木の枠がはまった四角い窓、カーテン越しに月の青白い光が部屋の中へと差し込む。  
ランプ黄色い光が向かい合った二人の姿をセピア色に照らし出す。  
月の光とランプの光が溶け合って彼等二人の周囲を柔らかく包んでいる。  
「アシュトン……。」  
女の藤色の髪が光に透けてぼんやりと白く輝く。  
「セリーヌ……。」  
青年の潤んだ目、その中にある瞳の中には女の姿。肩を、そして項の上を、彼自身の唐茶色の髪が伝う。  
ランプの火の燃える音と匂いが部屋の中に満ち溢れる。女は青年の髪の動き、そして表情をうかがうように  
じっと彼の顔を見つめた。見つめられた男は頬を赤く染め下を向き、白いシーツを強く掴んでいる。  
ランプの炎の中に小さな虫が飛び込んだ。虫の焼ける音が僅かに響く。  
青年は唇を固く一文字に結び顔を前方に向け、女の服に手をかける。  
元々、露出度の高いワンピースの胸元は彼にも容易に脱がす事ができた。  
続いて青年は女の下着を外そうとするが、手が震えてなかなか上手く外せない。  
彼は早る持ちを抑えもう一度下着を脱がそうとするが、いっこうに上手くいかない。  
 
 
「アシュトン……わたくしも……。」  
女の桃色に色づいた指先が青年の股間にふれた。大きく膨らんだペニスを布越しになぞる。  
黒い布と布の間に挟みこまれた金色のジッパーを彼女は下に下ろし、青年のペニスをずるりと取り出す。  
「アシュトンのモノ、こんなに大きくなってすわ……。」  
楽しげに青年のペニスを撫でる女、長く、しかし清潔に整えられた爪がペニスの先端を軽く引っ掻いた。  
「あ……。」  
衣擦れの音、青年が女の手から逃れるように腰を退く。  
 
女の下着が外れた、女の乳房が露になる。  
光に照らされ闇に浮かぶなめらなクリーム色の肌。その肌におちる成熟しきった女性特有の影。  
大きく丸く豊かに膨らんだ乳房、ツンと尖った薄桃色の乳首。髪と同じ藤色の睫毛に彩られた、淡い紫色の瞳が  
目の前に座っている男の顔を覗き込む。真紅のルージュを履いた唇が震えて言葉を発する。  
「アシュトンはわたくしでは嫌ですの?」  
「そ、そんな事ないけど……。」  
桃色の指先が青年のペニスを再び楽しげにつつく。  
血管の浮いた浅黒いそれが僅かに揺れる、少しばかり皮の被った亀頭が光に照らされ光る。  
そのペニスとは不釣合いな、まだ少しばかりの幼さを残している青年の肩が震えた。  
ますます赤く染まる彼の頬。肩と同じように震えるベージュがかった唇が小さな声で何かを呟く。  
その言葉を聞き女が優しく微笑んだ。赤い唇がペニスに軽く触れる。  
「……じゃあ私からやってあげますわ。」  
「初めてじゃありませんもの……。」  
 
 
青年の頭が揺れ。彼の顔が僅かに歪む。  
「……誰と?」  
女は体を起こし、その瞳で青年の瞳を捕らえた。一瞬の沈黙。  
彼女はすぐに青年の股座に傅き、まじまじと眼前にある男の象徴を見つめた。  
「秘密、ですわ。」  
暖かな風にペニスを擽られて、そのペニスの持ち主が喘ぎ声をあげ軽く体を捻る。  
その反応が面白かったのだろう。薄く微笑み赤い唇を尖らせ息を強く吹きかける女、その愛撫に青年は喘ぎ、足を震わす。  
女がペニスの先端を口に含んだ、見る間に熱い口中に浅黒いペニスが飲み込まれてゆく。  
舌がぬるぬるとペニスの表面を這い、女自身の性器のように柔らかに熟れた喉がねっとりと亀頭を抱擁する。  
青年が女の名を呼びながら喘ぐ。女はその反応に歓喜し、ペニスへの愛撫を強くした。  
 
