カーテンを閉め切った薄暗い寝室で、マリアはため息をつく。先ほどから子  
供のはしゃぐ声が煩わしい。  
 すぐ隣はアーリグリフ三軍の一つ「風雷」の駐屯地、騒がしくて不思議はな  
いが、最近ではエクスキューショナーへの対応で、大方の騎士は出払っていて  
静かなものだ。そんな中で子供の声は甲高く、カンに障るのだった。  
 カーテンを引き、窓を開く。人影もまばらな訓練場で、ルムに騎乗したスフ  
レが駆け回っていた。  
「ソロンちゃんストーップ」  
 ルムが四肢を揃えて停まる。  
「駆歩、進め!」  
 三拍子のリズムを刻みながら、ルムは駆け出す。スフレは鞍の上に逆立ちし  
た。手を離して空中で宙返りすると、再び鞍の前橋をつかんで逆立ちする。  
 停まった状態ならいざしらず、駆ける馬の鞍上でのこの芸当である。初めは  
しぶしぶ付き合っていた様子のアルベルも、感心している。  
「なかなかだな。すぐにでも曲馬師として通用するんじゃねえのか」  
 ルムに乗せてくれとスフレにせがまれたウォルターは、アルベルに任せた。  
「わしも他の騎士らも忙しいでな」  
 俺も暇なわけじゃない、と言ってはみたが、結局ウォルターには逆らえず、  
アルベルはスフレの面倒を見ることになった。が、この様子では放っておいて  
も構わなかったくらいである。スフレは動物の扱いには慣れていたし、馬に騎  
乗することも経験ずみだったようだ。  
 スフレはウォルターの愛馬ソロンの頸を軽くなでている。二人の上からマリ  
アの呼ぶ声が降ってきた。  
 
「スフレ! その鞭を私の鞭と交換してくれない?」  
 窓からは鞭を差し出した手が伸びている。スフレは鞍から降り、ウォルター  
の屋敷の方へ走った。二階の窓に向かって鞭を放り上げる。  
 ぱしっ、と小気味よい音をたてて、騎乗用の短鞭はマリアの手の中に収まっ  
た。  
「マリアちゃん、あたし鞭いらないや」  
 スフレは先ほどから曲乗りばかり繰り返しており、鞭は使っていなかった。  
「そう。じゃあありがたく使わせてもらうわね」  
 ソロンの手綱を引いて、アルベルがスフレの隣まで歩いてきた。真っ黒のボ  
ディスーツ姿のマリアを見て、ぎょっとして立ち止まる。  
 マリアの唇の端が、つい、と吊り上がる。  
「あらアルベル。今晩は付き合ってくれるわよね?」  
 アルベルはだるそうに首を横に振った。  
「あいにくと、今晩はフェイトの方と約束があるんでな」  
 マリアの表情がゆがむ。が、一瞬で笑みに戻る。  
「そう………それは良かったわね」  
 マリアは音を立てて窓を閉ざし、カーテンも閉めた。  
 
「フェイトちゃんと何の約束?」  
 無邪気にスフレが尋ねる。  
「まぁたいしたことじゃねぇんだが………」  
 前髪をかきあげ、アルベルは言う。  
「この前、俺とフェイトでクリフと金髪女と仕合ったら、負けちまってな。今  
晩は仕切り直して、俺があいつらを這いつくばらせてやるのさ」  
「そうなんだ。でも二対二だったらコンビネーションが重要でしょ? クリフ  
ちゃんとミラージュちゃんに勝つのって無理だと思うよ」  
「うるせぇ黙れ。俺が勝つっていったら勝つんだよ!」  
「あーあ。自分の勝ちにこだわってるよーじゃ、ますます勝ち目ないよ。突っ  
込んでクリフちゃんに殴られちゃうとか、技の隙つかれてミラージュちゃんに  
蹴られてオシマイ、ってとこじゃない?」  
「黙れっつってんだろ、クソ虫」  
 スフレは背伸びして、アルベルを見上げる。  
「アルベルちゃん、もうちょっと素直になりなよ? ヤバそうな時にはフェイ  
トちゃんに頼っちゃえばなんとかなるかもよ?」  
「んな状況があり得るわけねぇだろうが阿呆! フェイトの奴が俺の足をひっ  
ぱりさえしなければ、勝てるんだよ!」  
 アルベルは少女を見下ろして睨みつける。スフレはにこにこと見つめ返して  
いたが、ふと真面目な顔に戻った。  
「マリアちゃん、アルベルちゃんの言ってたこと誤解してるよね。説明した方  
がいいんじゃない?」  
「ほっとけ。何で勝手に間違えた阿呆にいちいち教えてやらなきゃなんねぇん  
だよ」  
「アルベルちゃんらしいね………」  
 スフレはもう一つ気になったことを言う。  
「ねぇ、マリアちゃんは鞭を何に使うんだろうね?」  
 かわいらしく小首をかしげるスフレに、アルベルは気だるげに答える。  
「どうせ『ぷれい』とやらの一環だろう………」  
 
