12月、クリスマスを控えたペターニでも雪が降り始め、いつにも増して活気が溢れている。街頭には沢山のランプが吊るされ、歌声とざわめきが混じり、腹に変な顔を書いた異形の男(そもそも人?)までが路地を闊歩している。  
 そんな街の道を、アクアとエヴィアの親子は買い物を済ませて工房へと向かっていた。  
「アクア、今年のクリスマスはサンタさんに何をもらいたい?パパがサンタさんに言っておいてあげるぞ〜?」  
 アクアはぴたりと歩を止めて、エヴィアの顔をじっと見上げた。  
「急にどうしたのですか?去年まではそんな事一度も聞いたことなかったですよ?てっきりウチのパパはサンタさんに嫌われているのかと思ってたです」  
 アクアの質問にエヴィアの頬を一筋の汗が伝う。  
「そ、そんなことないぞ〜?パパはサンタさんとは大の仲良しなんだ。去年まではちょっと景気が悪かったみたいだったけど、今年は大丈夫!何でも欲しい物を持ってきてくれると言っていたぞ!」  
 必死で訴えるエヴィアを横目に、アクアはしばし考え込んだ。そして・・・  
「弟が欲しいです」  
「・・・え・・・?」  
 エヴィアの動きがピタリと止まる。  
「アクア、お姉ちゃんになりたいです」  
 
 ペターニの工房では、一仕事を終えたスターアニスとチリコが暖をとっていた。  
「本格的に冷え込み始めましたね」  
「そうだね〜、冬って寒いよね〜」  
 そう二人が話しているところに、バンッ、と大きな音を立ててドアが開き、アクアとエヴィアが入って来た。スターアニスは顔を綻ばせて二人を迎える。  
「あ、エヴィアさんアクアちゃん、お使いご苦労様。寒かったでしょう?」  
 しかしエヴィアは歩みを止めることなくスターアニスの前まで来ると、両手でがしっと彼女の肩を掴んだ。  
「・・・あの、エヴィアさん?」  
 スターアニスはきょとんとエヴィアの顔を覗き込む。  
「アニス殿・・・子供を作ろう!」  
「・・・はい?・・・」  
 スターアニスは目を点にした。  
「今度のクリスマスまでに子供を作ろう!」  
「え、そ、そんなの無理ですよっ・・・え、きゃっ!」  
 スターアニスの抵抗を無視して、エヴィアは彼女の身体を抱えあげる。  
「ちょっ、エヴィアさん降ろして下さい!」  
「さあ、いざ寝室へ!」  
「エヴィアさん!?エヴィアさんってば!きゃぁ〜っ!!」  
 そのまま二人は騒がしく扉の向こうに消えてしまった。  
 その様子を見ていたチリコはあっけにとられていたが、しばらくして訝しげに傍に居たアクアの方を向いた。  
「・・・アクアちゃん、またエヴィアちゃんに何か吹き込んだでしょ〜・・・」  
「気のせいですよ。アクアは子供だからムズカシイ事はよく分からないです」  
 しれっと言い切るこの少女を見て、毎度のことながら、末恐ろしいと感じるのだった。                 おしまい 

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