いや…最近忙しいんだよ。本当に。  
 営力(電力)研究とか。常識としては知っていても、そうなる原理まで、全部完全に把握してるワケじゃないからさ。僕の頭にある答えを参考にして、皆と一緒に研究していったり。  
 昨日も三時間くらいしか寝てないし。  
 
 「おはよう、おにいちゃん」  
 
 何て言うか、一度始めるとなかなか止められなくてさ。一段落して、そこでようやく、疲労を自覚したり。……そりゃ、休むべきかとは思うんだけどね…。  
 
 「……おにいちゃん?」  
 
 熱中しちゃうと、どんどんテンションがハイになって……一心不乱にやっちゃうんだよ。文字通り、食事も睡眠も忘れてね。ファリンさんには、仕事中毒だって笑われたけど…。  
 
 「おなか…痛いの……?」  
 
 あ、いや。別にそうじゃないんだ。うん。  
 痛いのは頭だし。  
 
 「じゃぁ、なでなでしてあげるね?」  
 
 ……小さい手だな…。  
 
 ………。  
 
 いや、そうじゃなくて。  
 
 (……誰だろう…この娘…)  
 
 自分の肩に手を置き、やや背伸びするようにして、その少女はそっと頭の天辺を撫でつけている。まるで、オママゴトの人形にやるように。  
 
 ……うんっ、幻なんかじゃない。夢でもない。  
 確かにこの娘は、ここに存在してるんだ。  
 
 年齢は10歳前後か? 金色の長髪、大きな菫色の瞳の、可愛らしい少女。  
 勿論、誘拐ではない。  
 窓から差し込む朝日で目を覚まし、上半身を起こし、伸びをし、ベッドから降りようとしたところで、気付いたのだ。自分の部屋に、見知らぬ少女がいる事に。  
 誰かに似ている気がする。が、思い出せない。と言うより思いつかない。  
 その時、誰かが部屋をノックした。  
 
 「おーい、フェイト。起きてっかー?」  
 「クリフ? どうかしたのか? ……とりあえず、入って」  
 
 ドアが開き、筋肉質の男が入ってくる。  
 「いやな、実はマリアが城のどこにも見当たらな…」  
 そして…そこで、クリフは止まった。  
 口は開きっぱなし。カッと目を見開き。  
 やがて、だらだらと汗をかき始めた。口が金魚のようにパクパクと開閉した。  
 「あ、この娘? 朝起きたら何故か部屋の中に…」  
 
 「ああああああああああああああ!!!」  
 
 「!? クリフ…?」  
 「いやだああああああああああ!!」  
 彼は突然絶叫し、部屋から逃げ出した。追い掛けようとするフェイトだったが、クリフは自室のドアを乱暴に閉めると、しっかりと鍵を掛けてしまう。  
 「ちょっ…クリフ!? この娘知ってるのか!?」  
 「知らねぇ! 知っててたまるか! ああああっ、蛇は止めて! 蛇はっ…! うああああああっ、出してっ、出してくれぇぇ! ライオンがぁぁぁ!!!」  
 「………」  
 一体、何がフラッシュバックしたのだろうか。  
 まるで全てのトラウマが一斉に目覚めたかの如く悲鳴を上げる、36歳のクラウストロ人男性。どんなに呼び掛けても、決してドアを開けようとはしなかった。  
 
 「くっ…来るなぁっ、来ないでくれぇぇぇ!!」  
 
 (……ま…いいや。ほっとこう。面倒だし…)  
 ひどい。  
 全然心配してないのは、信頼の成せるワザだろうか。それとも本気で関心がないのか。  
 
 「……変なおぢちゃん…」  
 フェイトについて来ていた少女は、彼のズボンの裾を握り、小首を傾げていた。  
 尤も、その目は確信犯的に笑っていたのだが……フェイトが気付くことはなかった。  
 
 
 
 
 
 「おはよーごぜーまーす……」  
 
 食堂に揃っていたのは、クリフ…それにマリアを除く、いつものメンバー。  
 ソフィア、ネル、クレア、ファリン、タイネーブ、アルベル、ロジャー。  
 「おはよー、フェイ…!?」  
 「ああ、おは…!?」  
 「お早うございます、フェ…!?」  
 「お早うございますぅ、フェイトさぁん」  
 「おは…!?」  
 「あ…?」  
 「へ…?」  
 流石にファリンは動じてなかったが…。  
 
