「……………」  
 
マリアの回想を聞いている間フェイトは掛ける言葉も見つからず黙っていた。  
隣りに座るマリアは自分の過去──母親を失くし幸運にもクリフ達に拾われて九死に  
一生を得た──を淡々と語る。  
辛くないはずが無いのにそれを感じさせない。マリアの気丈さゆえの行動であるがそ  
れが逆に悲しさを増長させる。  
 
「………というわけでディプロのクルーになって例の一件でクォークのリーダーにな  
るに至ったわけだけど………、フェイト?」  
 
フェイトが鎮痛な表情で黙っていたのを不思議に思い、マリアはフェイトに呼びかけ  
た。  
 
「……どうしたの?」  
 
「………ん、あぁ。マリアがそんな過去を生きてきたなんて知らなかったからさ。何  
か、こう……何て言ってあげたらいいかわからなくて」  
 
「気にすることはないわ」  
 
そう言うとマリアは微笑んでみせた。  
気にするなと言われると逆に気にしてしまう──と、フェイトは思う。  
フェイトの実の父親、ロキシ・ラインゴット博士に紋章遺伝子操作をさせられた二人  
のはこの世界で唯一境遇の近い存在だった。  
 
「こういう言い方はおかしいかもしれないけど、いろいろ話してくれてありがとう」  
 
「いいのよ。私が話したかっただけ。あなたにだけは私の過去を全部知っておいて欲  
しかったのだから」  
 
端から聞くと何だか赤面するような発言だが二人にはもっと深く……違う意味合いの  
ある発言だった。  
フェイトは真摯な表情でマリアに尋ねた。  
 
「マリア一つ聞いてもいいかい?」  
 
「何?答えられる範囲なら何でも答えるわよ」  
 
「その……、辛くない?」  
 
「辛い?」  
 
「自分の出生を探して生きる事がさ……。その原因になった人の息子である僕が言う  
のもちょっとどうかと思うけど」  
 
マリアは少し考えてから口を開いた。  
 
「自分の境遇を辛いと思ったことはあるけど自分の出生を探す事自体に辛いと思った  
ことはないわ。私は自分の意思で行動してるのだし。それに辛いと思ってたらあなた  
を探すためにこんな辺境の惑星まで来ないわよ」  
 
「そっか。マリアがそう思ってるならちょっと安心したかな」  
 
フェイトはそう言って続けた。  
 
「辛いだけならする必要の無いことだしね。それに辛いマリアなんて誰も見たくない  
しさ」  
 
「……そうね」  
 
マリアはそう言うとフェイトの手の上にそっと自分の手を重ねてきた。  
 
「マリア?」  
 
フェイトは聞き返すがマリアは何も答えない。マリアの手はフェイトより一回り小さ  
く指は華奢だが長くて綺麗だった。そして体温が伝わってくる。  
いつもと違う雰囲気のマリアの行動にフェイトは鼓動が早くなるのを感じた。  
ひょっとしたらすでに顔が赤くなっていたかもしれない。その状況に混乱してフェイ  
トは  
 
「……あ、な何だったら今度は僕が自分の過去を話そうか?」  
 
と早口にまくし立てる。  
 
「辛くないだけじゃない……」  
 
マリアの発言がフェイトの提案に対する答えになっていなかったのでフェイトは思わ  
ず聞き返した。  
 
「え……と?それってどういう……」  
 
フェイトの視界に美しい青の色が広がった。  
ここはシランドの城下町の東に位置する草むらが生い茂る場所。ここに青色を有する  
物は彼ら特有の髪色の他にならない。  
フェイトの言葉はマリアの唇によって遮られた。  
強すぎず弱すぎず適度に押し付けられる唇からはマリアの優しい香りも感じられた。  
こういうのを甘いキスと言うのかもしれない。  
どのくらいの時間唇を重ねていたのかわからないが、ふとマリアが唇を離すと思いき  
り目が合ってしまった。恥ずかしさから視線をそらすフェイトにマリアは告げる。  
 
