「……………はふっ…あ……んっっ……」  
 薄暗い部屋。黄色い毛髪をショートカットにした女性が、喘ぎ声を上げていた。息遣  
いを荒くし、自分の机に片手をついている。  
 「ふぁっ……ああ……フェイ…ト……さん………」  
 半開きの口から、ある青年の名が零れた。ここにはいない、あの青髪の青年。  
 彼女は花弁を弄んでいた右手を止めると、自分の目の前に持ってきた。  
 親指から中指まで、自分の体液が恥ずかしくなるくらい糸を引いている。  
 (……こんなに濡れるなんて……私……)  
 体は未だ快感を欲っしており、半ば無意識のうちに右手を足の付け根に戻した。  
 「………っ……」  
 声のない叫び。やがて絶頂を迎えた彼女は、そのまま机の上に突っ伏した。  
 
 
 
 「………」  
 
 私は……どうなってしまったのだろう。  
 自慰行為など、今までしたこともなかった。やり方もよく分からなかったし、それ以  
前にしたいとも思わなかったのだ。  
 
 「……ふぅ…」  
 
 領主の館、地下の大浴場。この館の主人は温泉好きだったので、このように10人は  
入れるくらいのスペースがある。  
 湯船に耳朶まで浸かり、タイネーブはぶくぶくと溜息で泡を立てた。  
 
 あの青年…フェイト・ラインゴッド。  
 初めは、ただの好意だった。空色のさらさらした髪、微かに碧色を帯びた瞳。  
 何となく、好意を持っただけだったのだ。よくある例えで言えば、男性が町中ですれ  
違った美女に好意を抱く、そんな感情でしかなかった。  
 しかし……カルサア修練場……そして銅鉱石運搬の時……二度も助けられた。そして  
やっと、自分の気持ちの変化に気付く。それはもはや好意などという生ぬるいものでは  
なく、そう……狂おしいほどの愛だった。  
 
 (………こんな……気分だったんだ……)  
 
 恋するということ。とても心地よく、そして苦しい。いや、その苦しささえも、だん  
だんと快感に昇華しつつある。  
 
 (………でも……)  
 
 果たして…彼の方はどうなのだろうか。  
 知りたい。自分の事をどう思っているのか、とても知りたい。  
 しかし、出来ない。恐いのだ。もし自分の勝手な片想いだったら、今の関係さえ壊れ  
てしまうかも知れない。  
 
 (…………意気地なし)  
 
 自分で自分を貶しても始まらない。が、覚悟のない自分にいつも呆れてしまうのだ。  
 ネル様、クレア様、ファリン…彼女たちの方が、きっとフェイトの目には自分なんか  
より魅力的に映るだろう。  
 
 考えてみれば、自分に好かれる要素などない。今日だって、話をしていたら無意識の  
内に彼を殴ってしまっていた。  
 (フェイトさんは気にしなくて良いって言ってたけど…)  
 本心ではかなり腹を立てていたのかも知れない。大体、そんな私の癖って一体…?  
 
 「……フェイト……さん…」  
 
 そう呟いた時だった。ガラガラと浴室の戸が開き、誰かが入ってくる。夜目の利くタ  
イネーブには、薄暗い浴室でも相手の顔がはっきり見えた。  
 (!! フェイトさん!?)  
 しまった、入浴中の札を出し忘れていた。  
 取り敢えず湯船に潜り、近くの大岩の陰に隠れる。幸い彼は疲れているらしく、細か  
く注意を払っていなかった。  
 と、再びガラガラと戸が開く。  
 
 「……フェイトさ〜ん」  
 
 (………え?)  
 
