カルサアの工房でクリエイションに励んだフェイト達一行。  
疲れきった皆をいたわるため、ネルとソフィアは腕によりをかけて、  
豪勢な食事を振舞った。  
テーブルを埋め尽くす料理に皆は夢中になり、空になった食器が下げられ、  
そろそろ部屋に引き上げようかという頃。  
「あの、ネルさん。これ……」  
ソフィアが手にしている皿を見て、ネルは目を剥いた。  
 
「はー。腹いっぱいになったら眠くなってきたな。そろそろ行くとするか」  
「うん。ネルさん、ソフィア、おいしかったよ。また食べたいな」  
「……行くか」  
男3人が出て行きかけたその時。  
 
ひゅん。  
 
ネルは3人に向かって包丁を投げつけた。ドアに刃が突き刺さる。  
「わわっ!?」  
思わず腰を抜かすフェイト。逃げようとした鼻先にもう一本。  
「ネルさん! クリフさんはともかくフェイトに当てないでくださいよ!?」  
悲鳴混じりにソフィアが叫ぶ。  
 
戦慄する男3人の目の前で、ネルはさらに包丁を構える。  
「アルベル」  
「何だ」  
「あんた、このまま帰ろうっていうんじゃないだろうねぇ……?」  
 
対峙するネルとアルベルを見て、フェイトは肩の力を抜いた。  
「よくわからないけど、僕らには関係ないみたいだね」  
「巻き込まれないうちに帰るぜ」  
フェイトはクリフと共に、急いで逃げ出した。  
 
「ソフィア」  
ネルに言われてソフィアが厨房から皿を持って来てテーブルに置く。  
「これは何なんだい? 知らないとは言わせないよ!」  
机をドン、と強く叩く。皿が飛び上がって中身が跳ね上がった。  
 
殺気の満ちる室内には不似合いなそれは、カレーのついた星型のニンジン。  
つまり、食べ残し。  
 
「あんたね……24にもなってニンジン残すなんて、ふざけんのは服装だけにしときな!」  
「あぁ!? 食えねぇモンは仕方ねぇだろうが!」  
 
「アルベル様はニンジン嫌いなんですよねー」  
工房に残って作業していた元・カルサア修練場の配膳娘マユが、ソフィアに囁いた。  
「だからアルベル様のだけいつもニンジン抜かないといけないからめんどくさくって」  
「それ、すごくかっこ悪いね……」  
 
くるっと体の向きを変えて逃げようとしたアルベルに向けてネルは手首を一閃させた。  
「どこへ行こうってんだい?」  
 
ぶす。  
 
包丁は逃げるアルベルの腰布を壁に縫いとめ、アルベルは無様に転倒した。  
その背中をネルがぐい、と踏みつける。  
「ぐっ……!」  
「食べ物を粗末にするからバチがあたるんだよ! 全部食べてもらうからね」  
食べ終わるまで帰さない。冷たく言い放って、ネルはアルベルを  
テーブルへと引きずっていった。  
 
「漆黒団長ともあろうものがなんて情けない……」  
「…………」  
頭を抱えてうめくネルと、フォークを握ったまま動かない仏頂面のアルベル。  
皿を前にしたまま、30分が経過していた。  
マユとソフィアはすでに呆れ果てて帰ってしまっていた。  
「まさか本当に食べられないとは思わなかったよ」  
ネルはため息をついた。  
「食わず嫌いとか、苦手なぐらいかなと思ったんだけどね。貸しな」  
アルベルの手からフォークを取り上げ、10個ある星型ニンジンのうち5つを  
ひとまとめにして口に放り込む。  
まずくないことを教えるために、まず親が食べてみること。  
達成感を与えるために、最初は少しずつからはじめること。  
この2つが偏食に対するしつけの基本だとどこかで聞いたことがある。  
……しつけ!?  
ネルの手からフォークが落ちた。  
24にもなった男を相手に食事のしつけ……かい。20年前に済ませておくべきことじゃないか。  
再びアルベルにフォークを握らせてネルはふらふらとテーブルに突っ伏した。  
「阿呆、一気にニンジン食うから気分が悪くなるんだ」  
隣の男は、何か決定的に勘違いしている。  
「あんたと一緒にするんじゃないよ!」  
 
