「フェイトさ〜〜ん、起きてくださ〜〜いっ」
下の階から、誰かの間延びした声が聞こえる。青髪の青年はベッドで上体を起こし、
しかし直ぐに倒れ込んだ。
「……あと……五分……いや五秒だけ………」
そんなことをブツブツ呟きつつ、目を閉じる。
ネル、クレア、タイネーブ達は、特別任務があるとかで昨日から外出しており、今こ
の館にいるのはフェイトとファリンだけだ。フェイトは体を丸めると、再び夢の世界へ
と歩いていった。
ガチャッ……ギイイィィィ………
ノブが回り、扉が開く音がした。誰かがこちらに歩み寄ってくる。
「あ……ファリンさん、あと十秒ほど……」
目を閉じたまま愛想笑いを浮かべ、寝返りを打った。……と。
唇に何かが触れる。一瞬思考が停止したフェイトの口の中に何かが侵入してきて、そ
れは彼の舌と絡み合った。
(……へ?)
取り敢えず目を開けてみると、何かぼやけたものが見える。それが離れ、初めて人の
顔だと言う事が分かった。
「もう、早く起きてくださいね? フェイトさん」
ファリンの顔が視界から消える。
(今のって……へ!? ええ!?)
寝ぼけが一瞬にして吹き飛ばされ、フェイトは手早く服を着替えると、慌てて部屋か
ら出て行った。
(さっきのって一体…………夢にしてはかなりリアル……いや、まず夢じゃないだろ
うし……)
食堂のテーブルの上には、二人分の食器が並べられている。それ程寝坊したというわ
けではないが、それでもファリンを待たせていたことに少なからず罪悪感を覚え、彼は
物音のする台所へと向かった。
「あの、ファリンさ……」
少しだけ開いたドアは、直ぐに彼自身の手で閉められる。フェイトは軽く首を振りな
がら、額に手を当てて目を瞑った。
HP30%回復はブルーベリィ
MP30%回復はブラックベリィ
トミーズ健の父親は発明王
………異常ナシだ。
大きく深呼吸を繰り返し、再びドアを開ける。そこにはやはり、エプロン“のみ”を
着たファリンが立っていた。
「なっ、どうしたんですか! その格好!!」
真っ赤になってそっぽを向くフェイトだったが、すみれ色の髪の彼女は至って平然と
している。鍋をかき混ぜていたシャモジから手を離すと、笑顔でこちらを振り向いた。
「いえ、この頃フェイトさんお疲れのようでしたしぃ、この格好をすれば男の人は喜
ぶって……」
「クリフが……ですか?」
「は〜い」
「あんのボケオヤジ……!! とにかくっ。早く服を着てくださいっ」
このままじゃ目の毒…いや、決して毒ではないのだが、トチ狂って何かしでかしてし
まうかも知れない。とにかくマズイ。マズ過ぎる。
「……ぁの……ご迷惑…でしたか?」
“あの”ファリンさん……“あの”ファリンさんが、落ち込んだような、悲しげな声
を出している。
「いっいや迷惑とかそーゆーわけじゃなくて! むしろうれし……いや! ですから
その……何と言うか……」
フェイトは可笑しいほど狼狽えつつ、後ろを振り返った。
と。
「!?」
その瞬間ファリンの白い腕が首に回され、彼女の唇と自分の唇が重ねられる。更に先
程と同じように、フェイトの舌にファリンの舌が絡み付いた。
「んむっ!? ………ん……んん…!!」
すっかり混乱している彼には構わず、ファリンは尚もフェイトの口の中をかき回す。
訳が分からないまま、フェイトはよろよろと泥酔者のように後退り、壁にぶつかるとズ
ルズルと座り込んだ。その時になって、やっと彼女の唇が離れる。
「…ぷはっ……。ファ、ファリンさん? 何か変ですよ?」
「私が…ですかぁ?」
こちらの目を見つめたまま、悪戯っ子のような笑顔を浮かべるファリン。
「何で……こんな事…」
「何でって……私がぁ、フェイトさんが好きだからじゃないですかぁ。だから、別に
変じゃありませんよぅ」
「……えええっ!!?」
それはまた急な告白ですね……などと返せる程、フェイトは冷めてはいない。どうい
う返事をしていいのか分からないままではあるが、取り敢えず立ち上がろうとした。の
だが、突然ファリンに仰向けに押し倒され、馬乗りに跨れてしまった。
「ちょっ、ファリンさ……ん…!」
再び唇が重なる。今度は軽く触れ合う程度の、柔らかく静かなキスだった。
「私…おかしいですか? 奇妙な女ですか? ……フェイトさんはぁ……」
ファリンはフェイトの胸に倒れ込む。そのまま彼の心音を聞くように、そっと胸に耳