性器をくわえ込んだまま激しく上下する頭部。藤色の髪が跳ねる。  
冬の残り香だろうか、ひんやりと冷たい風が彼等二人の体を撫ぜていった。  
「あ…ああー……で、出るっ……。」  
青年の腰が痙攣する。真紅に塗られた唇の端から白く粘度の高い粘液が、ペニスに押し出され音を立てながら漏れて出る。  
女の白い喉がこくり鳴り上下した、男の出したザーメンを飲み込んだのだ。  
指先で自らの顔を撫で漏れた精液を女はかき集める女。彼女は精液にまみれた指を口に含み、再びそれ味わう。  
口角を上に上げ、口元に笑み形を作っている彼女の表情は、熱を帯び恍惚としていた。  
 
 
「貴方の……苦くて、濃くて……すごく美味しいわ……。」  
「少し別けてあげますわね……。」  
丸く、不自然に赤い唇が、青年の柔らかな唇に吸い付く。  
口紅の匂いと味、はりのある唇、初めて味わう女のの体温、青年にはそれが酷く心地よかった。  
栗の花の匂いと熱に満ちた口内から、初めての刺激に興奮し、熱くなった口内に精液が注ぎ込まれる。  
精液を全て注ぎ込んだ後、更に熱くなった口内に舌を滑り込ませ、頭部の角度を変え女は青年に熱いキスを送る。  
青年は目を閉じ、女にただされるがままになっていた。  
ランプの炎の中に二匹目の虫が飛び込んだ、大きな蛾だ。  
音を立て、もがきながらそのグロテスクな羽から炎をあげ、どんどんと燃えてゆく。  
 
 
女の唇が青年の唇から離れる。  
注ぎ込まれた自らの種を吐き出そうと青年は口に手を当て下を向くが、女の言葉がそれを制す。  
「飲みませんの?」  
「飲んでくださいな、アシュトンのものですもの。」  
閉じた目の縁から涙が零れ落ち、青年の喉が鳴った。  
「誰に……教えられたのさ、こんなの……。」  
炎の中に飛び込んだ蛾の動きが止まる、絶命したのだ。しかし絶命してもなおその体は燃える事を止めない。  
 
「そんな事は、どうでもいい事じゃなくて……?」  
「それより、アシュトン、わたくしのも……舐めてくださいな……。」  
女が青年の腕を掴み、青年の手を自身の股間に導く。  
流石に恥ずかしいのだろうか、女はうつむき腿と腿を擦りあわせる。  
彼女の股間にはなぜか大きな膨らみがあった。その大きな誇張を青年が指で触る、驚きと何かに歪む顔。  
彼は慌てて、確かめるようにさらに女の股間をまさぐるが、事実は変わらずにそこに存在を示す。  
「……男だったのかい?」  
女が青年の疑問に答える。  
「違いますわ。」  
「わたくし、両性具有ですの……。」  
「……女のもついていますから、安心なさってくださいな。」  
紫色のスカートが女の手によりたくし上げられ、複雑な皺を帯びる。  
そして白いパンティが下ろされ、女の恥部が露になった。  
弾力があり、僅かに盛り上がっているそこには藤色の恥毛が霧のように茂っている。  
 
 
成熟した腰、夜の光に照らされてその中心に浮かび上がるのは、青年のそれよりも遥かに巨大なペニス。  
自分のペニスを思い出してか、青年は苦々しい表情を浮かべる。  
右手で自身のペニスの先端を持ち、青年の頭を自らの股間に引き寄せ、  
女は青年に無言で己のものを口に含み、愛撫するように促した。  
鼻先に男性器を突きつけられ青くなった青年は、横を向き拒否の意志をしめすが、  
女は先走りによって濡れぬらぬらと光る不健康な紫色のペニスの先端を、青年の唇に擦りつける。  
亀頭と唇がふれ、擦れて、唇が歪に形を変える。先端から出る先走りが唇を濡らす。  
青年が観念したように前を向き、女のペニスを口いっぱいに頬張った。  
アンモニア臭と僅かな塩気が口中に広がって、彼の意識に生々しい感覚を与える。  
 