 マリアは鞭を振ってみた。  
「あまりしならないわね。叩くの専用ってところかしら」  
 ヒュッ、ヒュッ、と鞭が寝室内の空気を裂く。  
「どう? ルムを叩くのに使われていた鞭よ? よく使い込まれてるわよ」  
 マリアは寝台の上に転がされた玩具の鼻先で鞭をちらつかせた。  
「や………やめてください………」  
 全裸で縛り上げられたソフィアが震える声をあげる。  
「ほら、匂いをかいでごらんなさい?」  
 マリアはソフィアの鼻に鞭を押しつけた。  
 鞭はルムの調教師の男が愛用しているもので、ルムの臭いがこびりついてい  
る。さらに握りの部分からは染み付いた汗が臭った。  
「いやっ、臭いっ」  
 気候すらも完全管理された地球に暮らし、本物の動物が独特の臭いを持つと  
いうことすら知らなかったソフィアである。鞭から漂ってくる臭いは生々しす  
ぎた。  
「これからこの鞭でかわいがってあげるっていうのに、その態度は何かし  
ら?」  
 マリアはソフィアの胸をなでる。  
「いつ見ても大きいわね」  
 ロープが胸の上下で食い込み、ソフィアの大きな胸はますます強調されてい  
る。  
「まずはこの、フェイトをたぶらかす悪いおっぱいに教育をしてあげるわ」  
 
 鞭が張り出した乳房を打ち、パシンと音を立てる。  
「きゃあっ!」  
 ソフィアは悲鳴をあげた。マリアは次は鞭で叩くのではなく、鞭の先でソフ  
ィアの乳頭をいじくった。ソフィアはすぐに反応する。  
「あ………ふぅ………はぁん、あん、気持ちいい………」  
 怯えていた表情が、あっという間に熱に浮かされたものに変わる。  
「えっちな子ね」  
 マリアは再び鞭を振り上げ、たった今刺激していた乳首を軽く叩いた。  
「ああんっ!」  
 ソフィアの唇が苦しそうにゆがむ。  
「気持ちいいでしょ?」  
 マリアは艶笑しながら鞭をくるくる回した。  
「そんなはずないもん。痛いだけです」  
 涙目のソフィアはマリアから顔をそむける。あごに手をかけ、マリアはソフ  
ィアの顔を自分の方に向ける。  
「下の口からいやらしいお水を流してるのに、気持ちよくないっていうの?   
あなたはえっちなだけじゃなくて嘘つきのようね」  
「嘘っ。嘘ですっ」  
 必死のソフィアに、またもや鞭が振り下ろされる。  
「腰まで振り出して、淫乱な子ね」  
 中途半端に刺激を与えられたソフィアは、股間に食い込むロープに自分の局  
部をこすりつけていた。マリアに指摘されて初めて、ソフィアは自分の行為に  
気づいた。  
 