「あなたの過去は全部知っているわ」  
 
「え?」  
 
戸惑うフェイトにマリアは悪戯っぽく笑顔を見せる。  
 
「自分の出生を知ろうと思ったら当然あなたの事も知る必要があるわ。あなたと私は  
同じ境遇なんだから」  
 
あ、それもそうかとフェイトは思う。  
 
「洗いざらい調べたからあなたの事はあなた以上に詳しいつもりよ」  
 
でもそれとさっきのキスは関係ないんじゃ?とフェイトは思う。  
だがそれに察知したようにマリアは続ける。  
 
「最初はロキシ博士の息子としてだけであなたの事を調べていたわ。だけど来る日も  
来る日も調べるうちにだんだんあなた本人に興味が出てきて好きな物は何か、とかど  
ういう性格をしてるのかとか当初の目的に全く関係ないことまで調べたわ。そして…  
……」  
 
そこまで言うとマリアは下を見て口ごもってしまった。見る見るマリアの顔が紅潮し  
ていくのがわかる。指を動かしてもじもじし始めた。  
 
「そして?」  
 
不思議に思いフェイトが先を促すとマリアは下を見ながら答える。  
 
「気付くとあ、あなたに……個人的な好意を抱いていたの。あなたの事を考えると切  
なくなって……そして夜な夜な自分で慰めてた……の…」  
 
「──────!!」  
 
消え入りそうな声で言葉を紡ぐマリアにフェイトは驚きの色を隠せなかった。いや、  
隠せという方が無理な話だ。  
これでようやくわかった。マリアが自分の出生を知るためだけにフェイトを探してい  
たのでは無いことが。フェイトに対する恋心も同直線上にあったのだ。  
しばらく混乱で黙っていたフェイトに対して不安になったのか、  
 
「……わ、私の事ひょっとして…嫌いになった……?一度も会った事の無い人のこと  
を好きになって毎夜自分を…慰めるいやらしい女は嫌……よね……」  
 
フェイトを見るマリアの目には涙がたまっていた。今にも大粒の涙が頬を伝って流れ  
ていきそうだった。その目にはいつもの強気なマリアは居なく好きな人に嫌われてい  
るかもしれないという怯えの色が映っていた。肩は小刻みに震え声も震えていた。19  
才の少女がそこにはいた。  
そしてそんな態度のマリアはただ可愛かった。  
 
フェイトは何か言わなければいけないと思ったが何の言葉も口から出てこなかった。  
言葉を失った唇をマリアの唇に押し付ける。同時に強く抱き合い唇は先程より強く接  
触した。  
────それがそのまま答えになった。  
 
周りには誰にもいない。  
二人は夢中でお互いの唇を貪りあった。舌を絡ませ唾液を絡ませ、呼吸困難になる勢  
いで行為は続く。  
キスの最中にフェイトはマリアの形の良い胸を包むように優しく愛撫する。マリアの  
感度は良く、反応すると舌の動きが止まるのでわかりやすかった。  
フェイトの手がマリアの下腹部に触れようとした時にマリアは慌ててそれを制止した。  
 
「あ、ダメ!!」  
 
そう言ったマリアとフェイトの唇は濃厚なキスのために唾液で繋がっていた。  
フェイトはマリアに止められた理由がわからなかった。今さら引き下がるわけにもい  
かない雰囲気なのはマリアにも伝わっているはずなのに。  
表情に出たのかマリアは慌てて止めた理由を話し始めた。  
 
「えっと…ダメってわけじゃなくてね、その………」  
 
また赤面した顔で消え入りそうな声でつぶやく。  
 
「……か、感じすぎちゃってるから………恥かしくって……」  
 
フェイトは頭に血が上るのを感じた。そしてそのままマリアを草むらに押し倒した。  
軽く悲鳴らしきものが聞こえたがそれには気にせずスカートの中に手を入れる。  
マリアの言ってる事はウソではなかった。下着ごしでも十分に濡れているのがすぐわ  
かった。そのまま下着ごしに秘部を刺激する。それと同時にさっきまで触っていた汗  
ばんだ胸を露出させ上を向いて硬くなった突起物を口に含んで舌の上で転がす。  
 
