った後、ネルは意を決して、屋敷の中に入った。  
廊下を渡り、一歩一歩感触を確かめながら階段を登っていく。  
 
「ふう、緊張するねえ・・・」  
 二階にたどり着いた。ここの廊下の奥の部屋にクレアがいる。  
自分はどんな顔をして会えばいいのだろう。ネルはいくつかの仮説を立ててみた。  
1.何食わぬ顔で入り、何食わぬ顔で会い、何食わぬ顔で去っていく・・・  
いやだよそんな淡白なのは、第一その後の展開に持っていけないじゃないのさ。  
2.涙を流しながら、スローモーションでクレアのもとへ走って抱きつく・・・  
私はそういうキャラじゃないし、どうやってスローで走るんだい?  
 3.ドアを開けたら、すぐに下半身を露出し「やらないか?」と問い掛ける・・・  
そりゃあ確かにしたいさ、けどもう少しムードってものを大事にしたいね。  
「どれもしっくり来ないねえ、やっぱり出たとこ勝負でいってしまおうか・・・」  
「ネルさん、何で立ち止まってるの?クレアさんに会わないの?」  
後から階段を登ってきたソフィアが、怪訝な顔をして尋ねてくる。  
「ちょっと考え事をしていたんだよ・・・おや?」  
「どうしたの?」  
「しっ、黙ってな」  
 ソフィアが黙った後、ネルは意識を聴覚に集中した。一般人には聞くことの出来ない  
小さな音も、彼女の耳は逃したりしない。  
 
「っ・・・ん・・・あん・・・!」  
 それはセーブポイントのある客室から聞こえてきた。防音設備が整ってある部屋から、  
わずかに漏れていたのだ。  
「まったくクレアったら・・・」  
「何かあったの?」  
「こんな真昼間からオナニーしてるんだよ」  
「ええっ!?」  
 思いもしなかったことを告げられ、ソフィアはすっとんきょうな声を上げた。  
心なしか、瞳の黒い部分がさらに大きくなったような気がする。  
「大きな声をだすんじゃないよ・・・!せっかくだから見てやることにしよう」  
「まずいよそれは・・・!ばれたら大変だよ・・・!」  
「大丈夫さ、クレアはエッチなことに夢中になっている間は、他のことに気が回らなく  
なるのさ。・・・別にソフィアが来る必要はないんだよ」  
「う、ううん。せっかくだから見てみる」  
「ふふふ、それじゃあ行こうか」  
 二人は抜き足差し足忍び足で、問題の部屋にたどり着いた。  
「さて、クレアはどんな風に感じているのか、楽しみだね」  
「なんか、とってもドキドキしてきたよ」  
「それじゃあ、開けるよ・・・」  
 
 音を立てずに扉を少しだけ開き、中の様子を覗くネル。  
「――――――!?」  
 その光景を見て、思わず言葉が出なくなってしまう。  
「ん、うん、あっ、んんっ!」  
 確かにクレアは、ベッドに座って胸や秘裂を刺激して快楽にふけっていた。  
しかし、自分の手を使ってではない。  
「どうですぅ〜、ファリンの愛撫って上手ですかぁ〜?」  
 ネルの腹心の部下であるファリンが、背後からクレアの胸を、形を変えるように揉んでいる。  
人差し指と中指で乳首を挟んで、そちらへの刺激も忘れない。  
「ジュクッ、ジュルッ、チュムッ・・・」  
 もう一人の腹心の部下であるタイネーブ。彼女はクレアの股の間に頭を潜り込ませ、  
舌で秘裂を舐めている。  
「ふふっ、いいわよ、その調子でもっと私を悦ばせなさい」  
 クレアは二人の奉仕に満足そうに笑みを浮かべて、刺激を感じ取っている。  
「ネルさんこれって・・・」  
 ネルの下側から様子を覗いたソフィアは、驚いた表情で見上げて尋ねる。  
「そんな・・・。クレア、私だけを愛してくれるんじゃなかったのかい・・・?」  
 しかし、ネルに答える余裕は無い。顔面を蒼白にして、呆然と前を見ているだけの状態だった。  
「クレア様ぁ〜、ネル様より指使いがうまいですかぁ〜?」  
「とっても上手よ、ファリン。ネルは根が真面目だから、発想力が無くていまいちだったの」  
「クレア様、私の舌使いはどうです?」  
「素敵よファリン。私のアソコも嬉しくて、こんなに蜜を溢れさせているわ。  
ああっ、二人とも、こんなに早くテクニックが上達するなんて、私は嬉しいわ。  
もう、ネルは必要ないわね」  
「え・・・?」  
 奈落の底に突き落とされるとは、このことをいうのだろうか。  
ネルは魂が張り裂ける感覚に見舞われる。  
 
