「うぇ−ん」
聖王都シランドの一角、銀髪の幼子がしゃがみ込んで涙ぐんでいる。
「なんだよ、クレア、おまえ泣き虫だなぁ〜」
「お父さんが偉いって言うけど俺たち見たこと無いぞ」
クレアと呼ばれた少女の周りを同年代の男の子が数人取り囲んでいる。
「ホントだぜ、おまえの親爺そんなに強いのかよ!」
一人の少年がクレアの頭を小突く。
「ふえぇーん、お父さ〜ん!」
クレアはとうとう大声で泣き出してしまった。
「おい、なかしちゃったぞ」
「構うもんか…、あれ?」
その時、地面が地響きを上げ始めた!
「こぉ〜らぁあ〜!!」
砂煙を上げて男が突進してくる。
「おい、なんだよ!?」
「うわ、なんか来る!」
そうこうしている内に男が少年達の前に立ちはだかった。
「わしの娘を泣かしたのは、誰だぁ〜!!」
「お、おじさん、誰だよ?」
「わしか?わしはアドレー・ラーズバード、この子の父親だ!!おまえらかわしの娘を泣かしたのは!」
「僕じゃ無いよ!」
「俺でもないぞ!」
少年二人はそう言ってそそくさと逃げ出してしまった。残されたのはクレアを小突いた少年一人。
「さてはおぬしか?」
アドレーににらみ付けられたクレアを小突いたは完全に青ざめてしまった。
「う、えぐ、ごめんなさぁ〜い」
少年は半泣きになって逃げ出してしまった。
少年達が逃げ出した後、アドレーは泣きじゃくっていたクレアを抱き上げた。
「よ〜し、もう大丈夫だよ〜」
今までとは桁違いのでれでれの様子のアドレー。
「あれ、お父さん?」
「そうだよ〜パパですよぉ〜。クレアを泣かす悪い子はパパが退治してあげましたよ〜」
「ありがとう、お父さん!」
クレアに抱きつかれますますでれでれするアドレー、クリムゾンブレイドの威厳もへったくれもない状態である。
これはクレア・ラーズバードがクリムゾンブレイドになる遙か昔の話である。
〜END〜