フェイトとマリアの秘密の関係に気付いた人物がいた。  
隠密行動を得意とする彼女は人の行動から心理を読むのに長けている。二人の微妙な  
心情の変化にめざとく反応を示したのがネルだ。  
と言ってもそれを公にするような事はしない。二人の問題だし部外者が口を挟むとい  
うのは不粋な話だ。フェイトには以前カルサア修練所での借りがある。ここは生暖か  
く見守ってやり、邪魔が入るようならそれを排除してやるのが情というものだとネル  
は勝手に判断した。個人的な感情を言えばフェイトには好意を持っていた。ただしそ  
の好意は人としてであって男としてではない。恋人とか束縛される関係を持つ気はさ  
らさらない。  
 
 
アーリグリフに立ち寄りアルベルと合流した一行はクロセルに協力(正確には打ちの  
めす)ためにバール山脈に来ていた。  
 
「うわ、ドラゴンだらけだな………」  
 
フェイトの最初の感想がそれだった。  
山脈の至るところに大小さまざまなドラゴンが徘徊している。  
今までにいろいろな強敵と戦ってはきたが、さすがにこのおびただしいドラゴン達の  
相手をするには骨が折れそうだった。  
ドラゴンの相手は容易ではなかったが思っていたより負担にはならなかった。それよ  
り懸念すべきなのは無数に転がり落ちてくる岩石の方だろう。破壊できるのはクリフ  
のようなパワーファイターだけでフェイトやアルベルには到底岩石など破壊すること  
は敵わなかった。  
 
「あいつみたいに少し腕力鍛えようかなぁ」  
 
「ふん、あの筋肉阿呆が」  
 
岩石を破壊しながらドラゴンの相手をするクリフを見てフェイトとアルベルは各々の  
感想を口ずさむ。筋肉阿呆じゃなくて筋肉馬鹿じゃないのか?というフェイトの疑問  
は宙に舞った。  
男性陣でこの苦戦なので女性陣にはもっと苦しいと思ったが、ネルは身軽に岩石の群  
れを交わしながらドラゴンを短刀で切りつけていた。さすが戦闘のプロと言うべき目  
を瞠る戦いぶりだった。一方、マリアは足は速い方ではないのでステップで岩石を交  
わしながら戦っていたが余計に体力を使うためにすでに技のキレが無くなっていた。  
目の前のドラゴンに対してかなり苦戦している。  
───と、思った瞬間マリアは悪地形に足を取られ横倒しになる格好で転倒した。  
横目にマリアの戦いぶりを見ていたフェイトは「まずい!!」と思った。  
マリアの目の前にいるドラゴンは大きく凶悪な口を大きく広げている。今にもマリア  
に襲いかかりそうだった。  
そのドラゴンがマリアに向かって突進してきた。  
フェイトもマリアの方に向かって走りだした──助けるために。  
ドラゴンの牙がマリアの眼前に迫ってきていた。  
マリアは自分の境遇を理解して声もあげず目を瞑った。  
 
「マリアーーーーーーーーッッ!!!」  
 
フェイトの悲痛な叫びがこだまする。  
間に合わない!!そう思った刹那、  
 
ザシュッ  
 
「!!?」  
 
何かの音を確認するとドラゴンの頭部には1本の短刀が刺さっていた。  
この事で突進を止め、怯んだドラゴンに素早く近づきフェイトは剣で切りつけた。  
ドサッとドラゴンが横倒しになった。  
マリアは自分がまだ生きている事を確認して目を開けるとそこにはフェイトと自分を  
襲っていたドラゴンが倒れている光景が飛び込んできた。  
 
「………フェイ……ト?」  
 
目の前にいる愛しい人に自分が生きている認識を乞うように尋ねると優しい口調で答  
えが返ってきた。  
 
「大丈夫かい、マリア?」  
 
微笑むフェイトに安心してマリアは思わず抱きつきそうになったがそれは自制した。  
フェイトの後ろに一人の影を認めたからだ。  
その女性は腕を組みながらフェイトに説教を始めた。  
 
