アルゼイはまぶたの上から眼球をおさえた。軽い頭痛がする。  
 ぐったりと重い体を起こし、執務室を出る。向かった先は彼のパートナーの  
住む洞だった。契約を交わした竜の傍に居るとアルゼイは癒されるのだ。  
「やつれたな」  
 オッドアイはそう言うと、体を低くした。  
「……何のつもりだ?」  
 アルゼイが尋ねると、オッドアイは言った。  
「決まっている。お前を乗せて飛ぶ」  
「しかし時間がない」  
「たまには凍てつく澄んだ風に抱かれることも必要だ……」  
 オッドアイはアルゼイが騎りやすいように、前肢を首の付け根に近づけた。  
ここまでされては、乗らないわけにはいかない。アルゼイは竜の肢から背へと  
上り、洞内の疾風兵士に言った。  
「遠乗りをしてくる」  
「はっ」  
 疾風は恭しく一礼し、鞍上の王に外套をまとわせた。  
 アルゼイは手綱を取ったが、伸ばしたままで鞍の上に手を置いた。左足を竜  
の腹に当てて軽く押し出す。好きに飛べ、ということだ。  
「グワォ!」  
 オッドアイは喜びの声をあげ、洞内を飛び出した。雪混じりの冷たい風が竜  
と騎り手を叩く。オッドアイは大きくはばたき、やがて空へ帰る気流をとらえ、  
灰色の空へ高く上がっていった。  
 
 城の物見の塔の上で、千里眼のルカが去り行くオッドアイを見ていた。  
「陛下が遠乗り? しかしこんな時に……?」  
 辺りを囲む山腹を覆う雲は、翳りを濃くしている。空はますます暗い。天候  
が悪化しつつあるのだ。彼の視界には、城に帰還するために飛ぶエアードラゴ  
ンたちが複数あった。  
「ルカ、陛下はどちらへ行かれましたか?」  
 優しい女性の声に、ルカは驚いて振り向く。そこに居たのは、大きな瞳が印  
象的な清楚な女性だった。ルカは慌てて跪く。  
「妃殿下! ご無礼を」  
 ロザリアは微笑んだ。  
「硬くならないで。さぁ、お立ちなさい」  
 ルカは立ち上がる。そして空の一点を指し示した。  
「陛下はあちらですが……」  
 ルカの目には王と竜が未だ見えていたが、ロザリアにはもう一面の雲しか見  
えなかった。  
 だからロザリアは目を閉じた。すると、王の疲れた横顔が浮かんだ。ロザリ  
アはアルゼイの笑顔を思い出そうとしたが、できなかった。  
(あの方の傍にいられる、それだけで私は幸せなんだわ。なのにどうしてこん  
なに胸が苦しいの……?)  
「妃殿下、ここは寒うございます。どうかお部屋にお戻りを……」  
 ルカに言われて、ロザリアは無言で頷き、のろのろと階段を降りていった。  
 
 アルゼイはオッドアイの背に身を任せ、無心に風を見ていた。そしてふと我  
に返った時には、彼は嵐の中にいた。  
 彼らからさほど離れぬ場所で、閃光が走り、轟音が響く。天と地を繋ぐ白い  
橋が消えた場所で、大木が炎を吹き上げていた。  
「オッドアイ、城に戻るぞ」  
 アルゼイは伸ばしていた手綱を張る。ところが、オッドアイは銜をするりと  
外してしまう。  
「オッドアイ!」  
 アルゼイは声を荒げた。  
「静かにしていろ。お前が行きたかった所に向かっているのだから」  
「何?」  
 アルゼイに施術の心得があれば、オッドアイが隠行の竜語魔法を使っている  
ことが分かったかもしれない。が、シーフォートの末裔であり適性があるとい  
っても、訓練を受けぬ身のアルゼイは、オッドアイの企みに気づいていなかっ  
た。  
 オッドアイが降り立った場所で、彼は呆然とした。  
 
 エレナは書物のページをぱらぱらとめくっていた。と、施術とは異なった術  
の流れを感じて目を窓外に向ける。巨大な翼が一瞬、雷に照らし出されて浮か  
び上がった。  
「エアードラゴン?!」  
 書物を放り出してエレナは立ち上がる。すると今度は、施術によく似た、何  
か強力な力が城全体を包んだ。  
 エレナは部屋を出た。回廊で衛兵を呼ぶ。ところが返事がない。  
 兵士は立ったまま眠っていた。無理に起こすと危険だと判断したエレナは、  
周囲を歩き回った。礼拝堂、図書室……。皆、眠っていた。生ある者たちは動  
きを止めて、しんと静まり返っていた。  
 そしてエレナはようやく起きている者に会った。それは、杖に猫のマスコッ  
トをぶら下げた、愛らしい術士だった。  
「これはあなたの紋章術ね?」  
 エレナに問われ、ソフィアは頷く。  
「そうです」  
「なぜこんなことを」  
「ごめんなさい。友達に頼まれてやりました」  
 詰問しようとして、エレナは口を閉ざした。静まり返った回廊の奥から、何  
者かの靴音がする。  
 