 何で…ファリンが? フェイトさんが入浴中だって知ってるのに…。  
 
 「ファ、ファリンさんっ!?」  
 フェイトは驚き、湯船に飛び込もうとする。ファリンはその腕を掴み、彼の体をスノ  
コの上に押し倒した。  
 「もぅ、何で逃げるんですかぁ?」  
 「いや…だって……。そ、それでどうしたんですか?」  
 自分も彼女も、一糸纏わぬ裸体である。フェイトは少し目を逸らすようにして、のし  
掛かっている女性に尋ねた。  
 ファリンは、何か楽しい悪戯を見つけた子供のように微笑むと、手を彼の下方へと伸  
ばす。  
 「ファ、ファリンさん。ここで……んむっ…」  
 戸惑った声は、彼女の林檎色の唇にかき消された。  
 「この前は、色々アレでしたからぁ…」  
 「で…でも、ここでやるんですか?」  
 「フェイトさんも、それがいいんでしょ?」  
 既に硬質化した彼自身を弄びながら、ファリンはずばり言い当ててみせる。勿論フェ  
イトに異存はなかった。  
 舌を絡み合わせつつ、フェイトは彼女の胸へと手を伸ばす。ファリンの喘ぎ声が、忽  
ちの内に激しくなっていった。  
 「あふぅっんっ、はっ」  
 彼の頭を抱え、顔を自分の胸に押し付ける。フェイトは桜色の突起物を舌先で転がし  
つつ、空いた手で乳房を軽く握り、下方の洞窟の周囲を指でなぞった。内部に中指を入  
れ、ゆっくりとかき回す。  
 やがて二人は、男の余分な部分と女の足りない部分を繋ぎ合わせた。  
 フェイトが腰を突き上げる度に、ファリンが恍惚とした表情のまま声を上げる。  
 「ひゃんっ…はぁふっっ……あっ…」  
 フェイトが小さく呻いた。次の瞬間、ファリンは体を痙攣させ、スノコの上に横たわ  
る。暫くぼんやりとした表情のままだったが、フェイトに助け起こされると、そっと唇  
を合わせた。  
 
 「…………!!!」  
 二人は、いつの間にあんな関係になっていたのだろうか?  
 タイネーブは、岩陰から一部始終を見ていた。知らず知らずの内に、湯船の中の指が  
下方へと伸びている。  
 (ファリン…あんな顔して……)  
 例え夕食にどんな大好物が出ようとも、彼女はあんな顔をしない。自分が初めて見る  
表情だった。  
 (……フェイト…さん…)  
 やはり…私はバカだった。もたもたしている内に、彼はこうしてファリンと結ばれて  
しまったのだ。  
 タイネーブは岩陰にもたれると、そっと溜息を吐いた。  
 「そーだ、フェイトさん。ちょっと目を瞑ってて貰えますかぁ?」  
 ファリンが彼の背中を流しながら、そう言ったのが聞こえた。  
 「え? 目を……ですか?」  
 「はぁい。少しの間だけ……」  
 「こうですか?」  
 「そうですぅ。いいですか、良いって言うまで絶対に開けないで下さいねぇ?」  
 「分かりました」  
 目を瞑り、フェイトは自分で背中を洗い出す。ファリンは湯船にはいると、そっと岩  
の陰へと近付いて行った。  
 「……タイネーブ?」  
 「!!?」  
 驚いて声を上げようとした彼女の口を、ファリンが素早く塞ぐ。そのまま、小さな声  
でお喋りが始まった。  
 
 「…見てましたねぇ?」  
 「いやっ私は……」  
 「ふふっ、照れなくてもいいですよぅ」  
 行為を最初から最後まで覗かれていたというのに、ファリンはにこにこしている。そ  
れが逆に恐怖に感じられ、タイネーブは俯いた。  
 「タイネーブも、フェイトさんの事が好きなんですねぇ?」  
 「………!?」  
 「だから、照れなくてもいいですよぅ。他の男の人は狸小僧、ヘソ出しプリンさん、  
 若作りマッチョさんとかですしぃ、それならフェイトさんしか残されてないじゃない  
 ですかぁ?」  
 かなり無茶苦茶なことを言ってのけたファリンだったが、ともかくフェイトのことが  
好きだと言う事は、タイネーブにしてみれば図星だった。  
 「……もう…いいのよ」  
 彼女は首を振る。  
 「フェイトさんがあなたと結ばれて幸せなら、私はそれでいいの。…………私なんか  
 じゃ、きっとフェイトさんは……」  
 そこまで言い掛けて、ファリンは突然タイネーブを湯船から引き上げた。口を押さえ  
て声を封じ、そっと彼女の股に手を入れる。  
 「っっっっっ!?」  
 「ほら、やっぱり濡れてるじゃないですかぁ。顔は大丈夫でも、心とこっちは号泣し  
 てますねぇ?」  
 「っ! っっ!!」  
 頬を真っ赤に染め、手を振り解こうとする彼女に人差し指を突き出し、ファリンはタ  
イネーブをフェイトの方へと引っ張って行った。  
 