「えぇ〜、あんなに一緒だったのにですかぁ〜!?」  
 意外な言葉を聞いて、ファリンは思わず手の動きを止める。  
「それはね、ネルが一人で寂しそうにしていたからよ。私も最初はネルを苛めるのが  
楽しくて一緒にいたのだけれど、最近は飽きてきちゃったところだったの。」  
 つまんなそうにかぶりを振るクレア。それを見て、タイネーブが上目遣いで懇願する。  
「それではこれからは、私たちだけを見ていただけないでしょうか?」  
「そうね、貴方達がいれば充分だわ。もうネルが二度と帰ってこなくても、  
ちっとも寂しくないわね。・・・さあ、口や手がお留守よ、スパートをかけて、  
私をイカせなさい」  
「わかりましたぁ〜。えっと口も使わないとぉ〜、そうです、首筋舐めるですぅ〜!チロッ」  
「チュ、チュプ、チュウゥゥゥゥッ・・・!」  
 合図とともに、二人はクレアを昇りつめるように、激しく刺激を加える。  
「あはぁ、いいわぁ、いいわぁ!もっと弄って!もっと吸ってぇぇぇ!」  
「す、すごい・・・!あんなに嬉しそうに叫んでるよ・・・」  
 無意識に呟くソフィア。クレアの痴態に目を奪われて、身体をピクリとも動かさないでいる。  
「ソフィア・・・、私はちょっと散歩に出てくるよ・・・」  
 生気が無くなったように死んだ目をしているネルが、扉から目を離し、よろよろと  
この場から立ち去っていく。  
「う、うん。わたしはもう少し見ていくね」  
 視線を部屋の中に向けたまま、ソフィアは言葉を返し、そのまま覗きに集中する。  
「ふわあぁ、イクゥッ、イクゥゥゥゥゥゥ・・・!!」  
 クレアは絶頂を迎えた後、今度はファリンとタイネーブの調教を、しばらくの間行なった。 
 
 屋敷を出た後、ネルは宿屋へと向かった。宿屋といっても、アーリグリフとの戦闘で  
客足が伸びず、営業は中止していて空家同然となっている。中へ入り、「立ち入り禁止」とひもの下にぶら下がっている看板を無視して飛び越え、二階の一室に向かった。  
「クレア・・・」  
 ベッドに倒れるようにしてうつ伏せに寝転がり、虚ろな眼でまくらに顔をつけたネル。  
定期的に手入れがされているのか、ベッドにはほこりひとつ見当たらない。  
 クレアの言葉が思い出される。  
『もう、ネルは必要ないわね』  
「いやだ、思い出したくない・・・」  
『最近は飽きてきちゃったところだったの』  
「聞きたくないよ、そんなこと・・・」  
『もうネルが二度と帰ってこなくても、ちっとも寂しくないわね』  
「うわあぁぁぁぁぁっ!」  
 ネルは泣いた、ひたすら泣いた。涙が枯れるまで泣いた。まくらが水浸しになった。  
「なんかずいぶんと身体が軽くなった気がするよ・・・」  
 涙を出す行為に限界を感じたころ、ネルはつぶやいた。クレアという存在の重さが、  
ぽっかりと無くなったせいなのだろうか、身体にぽっかりと穴が空いてしまった気がする。  
仰向けになって天井を見上げたが、視点がうまく定まらない。  
「いつもクレアはここにいてくれてたのにね」  
 心臓に手のひらをあててつぶやく。クレアと一緒になってから、ネルは彼女のことを一時たりとも忘れたことがなかったのだ。  
最近はネルが想像もできなかった文明の連続で、戸惑いを隠せなく、内心は精神的苦痛に  
満ちていた。しかし、クレアという心の支えがいたために今日まで無事でいられたのだ。  
「でもクレアは私を捨てた・・・。ふぅ、これで私は一人ぼっちになってしまったよ」  
 
