「軍に捕まったぁ!?」  
右手に持っていた通信機を落としそうになりながらレオンは叫んだ。  
 
 
 
「そうなのよ、アバシティってとこでちょっと一悶着あってね」  
通信機からはチサトの声が聞こえる。  
 
遭難したエルネスト達を見つけるために、アシュトン・セリーヌ・ボーマンのパーティと  
ディアス・チサト・ノエルのパーティに別れ、残りのレオンとプリシスは壊れた宇宙船の修理作業を行っていた。  
何かあった時にいつでも宇宙船に戻れるようにとプリシスはアシュトン達にテレポーターを渡していたのだが  
 
「テレポーターを、没収されちゃったのよね」  
テレポーターが無ければ当然宇宙船に戻れない。未開の地にいる中でこの状況は結構危険である。  
 
「どうするんだよ!あれが無いとこっちに戻って来れないじゃないか!」  
「まぁ落ち着いて、何でも軍の人曰く、ガーディアンとやらを退治すれば私達を解放してくれるらしいの」  
怒鳴るレオンをなだめるようにチサトは言った。  
「これからディアス達とガーディアン退治に行って来るから・・・2、3日戻って来れないってセリーヌの方に言っといて頂戴。じゃまた」  
レオンが返答する間もなく通信は切られてしまった。  
 
「仕方ないな、セリーヌに連絡しておくか・・・」  
 
 
 
「道に迷ったぁ!?」  
またもや通信機を落としそうになりながらレオンは叫んだ。  
 
「そうなんだよ、森みたいな所にいるんだけどさ・・・どこ行っても同じ景色で訳わかんねぇんだよな」  
通信機からはボーマンの声が聞こえる。  
「一度戻ってもいいんだが、何でもこの森を抜けてすぐのところにノットって町があるらしくてさ。  
 どうせならそこまで行ったほうがいいかな、と考えているんだが」  
「う〜ん・・・」  
「ということで野宿覚悟でこの森を探索するつもりだから、そっちは頼むよ」  
「ちょっと待ってよ、チサト達もしばらく戻って来れないらしいんだけど」  
「そうなのか・・・、まあプリシスと二人きりでも大丈夫だろ?」  
 
「プリシスと二人きり」と言われてレオンは思わず「あっ・・・」と声を漏らした。もし皆が帰ってこれない時にどの様な状況になるのかを全然考えていなかった。  
それを聞き逃さなかったらしくボーマンが笑い出す。  
 
「まあ、あれだ。二人しかいないからって過ぎたコトしないように」  
「何言ってんだよっ、そんなことしないっての!」  
ボーマンに冷やかされて、レオンは顔を真っ赤にしながら反論した。  
「どうだか?昨日のこともあるしな」  
「だからそれはお酒を飲んでいたからであって・・・」  
「はいはい、とにかく何かあったら連絡くれや。それじゃあ」  
「・・・わかった、気をつけて」  
「プリシスから「レオンに襲われた」なんて連絡きても困るけどな」  
「ふざけるなっ!!」  
レオンはブチッと乱暴に通信を切った。思わず通信機を地面に叩き付けそうになるが、なんとかこらえた。  
今日は朝から、からかわれ放題でストレスが溜まっているようだ。  
 
「・・・修理、続けよう」  
レオンはそう呟いて、いままで通信していたメインルームを出た。  
 
 
 
「おつかれちゃ〜ん」  
レオンが作業している部屋にプリシス、と無人くん一号二号が入ってきた。  
レオンは彼女を見向きもせずに黙々と作業を続ける。  
「ちょっと、シカトしないでよ〜」  
プリシスがムッとしながら言った。  
「まあいいや。それよりさ、皆帰ってくるの遅くない?もう6時になるんだけど」  
「・・・さっき通信があって、今日は皆帰ってこれないってさ」  
 
レオンはプリシスに先ほどの通信の内容を伝えた。  
 
「へぇ、じゃあ今日はレオンと二人きりかぁ」  
ボーマンと同じことを言われてレオンはドキッとしてしまうが、プリシスは特に気にせずに言葉を続ける。  
「レオンって、料理できる?」  
「まあ・・・ちょっとだけなら」  
「じゃあ晩御飯よろしくね」  
そう言ってプリシスはレオンの肩をポンと叩いた。  
「うわっ!?」  
突然肩を叩かれてレオンは思わずプリシスを見やり、すぐ目をそらす。  
 