「フェイト、あんた自分の好きな人も満足に守れないのかい!?全く私が気付いたか  
ら良かったものの気付かなかったら一体どうするつもりだったのさ!!もう少しで一  
生後悔する思いをするところだったんだよ!!」  
 
フェイトはネルの説教を聞きながらがっくりと肩を落とした。  
反論の余地が針の先ほどもない……。  
 
「マリア、あんたもだよ!!いつもならこんなヘマするような奴じゃないだろう!?  
あんた達二人とも少し自分達の立場ってもんを考えなきゃダメだ!!互いに大事に思  
っている事はわかるけどもう少し気を引き締めてだな………」  
 
どうやらネルはかなり本気で怒っているらしい。  
フェイトとマリアはいつの間にかネルの前に並んで正座して説教をうなだれながら聞  
いていた。なかなか滑稽な光景だったが、3人が持ち場を離れたために残されたクリ  
フとアルベルの負担は倍以上になっていた。それを気にする様子は全く無い。  
何故ネルがフェイトとマリアの秘密にしている関係を知っているかが二人には疑問だ  
った。そしてそんな大声で説教したら他の二人に聞こえてしまうではないか。もう少  
し落ち着いて小声で喋ってくれませんか?  
が、そんな事を言える雰囲気ではない。  
一言で言うなら「怖い」この一言に尽きる。それが今のネルにぴったり当てはまる。  
 
「ガミガミガミガミガミガミ………」  
 
永遠に続くと思われたネルの説教に終わりが突然訪れた。  
ネルの背後から直径5メートルはある巨大な岩石が転がってきた。  
最初に気付いたのはクリフだった。しかしドラゴンと戦闘中なので助けに行けない。  
そして叫んだ。  
 
「おい、お前ら危ないぞ!!早くそこをどけるんだぁーーー!!」  
 
3人がクリフの言葉に気付いた時にはもう遅かった。3人は岩石にはじき飛ばされ背後  
に控えていた崖から岩石ごと転落した。  
クリフは言葉を失った。  
 
そしてすぐ気を取り戻すとアルベルに言う。  
 
「アイツらがやべぇ!!早く助けに行くぞ!!」  
 
「阿呆が」  
 
「あん?」  
 
「その前にこのクソ虫どもを片付けない事には始まらんだろう」  
 
不敵に言うアルベルにクリフはそりゃそうだと頷く。とりあえず目の前に大勢存在す  
るドラゴンの群れを片付けないことには助けに行けようもない。  
 
「コイツらを早いとこぶっ飛ばして助けに行くぞ!!」  
 
「ふん」  
 
そう言うとクリフとアルベルはドラゴンの群れの中に突進して行った。  
 
──(くそっ!無事でいろよフェイト、マリア、ネル!!)  
 
──(阿呆どもが)  
 
 
 
 
「……ぅうん………」  
 
「あ、マリア!!ネルさんが気が付いたよ!!」  
 
「ホント!?」  
 
薄く目を開けるとまだ落ちていない太陽の光が目に眩しかった。  
 
(ここはどこだ?私は一体どうしたんだ?)  
 
いろいろな疑問が頭を飛び交いようやく少し前の出来事を思い出す。  
 
(あぁそうか、崖から落ちたんだっけな………。私らしくもない。背後に気をかけて  
なかったなんて)  
 
そう思うと自分の愚かさに自嘲が漏れる。フェイトとマリアはその笑みに怪訝そうな  
表情を作るがネルは気にもとめなかった。  
ふと上を見上げると相当な高さの崖から落ちたのがよくわかった。とても人の昇れる  
レベルの高さじゃない。よくあの高さから落ちて生きてたものだ、とネルは自分で感  
心する。足元には流れの速い川が流れていた。大分深いのか透き通った水なのに底が  
見えない。  
 
「なるほど。私達は運良く川に落ちて一命を取り留めたんだな───!!」  
 
ネルはふと横を見ると右足を負傷しているフェイトに目を瞠った。応急処置として添  
え木と包帯がしてあるが包帯はすでに真っ赤に染まっている。添え木がしてあるとい  
う事は骨折しているのだろうか。  
 
