朝の二度寝ほど、心地良いものはない。
カーテンで覆われた窓の外から聞こえてくる、小鳥の囀り。
暖かい布団の中で身を縮めた。最も身近だが最も得難い贅沢に、自然と頬は緩む。
ごろりと、寝返りを打った。
トントントンと、軽快なリズムが耳に響いてくる。ドラマでよく見るワンシーン。これは……まな板の音だ。
そろそろ起きなくてはと思うのだが、身体が動いてくれない。包丁の音が止んでから、暫く経つ。と、頬に何かが添えられた。
「フェイトさん…」
彼女はそっと囁くように呼ぶと、掌を肌の上に這わせる。手はやがて顎を撫で、首筋に下りる。
くすぐったそうに身をよじるフェイトだったが、掌が胸まで到達した時、慌てて飛び起きた。
「…! み…ミラージュさん……」
目の前には、朝日のような彼女の笑顔。
「……お早うございます、フェイトさん」
この悪戯……いや、からかいも、まだ到底慣れそうには無かった。
(あ、フェイトさん。私も今日から、ここに住む事にしましたから)
それは既に決定形だった。異論など差し挟める筈が無い。
シランド城下町に与えられた、シーハーツ施術発展研究部副部長・フェイトの家にミラージュが訪ねてきたのは、二週間前だった。
クォーク解散で、職を失ったと言うのだが…。
(でも……ミラージュさん程の能力があったら、どこだって諸手を挙げて歓迎すると思うんだけど……)
事実、惑星レゼルブの総統・ブルックリンが直々に勧誘してきたそうだ。クリフから聞いた話だが、彼はミラージュのファンだと言う。
それを、彼女は断った。一つの星の法律全てを司る事が出来る肩書きを、ミラージュは丁寧に辞退したのだ。
……まぁ、それはともかく。
大変ヤバイ状況だ。
何がヤバイって、自分の理性が。
「……ミラージュさん、そのメイド服は?」
「似合います? 4Pカラーです」
「え?」
「あ、お気になさらず」
冥途
もとい、メイド
男なら誰でも、その単語に憧憬を持つだろう。
一人の女性が、主人である自分のために、甲斐甲斐しく働いてくれるのだ。掃除洗濯炊事……何から何まで、自分のために。
それだけなら、家政婦と一緒だ。家政婦と言われても、男はエプロン姿の中年女性しか想像出来ないだろう。
が、メイドは違う。メイド服というスペシャルアイテムがあるのだ。家事をするだけの女性が、何故、こんな扇情的な服を着るのか……それは不明だが、どうでもいい事である。
「…………」
椅子に座れば朝食が出てくるのは、大変嬉しい事だ。
カゴに入れておけば洗濯してくれるのは、大変嬉しい事だ。
留守にしている間に掃除してくれるのは、大変嬉しい事だ。
嬉しいのだが……ヤバイ。
三日前の夜中だって、ただトイレに起きただけの筈なのに、気付いたらミラージュの部屋に忍び込み、掛け布団に手を伸ばそうとしていた。
自分の無意識の行動に、愕然とした。
豪邸と言うほどではないが、この家は自分一人には広すぎる。誰かを招こうにも、女性が多いシランド城。親しいとは言え、まさかネルやクレアを泊まらせるワケにもいかない。
はっきり言ってしまえば……少し、寂しかった。
だから、お帰りなさいと言ってくれる人がいる今の状態は、とても幸せな気がした。
が、それでも。
(……ううううう…)
ミラージュ……この年上の、抜群のプロポーションを誇る女性のメイド服は、あまりに目に毒だった。
(パンツとか……フツーに見えちゃうんだよなぁ…)
まるで、中学生の頃に逆戻りしたような気分である。
「……ミラージュさん」
「はい?」
向かいの席でトーストをちぎっていた彼女は、ふと小首を傾げて見せる。
何で、一々こんな……ツボを抉るような仕草を見せるのだろう、彼女は。
「突然で申し訳ないんですけど……実は、今日からシランド城に泊まり込もうと思うんです」
赤くなった頬を悟られぬよう、俯き加減にスープを啜る。
「泊まり込み……ですか…?」
「はい。今日から新しいパートに入るんですけど、ちょっと複雑な分野なので、集中して取り組みたいんです」
ちらりとミラージュに目を向けたが、彼女は無言で続きを促した。
「それで……少しの間スケジュールが滅茶苦茶になるので、どうせだから泊まり込みでやろうかと……」
「そうですか…。……分かりました。でも、無理はしないで下さいね?」
そう言って、彼女は柔らかく……優しく微笑む。
が、そこにある影を、フェイトは見逃す事が出来なかった。
酷い男だな、と、自分自身を嗤う。
一人ぼっちの寂しさは、自分だってよく知っているのに。
しかし、ミラージュを追い出す事も、彼女に夜這いを仕掛ける事も、選択肢にはない。
今の自分が考え得る、最良の判断なのだ、これが。
ごちそうさまとフェイトは精一杯微笑み、席を立った。
四日後の夜。
雑念を振り払おうとするかのように仕事に没頭した結果、予定より二日も早く、研究結果のレポートを纏められた。
「………」
フェイトはなるべくそっとドアを開け、家の中へと滑り込んだ。自宅で泥棒のような動きをする自分を可笑しく思いつつも、寝ているであろうミラージュを気遣い、忍び足で廊下を歩く。
そして、妙な事に気付いた。
(……あれ?)