を当てた。
「私のコト……嫌いですかぁ?」
「………いいえ」
そうだ。彼女は限りなく本気なのだ。………なら…僕も……。
「僕も……ファリンさんが好きです。自分の気持ちに素直なところも………いつも明
るく、皆を勇気づけてあげられるところも…」
そして……と、今度はフェイトから唇を近付けてきた。それに応じ、ファリンもそっ
と顔を近付ける。
「そして……僕を、好きになってくれたところも……」
朝食は食べていない。でも、空腹だとは思わなかった。
そんなのはどうでもいい。
大事なのはこの時間……この一瞬…。
ベッドの上で、二人はそっと唇を合わせた。フェイトはそのまま頭を下げ、彼女の白
い肌に舌を這わせて行く。
「ん……」
小さく呻き声が漏れた。舌は、張りのある乳房、既に硬質化している突起、そして毛
髪と同じ色の茂みへと下っていく。掌で柔らかい双丘を包み込むようにほぐしつつ、下
の甘露を掬うように舐める。
「ひぁんっ……」
ファリンは体を仰け反らし、シーツを強く握った。じっとりと体中から汗が噴き出し
てくる。フェイトの舌の動きはまだ止まらず、彼が茂みの向こうで湿った音を立てる度
に、彼女の体は様々な角度へ仰け反った。
ファリンはシーツから手を離すと、両掌でフェイトの顔を挟み、彼の顔を引き上げ
た。そして今度は、彼女が頭を下げていく。
「え? ファリンさ……!!」
ファリンは怒張している彼自身の先端に、そっと唇を付けた。閉じていた上と下の唇
の力を緩め、彼自身をゆっくりとその口の中に納めていく。
「っぅぁ…あ……」
くわえ込んだまま舌を動かし、口腔の中に納めたまま、様々な方向や角度から舌で撫
でた。そして時折、強く吸い込む。鈴口の割れ目に沿って、舌先をそろそろと這わせる。
「あっ、ファリンさ……出まっ…」
ファリンは口を離した。白濁した液体が口から少しだけ漏れたかと思うと、次の瞬間
勢いよく放出される。
かなりの量が出たのだが、彼自身はまだ屈していなかった。
「フェイトさぁん。溜まってたんですかぁ?」
「いや…あの……」
「フフッ……」
顔を赤くしているフェイトがとても可愛く感じられ、ファリンは思わず微笑む。
「……じゃあ、そろそろ……」
「あ…はい」
彼女はフェイトの上に乗った。僅かに腰を上げ、彼自身の先端を自分の入り口へと導
いていく。
「……ぁっ…」
先端が入った。更に入れようとして、フェイトは異変に気付く。
「あっあれ? ファリンさん……」
「ん…な……何で…す……」
彼女の顔は歪んでいた。
「しょ…処女だったんですか!?」
「んぁっ……あ…遊んでいるよ…に……見え…したかぁ…?」
既に満足に軽口も叩けない。必死で痛みに耐えようとしているのだろう。
「だ…大丈夫ですか?」
「んん……は…はぁいぃ…」
全く大丈夫そうではない。膜が破れるのは、立派な怪我の一つなのだ。
「ひぎ……ぁんんんんっっ………!!」
フェイトの男根を、一筋の血液が流れた。ファリンは歯を食いしばり、時間を掛け
て、何とか彼自身を全て自分の中に包み込む。
「ふぇえ……ぜ…全部……入り…」
涙を滲ませながら“初めて”を捧げてくれたファリンを、フェイトは優しく、しかし
強く抱き締めた。
同じ初体験でも、男は始めから快感を得られる。が、女性は別だ。文字通り、身を裂くような激痛に苛まれるのである。
そのままで、暫く二人は動かなかった。だが、やがて痛みが和らいだファリンが、自
分から動き始める。フェイトも始めは慎重に、そして段々と腰の動きを激しくしていっ
た。ギッギッという悲鳴のような音を立て、ベッドが軋む。二人は互いの指を絡ませ、
更に動きを激しくした。
「…いふぅうんっ…あっあっああっ……はっ……」
もう、ファリンの顔に苦痛の色は微塵も感じられない。膣内に感じる初めての快感に
戸惑いながらも、それを全身で受け止めた。
「う……ファリンさん、そろそろ……」
先程と同じ予感がして、フェイトは彼女から離れようとする。しかし、ファリンは首
を振ってそれを拒否した。その瞬間、カッと体の中が熱くなる。
暫く彼の胸に倒れ込んだままのファリンだったが、ゆっくりと結合部を引き離した。
フェイトに顔を近付け、微笑みながら口付ける。
「大好き…ですよ。……フェイトさん…」
フェイトも微笑むと、彼女の菫(すみれ)色の髪を優しく撫でた。