こんなとき、人心掌握に優れていると言われるクレアならどうするだろう。  
クレアになったつもりで考えてみる。  
きっとこうだろう。笑顔でアルベルの正面に座って、上目遣いで両手など組んでみて。  
アルベルさんならきっと全部食べられますよ、とかなんとか言って手を……  
 
「私にできるわけないじゃないか!!」  
テーブルに拳を叩きつけた。勢いで隣の男のこめかみに肘が当たったのは気にしない。  
将来、ちっとも働かないダメ夫を叱ることがあるとしたら、きっと今と同じ気分だろう。  
 
「じゃあこうしようか」  
ネルは少し妥協することにした。厨房に残っている食材を思い浮かべながら言う。  
「残りの5つ、全部片付けたら好きなもの食べさせてあげるよ」  
見ていてプレッシャーになるといけないので、後ろに回って肩に手を置いた。  
「がんばりな。私だって、嫌いなあんたをなんとも思わなくなるようにがんばったんだから」  
フォークを持つ手を軽く叩いてやると、ようやくのろのろと手が動き出した。  
 
さらに30分後、ようやく皿が空になった。  
「やればできるじゃないか! さ、約束だ、好きなもの食べさせてあげるよ。何がいい?」  
アルベルは水を一息に飲み、口を拭ってから腕組みして考えた。  
「腹は減ってないが……ああ、これがいい」  
ネルの乳房をぎゅっと乱暴につかんで言う。  
「ずっと背中に当たって気になっていた。おかげでニンジンの味はわからなくなったがな」  
後ろから覗き込んでいたのだから、密着したのは当たり前といえば当たり前だ。  
「ずいぶんと贅沢な注文じゃないかい?」  
「あぁ? 何でもって言ったのはテメェだろうが」  
「確かに言ったさ。あんたのことは嫌いじゃないとも言ったね。  
 はぁ……あんたのニンジン食えってことかい……」  
 
まぁ、がんばったからご褒美だよ、とネルは服を脱ぎ捨てた。  
アルベルをまたぐようにしてヒザの上に座り、顔に乳房を押し付ける。  
「ほら、好きにしな」  
首に手を回して挑発すると、すぐに乳首に生暖かい感触が伝わった。  
「あぁ……いいよ、んんっ…」  
乱暴に吸われ、揉まれるのがたまらない。乳首がつままれるたびに体に電流が走る。  
思わずアルベルの頭を抱え、髪に顔を埋めた。  
口内で自在に嘗め回される感触に声が押さえられない。  
「はあぁっ! ……うぅ……もっと……はぁ…」  
ぎゅっと両方の乳房が強くつかみ上げられ、乳首に歯が立てられる。  
「はふ…あ……あああああぁっ!」  
ネルの体がビクンと跳ね上がり、崩れ落ちた。  
 
「胸だけでイったのは初めてだよ。あんた意外とうまいんだね」  
アルベルの長い前髪をかきあげて唇を重ねる。  
「ん…んあ……」  
少しだけ互いに舌を絡めあい、すぐに唇を離した。  
不満げなアルベルにウィンクしてみせると、その口を下に持っていき、  
アルベルの腰紐を咥える。  
口だけで器用にほどき、下着も口だけで引き降ろすと、床にヒザを付いて  
自分の両胸を持ち上げた格好でアルベルを見た。  
「これと口、どっちがいい? 選ばせてあげるよ」  
唾液で光る乳房と、艶かしい舌が覗く口。どちらも捨てがたい。  
アルベルは迷わなかった。  
「決められねぇ。両方だな」  
「正直だね。じゃ、まずこっちからいこうか」  
剛直を両方の乳房で挟み、ぬるぬると前後に動かす。  
「どう? ……はぁっ…ん…」  
肉棒の刺激でまた感じてしまう。  
「悪くねぇな」  
口では強がっているが、はちきれんばかりに膨張した肉棒は爆発寸前だった。  
「もう限界かい? だらしないねぇ」  
竿を口に含み、唇で刺激しながら舌の先でチロチロと先を舐める。  
かと思うと喉の奥まで咥え込んで強く吸い上げた。  
「ぅあぁっ! 出るぞ!」  
ドクン、と口の中で肉棒が脈打ち、白い液体が吐き出された。  
ネルはそれを残らず飲み干し、さらには唇を使ってしごきだし、  
最後に上目遣いでアルベルを見上げながら、先端に口付けて最後の一滴を吸い取った。  
その仕草に、アルベルの欲望が再び立ち上がり始める。 
 