先ほどまで女の温もりさえ知らなかった唇が、ペニスの側面の自らの意思で這う。  
そしてその巨大な一物を唇の輪の中に、ゆっくりとではあるが受け入れてゆく。  
1p、2pと、女のペニスが青年の口中へ沈んでゆくその光景は、奇妙でこの上もなく淫靡だ。  
女が腰をグッと前に突き出す。  
巨大なペニスが一気に奥まで突きこまれ、予想していなかった刺激に青年は驚いた。  
「もっと……もっとしてぇ……。」  
「ああ……ああん……気持ちいいですわぁ……。」  
彼は馴れない行為に困惑し。その感覚の不快感に目じりから、そして口の端から体液を垂れ流しえずくが。  
女はそんな事にはお構い無しにただ顔を赤らめ荒く息をつき、快楽に酔いしれていた。  
 
 
女の股間に付いた男根が、青年の喉を乱暴に突く。  
退いて突かれるたびに男根と唇の間から流される、青年が飲み込みきれなかった唾液。  
そんなふうにされながらも、なお女の性器を傷つけまいと青年は必死で口を大きく開くが乱暴な注挿には耐えられず、  
えずくと同時に口を閉じ何度も軽く噛み付いていた。  
 
 
脆弱な粘膜を引っ掻き回す音、荒い息遣い、快感と苦しみの呻き声。  
そして衣擦れの音が部屋の中に月の光、炎の光と共に満ち溢れる。  
女が目を伏せペニスに与えられる快感に完全に没頭しはじめた、その表情からは絶頂が近い事が伺える。  
女は青年の喉にペニスを今までに無いほどに深く突きたてる。そして前後に何度も腰をスライドさせた。  
丸く膨らんだ、成熟しきった尻が震える。  
「あ……は、んんっ……出しますわよっ……。」  
その宣言と共に、筒先から精液が発射された。  
青年の口の端からは彼の唾液と女の精液が混ぜ合わされたものが、  
口内の空気と共に圧力によって押し出され、流れ落ち、彼自身の首筋を汚す。  
また、喉の奥に向けて直接発射されたそれは、漏れて出ると同時に喉の奥に絡みつき、彼を苛んでいた。  
 
跳ねる紫のマント、揺れる背中。壁に映る影は口元に手をあて、その背を苦しげに上下させていた。  
咳き込む青年とはうって変わって、女はだらしなく口を開いて白目をむき、快楽の余韻に浸っている。  
窓の外の月が分厚い雲の後ろに隠れる。  
 
月の光は薄くなり、やがて消え。2人を照らす光は赤い炎の光だけとなり、その光は彼等の影を更に色濃く壁に投影させた。  
快楽の余韻から脱して、顔に僅かに理性を取り戻した女が動く。  
「アシュトン、今度はお尻を出してくださいな。」  
青年はコクリと頷いて立ち上がった、黒いズボンと下着が絡み合い、トサリと音をたて床の上に落ちる。  
彼は咳き込み、目に涙を溜めながらも立ち上がって、女の指示に大人しく従ったのだ。  
 
 
ベッドの軋む音、ふたたびベッドの上に向かい合って座る二人。  
白く濡れた青年の顎と頬の上を女の指先が這う、その指先が己の出した精液をかき集め、掬いとってゆく。  
「足を開いて……。」  
その言葉に青年は顔を真っ赤に紅葉させ、何度も頭を左右にふり拒否の意を示した。  
「ここを……。」  
長く伸ばされた女の爪の先が青年のペニスの裏筋を撫でる。  
「舐めあった仲ですのに、足を開くのが恥ずかしいんですの?」  
「……男らしくありませんわね。」  
未だに少し白く濡れた唇が開く。  
「男らしいとか、男らしくないとかそんなの関係無いよ……。」  
赤いルージュが僅かに残った唇が不機嫌に歪む。  
 