 「ファリンさん? もういいですか?」  
 「まだですよ〜う」  
 フェイトは辛抱強く待っている。更に暫くして、突然背中に柔らかいものが押し付け  
られた。誰かと体が密着している。と、手が体を這い、自分自身に触れた。  
 「うっ……」  
 誰かの体は前に回り、彼自身が何か温かいものに包まれる。  
 「ちょ、ちょっとファリンさ…」  
 直ぐに硬度を取り戻した自分に多少戸惑いながらも、彼は止めて下さいとは言えなか  
った。  
 しかし、やがて違和感を覚える。  
 「あ、あの…ファリンさん?」  
 「何ですかぁ?」  
 耳元で彼女の声がした。  
 「え!? じゃっじゃあこれは……」  
 「目を開けても良いですよぅ」  
 「…!! タイネーブさん!?」  
 驚くフェイトだったが、吸い込まれそうな快感に思わず言葉を失う。  
 「ぅあっ…出る……」  
 タイネーブが口を離すと、鈴口から白い液体が噴出した。未だいきり立っている彼自  
身を横から舐め、彼女は恥ずかしそうにフェイトを見上げる。  
 「あの…き……気持ちよかった…ですか?」  
 「は……いやっ、じゃなくて!」  
 首を回すと、ファリンの顔があった。  
 「ファリンさん? これは一体どういう……」  
 「あのですねぇ、タイネーブもフェイトさんのことが好きなんですよう」  
 「へ…? なっ…!?」  
 「まだ出来ますよねぇ? だから、タイネーブも仲間に入れてあげてくださぁい」  
 「はぃぃぃいいい!?」  
 
 つまりは、彼女公認の浮気をしろということか。  
 「あの…話がよく……」  
 「つまりですねぇ、私がフェイトさんを独り占めなら、タイネーブは失恋じゃないで  
 すかぁ」  
 「はぁ…」  
 「そうなったら、タイネーブは酒場で自棄酒ですよねぇ。そうすると、もうどうでも  
 良くなってしまって、そこらの悪い男に引っ掛かって、破滅して……」  
 「は、はぁ……」  
 「ところが、私たち二人がどちらもフェイトさんの恋人になると、全て丸く収まるわ  
 けですぅ。お分かりですかあ?」  
 「でも……」  
 フェイトの脳裏に、処女を捧げてくれたときのファリンの表情が甦る。  
 「ファリンさん…」  
 「私は…タイネーブが悲しむところなんか、見たくはないですぅ……」  
 ゆっくりとフェイトの上半身を倒し、彼と唇を合わせた。  
 「そして…それを知って、フェイトさんが悲しむところも…」  
 タイネーブを招き寄せる。戸惑いながら…ではあったが、彼女はフェイトに顔を近付  
け、ファリンと同じように唇を合わせた。ファリンはタイネーブの首筋に舌を這わせ、  
そのまま小ぶりの、しかし整った乳房へと下る。  
 「ウっ…」  
 タイネーブは体を海老のように反らせた。しばらく胸を弄んでいたファリンだが、不  
意にタイネーブの太股を掴み、広げる。そしてフェイトに向けた。  
 「ほら、フェイトさぁん。もうこんなになっちゃってますよぅ」  
 「あっ、やっ……」  
 彼女の洞窟からは、既に愛液が溢れ出している。一番恥ずかしい場所を露わにされ、  
顔を真っ赤にして隠そうとするタイネーブだったが、それよりも早く、フェイトはそこ  
に顔を埋めた。  
 「やっ…フェイトさ………」  
 そう言い掛けたが、彼女の体がビクンと反応する。  
 