「悪ぃな」  
下半身の状態とは裏腹に、アルベルから出たのは意外な言葉だった。  
ガントレットを外した手でぎこちなく髪に触れてくる。  
要するに、口の中に出してごめん、とかそんなことが言いたいのだろう。  
「カタナばかり振ってたら、商売女以外はさっぱりでな」  
「さっきから妙に静かだと思ったら、そういうことかい」  
「うるせぇ」  
顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。  
 
やれやれ。  
ニンジンの次は女の抱き方まで面倒みないといけないのかい。  
でも孤高を気取るコイツがそんなことを口にしたというのは、  
少しずつ心を開いて、私に歩み寄っている証拠かもしれない。  
それなら少しぐらい手伝ってやるのも人情ってもの……なのかねぇ?  
 
アルベルが向こうを向いている隙に、ネルはテーブルの上のコップに手を伸ばして  
水を口に含み、口内に残るアルベルの精を流した。  
これでキスしてもOK。  
準備完了、と判断したネルは、再びアルベルのヒザの上にまたがった。  
そのまま腰を降ろそうとしたが、なんとなくためらってしまう。  
中腰の姿勢で固まるネルを、アルベルの両腕が支えた。  
「どうした?」  
「歪のアルベルとこんなことすることになるなんて、って思っただけさ」  
覚悟を決めてゆっくりと腰を下ろす。  
入り口にブツが当たるところまで下ろしたが、やはりなんだか照れくさい。  
「どうした? イヤなのか」  
「嫌ってわけじゃないけどさ、なんとな……あああぁあぁっ!」  
いきなり両腕で引きずり落とされた。  
体内で熱い塊が脈打っているのを感じる。  
「好き嫌いはよくねぇぞ、ちゃんと食え」  
「バカっ!」  
 
前後に揺すられて息が詰まる。  
深い部分まで貫かれ、アルベルの存在を嫌というほど感じさせられた。  
負けじと相手の肩に手をかけ、自分から貪り始める。  
「……あ……あっ……あんっ……んんっ!」  
「くっ……締まるな」  
「当たり……前さっ…! ちゃんと毎日鍛えて……あうっ!」  
どこで覚えたのか知らないが、本当に胸をいじるのだけは上手い。  
乳首を舐められ、軽く歯を立てられ、腰を動かすのを忘れそうだ。  
 
じゅぷ、じゅぷという淫猥な音と二人の吐息が工房に響く。  
「ん…はぁ……あ……あうっ…」  
下からも突き上げられて、どんどん上り詰めていく。  
体がびくびくと震え、アルベルの上に強く引き降ろされた瞬間。  
「ふあっ、あっ、駄目っ、は、ああぁっ!」  
頭の中が真っ白になって、膣が思い切り締まる。  
背中に回されたアルベル手にも力が入り、熱い精が体内に注ぎ込まれた。  
 
ぐったりとして余韻に浸っていると、顎が持ち上げられて唇が重なった。  
「キスは駄目だよ」  
男を押しのける。セックスの後のキスは本当に危険だ。  
「何でだ」  
「惚れた相手だと勘違いしそうになるんだよ」  
「フン」  
再び唇が奪われる。髪をつかまれているので今度は逃げられない。  
歯列を舐められ、舌を蹂躙され、やはり勘違いしそうになる。  
……勘違いなら、明日の朝忘れればいいか。  
割り切って舌を受け入れ、また胸をまさぐる手に身を任せた。  
 
さらにお互い激しく貪りあって数回果てた後、ようやくアルベルが離れた。  
ガントレットを拾い上げようと身をかがめたその鼻先で、  
ネルはガントレットを蹴り飛ばした。  
「あぁ?」  
「食べ残しはよくないだろう?」  
笑いながら男の竿をぐっと握り込む。  
「まだこんなに元気なのにさ」  
「いや、もうさすがに……うわっ、やめろー!」  
 
その後、アルベルはニンジンを見るたびにネルのことを思い出し、  
違う意味で食べられなくなったという。  
 
おしまい。 

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