河岸の町アリアスの領主屋敷。  
ネル=ゼルファーとマリア=トレイターが初めて体を重ねたその翌日。  
会議室に於いて今後の動きについて話し合いの席が設けられた。  
フェイト=ラインゴッドは施術兵器の調整の為に、早々に会議を切り上げてでもシランドへ出発したいと主張した。  
クリフ=フィッターはフェイトの護衛に責を感じているので、勿論彼に同行することに決めていた。  
しかし、その席でネルの口から意外な申し出がなされたのだ。  
アーリグリフ軍からの追撃及び侵攻に対する牽制のためにアリアスに残りたい、というものだった。  
さらに意外なことは、マリアまでもがアリアスの居残り組に加わりたいと言い出したことだ。  
クリフはクォークのリーダーでもある彼女の、一種身勝手とも言える宣言を詮索する。  
だがフェイトがそれを許したことで深い追求はできなくなってしまった。  
結局、渋るロジャー=S・ハクスリーを従えてフェイトとクリフの三人のみがシランドへ向かうことで会議は決着。  
それから数日、アリアスでは表面上穏やかな時間が過ぎていた。  
マリアとネルにとっても同じだった。  
日中は二人で川べりに並んで今までのことや将来の夢等、色々なことを話し合ったり笑ったりして過ごしていた。  
 
そんなある日、夕食時の領主屋敷の会議室。  
部屋の入口からもっとも離れた席にクレアが陣取り、その両脇、窓側にネル、廊下側にマリアが座っていた。  
一通り定時の報告を終えた部下が下がるのを見届けてから、大テーブルに並べられた食事に手をつけ始める。  
クレアは他の二人が食事している様子を邪魔しない程度に見比べていた。  
彼女は最初、なぜマリアがアリアスに残ると言い出したのか理解できなかった。  
しかしここ数日の二人の様子を見て、彼女の疑問は氷解した。  
ある時などはクレアが川沿いの小道を歩いている時に二人の姿を見つけたこともある。  
その時の二人はクレアが見てるのにも気付かず語り合っていた。  
呆然としている彼女の視線の先で、マリアの頬を伝う涙をキスで拭うネルがいた。  
愛しあっている、という他に二人の関係を表わす言葉をクレアは見つけられない。  
ついもれた彼女のため息が、思いがけずネルの耳に届く。  
「どうしたんだい?どこか具合でも悪いのかい?」  
喉元まで出かかった言葉を無理矢理押し殺し、クレアはかぶりを振った。  
「アーリグリフとの戦いも近そうだから、今のうちに休んでおいたら?」  
マリアの気遣いに対して憎しみしか湧かない自分の心に、クレア自身が少々傷付いた。  
「本当に大丈夫ですから…大丈夫」  
二人に向かって交互に微笑んで見せながら、スープを口に運んだ。  
 
やがて食事も終わってネルが席を離れると、控えていた部下が手際よく食器を片付け始める。  
テーブルを廻りこんで出口に向かうその横顔をクレアは無言で見送った。  
同時にマリアも立ち上がり部屋から出て行こうとする。  
彼女の頬にかすかに赤味がさし椅子が少し大袈裟な音を立てたことから察するに、ネルと一緒に出るタイミングを計っていたのだろう。  
それが判っていてわざと、ささやかな反抗としてクレアは声をかける。  
「マリアさん、アリアスの暮らしは退屈ではありませんか?」  
クレアの思惑はかなわず、ネルが無関心そうに二人の顔を見て部屋の出口で立ち止まった。  
マリアはそれを見て安心すると、落ち着いてクレアに向き直る。  
「私は船で暮らすことが多かったから、木々や動物を眺められるだけで充分に刺激的だわ」  
実際のところ『船』は船でも『航宙船』だったが、話を難しくしたくなかったので彼女は端折って話した。  
クレアはテーブルの上にひじを付いて両手の指を組み合わせ、その上にあごをのせる。  
そのまま虚空を見つめ、ネルの視線…恐らく非難の色が混じっているだろう彼女の視線には気付かぬフリをした。  
「そうですか…ではゆっくり休んで下さい、マリアさん」  
「ありがとう、おやすみなさい。クレア」  
ネルとマリアの姿がドアの向こうに隠れる刹那、二人の手がしっかりとつながれているのをクレアは見逃さなかった。  
「ひどい仕打ちだわ…」  
小さく、吐き捨てるように囁く。  
食器を片付けている部下の耳にはかろうじて声を発したくらいにしか聞こえない。  
「クレア様?」  
クレアの横顔に涙が伝い落ちるのを見て片付けの手が止まる。  
「大丈夫…ゴミが入っただけ」  
泣くような人物の下では兵士達は安心して戦えない、上官としての体面を取り繕うために嘘を吐いた。  
人さし指で涙を拭うと、やがて彼女もテーブルを離れ自室へと帰っていく。  
 