 「フェイトさぁん、隠し子ですねぇ?」  
 「違いますよ〜〜だ」  
 彼と手を繋いでいる少女を見て、ファリンがツッコンでくる。その彼女の口真似をして軽く返すと、椅子の一つに腰掛けた。  
 「それで、誰なんですか? その娘…」  
 「いや、それが……朝起きたら部屋にいたんだよ」  
 事情を説明し始めると、少女はフェイトの膝の上に這い上がり、ちょこんとそこに座る。かなり身軽な女の子だ。  
 「成る程…。ひょっとして、迷い込んじゃったのかも知れないね…」  
 「ネルさん、一応調べて貰えますか? 捜索願が出てると思いますし」  
 「ああ、分かった。やっとくよ。……その娘は何も喋らないのかい?」  
 「それが、何も覚えてないらしくて……名前がミーシャって事くらいしか…」  
 「ま、すぐに見つかるだろう。んじゃ…朝食にするかい?」  
 パン、シチュー、サラダ、茶と、いつもの料理がテーブルに並ぶ。少女…ミーシャの分も、ちゃんと用意された。  
 「それにしても……一体、どこから迷い込んだんだろうね」  
 肩肘を突いて顎を支えながら、ネルはスプーンで茶をかき混ぜる。アルベルは興味ナシでパンをかじり、ロジャーは一人男勝負で限界までパンを口に詰め込んでいた。  
 「門番が寝てたとも思えないし…」  
 他にも椅子はあるのだが、ミーシャは決してそれに座ろうとはせず、フェイトの膝の上でパンを抱えている。時折千切って、それを頭上のフェイトの口へと運んでは、  
 「美味しい? おにいちゃん」  
 「あ…ああ、美味しい」  
 などというやり取りを繰り返していた。  
 ネルや他の女性陣としても、こんな子供に嫉妬するのはバカバカしい。すっかりなつかれてるねぇ…などと談笑していたが、心中穏やかでない者もいる。  
 
 (………)  
 
 今まで幼馴染みの妹的存在のポジションにいた、ソフィア。  
 見たところ少女は十歳前後か。あとほんの六,七年で、今の自分と同い年になる。そう…十分結婚を考えられる年齢に。  
 
 フェイトと付き合いが一番長いだけに、一番関係が進歩しにくい彼女としては、どんな小さな新芽であろうとも摘み取っておきたい。これ以上ライバルを増やすのは、甚だ好ましくない事態だ。  
 そう考えていると、ふと気付いた。少女の瞳が、じっと自分を見つめている事に。  
 「ん? どうかしたの?」  
 「あのね……おねえちゃん…」  
 「何?」  
 ミーシャはフェイトの膝から降りると、ソフィアの隣まで移動する。口に手を添えるミーシャに、彼女はやや身体を縮めて耳を差し出した。  
 
 
 
 『物欲しそうな目でおにいちゃんを見ないでよ、乳だけ女』  
 
 
 
 「………」  
 
 ボヒュゥゥゥゥッッ  
 
 ソフィアのヒートアップゲージ、戦闘でもないのにMAX。突然わき起こった殺意の波動に、全員が驚いて顔を向けた。  
 「……ミーシャちゃん……ご飯が終わったら、おねえちゃんと遊ぼっか?」  
 「やだー。おにいちゃんと遊ぶんだもーん」  
 そう言って、ミーシャはフェイトの腕に抱き付く。すごいオーラだ、ソフィア。今ならFDルシファーも一人で撃破出来るかも知れない。  
 「ソフィア…!? ど…どうかしたのか!?」  
 
 「フェイトは黙っててくれる? ちょっと…ミーシャちゃんと、鬼ごっこしたいだけだから…」  
 「鬼ごっこにエーテルフローズンは必要ないだろ!?」  
 「おにいちゃーん、何だかおねえちゃんがこわーい」  
 ミーシャの攻撃は止まらない。さっきと同じようにフェイトの膝の上を占領し、しっかりと彼の胸に抱き付いている。  
 「何だか知らないけど……落ち着けよ、ソフィア。ミーシャが怖がってるし」  
 「騙されないでフェイト! その娘は悪魔よ! 反逆者よ! ただの0と1の集合体の分際よ!」  
 (何故ルシファー化…?)  
 「悪!即!断!」  
 「ちょっと待てぇぇ!!」  
 「舞い踊れ! 雷鳴の獣!」  
 
 サンダーストラック発動  
 
 ミーシャを抱き締めて飛び退くフェイトだったが、一瞬の閃光と雷鳴の後、彼がそれまで座っていた椅子は消し炭となっていた。  
 (何なんだ…この威力は…!!)  
 再び詠唱に入ろうとするソフィアを、慌ててネルとクレアが羽交い締めにする。  
 「止めなっ、ソフィア! いきなり何してんだいっ」  
 「ソフィアさんっ、取り敢えず落ち着いて!」  
 「放してくださいぃぃ! このままじゃフェイトがっ、フェイトがぁぁぁ!!」  
 「ファリンっ、タイネーブ! 連行!」  
 「はぁい」  
 「はっ」  
 