 エレナは顔を上げた。そして、褐色の少女に手を引かれた、茫洋とした様子  
のアルゼイを見つけた。  
 アルゼイの目の焦点が合った。エレナに歩み寄り、何も言わず抱きすくめる。  
ゆったりとした施術士の衣服の中で柔らかな感触が弾んだ。  
「やめて、アルゼイ」  
 エレナは抵抗する。  
「こんなところ誰かに見られたら……」  
「彼女の力で皆、眠っている」  
 アルゼイはそう言うと、強引にエレナの唇を塞いだ。  
「ん……んんっ」  
 エレナはもがいている。指先が宙をつかもうかとするようにさまよった。ソ  
フィアは頬を染めて目を逸らした。  
「……王様、私たちは失礼します」  
 ぺこりと頭を下げると、ソフィアは小走りに去って行った。  
「王サマ、しっかりリフレッシュしてね」  
 ウィンクの後、スフレも立ち去った。  
 
 アルゼイはエレナを冷たい床の上に押し倒した。  
「オレはベッドの上がいいのだがな?」  
 エレナはアルゼイを睨み返していた。が、アルゼイが疲れた顔をしているこ  
とで顔を曇らせる。  
 エレナの視線が不安げなものになり、アルゼイの頬にそっと触れた。少し浮  
き上がった頬骨が気になってその上をなぞる。  
「アルゼイ……働きすぎなんじゃないの?」  
「かもしれんな」  
 アルゼイの答えは素っ気無い。  
 エレナはため息をつくと、自分からアルゼイに軽く口づけした。  
「……私もベッドの方がいいわ」  
 
 アルゼイに服を脱がされ、体に触れられ、エレナは目を閉じていた。アルゼ  
イは呟く。  
「お前はやわらかいな……」  
 エレナの感触と匂いが懐かしい。すべて、昔の切ない思い出につながってい  
る。  
「オレは望んだ物をたくさん手に入れた。だがお前はオレの物にならなかっ  
た」  
 アルゼイの口調が苦い。エレナは目を開けた。  
「私はあなたの物よ。ただ傍にいられないだけ」  
 エレナはアルゼイの背に手を回し、慰撫するようにゆっくりと手を往復させ  
る。  
 アルゼイはエレナの肌の上に唇を落とした。  
「髭……」  
「ん? 何だ?」  
「髭がちくちくするわ」  
「嫌か?」  
「いいえ。でもくすぐったい……」  
 
 アルゼイはエレナの体のあちこちに痕をつけていく。と、エレナがアルゼイ  
の乳首をきゅっとつまんだ。小さな呻き声が漏れた。  
「う!」  
「焦らすのもいい加減にしてくれないかしら?」  
 普段は青白い、血色の悪い肌をやや色づかせ、エレナは言う。体の感じやす  
い部分をわざと外すアルゼイの愛撫に、エレナは少し腹を立てていた。  
「……すまん」  
 深く反省した様子のアルゼイを見、エレナは笑った。  
「私も溜まってて……ついいらいらしちゃって……痛くしてごめんなさいね」  
 エレナはアルゼイのペニスを手で包み込む。  
「代わりにこっちに優しくしてあげる……いいでしょう? はい座って?」  
「う、うむ……」  
 
 エレナは手のひらも柔らかかった。ふにゅりとした手は快感をもたらしたが、  
安堵感と懐かしさも蘇った。ロザリアはこのようなことはしてくれないだろう、  
とアルゼイは考える。  
「エレナ……」  
 アルゼイは彼女の名を呼んだ。そしてロザリアを抱く際に、エレナの名を呼  
んでしまうかもしれぬという思いがふとよぎり、怖れた。  
 アルゼイのペニスが、エレナの口腔内に飲み込まれていった。 
 