 (フェイトさんが…私のアソコを……!)  
 胸の鼓動が、どんどんと早くなる。  
 「んっ…はぁっっ………」  
 と、フェイトが顔を離した。少し興醒めな表情になるタイネーブだったが、直ぐに意  
味を悟る。  
 「タイネーブさん、その……ゆっくりでいいですから…」  
 頷いて、彼女はフェイトの上に乗った。指のように細いものではなく、これから挿入  
れようとしているのは太長い男根なのだ。  
 ゆっくりと腰を沈め、彼を受け入れようとする。直ぐにそれは自分の中の障壁に突き  
当たり、身を切るような痛みがタイネーブを襲った。  
 「!? ひぐうぅぅぅっ…!!」  
 フェイトに抱き付き、殆ど反射的に背中に爪を立てる。  
 「タイネーブぅ。力を抜いた方がいいですよぅ」  
 彼女の背を優しく撫でつつ、ファリンがアドバイスした。やがてタイネーブの力が抜  
けたのを機に、フェイトはゆっくりと腰を上下させ始める。  
 「あ…ふぅっ…ひぁんっ……」  
 声が色気を帯び、口を半開きにさせたまま、彼女も自分から躍動を始めた。  
 「はんっあっ…」  
 フェイトの指が伸びる。その指は、こちらをじっと見ているファリンの足の付け根に  
至った。  
 
 「あっ……」  
 既にぐっしょりと濡れていたそこは、彼の指をすんなりと受け入れる。今一番敏感に  
なっているところをかき回され、ファリンは体を震わせた。顔を上気させ、フェイトに  
顔を寄せて舌を絡み合わせる。  
 「んはっ…あああっっ…ひっ……」  
 「うくっはっ…あんっ……」  
 どちらへの攻撃も、緩められる事はなかった。やがてフェイト自身も終わりを感じ、  
腰の動きと指の動きを一層激しくさせる。  
 「うくぅっ……タイネーブさん、そろそろ……」  
 「あ…な…膣内に……今日は…大丈…ひぁっ…!」  
 彼は最後に大きく突き上げた。  
 「! 熱……」  
 彼女の中に勢いよく、熱い液体が注ぎ込まれる。  
 「ふああぁぁぁっ……」  
 ファリンも顎を上げて小さく叫ぶと、フェイトの上に突っ伏した。  
 
 
 
 自室のベッドの上に横たわり、フェイトは枕に顔を埋めていた。  
 (……最低だ…)  
 ひどい自己嫌悪感に襲われる。  
 何の事はない、弱みにつけ込んで、二人の女性の処女を奪ってしまったようなもので  
はないか。  
 (最低だ……)  
 顔を突っ伏したまま、深く溜息を吐く。  
 
 と、ノックも無しにドアが開いた。  
 「あ〜〜、やっぱりぃ」  
 そんな声が聞こえ、いきなり誰かが背中の上に飛び乗ってきた。  
 「うぐ!?」  
 「フェイトさぁん。何で落ち込んでるんですかぁ?」  
 「ファ…ファリンさん……」  
 同じく入室して来たタイネーブが、後ろ手にドアを閉めると、心配そうな顔でフェイ  
トを見る。  
 「あの…やっ、やっぱり私がその……」  
 「違いますよ」  
 慌てて彼は首を振った。  
 「ただ……これでいいのかな、って」  
 「………」  
 「確かに、本当の事を言うと……僕はお二人が大好きです。片方だけを選べって言わ  
 れたら、きっと迷ってしまうでしょう。でも………僕は…ファリンさんやタイネーブ  
 さんの弱みに付け込むようなマネをして……」  
 「……確かに…そうかも知れませんねぇ」  
 呟いたファリンに、今度はタイネーブが慌てる。  
 「ファッ、ファリン……!」  
 「ですからぁ、ちゃんと責任は取ってくださいねぇ?」  
 「え…?」  
 「私もタイネーブもぉ、どっちも絶対に捨てないでくださいね?」  
 「あの…それは……」  
 「好きっていう気持ちはぁ、どうしようもないものなんですよう。……別に相思相愛  
 なら、問題無いじゃないですかあ」  
 「でも……」  
 「もぅ、くどいですよ〜う」  
 自分の唇で、無理矢理フェイトの口を封じた。  
 
 「文句ありますかぁ?」  
 「いえ、その………………………ないです」  
 ファリンはにっこりと笑うと、未だ恥ずかしがっているタイネーブを招き寄せる。  
 「あの…ファリンさん?」  
 「はい?」  
 「まさか……」  
 既にシャツのジッパーは下ろされていた。  
 「余計な心配かけた罰ですよぅ」  
 どうやら今夜は眠れそうにない。直ぐにでも使えそうな自分自身に呆れながら、フェ  
イトは溜息を吐いた。  
 
 完。 

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