 
「……うるさいですわね、無駄な事を言っている暇があったら足を開きなさい。」  
「早くわたくしの言う事に従わないと……。」  
女は獣のように這い、華奢な手を自らの股間に伸ばした。  
そして巨大なペニスの後ろに息づく慎ましやかな花びらと膣口にふれ、内部に指先を挿入する。  
中へ入ったそれは右へ左へ下へ上へと動き、愛液の分泌を促し、また愛液そのものを掻き出した。  
花の奥の蜜壷から溢れる透明な液体が、白いシーツに垂れ、強烈な牝の匂いをあたりに漂わせる。  
指先を膣から抜き、愛液によって濡れそぼったそれを女は男の前に突きつけ、目を細めてこう言った。  
「お預けになりますわよ?」  
 
青年がコクンと音をたて唾液を飲み込む。  
性体験が浅い彼にとって、女の発する牝の匂いはあまりに強烈なものだった。  
彼の中で一気に女と交わりたいという欲望が高まる。  
牝の匂いとあまりに魅惑的な光景に惑わされ、彼は躊躇いながらも大きく足を開く。  
女が待ちきれないというふうに、まだ開ききっていない青年の足の間に体をすべりこませ、  
良く引き締まった尻の谷間の奥にある窄まりに、己の愛液と精液、青年の唾液が混じったものを執拗に塗りこみ始める。  
 
 
「そ、そんな事までしなくてもいいよ……。」  
青年は女の行動に困惑し、手を額へ、頬へ、女の肩へと所在なさげに動かすが。  
そんな彼の言動を歯牙にも掛けず、女は熱心に彼のアヌスを刺激していた。  
マッサージの効果か、だんだんと青年の肛門が緩んでくる。青年は排泄口が緩む奇妙な感覚に戸惑い、息をはく。  
その時を狙ったかのようにべとべととした液体でぬめった指先が、青年の肛門の中へぬるりと滑り込んだ。  
細くいものではあるが、出すべき所に異物が侵入する感触に。  
彼は首を軽くふりいやいやをし、女の肩を掴みその感触の原因である女を、自分の体から引き剥がそうとする。  
だが彼女は微動だにしない。  
初めての快楽を味わった直後のため、青年の手に力が入っていない。いや、力が入らないのだ。  
 
 
硬い肉の通路の中で、女の指が上へ下へと曲げられて、暴れている。  
女が二本目の指を挿しいれた。  
塗りつけられた液体でべとべとと滑り、僅かに緩んだ青年の穴はそれほどの抵抗もなくその指を受け入れる。  
以前得た知識と直感で、これから女に何をされるのかぼんやりとだが察しはじめた青年は、  
目を大きく見開き頬を引きつらせ女から逃れようとする。  
しかし、女は青年の腰を左の腕で抱えこみ彼が逃げる事を許さない。  
「もういい……もういいから……。」  
奇妙な感覚と恐怖にうち震えながら、そう呟く青年の上に彼の穴の愛撫をやめた女が伸し掛かった。  
 
「……先ほどから何を勘違いしていますの?」  
巨大なペニスの先端が青年の予想のとおり、彼のアナルにふれ固く閉まった肛門を一気に突き破り、  
締まる…否、硬いだけの肉の通路を突き進む。  
青年は仰け反り震えて、涙をあたりに撒き散らす。  
「こんなに狭いんですもの、慣らさないと硬くて使えたものじゃありませんわ。」  
巨大で醜悪なそれが鬼頭だけを内部に残し、青年のアナルから引き抜かれる。  
自分を犯す巨大な異物が内部から無くなり、青年が安堵する。  
しかしそれももつかの間、抜かれたそれは彼が息をつく暇すら与える事無く、また一気につき込まれた。  
 