自分の部屋のドアが僅かに開き、そこからオレンジ色の光が漏れだしている。
光の源は、恐らくベッド際のランプだろう。
(ミラージュさん…?)
一瞬本物の泥棒かと思ったが、彼女なら寝ぼけつつでもタコ殴り、亀甲縛り、お外へポイッ、な筈。
更に近付いてみると、今度は妙な声が漏れだしてきた。
……いや……妙な声と言うか、これは……。
「んっ…はぁっ……ぁあっ…!」
(!?)
間違いなく、ミラージュの声。
だが、こんな妖艶な声色は初めてだ。性の快楽を味わうかのような、女の喘ぎ声。
まさか、男を連れ込んでいるのだろうか?
何故自分の部屋じゃなく、僕の部屋で?
「ひぁっ……あっ……フェイト……さ…」
………僕!?
僕はここにいる。そう、僕がフェイト。
……ドッペルゲンガー!?
………いや。
確かに。確かに、“それ”の可能性がないワケじゃない。
が、有り得ない。“それ”な筈はない。
彼女は、自分を子供としか見ていないのだから。
取るべき行動は、決まっている。
後二日、どこかで時間を潰し、それから予定通りに帰宅する。
今夜の事は忘れればいい。知らんふりして、記憶の奥底に封印してしまえばいい。
「ぁんんっ…!……フェイ…ト…さん……!」
再び名を呼ばれ、肩が震えた。
………いや、待て。待て。
何を想像してたんだ、僕は。あれは喘ぎじゃなく、苦しみの声じゃないのか?
突然高熱を出して倒れ、助けも呼べないまま、うわごとのように唯一の同居者の名を口にしているんじゃないのか?
ついにドアの隙間から、室内を覗き込んだ。
「ふぁっ…あ……ぁ…ぃぃっ…!」
………。
部屋の中には、寝間着のミラージュだけ。
寝間着と言っても、下半身は布きれ一つ身に付けてはいない。その格好でフェイトのベッドに寝そべり、身体を震わせながら、足の付け根や胸に自身の手を這わせていた。
有り得ない事が、起こっていた。
いくら何でもここまで来れば、フェイトだって理解する。
ミラージュが、自分をオカズにして……オナニーをしているのだと。
八つも年下の自分を、オカズにして…。
嫌いな男をオカズにする女性はいないだろう。つまり、ミラージュは自分の事が好き。
それは分かった。それはOK。
肝心なのは、これからの行動。
(どうする!? どうすればいい!? どうすればいいんだ!?)
突然ドアを開けてルパンダイブし、滞空中に全ての衣服を脱ぎ捨て、ベッドの上に突撃する?
……いや。トライデントアーツで迎撃される。
そもそも好きだと言っても、程度が問題だ。たまには年下を調教するみたいなネタでやろうかな?程度の自慰なら、知らない振りをすべきだろう。
結論は……この場からの撤退。それしかない。それしか……
ギシッ
「!!!!!」
我が家ながら、何て家だ。
「………フェイトさん?」
一発で言い当てられた彼は驚きつつも、語調から何とかミラージュの今の精神状態を推理しようとする。
驚きは少ない。いや、あまり驚きを外に出さない女性だ。今重要なのは、どうやら怒りは無いと言う事。
「………」
「………」
双方、沈黙。
やがてフェイトは意を決し、自分の部屋へと入った。どうせ気まずくなるのなら、はっきりと顔を見せた方がいい。
「……えっと……その…………ただいま……」
「お帰りなさい、フェイトさん……」
彼女は、あくまで平然としている。
無かった事にしようとしているのだと、フェイトはそう思った。時間をそのまま切り取り、投げ捨てる。知らんふりして、何も無かった事にしようとしている。
だから、こちらも努めて平然とした。
「ご…ごめんなさい、起こしちゃって…」
……ダメだ…。少し上擦ってしまった。
だいたい、普通にしていられる方がおかしいのだ、この状況で。
「早かったですね」
「あ、予定より二日……早く終わって……」
そう言いつつ、彼は必死で視線を逸らす。
柔らかいランプの光に照らされて、露わになったミラージュの乳房がオレンジ色に染まっていた。それを隠しもせず、その姿がノーマルであるかのように、彼女はベッドに座っている。
「……お疲れでしょう? 今、お風呂沸かしますね」
「あ…ありがとう…ございます……」
何も無かった。そう、何も無かった。
必死でそう思いこもうとしても、今更ながらさっきの出来事の重大さが認識され、恐らくそう簡単にはいかない。
「………」
追い焚きされた湯船に浸かり、フェイトはぼんやりと曇る天井を見上げていた。
お背中流します、と言いつつミラージュがバスタオル一枚で入ってくる……そんな予想もしてしまったが、その気配はない。
(……だからもう考えるな!!)