「ネルさん・・・」  
 ネルが横を向くと、いつのまにかソフィアが立っていた。声をかけられるまで、  
まったく気づかなかった。  
「ソフィアかい・・・。私はもう駄目だね、ソフィアがそばに来るまで気配を  
感じ取れないなんて。これでは戦士としても足手まといになってしまうよ。こんな  
役立たずな私は放っておいて、ソフィアだけディプロに戻ってくれないかい?」  
 自暴自棄に吐き捨てるネル。ずっと独りでここにいたい気分だった。何時間でも、  
何日でも、何年でも。  
「ネルさん・・・」  
先ほどと同じ言葉を、どこか緊張した面持ちで話すソフィア。そして何の前振りも無く、  
ネルにキスをした。  
「―――っ!?」  
 時間にして、一秒にも満たない間の口付けであったが、ネルにとっては充分すぎるほど  
衝撃の出来事であった。  
「ソフィア、これはどういう―――!?」  
「ネルさん、わたしがクレアさんの、代わりになっちゃ駄目かなあ?」  
 そう言ってソフィアが、ネルの上に覆い被さるように抱きつく。いつもなら、  
ソフィアの胸の圧迫感が気持ちよく思えるのだろうが、いまはそんな状況ではない。  
「それってつまり―――」  
「うん、わたしネルさんのことが好きだよ」  
 はっきりとした口調で、ソフィアは告白した。  
「そうだったのかい・・・」  
「今のネルさんの気持ち、分かるよ。わたしもフェイトに振られちゃった後は、  
しばらく何も考えられなかったもん。自殺しようと思ったこともあったんだよ。  
でも、実際にはしなかった。どうしてだか解る?」  
「いや・・・わかんないね」  
 ネルは考えてみても解らなかった。それ以前に頭がパニックになって、思考能力が  
無くなっているのかもしれない。  
 そんなネルの困った表情を見たソフィアはくすりと笑う。そしてネルの耳元に  
口を近づけた。  
 
「ネルさんがいたからだよ。ネルさんが親身になって相談してくれたから、わたしは  
元気を取り戻せたんだよ。でも、あんまり優しくしすぎてもらっちゃったから、  
ネルさんのことばかり考えるようになって、気が付いたら恋しちゃってたんだ」  
ソフィアは甘く囁いた後、ネルの首もとに息を吹きかける。  
「ふ、あぁぁ・・・」  
 ネルの口から甘い吐息が漏れる。この手の攻めは、クレアによくされていたので  
敏感に反応しやすい身体となっている。  
「あ、ネルさん感じてるんだ。嬉しいな」  
「こ、こんなことをしては駄目だよ。私が言うのもなんだけど、こういうことは  
男女の間ですることじゃないのかい?」  
「恋愛に性別なんて関係ないよ。それにネルさんも、わたしのことを気になってるもんね?」  
 質問を行った後、ネルの耳たぶを軽く噛むソフィア。耳からの刺激が快楽となる。  
この心地よさはクレアのときのもの以上なのかもしれない。  
「ん、くふぅぅぅ・・・、どうして解るんだい?」  
「普段、わたしに対する態度を見ればすぐにわかるよ。極めつけはここに来る途中の  
ことだよ。わたしがネルさんのことを好きだと言ったら、真っ赤になってたけど、  
その次にお姉さんになってほしいって言ったら、すごく残念そうだったよね。  
ねえ、本当はどう言って欲しかったのかなあ?」  
「それは・・・、その・・・」  
 ネルはソフィアを見ているのがつらくなってきた。この子悪魔のような笑みには、  
何もかも見透かされそうな気がしたのだ。しかし、実際は彼女を凝視している。  
少しの淀みも無いまっすぐで真っ黒な瞳に、ネルは吸い込まれていたのだ。  
 
