地球で言うクリスマスの夜。
スフレは一人でアーリグリフ城の物見の塔に来ていた。
フェイトに聞いたところによると、アルベルはこの上にいるという。
螺旋階段の下から見上げる空は白い雪があとからあとから落ちてきて、
吸い込まれそうだと感じるほど幻想的な光景だった。
「うっわぁ。すごーい!」
素直な感想を口にしたスフレに、思わず見張りの兵士の顔もほころぶ。
「上、行っていい?」
「どうぞ。滑らないように気をつけてくださいね」
タッタッタッと軽快な足音を立ててスフレは階段を駆け上がった。
空から少しも目が離せない。
並みの人間なら凍った階段に足を取られて転ぶところだが、スフレの足は
持ち前の運動神経で乱れなかった。
「こんな雪の中で公演してみたいなぁ」
スフレの脳裏に、何度も練習した歌のメロディが浮かぶ。
「ジングルベ〜ル ジングルベ〜ル 鈴が鳴る〜」
歌いながら走っていくスフレの前に、突然人影が立ちはだかった。
勢い余ったスフレのおでこが、その腹に当たってぺちっと音を立てた。
「今日は楽しい〜クリスマスッイエイ! ……あ、このおなかはアルベルちゃんだ」
「テメェは腹で人の区別つけてんのか?」
スフレの前に現れたのは『アルベルちゃん』だった。
怖そうな外見はしているが、スフレはこの青年が大好きだった。
話しかけられるとついうれしくなって、それが顔に出てしまう。
「ええと他のみんなだと、ぽむとか、ぺたとか、ぱふとかそういう感じ!」
「わかんねぇよ。とにかく危ないからこっち来い」
頭を押さえつけられて壁の影に連れ込まれるのも、大事にされてるみたいでなんだかうれしい。
しばらくドキドキする気分を堪能してから、スフレは刀を肩に乗せて塔から下を
見下ろしているアルベルに声をかけた。
「ねぇアルベルちゃん、何が危ないの?」
「ああ。今日はクリスマスだから惨太が来るらしい。その警備だ」
真顔で言い返されてスフレはきょとんとなった。
「……え?」
「知らねぇのか。クリフも歌ってたぞ」
「ねぇ、それってひょっとして……」
記憶をたどって『サンタが町にやってくる』を口ずさんでみせると、アルベルは頷いた。
「それだ。角の生えた化け物に乗って煙突から潜入して子供の寝込みを襲うらしいな」
何をどう解釈したのか、根本的に間違っている。
「あのねアルベルちゃん、惨太ちゃんじゃなくてサンタちゃんだよ。
サンタちゃんはいい子にプレゼントくれるんだよ」
慌てて説明してもアルベルは呆れた顔で首を振っただけ。
「いくらガキでもちったぁ頭使いやがれ。そんなおいしい話があるわけねぇだろ。
見つけ次第、もうあの洞窟から出てくる気が起きねぇように叩きのめしてやる」
ガントレットの爪を光らせて笑うアルベルを見つめながら、スフレは頭の中で必死に作戦を練っていた。
やけに見張りの人数が多いと思ったらこういうことだったらしい。
このままではホワイトクリスマスを彼と二人きりで過ごす予定は潰れてしまう。
どう説明したらわかってもらえるかな、とスフレが悩んでいると、
「それよりテメェはなんでこんなところにいるんだ」
とたずねられた。
「うーんとね、アルベルちゃんに会いに来たの」
正直に言うとアルベルは怪訝な顔をした。面倒くさそうにあれこれ考えている。
「何で俺を……ああ、腹でも減ったか?」
「それもあるけど。クリスマスのもうひとつの意味って……知らない?」
「知らねぇ」
「えっとね、男の子と女の子が、こういうことする日なんだよ」
スフレはすばやくアルベルの首に手を回して口付け……ようとしたが背が届かない。