湯の中に潜った。
……そう言えば、この湯に、数時間前ミラージュも浸かった筈である。
つまりこの中には、彼女のダシと言うかエキスと言うか、ともかく色々が混じっているワケで……
ザバァッ
フェイトは浴槽の中で立つと、壁に掛けてある鏡を振り向き、ビシィッと人差し指を突き出した。
「お前っ、キモイよっ」
鏡の中の自分が、自分をビシィッと指さし、そう宣告してきた。
(………。何やってんだ……僕は……マジで……)
「………」
ミラージュは自室に戻ったらしい。入浴を終えたフェイトは浴槽の湯を抜き、寝間着に着替えると、自分のベッドに倒れ込んだ。
疲れている。だが、眠れない。さっきまでは、目を閉じればすぐにでも夢にどっぷりと浸かれそうだったのに、心臓の鼓動が早くなり、どんどん頭は冴えてきていた。
「………」
布団はまだ暖かい。さっきまでミラージュが、その裸体を横たえていたのだ。
ギシッ……
「!?」
床板が軋む音がした。思わず身体を震わせたフェイトは、布団の中で固まり、目を閉じて耳を澄ます。
気配がだんだんと近付いてくる。誰かは、考えるまでもないだろう。
直ぐ後ろまで接近した彼女は、掛け布団を持ち上げた。
ドクンッ
心臓が跳ね上がる。
頭の中が、心音でいっぱいになった。いくら何でも、これでは外に聞こえてしまうのではないのだろうか。
ベッドが軋み、彼女が布団の中へ滑り込んでくる。
「………!」
「…………」
うなじに、ミラージュの吐息がかかった。
「……起きてるんでしょう? フェイトさん」
「……………………………………………………………はい……」
長い長い沈黙の後、フェイトは誤魔化すのを止める。肩に手を置くミラージュに背を向けたまま、蚊の泣くような声で応えた。
「……お世話になりました」
「!? なっ……え?」
「突然転がり込んで、居座り続けて……」
「いえ、あの…」
「でも、安心してくださいね…。明日、荷物を纏めて…」
「ちょ…ちょっと!!」
堪らずフェイトは飛び起きると、ミラージュの方を振り向く。だが、彼女は目を合わせようとせず、じっと黙っていた。
「何で…そんな事……!」
「……見たでしょう?」
何を、と言い掛けたところで察し、彼は真っ赤になって口籠もる。
「……イヤでしょう? こんな…変態女と、一つ屋根の下なんて……」
「………」
彼女は、恥じているのだ。
さっきのあの出来事を、フェイトの予想を遙かに超えて強烈に。地に舞い落ちる粉雪のように、消えて無くなってしまいたいとさえ思っている。
「さようなら……フェイトさん。楽しかったです。ほんの…少しの間でしたけど…」
ミラージュは体を起こし、床に足を置いた。
が、そこで動きを止める。
こちらを振り返った彼女の驚き顔で、フェイトはやっと自分の右手が、引き留めるようにミラージュの手首を掴んでいるのに気付いた。
掛ける言葉など、思いついてる筈もない。
無意識の、自然な行動だった。
「……フェイト……さん……?」
言え……言うんだ。
いいじゃないか、綺麗な言葉じゃなくても。伝えたい事を、残らず伝えきる事が出来れば。
「行かないで……ください」
握った手に、力を込める。
「その……変態な女性が好きな僕も、変態…なんですよね? さっき……あの時、心の何処かで嬉しいって…そう思ってしまった僕も、変態なんですよね?」
「………!」
「出て行かないでください、ミラージュさん…。
ミラージュさんがいなくなったら……誰に“ただいま”って言えばいいんですか? 誰に“おかえり”って言って貰えばいいんですか?」
自然に舌が動いた。
「好きなんです。……大好きなんです、ミラージュさん…」
首に抱き付かれ、ベッドの上に押し倒される。