「いいよ、その表情だけで。でも仮にあの時告白しても、結局はクレアさんが  
いるから駄目と、断ったんでしょ?」  
「だと思うね、私にはクレアしかいなかったんだよ」  
「やっぱり。ネルさん真面目だから、一度恋人を決めたら、とことんその人に付いていく  
タイプだと思ったもん。・・・でもわたしと同じように跡形もなく振られちゃった。  
ネルさん、心の重さが半分しかない気がするよね?」  
「いわれてみれば・・・そんな気がするね」  
 ネルの主導権は完全にソフィアのものとなっていた。操られているかのように、  
ソフィアの希望する答えを出すネル。ただ、それでよかったのだ。  
「わたしも半分のままだよ。もうこのままじゃつらいよネルさん、お互いにひとつになろうよ」  
「私だってつらいさ・・・。ソフィア、一緒になろう・・・」  
 ふたりは熱い口付けを交わした。先程とは比べ物にならないほど、濃厚な口付けを。 
 
「それじゃ、わたしからいくよ」  
 二人の唇が離れた後、お互いに相手の服を脱がせあうことになった。まずはネルの服だ。  
身体のあちこちに着けられている防具のパーツが、ソフィアの手によってひとつひとつ  
外されていく。  
「ネルさんって着やせするタイプなんだね」  
「そうかい?少しでも良く引き締まった身体にしようと、毎日トレーニングをしている  
つもりなんだけどね」  
「違うよ、胸のことだよ。思ったより大きいんだなあって。これを脱がせると・・・、  
うわぁ、ネルさんって乳首が小さいね、かわいいな〜」  
 露出させたネルの胸を見て、ソフィアがアイテム作成に成功したときみたいに、  
キラキラと眼を光らせる。  
「馬鹿、そんなこというんじゃないよ」  
「恥ずかしがるネルさんもかわいいよ。次は下を脱がせるね」  
 ネルを纏っていた衣服がすべて脱がされ、真紅の恥毛があらわになる。ソフィアは  
まじまじと見つめた。  
「すごいなあ〜、なんかこう気品があふれてるね。毎日きちんと手入れしてるの?」  
「そりゃそうさ。私の衣服の都合上、剃り残しがあると大変だからね」  
 動きやすいように機能美を重視した結果、ネルの腰まわりは結構露出しているのだ。  
 
「それじゃあ、次は私が脱がせる番だね」  
 ネルはソフィアをベッドの上に寝転がらせると、彼女の上にまたがり上半身を  
集中的に脱がせ始めた。  
「あらためて生で見ると、本当に大きいんだね・・・」  
 ソフィアの巨乳を見た瞬間、ネルは興奮するよりも先に、見惚れて感銘のため息を  
ついてしまった。  
「ねえ、そんなにじっくりと見てばっかりでなくて、何かしてよ」  
 大人顔負けの胸とは対照的に、子供っぽい顔のソフィアが不満を漏らす。  
まだ、見られただけで感じる視姦のスキルは育ってないようだ。  
「すまないね、それじゃあ始めるよ」  
 手を吸い付けるように胸に合わせると、ゆっくりと揉み始めるネル。最初は慎重に  
いくことにしたようだ。  
「どうかなあ、わたしの胸は?」  
「白くて柔らかいねえ、まるで餅みたいだよ。揉んでて気持ちがいいよ」  
「あ、ん・・・わたしも気持ち良いよ・・・」  
 とろんと眼を潤ませるソフィア。どうやら感じているようだ。しかしこのままのペース  
では、快感へと運ぶには時間がかかる。痛いだろうが、ソフィアの乳首をきつく摘んだ。  
 