精一杯勇気を出したのに、背伸びするスフレを見下ろす相手は冷めた表情。恋って難しい。
しかし30分後、恋の奇跡でもなんでもなく、二人は宿にいた。
押し問答していたら、痴話喧嘩と勘違いした見張りの兵士たちにたたき出されたのだ。
優先的に夜勤なんぞさせられるのは独り者と相場が決まっている。
要するにむかつくからどっかいけ、ということで、アルベルは無理やり欠勤届を書かされ、
スフレはさっさと結婚届を書いてしまえとそそのかされ、飛竜まで使って宿に運ばれ……
というより放り出されたのだった。
物事というのはどこでうまくいくかわからない。
ちょこまかとアルベルの一歩先を走ってベッドの上に陣取り、
さっそくスフレは単調直入にお願いしてみた。
「抱いて」
「ガキが何言ってやがる」
暖炉に薪を投げ込む姿勢そのままで即答された。しかしこんなことぐらいで挫けたりはしない。
「どうしてもダメなの?」
「当たり前だ」
予想はしていたけれど冷たすぎる。
クリスマスだからといろいろ心の準備をしてきたのに、これでは悲しくなってしまう。
「ねぇアルベルちゃん、お願い!」
背中を向けているアルベルの後ろ髪の片方を引っ張って訴えても返事はつれない。
「あのな、ガキのうちからそういうこと言ってると、そこらの淫売みたいになっちまうぞ」
聞きなれない言葉にスフレは首をかしげた。
「インバイって何?」
「あー、その、春を売る仕事というか……」
「春を売るってちょっとロマンチックだね」
夢見るような表情になったスフレにアルベルの怒声が降り注ぐ。。
「阿呆、金もらって男にヤらせる仕事のことだ!」
「お金もらって男の人に何をさせるの?」
「…………」
突然アルベルがどさりとスフレの横に腰を下ろした。
「テメェ、ホントに何するのかちゃんとわかってんのか?」
靴を乱雑に脱ぎ捨てて胡坐をかいて座り、腰布をずらしてスフレの目に隆起を見せた。
「見ろ。これがテメェの中に入るんだが」
想像より大きなものが目に入って、スフレは思わず目をそらしてしまった。
どういうことをするのかは知っていたが、いざ目の前にするとどきどきする。
「無理だろ? しかも最初はめちゃくちゃ痛いらしいぞ」
「へ、平気だもん!」
恥ずかしいしちょっぴり怖いけど、ここで引いたらこんなチャンスは多分2度とない。
光焔に眩み姿見えざるレナスちゃん、アタシの恋心に僅かなる勇気与えたまえ!
スフレは意を決して目の前にあるそれを口に含んだ。
「んぐ……おっきぃ……」
「お、おいテメェ何してる!?」
「ソフィアちゃんが教えてくれたもん! 男の人はこうすると喜ぶよって」
「教えてくれただと?」
「うん!」
「あの淫乱め、ガキに何吹き込んでやがるんだ」
「インランって何?」
「うるせぇ」
アルベルちゃんは何か怒っている様子だけど、ダメとは言われてないから続けていいんだね、
と好意的に解釈してスフレは再びアルベルのモノを口に含んだ。
が、スフレの口には大きいので結局舐めるしかない。
「む……わ、大きくなってきた」
「あのなぁ」
つついたりして嬉しがっていると肩をつかまれて引き起こされた。
「ガキのやることじゃねぇって。さっさとメシ食いに行くぞ」
呆れた口調でそう言うアルベルの腕を、すかさずスフレは胸に抱きこんで止める。
「アルベルちゃんはすぐそうやって子供扱いするんだから!」
「実際にガキだろーが」
「アタシはアルベルちゃんのこと大好きなの!」
「わかったわかった」
「ぜっんぜんわかってない!」
抗議のつもりで目の前の胸をにぎりこぶしでどんどんと叩いたけどびくともしない。