「フェイト!!あんた、足大丈夫なのかい!?」  
 
先程の説教にも勝る大声でネルはフェイトに尋ねた。  
当のフェイトは笑顔を作ってみせる。  
 
「ええ、まぁ大丈夫……ではないですけど大事には至らなかったんで」  
 
しかし、その足の様子は見るからに大事だ。  
フェイトの額からは脂汗が滲み出ている。相当強がっているみたいだ。  
 
「ネルさんこそ大丈夫ですか?腕から血が出てますけど」  
 
そう言われてネルは右腕の痛みをようやく確認した。右腕だけじゃなく身体のあちこ  
ちにケガをしているみたいだ。しかし目立って大きなケガはしていない。マリアの方  
に視線を向けると彼女はかすり傷程度で済んだらしい。  
 
───!!  
 
ネルは唐突に理解した。  
 
「フェイト……、あんたさっき私がマリアの事は命がけで守れと言ったから……、だ  
からマリアを庇ってあんたはそんな大ケガをしたのかい!?だったらあんたがケガを  
したのは私のせいだな……。すまない……」  
 
ネルは心底申し訳無さそうな顔でフェイトに謝った。  
そう言うネルにフェイトは首を横に振った。  
 
「ネルさんのせいじゃありませんよ。僕が、僕自身がマリアを守ろうと決意したんで  
す。さっきネルさんに説教を受けた時から」  
 
フェイトは言葉を続ける。  
 
「それにマリアを助ける事に重点を置いたからネルさんを庇うのは少しおろそかにな  
ってしまって……、すいません。僕がもっと強ければ良かったんです……」  
 
ネルは目を見開いた。フェイトがマリアだけでなくネルも一緒に庇った事実を知った  
からだ。それでフェイトだけが大ケガを負っている理由が理解できた。  
しかしネルは困惑した。  
 
「私なんか放って置いてマリアだけ助ければ良かったじゃないか!!そうすればあん  
たのケガもそんなにひどくならなかったのに!!」  
 
「放っておけるわけないじゃないですか……」  
 
「私達が崖に落ちたのは私の落ち度だ!!私の事なんか助けなければ良かったじゃな  
いか!!」  
 
フェイトの表情が一変して険しくなった。  
 
「だから放っておけって言うんですか!?あなたはまたそうやって自分だけが犠牲に  
なればそれで良いって言うんですか!?カルサア修練所でもそうだった。どうして自  
分はどうなっても良いみたいにすぐ言うんですか!!僕はあなたのそんな身勝手な所  
が嫌いです!!」  
 
「………それは……………………」  
 
ネルは口ごもった。フェイトの言い分に反論できない。フェイトを真っ直ぐに見れな  
い。  
フェイトは柔らかい口調で言った。  
 
「それにあなたがいなくなったら誰が僕達に説教してくれるんですか?」  
 
ネルはハッとして顔を上げた。そしてフェイトの顔を両手で引き寄せ優しく長く接吻  
をした。  
 
「────!!」  
 
「────!!」  
 
フェイトは驚いた。  
二人のやりとりを横から見ていたマリアも驚いた。  
マリアの身体がわなわなと震えている。  
 
「な……な、な………」  
 
うろたえるフェイトにネルは告げる。  
 
「私の口を経由して治癒効果のある施術の源を直接体内に注ぎこんだんだ。外からよ  
りも効果は数倍違うからあんたのケガもなるべく早く回復すると思う。これが私なり  
の罪滅ぼしだと思ってくれ。何、気にすることはない。治療の一環であって特に深い  
意味合いは無いのだから」  
 
後半はフェイトというか傍らで見ていたマリアに言ったようなものだ。  
そう言うとネルは呆然とするフェイトとマリアに向かって  
 
「フェイトは負傷してるわけだしここから移動できない。それにこういう場合は下手  
に動かないでじっと助けを待ってるのが定石だ。幸い水もあるしあそこには手ごろな  
洞窟もある」  
 
ネルは少し離れたところにある洞窟を指差した。  
そしてネルの提案と指導でそこの洞窟で一晩を過ごすことになった。  
食料はそれぞれが持っていた分で事足りたし、火もネルのような施術士がいれば何の  
心配も無かった。  
 