 
相手に一欠けらも快楽を与えようとしないその交わりは、もはや性行などではなくただの原始的な儀式だった。  
女は引いて、突き出す。ただそれだけの作業を何度も繰り返し、青年に快楽の欠片も与えず、苦痛のみを与え。  
自らの快楽を追い求めている。  
汗でしっとりと湿った肌と肌が激しくぶつかり合う音がする。  
何度も中に巻き込まれ、引きずり出された粘膜は血を流し、だんだんと無残にはれ上がってゆく。  
 
 
「少しきつすぎますわね……。」  
粘膜がはれた事により、よりきつく直腸がペニスを抱擁するようになったのだろう。あまりの狭さに女が顔をしかめる。  
「アシュトン、力をお抜きなさい。」  
青年は少しでも痛みを紛らわせようと、腰を何度も跳ねさせ、体を揺すり歯を食いしばるだけで女の言葉に従おうとはしない。  
「しょうがないですわね……。」  
彼女は周囲を見回し、何か使えそうなものを探した。  
(……あれがちょうどいいですわ。)  
女がベッドの横にある木製の棚の上に手を伸ばし、きらきらと鋭く光る何かを手に取る。  
それは刃渡り30センチほどの短剣だった。  
戦士である青年の持ち物だけあってそれはよく手入れされており。  
刃の部分は限りなく薄く、見るからに切断性に長けている。  
 
「……大人しく言う事を聞かない貴方が悪いんですのよ?」  
青年の喉にナイフが振り下ろされた。青年は殺気を感じ  
迫る刃先から逃れようと咄嗟に頭を右へと移動させるが、もう遅すぎた。  
トスッという軽快な音をたて、青年の喉に短剣が突き刺さる。  
青年は目を見開き一度大きく痙攣した、生物特有の生臭さを帯びた鉄の味が彼の口一杯に広がった。  
喉を、そして首を徐々に切り開き、やがて貫通したそれは青年の頭の下の布団に食い込み、彼の首をベッドの上へ繋ぎとめる。  
 
 
喉元に空いた新たな穴と口から、生暖かい血が流れ出し、白いシーツと頬を鮮血に染めあげる。  
青年の目からは大粒の涙が流れ出しているが、その瞳に宿る光は虚ろだ。  
「ごふっ……げ……ゼ……ゼリー……ヌ゛……。」  
青年は彼女の白い肌を掻き毟るが、その指先にはほんの少しの力が宿っているだけだった。  
その僅かな力も、少しずつ無くなってゆく。混乱と絶望の色を、色濃く浮かべた表情はやがて諦めの表情に変わった。  
完全に指先から力が抜け、腕が胴体の横に力無く落ちる。腕や手と同じく肛門と直腸も徐々に力を失い緩んでくる。  
「……心配しなくてもいいですわ、後でリザレクトボトルで生き返らせてあげますわよ。」  
女はそう呟き、また注挿を開始した。今や力を失い、ただ女の動きに合わせて、揺れるだけの青年の腰。  
血の匂いと色に混じりあい、藤色の髪と白い尻が炎の光に照らされて怪しく揺れる。  
柔らかくほぐれ、しかし狭く、今だ熱く熱を持った直腸の中を女の剛直が何度も何度も行き来した。  
青年の身体が熱を失い冷たくなりはじめたその頃。女がだらしなく口を開き、天井を仰ぎ見て、吠える。  
「あ……ああっ!」  
彼女は冷たく冷えた青年の内部に、熱くたぎった欲望を吐き出したのだ。  
 
アナルからペニスを引き抜き、ベッドの上から降り、女が立ち上がった。  
そして青年の荷物が入った袋に手をかけ、内部を探る。  
中から出てくるのは万能包丁に薬草、時計、地図、通行証……彼女が探しているものとはまったく別のものばかりだった。  
「おかしいですわね……。」  
「……持っていないはずはありませんのに。」  
女は青年の鞄の更に奥深くを探る。様々な物を横によせ何かを探す彼女の手に、ふと一本のピンク色のボトルが握られた。  
瓶は桃色が主な色でありながらも、白が所々に落とされて斑になっており、  
その奇妙な色彩の瓶の中には液体がなみなみと注がれていた。  
光に透かすと揺らめいている様が見てとれる液体の色は、ボトルを光に透かし窺い知ろうとしても  
強い瓶の色に隠されていてどんな色かはわからない。  
 