 
昨日の出来事やボーマンにからかわれたこともあってどうも彼女を真っ直ぐ見ることが出来ない。プリシスと近くにいると胸がドキドキしてしまう。  
二人きりでいるなんて今までよくある事だったのに、プリシスは好きだが今まではそばにいても特に意識していなかったのに。  
そんなレオンの心中を全く理解していないのか、理解した上でわざとやっているのかはわからないが、プリシスはレオンの隣に座って、彼の頬を指で突っついた。  
 
「何だよ」  
「もしかして、まだ昨日のこと気にしてる?」  
 
さっきからずっと作業をしていたレオンの手が止まった。  
 
「・・・・・・プリシスは、まだ怒ってる?」  
「怒ってるって言ったら、レオンはどうする?」  
レオンの疑問にプリシスも疑問で返した。  
今日のプリシスの態度からして、それほど怒ってはいないとレオンは思っていたが、  
さっきからずっとニヤニヤしてる彼女が、何かよからぬ企みを考えていそうな気がした。  
 
「そりゃあ、ひたすら謝り続けるしかないかな・・・」  
「それだけ?」  
「それだけって、じゃあプリシスは僕に何をして欲しい?」  
う〜んと唸りながらしばらくプリシスは考え込む。  
 
 
 
「あたしの言うことを聞いて欲しい、とか言ったらレオンは何でもしてくれる?」  
そう来たか、とレオンは顔に手を当てて俯く。  
プリシスの気が済むのなら、言いなりになるのも屈辱的だが仕方ないと思った。しかし彼女のことだから  
何かとんでもない事をやらされそうな気がしてならない。  
 
「常識的な範囲であれば、別にいいけど・・・・・・」  
「マジで?」  
「だけど本当にフツーの事だけにしてくれよ、変な事は・・・・・・っ!」  
 
 
 
レオンは言葉が終わる前にプリシスに両肩をぐぃっと掴まれ、そのまま押し倒された。  
「いきなり何を・・・!?」  
「無人くん、頼んだっ」  
プリシスの掛け声に反応して一号がレオンの左手首を、二号が右手首を掴んだ。  
 
「なっ、離せ!離せよ!」  
しきりに両腕を動かすが無人くんの力が予想以上に強く、振り払えない。  
プリシスが膝に乗っかっているため、レオンは全く動くことが出来なくなってしまった。  
 
(まさか、これって・・・)  
この状況下でされることと言えばただ一つ。  
レオンは最悪の事態を想像した。  
 
「ちょっと待ってよ・・・プリシス」  
「何?」  
「確かに何でもするって言ったけど・・・改造は、さすがに・・・」  
 
 
「はぁ?改造・・・?」  
何言ってんのコイツ、というような眼差しでプリシスはレオンを見つめる。  
「・・・違うの?」  
「あんたねぇ、さすがのあたしでも生きた人間を利用したりはしないわよ」  
じゃあそれ以外だったら利用するのか、と聞きたかったが怖くて無理だった。  
 
「じゃあ、何するんだよ」  
レオンは恐る恐る尋ねた。  
 
「昨日あたしが受けた屈辱をレオンにも味わってもらうのよ」  
 
「・・・屈辱って、僕は・・・・・・昨日何をしたの?」  
恐ろしくてチサトにもどうしても聞けなかった事を尋ねた。  
「聞きたい?」  
プリシスの顔がレオンの顔に近寄る。  
レオンは黙って頷いた。  
 
「まず押し倒されて、キスされて、舌も入れられて、胸を触られて、更に服を脱がされて。  
 それから口に出せないようなあんなことやこんなことを・・・」  
「・・・・・・!」  
レオンの顔が段々赤くなっていく、冷汗も出てきた。  
実際は胸を触られて、以降は起こってないのだがレオンがそれを知る由も無い。  
 
 
「じゃあ・・・僕の胸でも触るつもりで・・・・・・」  
頭がパニックになってしまったレオンは思わず変なことを言ってしまった。  
「アホか、野郎の胸触っても面白くもなんとも無いわ」  
プリシスは冷静に突っ込んだ。  
 
