ここは、シランド城の一室。  
「うーん…」  
ソフィアが頭を抱えている。  
「どうしたんだよ、ソフィア?」  
フェイトが気になって声をかけた。  
「あ、フェイト、実はねロメリア陛下の事なんだけどね…」  
「女王様がどうかしたのか?」  
フェイトが尋ねる。  
「陛下、ものすごく若いよね、だからあれだけの美貌をどうやったら保てるのかなぁ〜って思ったの」  
 
ソフィアの言葉にフェイトも<なるほど>と思ってしまった。  
女性にとって美を保つことは永遠の課題である。ソフィアが興味を持つのも無理無かった。  
「お休みのところすまないね」  
そこへネルがやってきた。  
「あ、ネルさん、女王陛下のお歳ってご存じないですか?」  
ちょうどいいとばかりにソフィアが尋ねた。  
「陛下のお歳?ソフィア、それは愚問ってもんだよ」  
ネルがソフィアを諭した。  
「愚問?、でも歳が判らないとお祝いとかも出来ないですよ?」  
「そうですよ、何で愚問なんですか?」  
ソフィアとフェイトが問いただす。  
 
「陛下はね、お祝いとかなさらないんだよ。とにかくこの話は無しだよ!」  
怒ったネルは話を無理矢理打ち切ってしまった。  
そんな三人のやりとりを部屋の外で聞いていた小さな影。  
「これは、面白そうじゃん。メラ凄いひみつがあるのかも!」  
そして女王の謁見の間。玉座に女王ロメリアが座し、側近のラッセルが脇を固めていた。  
「ロメリア陛下さまぁ〜」  
そこへやってきたのはロジャーだった。  
 
「ロジャー殿、他のお仲間は?先ほどネルを呼びに使わせましたが?」  
女王が尋ねる。  
「え?まぁ後で来ると思うじゃん。ところで陛下、ものすご〜く聞きたい事があるのですけど、よろしいですか?」  
「こら、小僧、陛下に軽々しく口をきくでない!」  
いつものお約束でラッセルがたしなめる。  
「黙りなさい、ラッセル!」  
「しかし、陛下…」  
「黙りなさいといっています!で、ロジャー殿、私に聞きたいこととはなんですか?」  
そんなラッセルを女王がしかりつけ、話を続ける。  
 
「では、ビームライフル反応炉直撃に、陛下はおいくつなのですか?」  
その言葉を聞いてラッセルが青ざめた。一方のロメリアは一見何ともないようにしている。  
「何故、聞きたがるのですか?」  
「だって、女王様のお歳はメラ凄い秘密らしいから、それを知れた俺はメラ凄い男って事になるじゃん!」  
「そうですか…」  
女王がゆっくりと立ち上がる。  
「では、教えましょう…私の歳は『ピー(自主規制)歳』なのです」  
「え?ピー(自主規制)歳?ってことは陛下、おばさんじゃん!!」  
その言葉にラッセルは青ざめた。そして女王の眉がピクリと動いたことにロジャーは気づかなかった。  
 
「これはメラ凄いことじゃん!陛下がピー(自主規制)歳だったなんて、凄いことじゃん!!」  
凄い秘密を知ったと小躍りするロジャー。  
「ロジャー殿」  
意気揚々だったロジャーが女王に呼び止められて目にしたのは自分に迫り来る木目模様だった。  
「なんです陛…ゴフッ!!」  
鈍い音と共にロジャーは亜音速で吹き飛ばされた。窓ガラスを突き破り一点の光となるロジャー。  
そして女王の手にはどこから持ってきたのだろうか大きな角材が握られていた。  
 
「…ラッセル」  
静かに呼びかける女王。  
「は、はい、陛下!!」  
「ラッセル、あなたは何も見ていません…。よろしいですね?」  
怖い笑顔で部下を見つめる女王。  
「あ…」  
事態の展開に唖然としていたが為に言葉を詰まらせるラッセル。  
「ラッセル!!」  
そして鬼のような形相でラッセルを怒鳴りつけるロメリア。  
「あ、は、ハイ!!わ、私は何も見ておりません…!」  
ふるえる体を必死に堪えて返事を返すラッセル。  
 
だが一連の様子を目撃していたものがいた。フェイト、ネル、ソフィアの三人である。  
女王に呼ばれて謁見の間の前まできて惨劇を目撃してしまったのだ。  
三人とも謁見の間から離れた一室に身を隠していたのだ。  
「…ネルさん、あれってどういう事ですか?」  
すっかり顔が青ざめたソフィアが尋ねた。  
「…陛下はね、自分のお歳を聞かれるのがものすごく嫌なのさ。しかもロジャーの馬鹿『おばさん』だなんて言うもんだから…」  
言葉を返すネルも額に冷や汗をかいている。  
「ネルさん、大丈夫ですか?」  
フェイトが尋ねる。彼もまたロメリア陛下の行いを目撃しすっかり青ざめていた。  
 
「ああ、大丈夫さ。陛下のお歳を聞くことはタブーと聞いていたけど、まさかああなるとはね…」  
自分の仕える女王の別の一面を知り、さすがのネルも動揺を隠せなかった。  
「少し落ち着いたら陛下のところに行こう。変な行動をとると怪しまれるからね…」  
フェイトのその言葉に深くうなずくソフィアとネル。  
その後ロメリアと謁見したフェイト達。ロジャーがいないことを不思議がるマリアとクリフに対し、知らぬ存ぜぬを切り通した三人だった。  
その後ロジャーはペターニ南部に着弾しているのが発見された。幸い軽傷ですんだ上、何故そうなったかも記憶を失っていたため  
フェイトとソフィア、ネルの三人は胸をなで下ろした。  
 
以後、ロメリア女王の歳については誰も口に出さなかったという…。  
−END− 

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