 
「……ありましたわ!」  
それはリザレクトボトル。瓶の中で揺らめいている液体は、死者を蘇らす薬である。  
「ふふ……これからアシュトンにはしっかりと動いてもらわないといけませんものね。」  
青年の喉に突き刺さった短剣がずるりと引き抜かれた。  
先ほどまで生きていた人間の内部に埋まっていた刀身には、僅かに命の暖かさが乗り移っている。  
白と桃色が斑になって怪しい色味を持った瓶の口から、青年の引き裂かれた喉に薬が1滴2敵と垂らされる。  
薬は赤い肉と肉の間に入り込み、じゅうじゅう音をたてて傷口を焼いた。  
肉が焼ける匂いと一緒に白い煙が立ち昇り、みるみるうちに傷口が塞がってゆく。  
生気を失った青年の瞳がふたたびその輝きを取り戻す。  
彼が目を覚ました瞬間目の前にあったのは、一度彼を殺した女の髪であった。  
 
「う……うわっ!」  
恐怖に戦き、体を起こし思わず後退る男。「あら……酷いですわねせっかく生き返らせてあげましたのに。」  
女はそう言いながら男の萎え、縮こまったペニスを掴んで弄ぶ。  
「お待ちかねですわね……、わたくしの中に入れさせてあげますわよ。」  
「……今日はもう良いよ。」  
青年は女の体から目を反らし、女の申し出を拒否する。  
彼のペニスは女の柔らかな手がいくら愛撫しようとも、硬く立ち上がろうとしない。  
女が先ほど彼にした行為を思えば、それは至極当然の反応ではある。  
しかし、青年のそんな態度が女の神経を逆撫でしたようだ。女が強行手段に出る。  
「……そう……ですの。なら勝手にやらせてもらいますわよ。」  
彼女は大唇陰の間にペニスを挟みこみ、尻を上下に動かして青年の一物を勃起させようとするが  
いっこうにペニスは勃起せず、それは女と青年の性器を濡らすだけの結果と終わった。  
その反応に苛ついた女は、まだ勃起していないペニスを膣口に宛がい、無理矢理にそれを膣の内へと取り込んだ。  
「う……うあ……。」  
熱く柔らかで、凹凸に富んだ潤った肉壁は、女が少し腰をおろすごとに青年のペニスをかきむしる。  
青年の頭が女の胸元に引き寄せられ、丸い二つの乳房の間に収められた。  
甘い香水と汗の匂いが青年の鼻腔を擽り、白い肌が青年の体を熱くした。女の中で青年のペニスが大きく膨れ上がる。  
「まあ……元気ですわね。」  
そう嬉しげに顔を綻ばす女の指先が2人の結合部をゆっくりと撫で、彼女の口が青年に囁きかける。  
「わたくしのここ……貴方の好きなようにかき回してもよろしいんですのよ?」  
 
 
青年は誘導されるがままに、女の上に乗った。  
女に尻を撫でられ、密かに要求されて、それに従い欲望のままに彼は激しく腰を振りたてる。  
青年と女の恍惚とした表情、断続的に響くベッドの軋む音。  
硬くなったペニスに最奥を一突きされるごとに揺れる女の乳房、それを青年が掴み、揉む。  
「ああっ……アシュトン、お上手ですわあ……。」  
女が片足を高くあげ、犬が用を足す時のような姿勢を取る。  
青年の腕が女の膝を抱え、2人はそのままの姿勢で激しく交わり続ける。  
 