「…わたし……もっ……!」
彼女の声は震えていた。
「……だんだん……どんどん……好きになっていって……ぜんぜん……忘れられなくて……!!」
フェイトはミラージュの背に腕を回し、嗚咽で震える体をそっと抱き締める。
彼女は突然顔を上げると、フェイトの唇に吸い付いてきた。
心の準備は出来ていた……そう言えばウソになるが、彼は驚きつつもミラージュの舌を受け入れ、背中に回した腕に力を込める。
「んんっ…ぅむ……ンッ……んん……んぅ……」
互いの舌は乱暴に絡み合い、相手の口腔内を蹂躙し尽くそうとする。
「んっ…むっぅうっ……ん…っふぁっ…!」
長い接吻の後、ミラージュは唇を離した。名残惜しそうに伸ばされる舌先から、唾液が一筋糸を引き、そして切れる。
潤んだ藍色の瞳が、じっとフェイトの目を見つめた。
「……フェイトさん……いいんですね…?」
「………それって、普通は男の台詞だと思うんですけど…」
そう言いながらも、彼は自分がどれ程緊張しているのかを知っている。
何しろ初めてなのだ。しかも相手は……自分を恋愛対象にしていないと思っていた、憧れの女性。
対するミラージュだが、彼女もそんなに経験はない。
「………」
しかし、相手は年下だ。自分がリードしなければなるまい。
寝間着の合わせに指を伸ばし、ボタンを一つ一つ解いていく。そして完全に上半身を露わにすると、豊満な乳房が現れた。形は崩れておらず、先端はピンと立っている。
「……好きにして頂いて…結構なんですよ…? ……“ご主人様”」
からかうように微笑み、ミラージュは自分の手で膨らみを持ち上げて見せた。
フェイトは身体を起こすと、その柔らかい塊に掌を添える。
「ンッ…!?」
たかがそれだけで声を漏らしてしまった事に、ミラージュ自身、強い衝撃を受けていた。
「やぁっ……んっ…はっァ……んぁ…!」
ここまで自分は感じやすかっただろうか。
フェイトは何とか衝動を抑えようとしているらしいが、溢れ出す若い欲望は限界を知らず、やがてはそれに身を任せる。
勃起した乳首を甘噛みし、顔を埋めて肌を吸い上げ、乳房を様々な角度から揉み…。
「ぁっあああっ…ぃんっ……はっあぁっ…!」
優しく、そして激しい愛撫に、ミラージュは何度も処女のように嬌声を上げさせられた。彼の頭を抱き締めるようにして、更に身体を密着させる。
臀部に、反り返った男根が触れた。
(すごい……こんなに…)
硬質化した彼自身は、ミラージュを押し上げんばかりに怒り狂っている。
フェイトは双丘への愛撫を左手と口に任せると、右手を彼女の下腹部へと這わせた。
しゃりしゃりと音を立て、陰毛を掻き分ける。そして目的地に到着すると、洞窟の入り口をそっと撫でつけた。
「んはっ…ぁっ……ぁああぁ…ひっ…!」
愛液が流れ出し、十分に指を濡らすと、フェイトはミラージュをベッドに寝かせ、その上へとのし掛かる。
身体を下方へとずらし、テラテラと光る割れ目へと、そっと中指を差し込んでみた。
「ひぃあっ…あっ……あああっ…」
熱い。
柔らかく、熱く、そして飲み込まれそうな胎内。差し込んだ指に肉壁が吸い付き、離すまいと締め付けてくる。
ここに……これから、自分のこの……怒張を差し込むのだ。いくら何でも、あまりの快感に発狂してしまうのではないだろうか。本気でそう心配してしまう。
………ん?
ちょっと待て、落ち着け自分。
何か忘れてるぞ…。
そう、
「コンドーム……」
思わず呟いてしまった。
(オーマイゴッドォォォ!!)
(慌てるな、フェイト・ラインゴット)
(き…キミは!?)
(もう一人のキミさ)
(意味不明だけどまぁいいっ、何か方法が!?)
(コンドームが無いのなら、代用品を使えばいい)
(代用品…?)