ネルとマリアの寝室は、今は領主屋敷の客室に移っていた。  
以前使っていた部屋へ真のあるじがいつ戻っても良いように、と配慮したのだ。  
マリアは窓際に立ち、表の木の枝が風に揺れるのを眺める。  
「今日のクレアさん…少しおかしかったわね?」  
背後のごく近くに人の気配を感じる。ネルだ。  
相手が返事をしないので、窓ガラスに映る人影の表情に目をこらす。  
彼女も窓ガラス越しにマリアを見つめている。  
やがてガラスの中でネルの口が開いた。  
「あたし達のコト…勘付いてるんだろうね」  
「そうね…」  
マリアは振り返り、直接ネルの瞳を覗き込む。  
戦場を生き抜く間に様々なものを見たであろうその瞳は、みじんも輝きを失ってはいない。  
改めてその宝玉のような瞳に感心しながら言葉を続ける。  
「ねぇネル、あなた…後悔してる?」  
「なんでさ?」  
ネルは少し笑った。  
かつてネルはクレアと体を重ねた事が一度ならずある。  
以前マリアにしたのとは違い、まだ幼くて余裕のない行為だった。  
それもいつしか仕事や立場に流され、二人の関係は自然に終わってしまったが。  
もちろん彼女にはその事は聞かせてある。黙っていて関係をこじらせてもつまらない、と考えたからだ。  
恐らくマリアはその事を訊ねているのだろう。  
「私のコト…遊びじゃないわよね?」  
あまりに真剣なマリアの表情が、ネルにはたまらなく可笑しかった。  
思わずいたずらしたくなって、その場から、彼女の元から立ち去るフリをしようと決めた。  
 
ネルは無表情を装い、無言で相手に背を向ける。  
「そんな!ちょっと待ってよ…!?」  
マリアが力一杯にその肩をつかんで引き戻す。  
振り返った彼女の顔には満面の笑みが浮かんでいた。  
「冗談だよ。遊びなんかじゃないさ」  
「もう!いじわる!」  
マリアが手の甲で目尻に浮かぶ涙を拭おうとしたとき、さっとその手をつかまれる。  
驚きの表情で目をあげると、ネルの顔が首をかしげるようにして近付いてきた。  
マリアは身をすくめて一歩下がる。  
相手は不思議なものを見るような表情になった。  
「やっぱり遊ばれてる気がするわ…なんか…いつも余裕なんだもの、あなたは」  
ネルはつかんだ手をそっと引き寄せ、空いてる方の腕でマリアの細い体を包む。  
「バカだね…」  
言いながら下唇で彼女の涙を拭って、ゆっくりと味わうと天を仰いで深く息を吐く。  
マリアには悪いが、ネルは彼女の涙が大好きだった。  
今まで味わったどんな酒よりも酔わされるし、何よりも自分の前で素直でいてくれる証拠だからだ。  
 
一方、自分がこんなに喜怒哀楽が激しい人間だったことに、マリア自身戸惑いをかくせなかった。  
以前の彼女は感情を押し殺し、自らに対しても『私は一人でも生きていける』と虚勢を張ってきた。  
しかし、あの夜全てが変わった。  
ネルはマリアの能力や立場などに興味はなく、マリア自身を求めてきた。  
確かに体の繋がりから始まった関係だが、切っ掛けはただの切っ掛けだ。そんな事は問題ではなかった。  
全てが変わってしまったのだから。  
ネルと過ごした時間は、体を重ねていても言葉をかわしていても、とても満ち足りたものだった。  
感情のままに笑ったり、涙を流すことがこんなに心地よいものだと知らなかった。  
いつしか心も体も裸になって、愛しい人の前に横たわるマリアが居た。  
「きれいだよ…マリア。本当に…きれいだ…」  
自らも一糸まとわぬ姿でベッドの横に立ち、ネルはマリアの裸身を見つめる。  
その視線から体を隠したい衝動にかられたが『何を今さら』と笑われる気がして、マリアは指一つ動かす事もできずに顔だけ背けた。  
窓から差し込む月の青い光がその胸を照らす。  
彼女の胸はまさに理想的な少女の物と言って良かった。  
いじらしくも控えめな膨らみの先端に、桜色の小高い丘がある。  
その勾配のかすかな段差は、未だ成長しきっていない乙女のしるし。  
加えてその先端には唇を噛んだような横一文字の小さなクレバスがあるのみ。  
『マリアの最も美しい時を私がひとりじめしている』と思うと、ネルはそれを見る度に感激で背筋にふるえが走ってしまう。  
 