「こっ………これは、マリアさんが悪いんですよ。マリアさんが私にエッチな  
ことをするからっ」  
「自分のいやらしいのを私のせいにしないで欲しいわ」  
 マリアは、ソフィアを戒めるロープの一部をつまんで引っ張った。体中のあ  
ちこちでロープがこすれる。股間の秘裂に埋まった部分もこすれて、ソフィア  
は体をゆらした。  
「あっあっ、あはぁん、いいっ、気持ちいいっ」  
 マリアは意地悪く笑いながら言う。  
「そう、気持ちいいのね。どこが気持ちいいのか言ってごらんなさい」  
「そんなの、そんなの言えませんっ」  
 マリアはロープを離した。ソフィアは腰をくねらせる。  
「ひどい。やめないでください………」  
 お預けをくらって、ソフィアは上目遣いでマリアを見上げる。  
 腰の両側に手をあて、マリアは再び命令する。  
「じゃあ、どこが気持ちいいのかはっきり言うことね」  
 ソフィアは赤くなってうつむき、ぼそぼそと何事かを言った。マリアは髪を  
かきあげる。  
「なぁに? 聞こえないわよ? はっきり言いなさい」  
 ソフィアは詰まりながらも、ようやく聞き取れるほどの声で言う。  
「ア………アソコが………気持ちいい……・・・です」  
 マリアはふぅ、とため息をつく。  
「それじゃ分からないわ。アソコってどこかしら?」  
 ソフィアは泣きそうになりながら声をしぼりだした。  
「おま○こです………」  
 マリアは微笑んだ。  
「よく言えたわね。ご褒美をあげるわ」  
 マリアの鞭先が、今度はソフィアの股間に触れた。 
 
 マリアの鞭が、焦らすようにソフィアの肉襞の周りをなでる。ソフィアは、  
はぁはぁと息を荒くしている。  
「マリア…さん…そこじゃなくて…もっと…」  
 弱い刺激にソフィアは物足りず、恥ずかしそうにマリアに頼み込む。  
「もうちょっと横を、強く触ってください………」  
「そう、こうかしら?」  
 マリアはニッと笑うと、ソフィアのクリトリスを軽く打った。  
パシッ。  
「ひぎっ!」  
 ソフィアの口からおかしな悲鳴が漏れる。  
「ここじゃなかったのかしら?」  
「いたっ、いたぃ、痛いぃぃー」  
 体をもぞもぞと動かしながら、ソフィアは涙を流す。しかし痛みだけでなく、  
じん、と痺れる快感が残った。  
「じゃあ痛い場所をさすってあげるわ」  
 マリアが指の腹でクリトリスをもむ。  
「あんっ………」  
 ソフィアの頬が染まり、体を反らす。  
「ふふ。もう固くなってるじゃない」  
 マリアは軽くもむのではなく、強く押すようにし、さらに薄い皮をずらして  
赤くしこった部分を直接つまむ。  
「ひあぁぁぁぁー」  
 ソフィアは意味をなさない叫びをあげる。マリアが強くつまんだり力をゆる  
めたりを繰り返すたびにソフィアは叫んだ。そしてソフィアは体を痙攣させる  
とぐったりと弛緩し、唇の端から涎を流しながら息を乱している。  
 
 マリアは玩具を見下ろす。  
「いつも頭悪そうな顔だけど、イった後のあなたの馬鹿顔って格別ね。どう?  
 気持ちよかった?」  
 未だ醒めぬ快感の中、ソフィアには侮辱すら心地よく聞こえる。  
「はい、気持ちいいです………」  
「じゃあもっと気持ちよくしてあげるわ」  
 マリアはソフィアの流す愛液を伸ばした。アナルにも塗りたくる。ソフィア  
が首をふった。  
「マリアさん、、、何するんですかっ………」  
 マリアの指先が、わずかに中に入る。異物感にソフィアは震え上がった。  
「そんな、後ろからなんてっ」  
「初めてじゃあるまいし。あなたいつもそればっかりね」  
 ソフィアはぶるぶると首をふった。  
「だってっ、マリアさんは嫌じゃないんですか? そこ、汚いし」  
「それじゃあ………」  
 マリアは鞭の柄を穴におしつける。  
「あなたの汚い所には、汚いこれがお似合いね」  
 鞭の柄に肉がひきつれて、ソフィアはまたもや悲鳴をあげた。  
「い、いやぁぁぁ!」  
「前にはこれをあげるわ」  
 マリアはヴヴ………と低くうなるバイブをソフィアの中にぐいと押し込んだ。  
「あぁそんな、前からもなんてっ………あぁーっ」  
 ソフィアは縛られた体をのたうたせながら、叫んでいる。そしてバイブと鞭  
に挟まれた部分がやがて、焼けるような熱を持った。  
「あーん、熱いっ、熱いのぉ、気持ちいぃーーー!!」  
 快楽に全身を桃色に染めて、ソフィアは寝台の上を転がった。  
「まだまだこれからよ………」  
 ソフィアを見下ろすマリアは、にっこりと笑っていた。 

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