暖かく湿りけを帯びた風が、女の首筋にふりかかった。赤い舌先が僅かに湿ったそこを、何度も丁重に往復する。  
女の手がベッドの上から外れて、自らのペニスに伸びる。  
彼女の腕の力によって支えられていた、青年と彼女自身の上半身は、白いシーツの上に音をたてて崩れ落ちた。  
女性器からあふれ出る自らの愛液を、自らの男性器に塗りつけ、それを潤滑油にし  
血管が浮かび上がったそれの筋を上へ下へと女は擦る。  
結合部からは大量の蜜がいよいよ溢れ出し、少しずつではあるが確実にその下の布を濡らす。  
絶頂が近いのだろうか、女は尿道に爪を食い込ませ、刺激し、一気に己を絶頂を導こうとしていた。  
 
 
「イくっ……イっちゃいますわあっ!」  
ペニスの先端から精液が飛び出ると同時に、膣口から大量の蜜が溢れ出す。  
「セリーヌ……僕もっ……。」  
絶頂に達し痙攣する肉壁にペニスを絞られて、青年も女とほぼ同時に吐精した。  
「あ……あはっ……んっ……。」  
「……。」  
2人は荒く息をつき、重なり合って動かない。  
そうして暫くの間、お互いの高まった体温を楽しむかのように体を僅かに動かしながらもただ、重なっていた。  
女が突如何かを思い出したかのように、むくりと起き上がり、青年の頭上で足をM字に開脚して座る。  
「アシュトン……。」  
ごぷりと音をたて、ぽっかりと開いた穴から精液が漏れる。  
女はその自らの股間の穴を人差し指と中指を使って広げ、精液が溢れる様をまざまざと青年に見せ付けている。  
「中に出してしてしまいましたのね……。」  
愛液と精液が混ざり合った匂いが、ツンと青年の鼻に響く。  
生臭い性の匂いを嗅ぎ、いやらしく痙攣する膣口から精液が流れる、そんな光景をみた青年の性器は  
ふたたび勢いを取り戻し、昂ぶった。  
彼は先ほどのように女の上に乗ろうとするが、女は軽い身のこなしでひらりとそれをかわす。  
 
「わたくし、今日は疲れましたの。」  
「続きはまた今度、という事でよろしいですわよね?」  
女は胸元と腰の部分が肌蹴たワンピースを直し、唯一脱ぎ捨てた己の下着掴み着用した。  
「え……あの……。」  
まだ名残惜しいというふうに女の腕を掴み、彼女を引きとめようとする青年。  
「……よろしいですわよね?」  
彼は女の笑ってはいるものの、どこか恐ろしいその表情を見て項垂れた。  
「はい……。」  
木製の扉が開く、女が藤色の髪を靡かせて青年の部屋の中から出てゆく。  
白い肌と赤い唇、藤色の髪を持った女が出て行った後、そこに残ったのはまだ冷め切らぬ欲望に身を焦がしすすり泣く、青年の姿のみだった。  
彼の小さな泣き声は何分も、何十分も……ついには夜が明けるまで続いた。  
 
 
鳥の鳴き声、朝特有の何にも汚されていない白い光。  
それらに包まれて青い髪の少女が、昨日激しく情交が交わされた部屋の前に立つ。  
少女は何度も何度も青年の名を呼ぶが、青年からの答えはない。  
彼女は扉のノブに手をかける、鍵を欠け忘れたのだろう、扉はあっさりと開いた。  
男女が交わった後特有の据えた匂いと、血の匂いが少女の鼻を刺す。  
彼女が真っ白なはずのベッドの上に見たものは……、  
下半身を丸出しにして、血に濡れたベッドの上で死んだように眠る青年の姿であった。  
「きゃ……きゃああああー!」  
甲高い悲鳴が響き渡る。何事かと部屋の中から駆け出してくる少女と青年の仲間達。  
その中の一人の藤色の髪の女が部屋の中を覗き込み、顔を歪ませ額に手をあてた。  
それは不幸な青年の特別に不幸な一日の始まりだった。  
 

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