「バカにしないでよ。アタシは本気なんだよ……? それともアタシのこと嫌い?」
「阿呆、好きとか嫌いとか言う以前の問題だ。ガキなんて相手にできるかよ」
さすがにこれにはスフレもむっとした。アルベルの股間を指差して言う。
「大きくなってるくせにー!」
指摘されてアルベルががっくりと肩を落とした。手で顔を覆ってなにやら言い訳している。
「仕方ねぇだろうが。こればっかりは自分でどうこうできるもんでもねぇし」
「でもー!」
さらに食い下がるとアルベルはヤケを起こしたようでベッドにごろりと横になった。
「クソッ、勝手にしやがれ」
「いいの!?」
「ああ。好きにしろよ」
「ありがとう!」
逃げられないうちに素早くアルベルの腹の上に乗り、そこで手が止まった。
「で、どうするの?」
スフレの足の下でなんだかアルベルは泣きそうな顔になった。
「あの女に教わったんじゃなかったのか?」
「これ以上はぜんぜん!」
「何で特殊なことから教わってくるんだ……。
仕方ねぇ、さっさと済ませるから協力しやがれ。両手上げろ」
「さいたまさいたまー」
妙な掛け声で素直に両腕を上げるとキャミソールごと服をひっぺがされた。
続いて腹の上から引き摺り下ろされて下着ごとスパッツ。
「きゃああ」
あたふたしてる間に素っ裸にされ、ベッドの上に放り出されるような形になった。
さらにアルベルは強引にスフレの足を開き、その間に顔を埋めた。
「ねぇ、何するの?」
「舐めて濡らして突っ込む。わかったら黙れ」
「え、わかんない……ひゃああ!」
心の準備もなく舐められてスフレはのけぞったが、アルベルの腕に押さえ込まれてしまう。
ぴちゃぴちゃという音が暖炉の薪がはぜる音と一緒に室内に響いた。
「や、やだ恥ずかしっ……ふぁ、ひゃう!」
舌はスフレの秘所を押し広げるように動き、そのたびに甲高い声が出てしまう。
「あ、あん、や、やだやだやだ、おかしくなっちゃうよ! あ、や、やぁっ」
スフレが達しかけたとき、アルベルが顔を離した。
股間にもどかしい感触が残り、太ももをすり合わせようとしたが足の間にはアルベルが。
そしてその足が、胸に押し付けられるように持ち上げられた。
「入れるぞ」
スフレの腰を抱えたアルベルの腕に力が入る。
「こ、怖いよ」
「テメェから誘ったんだろうが」
「ちょっと待って!」
迫ってきた胸を両手で力いっぱい押すと、アルベルは拍子抜けするほどあっさりと身を引いた。
「え、やめちゃうの?」
「テメェが嫌がったんだろうが」
真顔で犯罪者にはなりたくねぇ、とまで言われた。
「やめなくていいよ!」
「どっちなんだよ……」
「ちょっとぐらい怖がったほうがいいってネルちゃんが教えてくれたのー」
うめきながらアルベルが肩を落とした。股間のナニもちょっと力を失ったように見える。
「エロ隠密め……」
ぐったりしながら呟いたアルベルの腕が、再び腰に回った。
入り口に押し当てられる熱いモノの感触に、覚悟を決めて目を閉じる。
「力抜けよ」
「うん」
答えるや否や、体の中で何かがはじけるような感触と苦痛がスフレを襲った。
「い、いたあぁぁぁぁぁああい! 抜いて! 死んじゃうよ!」
「痛いって言っただろ!? いちいち暴れるな! クソッ、手間かけさせやがって!」
アルベルの手が、泣き叫ぶスフレの胸に伸びた。
小さな乳房を弄び、乳首をつまんでスフレの気をそらそうとする。
その姿にスフレの心がちくりと痛んだ。
「ごめんね、無理言っちゃって……アタシは運動してるからあんまり痛くないよって
マリアちゃんに言われたんだけど、やっぱり痛いね」