「ひゃうっ!?」  
「ふふ、今の声はとっても可愛かったよ。もっと聞いてみたいね」  
 今度は手に力を入れて胸を揉む。ちょっとやり過ぎかもしれないが、  
巨乳には多少強く揉んだほうが刺激になると、ネルは判断した。  
「はうぅっ、ネルさんの手がわたしの胸を鷲づかみにしてるよぉ」  
「ごらんよ、ソフィアの胸があんまり大きいから、掴みきれなくて指の間からはみ出てるよ」  
「あ、ふうぅぅ、言わないでよぉ」  
「感じてるようだね、乳首がいやらしく尖ってきたよ」  
「ひゃ、ああん!痛いけどイイの、感じるよぉ!」  
ネルの少しでも感じてもらいという思いが通じているのか、ソフィアの喘ぎ声が  
大きくなった。  
「今の表情はとても素敵だったよ。さて乳首はどんな味がするんだろうね」  
 ネルはそう言って口の中に突起物を含む。  
「ひゃあぁぁっ!?」  
実際はそんなことは無いのだろうが、甘い味がした。ネルは口の中で乳首を転がし、  
レロレロと舐める。  
「ふ、あぁぁ・・・乳首いいよぉ・・・」  
「感度がいいね、性感帯なのかい?」  
「わかんない・・・そうだ・・・こっち舐めよっと・・・」  
 ソフィアは空いている胸を上に寄せ、自分の唇を乳首に吸いつけた。  
「ちゅ、んむ、ん、あむ・・・」  
「そんなことも出来るのかい、こっちも負けてられないね」  
 ネルは感心しながら乳首を軽く噛んだ。  
「ひゃ、くぅぅっ!?」  
「ふふ・・・、ちゅ、ぷ、ちゅる、ちゅぅ」  
 すぐに舌でこねくり回す。そして、噛む・舐めるの刺激をソフィアに与えつづける。  
 
「ふぁうぅぅ、アソコが切ないよぉ!」  
「そうかい、なら今度はこっちを攻める番だね」  
 胸への愛撫を止めたネルは、ソフィアのスカートをずり下ろす。  
「う、うさぎのパンツかい・・・んくっ」  
 スカートの内側にあった、あまりにもかわいい柄のパンツを見て、ネルは  
失笑しそうになった。確かに童顔のソフィアには似合うがしかしこれは・・・。  
「む〜、なにその顔?これお気に入りのパンツなんだよ」  
「いやなに、ここのうさぎが溺れそうだったから、かわいそうだと思ったんだよ」  
 すでにソフィアのパンツはぐしょ濡れになっており、恥毛や秘部が透けて  
見えている。とっさにはぐらかしたネルは、パンツ越しに秘部へ指を這わせた。  
「ふあぁぁん!」  
「こんなに湿られて・・・、そんなに感じてくれてたのかい?」  
「だって、ネルさんのテクニックがうますぎるんだもん」  
 実はその前に、クレアたちの行為を見ていたときに濡らしている部分もあったが、  
ムードが悪くなるので、ソフィアはあえて言わなかった。  
「嬉しいよソフィア、せっかくだからもっと濡らしてあげるよ」  
 そう言ってソフィアのパンツの中に指を差し入れ、秘部をかき回し始める。  
「ひゃうぅぅっ、気持ち良いよぉ!」  
 快楽の叫びをあげるソフィア。ジュボジュボと指を抜き差しされる秘部からは、愛液が  
こんこんと湧き出てくる。  
「アソコがひくひくしてきたよ、もうイクのかい?」  
「はうぅ、イッちゃう、イッちゃうよぉぉっ!」  
 ソフィアは背筋を仰け反らせ、身体を強張らせる。絶頂を向かえた証拠だ。  
 
「はあぁぁぁ、イッちゃった・・・」  
「もうイッたのかい、ひとりだけずるいね」  
 ここまで愛撫を一度もされていないネルは、ちょっと不満だった。ただソフィアの  
快楽に溺れた顔を見られたことに比べると、微々たる量であったが。  
「ごめんね、わたしもなにかするよ。そうだ、ネルさんのを舐めるね」  
 ソフィアの視線の先にはネルの秘部がある。初めて同姓の秘部に舌をつけることに、  
ソフィアは多少躊躇したが、愛するもののために勇気を振り絞った。飴を舐めるような  
舌使いで奉仕を開始する。  
「ん、ぴちゅ、ぴちゃ、ん・・・」  
 お世辞にもうまいとは言えない舌使い。だが、一生懸命しているという熱意がネルに  
伝わり、それが快楽に変わる。  
「ん、うぅ・・・、気持ちいいよソフィア。もっと強く吸ってくれるかい?」  
「んっ、んうっ、ほう・・・?」  
「ん、あっ、イイよ、イイ、ああぁぁぁ!」  
 舌で秘部をかき回される感触で、じゅるじゅると愛液を吸いとられる音を聞いて、  
ネルはいやらしい声を発する。これ以上攻められると、絶頂を迎えそうだ。  
 