「んっ……あっっ!はぁぁあ」  
 
それだけでマリアは歓喜の声を上げる。  
同時に手に伝わる愛液の感触もより一層多くなるのを感じた。  
 
「んん……フェイトぉ…気持ち良い………もっと…」  
 
マリアにおねだりされなくともフェイトの愛撫のペースは加速していく。  
切なげな息を漏らすマリアの声が響く。  
そんなに長い時間ではなかったが下着ごしに愛撫していたため下着にはシミと言うに  
はあまりに大きいものを作っていた。そのため秘部は透けて見えていてもはや下着は  
本来の役割を何一つ果たさなくなっていた。  
フェイトがその下着だったものを剥ぎ取ると下着にべっとりと付着した愛液が幾筋も  
の糸を引いた。愛液の何ともいえない匂いが鼻腔をくすぐる。それがさらにフェイト  
の性欲を高めていった。  
下着を足首くらいまで下げるとフェイトは秘部に顔を近づけ愛液をすくい取るように  
舌で刺激する。  
 
「あぁっ!はぁぁあぁんっ……」  
 
マリアは身体を仰け反らせながら快感に身を委ねる。  
快感を受け続けたマリアの身体はもう限界に近づいていた。  
そしてそれはフェイトも同じだった。  
 
「マリア……挿入るよ?」  
 
「うん、いいよ。来て……」  
 
マリアは夢にまで見た瞬間が来たことに喜びを隠しきれなかった。好きな人と身体を  
重ねることがどのくらい気持ちの良いものなのかは知らなかったが今それは容易に想  
像できる範疇にあった。そして実現するのだ。  
 
フェイトは自分のはちきれんばかりに硬くなったモノをマリアの濡れそぼったモノに  
あてがう。  
少し腰を動かしただけでいとも簡単にフェイトの陰茎は全てマリアの中に飲み込まれ  
た。いや、マリアが自分で腰を動かしたためかもしれない。  
もう二人に言葉はいらなかった。  
 
ただお互いに快感を貪るというひどく原始的で本能的な行為。腰を動かしくねらせ、  
舌を絡ませ、乳房を弄ぶ。漏れる快感に満ちた艶声、性器が擦れるたびに溢れる愛液  
と淫靡な音。自分の上で汗だくになり真剣な眼差しで必死に腰を振っている愛する人  
。その全てがマリアに至福の時間をもたらした。  
そして至福の時間も終わりを告げようとしていた。  
 
合図はフェイトからだった。  
明らかに腰を振るスピードが増加した。頂上に到着しようとしているのがわかる。  
 
「……くっ、はぁ、ハァ…マ……マリア……イクよ?」  
 
「あっあぁぁっん!…い……私も…あぁっ!…イキ…そ……んんっ…」  
 
先に到達したのはマリアの方だった。一瞬遅れてフェイトが自身の絶頂の証をマリア  
の中に注ぎ込んだ。  
 
二人は息も絶え絶えで繋がったままの状態で抱き合っていた。  
やがて息が整うとフェイトはマリアの中から出ようとするがマリアがそれを制止する。 
もうちょっとこのままでいたいというマリアの提案を素直に受け入れフェイトは軽  
く接吻する。それは今までのどんなキスとも違っていた。後日談によると幸せの味が  
するキスだったらしい。マリアは嬉しくて涙を流した。綺麗な涙だった。  
二人の初Hが青姦というのはどうかと思うが幸せになれたのは不変の事実だった。  
 
 
やがてシーハーツ兵が二人を探して呼びに来た。  
 
「こんな所にいらしたのですか。陛下やみなさんがお待ちです」  
 
「わかったわ」  
 
マリアとフェイトは立ち上がる。もちろん服はちゃんと着ていたしいつもと変わらな  
い平然とした態度を取っていた。二人の関係を黙っている理由も特に無いが今はまだ  
伏せておこうというマリアの提案だ。  
 
「さぁ、行きましょう」  
 
そう言ってマリアはフェイトに笑顔を見せた。  
何事も無かったかのように前を歩き出すマリア。  
 
後に二人の関係が原因でこの笑顔が翳る日が来るなんて知らずに……。  
 
 

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