(サランラップだ)
(死ね)
(なっ、なんて酷い事を言うんだ! いいかいっ、この方法は古くは“岸和田少年愚連隊”で99のヤベッティが使用し、最近では“喧嘩商売”の十兵衛君が使おうとしたという、由緒正しい…)
(だって情けないだろ! 童貞喪失の想い出がサランラップって!)
(いいからっ! さぁ、フェイト! キミも“ラッパーズ”の一員に…!)
(絶対イヤだぁぁぁぁぁ!!)
……二秒ほど意識が飛び、しかも妙な夢を見てしまった気がする。
突然ミラージュがフェイトを引っ張り、再び位置関係は逆転した。
「ミラージュさん…!?」
躊躇う男・フェイト。
だが……彼女は躊躇わない女・ミラージュ。
フェイトのズボンを下着と共に引きずり下ろすと、解放された男根が跳ね上がった。鈴口には透明の雫が浮かび、ひくひくと蠢動を繰り返している。
彼の腰にまたがる形で、ミラージュは洞窟の入り口に彼自身の先端を宛うと、ゆっくりと膣内へ納めていった。
「ぅっ…!!」
思った通り。
この快感は、尋常ではない。
亀頭も、カリも、裏筋も……肉の襞が待ち構えていたように吸い付き、ぐいぐいと締め付けてくる。まるで吸い込まれるような錯覚を覚えた。
歯を食いしばり、出来るだけ射精を遅らせる。
が、その健気な努力を無視するかの如く、ミラージュは髪を振り乱して腰を上下させ始めた。
「ぁはっ…あっぃいっ、かっ、ひゃ、ぁ、あああっ、んはっ、あぃっ!」
ジュボジュボと淫猥な水音が響き、飛び散る愛液がフェイトの下腹部や太腿にかかる。
膣圧は強く、締め付けたままの状態で彼自身は何度も擦られ、下半身の神経が全て集まったようだった。
目の前では、豊満な乳房が彼女の動きに合わせて大いに揺れ、思わずそれに手を伸ばす。
「!? ぃあっあっあああっ…ああっ!あ…!……あああ…!!」
突然胸を握られ、ミラージュは一層強くフェイト自身を締め付けると、同時に絶頂を迎えた。
「あっ…つ…ぅ……!」
男根はブルブルと何度も震え、吐き出された白濁液は胎内から溢れ出し、シーツを汚す。
「……っは…ぁっ……はっ…ふぅっ…はぁっ……」
荒い息のまま、ミラージュは彼自身を解放すると、フェイトの上へと倒れ込んだ。
「……。ご満足……頂けましたか…? ……“ご主人様”…」
「……今夜のところは…ね……」
辛うじてそう返すと、フェイトは一度大きく溜息を吐く。そして彼女の背に腕を回し、優しい温もりを身体一杯に感じながら、そっと目を閉じた。
翌朝……
「……で?」
腕を組み、身体を僅かに傾け……ネルは氷のように冷たい声と共に、目の前のメイドを睨み付ける。
鼻歌を歌いながら、プランターの草花に水をやるミラージュは、微笑と共にネルを迎えていた。
「何でアンタがここにいるんだい? その服は?」
「あら。ようこそ、ネル・ゼルファー『闇』部隊長殿。何か御用ですか?」
「質問に答えな…!」
「実はですね…三週間ほど前に失業してから、ここでメイドとして働かせて頂いてるんです」
「……とにかく、フェイトを出しな。アイツに直接…」
「申し訳有りませんが、“ご主人様”はお休み中なんです。昨日は、その……とっても激しかったんですから…」
キャッ、とでも言うように、顔を赤らめて頬を抑えるミラージュ。
「……悪いけど、そんな挑発は見飽きてるんでね。さっさとフェイトを呼びな」
「あら。ご主人様は、昨日で仕事が一段落したそうですけど……何のご用でしょう?」
「………。今日はアイツとデート(部隊訓練監督の補助)の約束があるんでね」
多少、勝ち誇ったような顔をするネル。
……だが……。
「ふぅ……今日は暑いですねぇ……」
ミラージュが、ぐい、と襟を引き下げた時、それは見えた。
胸元の……小さな赤い痣のような…。
「……虫刺されなんか見せびらかして、何が楽しいんだい?」
「本当に虫刺されかどうかは、ご自由に想像して頂ければ結構ですけど…」
「……アンタは……クリフとくっついといた方が、お似合いだと思うんだけどねぇ…」
「ネルさんこそ、男なんかより……クレアさんとプリキュアってる方が、ずっと絵になると思いますけど」
「…………」
「…………」
数秒後。
包丁がまな板を叩く音ではなく、ガントレットと短剣が激突する金属音で目を覚ましたフェイトだった。