 
日が翳った。  
大きな崖に挟まれているためすぐに暗くなった。いつモンスターが闇に紛れて襲って  
くるかわからなかった。火の番も兼ねてこういう事態に慣れているネルが寝ずの番を  
請け負った。火は洞窟の入り口から5メートルくらい離れた所に設けられた。  
 
「クリフとアルベル大丈夫かなぁ?」  
 
フェイトは洞窟で二人きりになったマリアに話しかける。  
二人きりにしたのはネルの考慮からかもしれない。  
 
「あの二人なら大丈夫だと思うわ。どっちも馬鹿みたいに強いじゃない」  
 
「ケンカしてなきゃいいけど……」  
 
「あぁ、そっちの心配ね。お世辞にも仲良しとは言えないものね、あの二人は」  
 
さすがに大丈夫だ、と断言はできなかった。とは言えクリフが付いているからきっと  
今頃自分達のことを探してくれているだろうと信じれた。  
 
「クリフがきっと来てくれる」  
 
少しの迷いも持たない口調でマリアは言った。  
そして隣りにいるフェイトに身体を預けるようにもたれかかった。  
 
「うん」  
 
しばらくの沈黙の後マリアが口を開いた。  
 
「私ネルさんに嫉妬しちゃった」  
 
「あれは……治療だって言ってたじゃないか。気にするなよ」  
 
「そうは言ってもキスには変わりないでしょ?」  
 
「……まぁ、そうかな……」  
 
「私だけの感触にしたいの」  
 
そう言うとマリアはフェイトに接吻してきた。ネルにはできない恋人同士ならではの  
濃いディープキスだ。ネルの感触をかき消そうとマリアは熱心にフェイトの唇から口  
内までを舌で舐め尽した。あの日以来幾度と無く交わしてきた唇と舌の感触に飽きる  
様子など微塵もなく二人の世界に入っていった。  
 
「んッ………あはぁん……」  
 
漏れる声と互いの舌を吸うたびに溢れる音。チュッチュッという音が響く。この時点  
で外に居るネルには何をしてるかは筒抜けだった。  
 
「フェイト……」  
 
「マリア………」  
 
愛しむように互いの名前を呼び合って愛を確認する。  
フェイトの手はすでにマリアの胸に伸びていた。あれからマリアは胸が敏感だという  
事を学習していた。あの日以来幾度となくフェイトに胸を愛撫されて胸の性感がより  
高くなっていた。  
最初は包むようにして服の上からゆっくりとマッサージする。少しずつほぐれてきた  
ら乳首のあたりをかすめるように上下左右に揉む。そこでフェイトは突起物の感触が  
いつもより鮮明な事に気づく。  
 
「マリア……今日はブラジャー付けてないの?」  
 
「……うん。」  
 
マリアは恥ずかしそうに俯いた。  
 
「だって、最近……何だかサイズが合わなくなったみたいで……キツくって……」  
 
「僕が毎日揉んでるからかな?」  
 
「………バカ」  
 
そうしてマリアから唇を付ける。恥かしいことを何てことなく言う恋人の口を塞ぐ目  
的も兼ねて。  
 
そうこうしてる内にフェイトは一旦唇を離しマリアを自分の足の間に座らせた。後ろ  
から手を回した方が胸を愛撫しやすいからだ。マリアが上向きに後ろを向かないと接  
吻できない少し苦しい状態であるが二人には何の苦にもならない。むしろこの状態が  
好きなくらいだった。  
二人は再度唇で繋がる。フェイトは後ろから手を回し両手でマリアの胸を愛撫する。  
今度は脇の下あたりから衣服の中に手を滑らせて直接柔らかな乳房を刺激していた。  
ブラジャーを付けていなかったので先刻も直接愛撫してるのとあまり変わりは無かっ  
たが今度はフェイトの手に直に温もりが伝う。それはマリアにしても同じことだった  
。フェイトの手の温もりが直接伝わる。だがそれだけでさっきとは比べ物にならない  
ほど気持ち良かった。  
乳房全体をまんべんなく愛撫していたフェイトだがだんだんと乳首の刺激に重点を置  
くようになった。指でつまんだり、挟んだり、弾いたり。そのたびにマリアがかわい  
い反応を示すからなかなか胸の愛撫が治まらなかった。  
 