 
 
「とにかく、昨日あたしは恥ずかしい思いをしたから、レオンにも同じく、いやそれ以上の  
 恥ずかしい思いをしてもらおうかな〜と」  
「・・・・・・」  
レオンはもう何も言わなかった。両腕を無人くんによって押さえつけられている以上、得意の紋章術を  
使って逃れることは出来ない。完全にどうしようもなかった。  
 
プリシスの顔が近づいてきた。自分の顔の上、猫耳があるほうに。  
 
「ひっ・・・!」  
耳にぬめりと生温かい感触がした。  
レオンは目で直接見ることが出来ないが、プリシスに耳を舐められたのだとすぐにわかった。  
 
「んっ、やめっ・・・やめて・・・・・・」  
レオンは必死に懇願するがプリシスは一切聞き入れずにレオンの猫耳を舌で弄ぶ。  
 
 
プリシスの舌に反応しているのか、舐められていない側の猫耳はぴくぴく動く。  
それと一緒にレオンが喘ぎ声を出す。それが可愛くてプリシスはまた耳を舐め回す。  
ずっと立っていた猫耳は徐々にぺたんと垂れてしまった。  
 
あれ〜もしかして感じてる?そっかレオンは耳が弱いんだ〜、覚えとこ。今度いじめる時に役に立ちそうだ。などと  
プリシスは考えていた。  
 
 
 
「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・あぅ・・・」  
「さて、と」  
プリシスはようやくレオンの猫耳から舌を離した。  
 
 
 
「レオン、感じてるでしょ?」  
「そっ、そんなこと・・・」  
「ココは、はっきりしてるみたいだけど」  
そういってプリシスは視線を下ろす。  
レオンは大事な事に気付いた。プリシスに耳をいじられて体が興奮してしまった事を。  
慌ててレオンも下を見る。やはりそこには興奮して強調されたレオンのものがあった。  
女の子に見られている事が恥ずかしくてレオンは隠そうとするが、両腕には無人くんがいるし、両足は  
プリシスに押さえつけられていてどうしようもなかった。  
 
プリシスはあることを思いつき、不敵な笑みを浮かべながら視線を再びレオンの顔に戻す。  
「レオン」  
プリシスがじっとこちらを見つめてくるが、レオンは恥ずかしくて視線を合わせることが出来なかった。  
 
「「プリシスお姉さま、僕を気持ち良くさせてください」って言って」  
「へっ・・・!」  
 
突拍子も無いプリシスの発言にレオンは驚いて目を見開いた。  
 
「何でそんな事を言わなきゃいけないんだよっ!」  
「だって、何でもしてくれるんでしょ?」  
「ぐっ・・・」  
確かに何でもすると言ったことは言った。しかしこれは流石にキツイ。  
そもそもプリシスは自分で言ってて恥ずかしくないのだろうか。  
 
「言ってくれなきゃ、改造しちゃうぞ〜」  
プリシスはポケットからペンチを取り出してレオンに見せ付ける。  
もちろんこれで改造が出来るわけではないが、プリシスが本気になったら工具を取り出してきそうだ。  
ここはおとなしく苦汁を嘗めるしかなさそうだった。  
 
レオンはごくりと唾を飲み込んだ。  
 
「・・・さま・・・を・・・・・・い」  
「ん〜、聞こえんなぁ?」  
 
「プリシス・・・おねえさま・・・僕を・・・気持ち良く・・・させてください・・・・・・」  
 
「そこまで言うなら仕方ないな〜」  
レオンは思わず殴りかかりそうになった。とは言っても両腕は塞がれているのだけれど。  
未だかつてこんな屈辱は味わった事はない。しかしここは我慢だ、こちらの身動きがとれない以上  
下手な事を言うと相手に何をされるか判らない。  
ここまでされてもプリシスを嫌いになれない自分も馬鹿だよな・・・と心の中で呟く。  
 