ネルもベッドの上に乗り、マリアの太ももの間に自身の左脚を割り込ませると、そのまま覆い被さるようにして唇を重ねた。  
右手で自らの体を支え、その下で左手がマリアの膨らみの裾野を優しく撫でている。  
時には膨らみを登りつめ、桜色の縁をなぞってからもう一度裾野へ。  
裾野からしごくように膨らみを集めては、その張り具合を確かめるようにプルン、と放す。  
ネルの下で、マリアは空気を求めるように喘いだ。  
「ぁかっ…かはっ…ん!」  
雨のようなキスの中で胸への愛撫を執拗にくり返すが、決してその先端にだけは触れない。  
先ほどまで陥没していたマリアの乳首が、触れられていないのに今ではすっかり顔を出して膨らみの頂きで震えている。  
普段はクレバスの内に隠れているせいか、その先端は桜色の度合いが一層鮮やかだ。  
そこを触れて欲しくてマリアは体をひねるが、寸でのところでネルの指はその部分をかわす。  
指先が逃げたかと思うとすぐに戻ってきて、桜色の縁をカリカリと引っ掻いた。  
その指へ先端を持っていこうと体を動かすと、今度は膨らみの裾野へ下がっていく。  
何度試してもそんな調子で、マリアには切なさだけが募っていった。  
「じらさないで…ネル…触って…」  
観念したようにマリアは声で訴える。  
ネルはキスを止めマリアの瞳を覗き込むと、それは揺れて見えるほどに潤んでいた。  
「マリアは激しくされるのが好きだもんねぇ?」  
いたずらをする子どものようなネルの笑顔。  
「いじわる…言わないで」  
懇願してまぶたをギュッと瞑ると瞳を潤ませていたものがひと雫、頬を流れた。  
そんなマリアがどうしようもなく愛おしく、思わずその胸にむしゃぶりつく。  
 
野イチゴのように赤く小さい先端を軽く唇で含んだ。  
本当に軽く、唇の端からかろうじて空気が流れるほどに微妙な力加減でくわえて『ずずーっ』と音を立てて一息に吸いこむ。  
唇と乳首の隙間を流れる空気の振動が胸全体へ、そして快感となって全身へ拡がったと思った瞬間。  
「っきゃ!」  
体の中心から沸き上がる熱を感じて、マリアの体がベッドの上で弓なりに跳ねた。  
その瞬間、ネルの太ももに向かって温かな飛沫が弾ける。  
脈打つように弾け出る奔流はとても勢いがよく、ももに当たる度に『ぶしゃっ、ぶしゃっ』と音を立てた。  
マリアがどうにか我に帰ると、胸の上から見上げるネルの顔には笑みが浮かんでいる。  
「わっ…笑わないで!」  
変わることのないマリアの新鮮な仕種とは裏腹に、日毎に敏感になっていく彼女の身体の反応にネルもエクスタシーを覚えそうになる。  
自身の茂みの下が明らかに潤いを帯び、体勢を替える度に肉壷の中で愛液がたゆたっているのが自分でも判った。  
 
ネルは少し身体を移動させると左手はひじを付いたままマリアの右胸をこね続け、右手は源泉を求めてマリアの太ももの間へと滑り込ませた。  
「あっ!…イったばかりでっ…」  
腰を退くと両足を閉じて、相手の腕が侵入するのを拒む。  
ネルがにやりとしてマリアの胸を吸い上げると、彼女は小さく悲鳴を上げて足の締め付けを弛めた。  
すかさず内ももを撫でるとそれさえも性感を呼び起こすのか、彼女の足は腕を追い払うでなく、腕から逃げるでもなくのたうつ。  
抵抗しようと足を捻ると触れる手のひらの熱が快感となり、体の芯に飛び火したように神経を焼きつけさせる。  
もはや拒んで見せるのは形式だけになってしまった。  
「まぁっ、だ!…触っちゃっ…」  
太ももよじらせて拒む中をその部分まで容易く到達してしまうと、手のひら全体でふたをするように触れる。  
同時にマリアは息を飲んで身体を堅くした。  
ネルはその部分に視線は向けずに、あえてマリアの顔を見ると、彼女もこちらを見つめている。  
その瞳は快楽に溺れながらも未だ期待と不安と羞恥によって、かろうじて理性を保っている。  
彼女の表情を見つめて『快感に溺れるだけの相手だったらここまでハマらないだろう』とネルはしみじみ思った。  
 