「どういうのが一番気持ち良い?」  
 
唇を離してフェイトが聞いてきた。  
 
「わ……わかってる……でしょ?」  
 
マリアは恥ずかしげに顔を背けて疑問に疑問で返す。  
 
「忘れちゃった」  
 
言外に、てへっという言葉が聞こえるくらいわざとらしい仕草でフェイトは言った。  
 
「マリアの口から直接聞きたいんだよ」  
 
「………どうしても言わなきゃ……ダメ?」  
 
「言いたくないなら言わなくてもいいけど、その代わりそれはしないよ」  
 
マリアは少し黙ってから小さな声で呟いた。  
 
「…………を…んで…………の………」  
 
「ん?そんなに小さい声じゃ聞こえないよ。もっとハッキリ言わなきゃ」  
 
「……乳首を噛んで…欲しいの………」  
 
小さな声に変わりは無かったがさっきよりはハッキリした口調と上目使いでマリアは  
懇願する。恥ずかしさのあまり赤面したまま俯いてしまった。  
普段の凛としたマリアからは想像できないほどのかわいい反応。そのギャップがたま  
らなく愛しい。それを知っているのは自分だけという事実にフェイトは喜びを感じた。 
きっとクリフやミラージュもこんなマリアは知らないであろう。  
 
フェイトはにっこり笑いながら答える。  
 
「よくできました」  
 
マリアの素直な懇願に呼応するようにフェイトは自分の足の間にいるマリアを半回転  
させて自分の正面に向けさせた。そして露わになった乳房に顔を近づけ、焦らすよう  
に乳首のまわりを舐めあげる。それに焦れたのかマリアは身体をくねらせてフェイト  
の舌が乳首に当たるように努力するがその努力は無駄だった。  
それに耐えかねたマリアは、  
 
「ね……ねぇ、もう……ぅん……いいでしょ?焦らさないで……あんッ………」  
 
と、また懇願した。  
そしてフェイトは乳首とその周辺を口に含み、乳首を舌で転がし始めた。それだけで  
マリアの快感は一気に上昇した。その直後にマリアが望んでいた通りフェイトは乳首  
を甘噛みし始めた。少し強めに噛むのと撫でるくらいに弱く噛むのを自在に使い分け  
てフェイトはマリアを快感に導く。洞窟内にはマリアの快感を表す声で充満していた  
。そしてその声はもちろん外のネルにも聞こえていた。  
 
『……あいつら私の存在をすっかり忘れているようだな』  
 
外で火の番をしながら周囲への警戒を怠らなかったネルはそう呟く。この状況ではネ  
ルは完全な部外者だった。心なしか顔が紅潮して見えるのは火の傍にずっと居たため  
だけではないだろう。  
ふとマリアの声が途切れた。  
 
「マリア……僕もう我慢できないよ」  
 
乳首への刺激を止めてフェイトはマリアに言った。  
だがマリアは少し戸惑っている。  
 
「え………でも…、すぐ外にはネルさんがいるじゃない……」  
 
「大丈夫だよ。マリアの声が大きかったからとっくに気付いてるよ。最後までしたっ  
て問題無いと思うよ」  
 
マリアは少し考えて自分の声がそんなに大きかったかな?と頭を巡らす。だが意外と  
自分ではわからないものだった。  
 
「それに何でかは知らないけど誰にも言ってないのにネルさんは僕達の関係に気付い  
てたじゃないか。今さら気にする必要もないさ」  
 
フェイトに上手く丸め込まれた感がしたが心の底ではマリアも最後まですることを望  
んでいた。っていうかここまでしたら普通最後までするだろう。  
───、一応顔では渋々な表情を作りマリアは頷いた。  
 
体勢的には座位に近かった。さっきまでその状態で乳首を刺激していたからそれは当  
然の流れと言える。そして右足を負傷してるフェイトに負担をかけないためでもあっ  
た。お互いの性器を露わにするとフェイトは相変わらずはち切れんばかりに陰茎を屹  
立させていた。そしてマリアも直接性器への愛撫はなかったものの十分に潤っている  
のがわかった。  
 
