あたりに人影はない。
もう何度も確認しているからそれは間違いない。
だからといって、いつ誰が通りかかってもおかしくないような路地裏で
こんなことをしていて落ち着けるはずがない。
「もう少し真面目にやってよ。」
少女ははいささか恨めしげな目で声の主を見上げた。
青い髪の少年は、いつもどおりの優しげな笑みを浮かべ、
その褐色の肌をした少女を見おろし、自分の腰の位置にあるその頬を軽くなでる。
「やっぱり口だけだとやだから?」
くすくすと笑う声は本当にいつもどおりで、
少女には今の状況が悪い夢でも見ているようにさえ思えてくる。
しかし、口の中で熱を持ち、先ほどからびくびくと脈動するそれが、
すべて現実だと教えていた。
おとなしく舌を動かし、必死で硬くなった男根を舐めまわしはじめたものの、
強い男の臭いに息がつまり、途中でむせ吐き出しそうになる。
だが、少年はがっちりと少女の頭をおさえ、
自分の腰をその口に容赦なく振りたてはじめた。
「ほら、ちゃんと出し入れして。教えてあげたじゃないか。」
ちゃり、ちゃり、と少女の耳を飾るイヤリングが不規則なリズムで音を立てる。
「んぅっ、うーっ!」
強引な行為に苦しみの声が上がっても、
やはり笑みをその顔に貼りつけたまま少年は口を犯しつづけ、
やがてごぽ、という音ともに白く濁った液体が少女の口から零れ落ちた。
「あーあ、また零しちゃったね。」
相変わらず楽しそうに言う少年に、力が抜けたように座りこみ、
けほけほと咳き込んでいた少女が涙がにじんだ眼を向ける。
「大丈夫、ちゃんと全部飲めるようになれるよ。何事も練習ってことだよ、スフレ。」
こんな状況でなければ爽やかさすら感じたであろう笑顔を浮かべ、
少年は足早にその場を立ち去り、後には少女だけが取り残された。
スフレ、そう呼ばれた少女は、しばらく茫然自失としたまま座り込んでいたものの、
やがて緩慢な動作で汚された口をぬぐった。
今回が初めてというわけではない。
これよりひどいことももう何度されたかもわからない。
だが、それでも無性に悲しかった。
誰もいない路地裏で、少女は一人声を殺して泣いた。
これも、初めてではなかった。