 温かさと懐かしい快感にアルゼイは夢中になり、自分を忘れてしまった。エ  
レナの頭をつかむと、乱暴にゆすり始める。  
「エレナ……エレナ……!」  
 呼吸困難と、自慰の道具にされたかのような屈辱でエレナはいい気はしなか  
ったが、必死さがどこか哀れで好きにさせてやっていた。が、断りもなく苦い  
粘りを喉の奥に吐き出されて目の色を変えた。  
 吐き出しはせず、口を押さえて燃える視線をアルゼイに向ける。アルゼイは  
未だエレナの怒りに気づかず、疲労と快感に身を任せ、放心してどことも知れ  
ぬ方を見ている。  
 エレナはアルゼイの肩を押さえて、噛み付くような接吻をした。そして先程  
放出された物を相手の口のなかに吹き出した。  
「むがっ!」  
 自分の体液を飲まされて、アルゼイはおかしな声をあげた。舌を刺激する不  
快な味に咳き込んだ。  
「ぐふ、ごほっ、ごほっ……」  
 アルゼイが苦しんでいるのを見て、エレナはようやく溜飲を下げた。  
「バーカ」  
 そう言いながら、水差しからコップに水を注いで手渡してやる。  
「お前、何の恨みがあってこんなことをする」  
 快感の名残をぶち壊されたアルゼイは、悲しそうにエレナを見つめる。エレ  
ナは拗ねたように言う。  
「昔はちゃんと、出す時は出すって言ってくれたじゃない」  
「……そうだったか?」  
「いったいどうなってるの? まるで焦った子供みたい」  
 
 ロザリアとうまくいっていないの、と尋きかけてエレナは止める。エレナは  
豊かな胸にアルゼイを抱きこんだ。  
 アルゼイは、自分の髪を梳いていたエレナの指に触れる。  
「相変わらず冷たい手だな」  
「手が冷たいと、心があったかいって言うじゃない?」  
 エレナは茶化そうとしたが、アルゼイは寂しそうに言った。  
「お前は心も冷たい」  
 アルゼイはからめていた指をほどき、顔をあげ、エレナの指に吐息をかけた。  
そして強く抱擁すると、ベッドに身を落とした。  
 今更だが、エレナは逡巡した。  
「ねぇアルゼイ、もう出すもの出しちゃったんだしさ……このまま一休みして  
帰れば?」  
「ことわる」  
 アルゼイは断固として言ったつもりだったが、またエレナに笑われた。  
「なんかさ、お菓子を取り上げられそうな子供みたいな顔してるわよ」  
 アルゼイはムッとする。  
「お前とて、この状態ではオレをすぐに帰すわけにはいくまい」  
 そう言ってエレナの内腿を撫でる。そこは秘所から溢れた蜜が筋を作ってい  
た。  
「まーね。正直言うとすごくしたい」  
 しかしエレナの表情は翳る。清楚な神官の娘の悲しがる顔が思い浮かんでし  
まう。 
 
 アルゼイは自分の物にならないエレナを、一時でも専有しようと強く抱く。  
彼女の柔らかさは感じるのに、どこかあやふやで不確かで、アルゼイは焦って  
しまう。  
「お前はその名の通り、光のようだな。確かにここにいるのに、つかむことが  
できない」  
 抱きしめると、果てのない柔らかさの中に沈んでいく気がする。  
「ロザリアを愛してあげて」  
 エレナは優しく言う。  
「だが彼女はお前ではない」  
 アルゼイはエレナの乳房をつかむ。どこまでも柔らかい。白い柔肉は指に余  
る。ゆっくり揺さぶると、エレナはほう、とため息をついた。  
「ロザリアはあなたを愛しているわ」  
 エレナはアルゼイの頬に軽く唇をあてる。指はアルゼイの性器をまさぐり始  
めた。  
「元気ねぇ」  
 再び起ち上がり始めたペニスをエレナは楽しそうにいじる。  
「若返っているんじゃないの」  
「お前の淫らな美しさがそうさせてくれる」  
 エレナは淫蕩そうな物欲しげな目つきでアルゼイを見つめ返す。秘所からだ  
らしなく愛液を滴らせている。エレナは自分の脚の間にアルゼイの腿を挟みこ  
んで、花弁をこすりつけた。  
 
 快楽に目を細めるエレナの指の動きはだんだんずさんになり、指の腹をアル  
ゼイのペニスにぐりぐりと押しつける。  
 アルゼイはエレナの手首をつかんで遠ざけた。エレナの臀部を持ち上げて、  
自分の上に乗せる。アルゼイに貫かれてエレナは一瞬目を大きく見開いた。  
「……アルゼイ、すごくイイわ……」  
 エレナは恍惚とし、全身をぶる、と震わせた。精液を寄越せといわんばかり  
にエレナの膣内が収縮する。  
「そんなに締めるな……」  
 アルゼイは顔を歪めて訴える。  
「ん……んー……無理みたいよ……」  
 エレナは呼吸を乱しながら言う。アルゼイは顔をしかめ、エレナを突き上げ  
始めた。  
「あぁ……イイ……」  
 動きに合わせてエレナの乳房が揺れる。白いものが上下に弾む様子がアルゼ  
イの興奮を煽る。  
「エレナ……頼む……少し緩めてくれ……」  
 アルゼイは脂汗を浮かべている。凹凸のある膣内がアルゼイのペニスを吸い  
上げている。 
 
 

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