「マリア、自分で挿入してみてよ」  
 
そんなフェイトの提案にマリアは眼を丸くする。確かにフェイトはケガをしてるしそ  
の方が結合しやすいのだがマリアから挿入したことは無かった。こんな状態でもなけ  
ればマリアはきっと自分からはしてくれない、そう思ったフェイトの思惑だ。  
マリアは躊躇していたがフェイトに促されてそっと陰茎を掴んだ。  
 
───(すごい熱くて固い)  
 
口には出さなかったがそんな感想をマリアは抱いた。あれから幾度も身体を重ねてき  
たがフェイトのモノに直接触ったり愛撫することはなかった。だから新鮮な感触でも  
あったし自分でも興奮してくるのがわかった。  
マリアは陰茎の先を自分の秘部にあてがうと入り口を確かめるように少し擦りながら  
ゆっくり身体を沈めていく。  
 
「……ッん、あっ……はあぁぁ!!」  
 
根元まで挿入されるとマリアの声が漏れる。  
柔らかくて熱くてキツい膣内に包まれているだけでフェイトは危うくイキそうになる  
感覚を覚える。しかしまだ挿入しただけなのでここで果てるわけにはいかない。  
お互いに様子を見るように少しづつ腰を前後に振っていく。  
一旦行為が始まってしまえばあとは絶頂まで達するだけだ。  
二人はその行為に夢中になる。  
 
 
外で一人取り残されたネルにも行為が始まった事がわかった。マリアの声がさっきと  
は明らかに違うからだ。嬌声じみた喘ぎ声が甘美な色を帯びている。  
 
『……あいつら、とうとう始めたか……』  
 
始めは勝手にしてろと、そう思っていたがだんだん落ち着かない気分になってきてい  
た。身体をもぞもぞさせる内に手は自然と自分の胸に伸びていた。始めは衣服の上か  
ら。しかし直に刺激させるのに時間はかからなかった。すぐに直接胸を触りはじめ、  
自らの指で乳房と乳首を弄んでいた。  
 
「…ッああぁァ!!……はっ!はぁ………ねぇフェイト、……っんん!……き、気持  
ち良い?………ぁあんっ!」  
 
二人は座位から体位を変えていた。フェイトがそのまま上半身を後ろに倒す形でマリ  
アが上に乗っている状態だ。マリアはフェイトの胸あたりに手を置き一心不乱に腰を  
振っている。騎乗位は初めてだったはずだがどうしてマリアは飲み込みが早くすぐに  
自分のものにしていて快感を貪っていた。天性のものなのかな?とフェイトは思う。  
違うことを考えていないと少し油断しただけでイキそうになる快感をマリアから途切  
れることなく受け続けていたからだ。  
 
「あぁ、すごく気持ち良いよ。いつの間にマリアはこんなやらしくなったんだい?」  
 
「……あなたの……せいじゃない……っん、はああぁぁ!!」  
 
途切れ途切れに言うとマリアはフェイトに接吻してきた。  
 
 
ネルは先刻のフェイトの唇の感触を思い出していた。自分で気にするなと言っておき  
ながら何てざまだろうと思ったがその思いはすぐに姿を消した。  
左手で胸を愛撫しながら右手はすでに股間に伸びていた。黒い下着の上からこねくり  
回すように刺激すると自分でも濡れてくるのがわかった。陰刻にも同時に刺激を与え  
ると快感が一気に高まっていった。  
そういえば最近忙しくて自慰なんてしていなかったな、とネルは思い出す。男と最後  
に寝たのでさえもう1年以上も前の話だ。要するにネルはご無沙汰だった。久しぶり  
に身体に与えられる快感がネルを女にしていく。  
十分潤ってきたのを確認すると下着の横からするりと指を滑らせていく。久しぶりに  
もかかわらずネルの秘部は容易く自身の指を受け入れた。  
 