 
レオンのズボンにプリシスの手がかかった。  
「ちょっ、何を・・・・・・!」  
「だって、気持ち良くして欲しいんでしょ」  
レオンは先の言葉を思い出して青ざめた。ずっとその恥ずかしい台詞を言うか言わないかだけを  
考えてた為に、内容については完全に蚊帳の外だった。  
抵抗する間もなく、むしろ抵抗したくても出来ない為にあっさりとずり下ろされる。  
レオンのものがプリシスの目の前に露わになった。  
 
 
「ひぃっ・・・!や、やめてよ・・・!」  
 
必死に体を動かすが当然逃れられる事は出来ない。  
プリシスに自分のものを、しかも興奮している状態を見られるなんて、今すぐにでも死にたいくらいの気分だった。  
 
 
プリシスは、興奮しているレオンのものを手に取る。  
「じゃ、一気にやっちゃいますわ」  
躊躇うことなくレオンのものを口に含んだ。  
先端にプリシスの舌が触れ、撫でるように舐め回す。  
 
「あっ・・・あぅ・・・・・・」  
 
自分でやるときには無い快感に、レオンはひたすらこらえるがどうしても喘いでしまう。  
目に涙が溜まってくる。全身の力が抜ける。頭の中も真っ白になる。  
「う〜ん、やっぱこれはキツイわ」  
プリシスは口を放し、今度は両手で挟んで扱き始めた。  
 
 
「うぅ・・・」  
 
レオンはそろそろ限界に来ていた。下腹部が熱い。ぎゅっと目を瞑った。  
 
 
 
「もぅ・・・・・・僕・・・だめ・・・・・・っ!」  
 
 
 
「はぁ・・・・・・あっ・・・はぁ・・・っ」  
息を切らしながらレオンは呆然と天井を見つめる。  
快感の余韻が残っているのか、時々体がブルッと震えた。  
「大丈夫?」  
プリシスの声にはっと我に帰った。  
と同時にプリシスの目の前でイってしまった事を思い出してまた顔が赤くなる。  
当の本人は特に気にしていないという感じで、ずっとにやけ顔のままレオンを見ていた。  
 
プリシスは無人くんにレオンの腕から離れるように命令した。  
ようやく解放されたレオンは上半身を起こしてズボンを履き直した。  
 
ふと、プリシスの顔が大きく写る。  
彼女が膝に乗っかっている状態で体を起こしたのだから顔が近くなるのは当然だったが。  
ただ、プリシスは先ほどとはうってかわって真剣な表情をしていた。  
その瞳を見るのが恥ずかしくて、視線を逸らしてしまう。  
 
「レオンさ、あたしのことキライになった?」  
「え?」  
意外な言葉にレオンは驚いて視線をプリシスの顔に戻す。  
 
「いや、ちょっとさすがにやりすぎたかなと思ってさ」  
「別に・・・元々は僕が悪いんだし」  
「そっか、よかった〜」  
 
何故か安堵の表情を浮かべるプリシスをレオンは不思議そうに見つめた。  
 
「しっかし、レオンのおかけで服が大変なことになっちゃったな」  
レオンの出した液まみれの服を掴みながらプリシスは呟く。顔にもちょっとだけ付着していた。  
「何だよっ、これはプリシスが・・・」  
「はいはい。とりあえずお風呂入ってくるから、レオンは晩御飯作ってちょ」  
 
じゃあね〜、と手を振りながらプリシスは無人くん一号二号と一緒に部屋を出て行った。  
 
 
レオンはしばらくプリシスが出て行ったドアを見つめていた。  
プリシスにあんなことをされてレオンはかなり恥ずかしかったのだが、さすがの彼女だって  
あの行為は恥ずかしかったのでは、と思った。それでもプリシスは普段通りの様子で出て行った。  
 
そもそも何故このような復讐をしたのだろうか?プリシスの事だからマシンガンとかミサイルとかをぶっ放されても  
おかしくは無かったのだが。  
 
(まさか僕がプリシスのこと好きなのバレたのか?でも僕の気持ちは誰も知らないだろうし、  
 第一プリシスはクロードが好きなんだし・・・・・・)  
 
レオンは知らなかった。昨日寝言でプリシスに告白していたという事を、  
そしてプリシスもレオンのことが気になっているという事を。  
 
 
 
 
レオンがプリシスに想いを伝えるのは、まだまだ先の話。  
 

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