イリスの野
「結構奥まで来ちゃったけど…大丈夫かな?」
薄暗いイリスの野の奥深く、壊れた橋を越えて大分歩いた所にスターアニスは居た。
ただ散歩に来たわけではない。細工の材料となる水晶や石、他のクリエイターのための薬草や香草を取りに来たのだ。
本来、こういった物は店で買うのが普通だ。が、ここのところの魔物の狂暴化で品物の入荷が著しく遅れているらしく、
また万が一目当てのものが入荷されたとしても、以前のような値段では買えなくなっていた。
よって、今のスターアニスのように、クリエイターが毎日材料の調達に通っているのだ。
調達できる物には限度があるが、それでもできるだけコストは減らしたい。
危険な為に本来は二人一組で行くのだが、今回は手の空いているクリエイターがいないのと、
スターアニスにも施術の心得があったのとで、一人で行くことにしたのだった。
(それに…)
今はあまり人と接したい気分ではない。
フェイトが去った今、楽しかったはずの何もかもが、空しさを広げるものになってしまった。
そう、フェイトは去った。この星から。
フェイトは去り際に真実を言った。
それは到底スターアニスに理解できるようなものではなかったが、苦し紛れの虚構ではないというのは解った。
(私も、落ちこんでる場合じゃないよね…)
そう思っても、心が晴れる事はなかった。あの日、できる事なら大声で泣きたかった。行かないで欲しいと喚きたかった。
そんな事が、できるはずもなかった。
「…帰ろう」
淋しげに呟き、スターアニスは踵を返した。否、踵を返そうとした。
「ひゃっ!?」
だが、何かにつまずいて転倒する。抱えていた材料入れがスターアニスの体から離れ、中身を辺りにぶちまける。
「痛い…」
率直な感想を述べ、体を起こそうとする。
「え…?」
だが、足が全く動かない。何かが絡まっているのか、とローブを捲し上げた途端、
スターアニスの目に見た事もない異形の物が映った。
「しょ、触手…?」
スターアニスの足を掴み、地面から生えているそれは、明らかに触手だった。ぬらりと光る紫色の触手。
グロテスク以外の何物でもない。
(魔物!)
そう理解し、スターアニスは手近な石を掴む。
ぐいっ
「あっ!」
だが、振り上げた瞬間に別の触手に掴まれ、その反動で石を取り落としてしまう。
この時すでに、無数の触手がどことも知れぬ地面の中から姿を現していることに、スターアニスは気付いていなかった。
「えっ…?あっ、いやぁ!」
四肢を固定され、動けなくなって初めて、自分が逃げられない事を知る。
蹂躙されるのは四肢だけではない。いくつかの触手がローブの中に侵入する。
ビッ…ビリッ!
そして、内側から破る。ローブだけでなく下着まで、全てを。
「きゃぁ!」
白い肌を露わにされ、スターアニスが素っ頓狂な声をあげる。だが触手どもは意に介さず、欲望のままに行動を開始する。
触手が胸に群がる。粘液に濡れた触手に乳首を弄ばれ、意識とは反して固くなってくる。
(こんなの…いやぁ!)
「んっ…く、はぅ!」
頭の中では否定していても、敏感な部分を刺激された事で喘ぎ声が出てしまう。
スターアニスの頬が紅潮してくると、触手は下半身へも迫った。秘唇に沿って、一番敏感な部分を巻き込みながら擦る。
「ひゃぁっ、ん…や、はぁん!」
大事な部分を魔物に侵されている羞恥が、スターアニスを昂ぶらせる。いつのまにか、嫌悪に染まっていた声に、官能の色が着いていた。
と、触手の動きが止まった。刺激がなくなった事に疑問を憶え、スターアニスが視線を動かす。
その先に、他の触手とは明らかに異なった、赤い触手が二本あった。先端も他と違い、何かを射出するための穴がある。
何を出すのか…その答えはそう多くはない。
ガッ
「あっ!」
突然足を大きく開かされ、スターアニスは驚きの声を上げた。
自分でもわかるくらい愛液と触手の粘液でしとどに濡れた秘所が、赤い触手の前に晒される。
スターアニスは情けなさと、これからされる事への期待に複雑な感情を抱きながら目を瞑った。
今まで股間をなぶっていた触手が離れ、赤い触手がスターアニスの秘所を弄ぶ。赤い触手は他の触手よりも硬度を持っているようだった。
「んふ…あんっ!」
先ほどとは違う感触が淫核を刺激する。その度にスターアニスの腰がビクリと動く。妖艶な声が発せられる。
すでにスターアニスの中から出てくる愛液は下の地面に水溜りを作るほどになっており、時折淫らな水音が聞こえる。
赤い触手はその量に十分だと思ったのか、先端をスターアニスの秘所に押しつけた。
「あ…!」
スターアニスが口を開いたのと同時に、
ズリュッ ズリュッ
触手は膣内に進入した。
「ひぅっ…!」
短い、悲鳴に似た声をあげ、スターアニスの瞳に涙が浮かぶ。
処女ではないとはいえ、挿入に慣れていないスターアニスには愛液の助けがあっても相当な痛みを伴う。涙の理由はそれだけではないかもしれないが。
しかしそんな思いを触手が知る由もない。奥まで入るやいなや、すぐに抜く直前まで戻し、また奥まで突き上げる。
「ふぁ、あ、あぁ!」
規則正しく繰り返される運動に、痛みは痺れへ、痺れは快感へと変わっていく。流れ出る愛液がその後ろの穴まで濡らしていた。
そして、それを狙っていたかのようにもう一つの赤い触手がスターアニスのアヌスを突く。
「え…ぁ…いやぁあぁぁ!」
前戯などない。躊躇いもなく限界まで腸を侵され、スターアニスは今度こそ悲鳴をあげた。だが、抜いてくれるわけではない。
排出されるだけのはずの不浄の地までも侵入され、痛みと苦しさに唇を噛む。そのあまりの強さに血が出、口内に鉄の味が広がる。
「はっ…はっ…えほっ…んっ、はぁ!」
空気を求めて喘ぐ彼女をよそに、いやむしろそれを楽しむかのように、触手は膣内とアヌスを交互に攻める。一方が抜けば一方が入れる。
洗練されたリズムがスターアニスの中をかき乱す。
スターアニス自身はといえば、後ろの処女を奪われた痛みもすでに消えたかのように恍惚とした表情すら浮かべていた。
「はぁん!ふぐぅ…んっ!んん!」
証拠に、声に切羽詰まったものが混じってきている。紛れもなく、絶頂を迎えようとしている証だ。
同時に、触手の動きも俊敏になる。
「んぁっ!そんな、したら…すぐっ、いっちゃ…!」
触手の動くタイミングが変わる。交互に攻められていたものが、いつのまにか同時に攻められている。
「お腹、いっぱい入って来てっ…も、だめぇっ!」
四肢を束縛されながらもスターアニスが絶頂に震える。
スターアニスは気付いていなかった。性交という行為にあって然るべき現象に。気付いた所で防ぎようもなかったが。
どぷっ!
「…え?」
体内の流動感にスターアニスが声をあげる。
びゅくっ!
「なにか…出て…?」
朦朧とした意識の中、一つの単語が浮かび上がる。
口に出す事すらかなわず、スターアニスは絶望に顔を歪めた。
「…い、や…そんなの…」
のどかな野の奥深くで、絶叫が響いた。