「う、あぁぁ、ちょ、ちょっと待っておくれ!」  
「ちゅる・・・、どうしたの?」  
 愛液で顔をびちょびちょにしたソフィアが、不思議そうに尋ねる。  
「イクときはソフィアと一緒に感じ合いたいんだよ」  
そう言ってネルが被さるようにソフィアにもたれかかる。そしてお互いの秘部をくっつけた。  
「女同士の快楽を教えてあげるよ」  
 ネルはいやらしく囁くと、秘部同士を擦るように動き始めた。  
「きゃう、ひゃ、はあぁぁぁっ!?」  
「あぁっ、この感触だよ、これを待ってたんだよ!」  
 未知の感覚に戸惑うソフィアとは対象的に、ネルは待ちに待っていたと歓喜の悲鳴を  
あげた。やがてソフィアも悦びの声を出すようになる。  
「あうぅ、アソコがごしごし擦れてすごくいいよぉ、感じちゃうよぉっ!」  
「私もだよ・・・んんっ、う、あぁぁっ!」  
 二人の秘部から愛液が湧き出て、ぐちゅぐちゅと音を立てて擦れあう。喘ぎ声との  
ハーモニーがとれており、秘め事の演奏が部屋中に響き渡る。  
「イッちゃうよぉ!いやらしい液がぴゅって出ちゃうよぉ!」  
「ふぁぁ、私も、イキそうだよ、ん、うぁ、あぁぁ!」  
 やがて二人に絶頂の瞬間が訪れようとする。ネルは腰の動きを一段と速めた。  
「ああぁぁぁん!イクイクイクぅぅぅぅっ!!」  
「んはぁっ、ああっ、ソフィア、ソフィアァァァッ!!」  
 二人は絶頂に登りつめ、その場に崩れ落ちた。そして余韻を楽しんだ後、すぐに  
第二ラウンドに入っていった―――。  
 
「―――それでは、強行突破の形でセフィラを奪取しに行くわよ」  
「今まで話し合った意味は何だったんだろう・・・」  
「フェイトが私を毎日シミュレーターに連れて行くので、話が進まなかったからじゃないの!」  
「うごぅ!マリア、今日はここでSMプレイなのかい、げふぅ!」  
 宇宙船ディプロの会議室では、いつものように話し合いそっちのけで、どつき夫婦  
漫才が繰り広げられている。  
「ほぅ、今日のミラージュは情熱の赤か」  
「いけませんよクリフ、スカートをめくるのは二人きりのときだけにしてください」  
 同じ会議室で、相変わらずセクハラを躊躇無く行う、スケベ親父もいる。  
「変わらないねえ、フェイト達は」  
「ほんとだよねぇ〜」  
 先程ディプロに帰還したネルとソフィア。以前ならこの光景をただ見ているしか  
なかったが、今は違う。  
「それじゃあ、私達も始めるかい?」  
「うんっ!」  
 二人は見つめあうと、身体を抱き合ってキスをした。  
「ソ、ソフィア、いきなり何してるんだよ!?」  
「ネル!?えぇぇぇ、キス!?」  
 驚くフェイトとマリアを尻目に、舌を絡めてちゅぱちゅぱと音を立てる。  
「おうおう、アリアスに行ってる間に何があったんだ?」  
「ふふっ、若いっていいですね。きっかけはどんなことでしたか?」  
 クリフとミラージュの質問には答えずに、両手で背中や尻をさすりあう。  
(見てごらんソフィア、みんな私たちに注目してるよ)  
(そうだねネルさん、もっと見せつけちゃおうよ)  
(ああ・・・。ソフィア、愛してるよ・・・)  
(わたしも、ネルさん大好きだよ・・・)  
 ここに新しいカップルが誕生したことが、お披露目となった。 

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