マリアのそこは鼓動で響くように、とくんとくんと収縮を繰り返していた。  
まるで粘液にまみれた柔らかな唇で指の腹にキスを受けているような感覚。  
実際に少なからず空気の流れがあるようで、指と粘膜が吸いついたり離れたりする際に『はぷっ、はむっ』と口づけのような音がする。  
ネルは辛抱できなくなって中指を巡らせると肉を分け、小振りな花びらの間に滑り込ませた。  
入り口の縁を柔肉をかき分けるようにぞろりと、指をひと回りさせる。  
先ほど吐き出された液の残りが指にまとわり付いた。  
「ひっ…ぃやっ」  
マリアは腰を捻って逃げようとするが、腕の動きがどこまでもついてきた。  
潤滑剤を得た滑らかな指の回転。その直径を少しづつ狭めていき、膣口に狙いを定めていく。  
柔らかな土手に囲まれた粘膜の中心に薄膜の集合を見つけ、指で突いてみる。  
ひだで幾重にも飾り立てられたその門は、ノックの度に粘液をとろりと吐き出した。  
壊れ物に触れるように慎重に、指先に力をこめると『ぬるり』と侵入する。  
そのまま指の根元まで差し込むと、マリアのそこがネルの指の形をなぞるように変型していった。  
「…!入れっ…ちゃあ…」  
やがて指の形になっていた肉の壁から、大小様々のひだが起き上がってくるのを味あわされる。  
無数のそれらはネルの指をもっと奥へと招くように、根元から指先へ、根元から指先へと撫で付けてきた。  
その動きは規則的で、独立した意志を持って求めてきているように錯覚させる。  
「だぁめっ、ダメ!ぁあー!」  
マリアの内側がネルの指をぎゅうぎゅうと二度締め付けたかと思うと、一層きつい三度目の締め付けと同時に盛大に潮を吹き出す。  
同時にその腰が天を突くように持ち上がってはベッドに打ち付けるように沈んでいく。そんな動きを五・六回ほどくり返した。  
 
「怖がらないで…何度でもイっていいんだよ?」  
熱いほとばしりが止むのを待ってから、ネルはそう言ってゆっくりと指を動かした。  
指の腹でマリアの膣ひだを延ばすように、丹念に擦りながら敏感な部分を捜していく。  
具合の良さそうな部分に指が届く度に、マリアの腰が浮き上がった。  
ひだをかき分ける度に更に細かいひだがネルの爪の間に引っ掛かる気がして、自身も指先から充分に性感を得ている。  
ネルの閉じた花弁の内側では体液がせき止められ、腰を揺すれば水音がしそうなほどだ。  
不意にマリアに挿入していた指をカギ状に曲げ、彼女の内壁を腹側に押し上げるようにして刺激した。  
もちろん先ほどの探索で探った最も敏感な部分を、である。  
「いっ、いやぁーあああああ!」  
その瞬間、尻を天井まで向けそうな勢いでマリアの腰が跳ね上がったかと思うと、両足の間から一際太い水柱があがる。  
不随意的に腹筋が収縮して可愛いへそがビクンビクンとうごめくと同時に、ネルの右腕をひじまで新たな愛液で上塗りしていった。  
マリアの身体が力なく折れ、肉壷を天に向けて『まんぐり返し』の体勢になる。  
ネルはそのまま彼女の腰を左腕で捕まえると、右腕を突き立てるように構えて更にマリアの内壁を摩りあげる。  
「はんっ…ぁふ!」  
その腕のストロークごとに体液がかき出されて、マリアのへそから胸、そして顔まで濡らしていく。  
肉壷の内側でネルが指を曲げたままグルリと腕をひねると、丸まっていたマリアの背が今度は一気に伸び上がって、ベッドの上で逆立ちするような姿勢のまま幾度目かの絶頂を迎えた。 

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