『……っく、あ……は……ぁぁ!』  
 
押し殺しきれずに声が漏れる。  
もちろんその声はフェイト達には聞こえていない。マリアの上げる声に比べれば囁き  
程度のものだ。  
最初は中指を挿入したが刺激している内に物足りなくなり薬指も同時に挿入し始める  
。マリアの喘ぎ声に合わせるように出し入れする。膣内をかき回すように刺激すると  
熱いものが脈々と溢れてきた。  
こんなに気持ちの良いものだったかな───と、ネルは考える。  
今自分はかつてないほどの快感を得ている。それは単にご無沙汰だっただけではなく  
この状況が占める割合が大きいみたいだ。仲間の行為を耳にしつつ自分を慰める。そ  
の不健全とも言える行為に心底興奮してる自分がいる。  
私は変態だな───そう自分で思うと快楽を得ることに迷いはなくなった。  
左手で腰に携えてある短刀を取り出すと柄を男性の陰茎に見立てて舌でゆっくりと舐  
め上げていく。少し血の味がするがそれが逆に自分の興奮を高めていった。それと同  
時に右手の動きも自然と速くなった。興奮が抑えきれなくなると柄全体を口にほお張  
りノドの奥まで咥えこんだ。柄はネルの口には少し大きくて苦しかったがそれにも興  
奮した。本物を口で愛撫するようにキツく吸ったり口内で舌で刺激したりする。ネル  
は短刀の柄をフェイトのモノに見立てていた。フェイトが好きとかそういうわけでは  
ないが先刻の優しいフェイトの言葉と今現在マリアとの行為の真っ最中であるフェイ  
トを想像するのが一番手頃なだけだった。  
すこし耳を傾けると二人の行為が終盤に向かっている事がわかった。  
 
「……っん、あぁ!!フェイト、フェイトぉ!!私もう……イ…ッ…キそう…」  
 
「…くっ、僕もだよマリア!!」  
 
マリアがさらに腰の動きを速くする。顔を紅潮させ汗を吹出しながらフェイトの上で  
踊るように身をくねらせる。もう全くネルを気にしていない様子で大声で出しながら。  
 
それと同時にネルの方もラストスパートに入っていた。  
さらに妖しく指をくねらせ激しく柄をしゃぶりながら。指を動かすたびにくちゅくち  
ゅという音が聞こえる。目を閉じて快感だけを貪っていた。もはや火の番など頭の片  
隅にも存在していない。柄を咥えているせいで口から流れ落ちる唾液がノドを伝って  
乳房にまで到達していた。  
 
『……ぅんっ……うん、はっああぁぁ!!』  
 
───私ももう…イキそうだ  
リズミカルに漏れる声にも絶頂を迎える予感を感じさせた。  
 
 
そして3人ほぼ同時に絶頂を迎えた。  
 
「くっ………!!」  
 
「あああああぁぁーーーーーっっ!!!」  
 
『はっぁああああーーーっっ!!』  
 
フェイトはマリアの中に欲望の果てを数回にわけて注ぐ。  
マリアはそれを身体の内から感じ取って恍惚の表情でフェイトの上に倒れ込む。  
ネルは口から短刀を落とし過剰とも言える量の潮を吹いてしばらくぐったりしていた。  
 
 
あの後フェイトとマリアはそのまま眠りについたみたいだった。ネルもそのまま眠り  
につきたい気分だったが自分の役割には責任を持って寝ずに火の番を続けた。自分の  
行為を馬鹿だとは思ったがそれ自体を否定する気はない。  
夜があけて空が青白くなり始めた。  
まだ日が完全に上がりきらない内にクリフとアルベルは3人の下に助けにきた。どう  
やら川の流れが急で相当下流に流されていたらしい。ここから少し歩けばアリアスに  
辿り着くという事だった。負傷したフェイトをアリアスに連れて行き精鋭の施術士達  
により早急にフェイトの治療が行われた。フェイトのケガが完治するまで2、3日かか  
ったがその後は当初の予定通りバール山脈を抜けウルザ溶岩洞に行きクロセルの助力  
を得るに至った。  
 
二人の関係がパーティ内に広まったのは言うまでもない。誰も邪魔するものも居なけ  
れば茶化すようなものもいない。二人の関係はまだ滞りがなかった。ソフィアがマリ  
アの前に現れるまでは。そんなことは露知らずフェイトとマリアは幸せそうに微笑み  
あう。そしてネルの心情も少しづつではあるが変化していた。  
 
 

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