「…………」
「あのね、動いていいよ。好きにして」
「無理するな」
「大丈夫。アルベルちゃんのこと大好きだからガマンできるよ」
アルベルは少しずつ腰を動かし始めた。
動かれるたびに痛みは感じたが、愛液で流されるように少しずつ引いていき、
変わりに痺れるような感覚が体の奥から沸いてきた。
「ん……気持ちいい…んっ、ふぁ……っ」
もう肌を打ち付けられる音と粘液の音、お互いの息しか耳に入らない。
深く浅く、何度も出入りするものの熱さがスフレの気持ちをますます高ぶらせた。
やがて、先ほど秘所を舐められたときのような衝動が下腹に湧き上がった。
「や、やだ、アタシもう、あ、ああああーーっ!」
汗ばんだ体を大きくのけぞらせてスフレは初めての絶頂を迎えた。
「う……まだ入ってるみたい……えへへ」
口についたよだれを拭ってようやく起き上がると、今自分の中から抜き出されたばかりの
アルベルの逸物が目に入った。
愛液でぬらぬらと光り、まだ硬度をしっかり保っている。
「アルベルちゃん、まだでしょ?」
前に回り込んで観察しようとすると、肩を押されてベッドの上で転がってしまった。
「気にすんな。この耳年増」
口調は冷たいが、明らかにちょっと無理している。
「うふふー。果物で練習したからアタシに任せて!」
逃げられる前にさっと飛びついて口に含み、今度は焦らすように丹念に舐め回す。
「さっきアタシも舐めてもらったもんねー」
指で根元を刺激しながら先っぽを舌でチロチロと刺激する。
「ミラージュちゃんに教わったんだよ!」
「くっ、ロクでもねぇ女ばかりかよ……」
肩に置かれたアルベルの手に力が入った。限界が近いらしい。
ちゅ、と先端に強く口付けした瞬間、白濁が飛び散ってスフレの褐色の肌を汚した。
「わわ、いっぱい出たね!」
「悪ぃ、顔にかけちまった」
「いいよ、でも……」
一緒にお風呂に入ろうね、とスフレはにっこり微笑んだ。
翌朝。あの後二人で食事をして一緒に眠ったスフレは満ち足りた気分で目を覚ました。
今日はとてもいい天気だ。
「おはよう、アルベルちゃん」
隣に眠る彼のおなかに甘えて手を伸ばすと。
むに。
「え?」
音が違う。しかも、やけにむちむちとしてて白くて何か絵が書いてあるこのおなかは……。
「おはようございます」
いきなり自分の横でむくりと起き上がったよく分からないが見覚えのある生物を見て、
スフレは驚いてベッドから落ちそうになった。
「えーと……惨太ちゃん……だよね?」
「はい。毎度おおきに〜」
「アルベルちゃんは!?」
ああ、と呟いて惨太は大きな体をよっこらしょとずらした。
その下でアルベルがつぶれている。
「アルベルちゃんしっかりしてっ!」
「うぐ……花畑でオヤジが手招きしてる……」
スフレが助け起こしてがくがくと揺さぶるとようやくといった様子で起き上がったが、
そのまま再びぱたりと倒れてしまう。
「わー、どうしよう、アルベルちゃんが! 惨太ちゃんは何しにきたの?」
それはですね、と惨太はもぞもぞと荷物の中を探って包みを取り出した。
「クリスマスなのでお得意様にプレゼントです」
手渡された包みを開けると中には水色のチャイナ服。
「わぁ! でも何でチャイナ服なの?」
惨太は倒れたままのアルベルを指差した。
「そりゃあクリスマスですから彼氏さんとコスプレは基本かと」
喜ぶスフレの後ろで、アルベルがカタナを手によろよろと起き上がった。
「寄るな動くなくたばれ阿呆!」
渾身の一撃は窓を破壊して外にまで惨太を吹き飛ばし……
3日ほどアーリグリフの地下牢で過ごしたという。