 隠密二人がかりでソフィアを連れ出した。まだ何か叫び声がしていたが、業を煮やしたタイネーブの当て身の音がした後は、ようやく静かになる。  
 「……ふぅ…。大丈夫かい、フェイト」  
 「ええ、まぁ…。ソフィア……何であんなに怒って…」  
 「ねぇねぇ、おにいちゃん。あそぼあそぼー」  
 「……そうだね」  
 
 
 
 
 
 ミーシャはご機嫌で、フェイトの手を引っ張っている。  
 二人が今いるのは、交易都市ペターニ。シーハーツで最も賑やかな街で、土地柄から流行に敏感。まぁ、シランドより治安は悪いが、フェイトと一緒なら大丈夫だろう。  
 「それで、ミーシャちゃん。どこに行きたい?」  
 「んーとねー…」  
 
 「あれ? フェイトさんじゃないですか」  
 
 背後から、明るい声が掛かる。  
 「あ…ウェルチさん」  
 「いつもお世話になってます〜。これからも、ガンガン発明してくださ……ん? その娘は?」  
 「ちょっと預かってる娘なんです。迷子らしくて…」  
 「はじめまして、おねえちゃん。おにいちゃんの恋人の、ミーシャです」  
 ミーシャはきちんと手を添え、お辞儀した。いつもなら、ここで「あら〜、可愛い」とか言うウェルチなのだが…。  
 
 「………」  
 「………」  
 
 (……何だろう、この寒気…)  
 
 二人は互いの目を見つめ合ったまま、ニコニコと…ただ、ニコニコとしている。  
 「まだこんな小さいのに…しっかりしてるわねぇ(訳:こんのクソガキがぁ! 何いっちょまえに女の目してるのよ!)」  
 「わぁ、きれいなおねえちゃん(訳:ま、身体だけが取り柄? 見た目がこれでも、性格がアレじゃねぇ…)」  
 「あらあら、ミーシャちゃんだって可愛いわよ?(訳:可愛いけど、綺麗には到底及ばないわね。所詮はガキンチョ。ションベン臭い小娘の分際で、何しっかりと抱き付いてるの?)」  
 「ほんとう? ありがとう、おねえちゃん(訳:時代はピュア。ピュアを求めてるのよ。あなたみたいな毒女なんて、しょせんチヤホヤされてるのは今だけなんだから…)」  
 
 「………」  
 「………」  
 
 (あ。あの雲、昨日食べたハンバーグの形だ……)  
 
 既に現実逃避を始めているフェイトを余所に、女同士の無言の応酬は暫く続いたが(小一時間)、ミーシャは再び彼の腕に抱き付いた。  
 「じゃあね、おねえちゃん」  
 「ばいばい、ミーシャちゃん」  
 どうやら、双方痛み分けという事で決着したらしい。  
 八つ当たりされたギルドマスターは、普段の晩酌を一本から三本に増やすことだろう。  
 
 
 「……おいっ、あれ! 城の開発部副部長の、フェイトじゃねぇか?」  
 「ずいぶん小さい娘連れてるな…。………そうだ、今度のターゲットはアイツにしねぇか? 金もしこたま持ってるだろうし」  
 「よし、決まりだ。いいか? 一人になった瞬間を見計らって、一気に連れ去るぞ!」  
 「おうっ」  
 
 
 「おやつ、ピザまんなんかでいいの?」  
 「うん。ありがとう、おにいちゃん」  
 「はは、どういたしまして」  
 「お客さーんっ、お釣りお釣り!」  
 「あ! ミーシャちゃん、ちょっと待っててくれる? すぐ戻るから」  
 「うん、わかった」  
 「じゃあね。……すいませーんっ」  
 
 
 「やぁ、お嬢ちゃん。いい天気だね」  
 「……曇ってるよ?」  
 「だからいい天気なんだよ。人通りも少なくなってきたし…」  
 「あれ? おぢちゃん。おぢちゃんは、どうしてそんなに厚着なの?」  
 「それはね、顔を見られたらヤバイからさ」  
 「じゃあ、どうしてニヤニヤしてるの?」  
 「それはね、あまりにも事が上手く運んでるからさ」  
 「じゃあ……どうして、ロープなんか持ってるの?」  
 「それはね…。お前を誘拐するためさぁぁっっ!!」  
 
 「……あれ? ミーシャちゃん? ミーシャちゃーんっ」  
 「どうしたの? おにいちゃん」  
 「あ、そこか。……何で路地裏から出てきたの?」  
 「ええっと……ネズミさんがいたの。遊んであげてたの」  
 「……あれ。服に赤いものが付いてるけど…」  
 「あ……そうっ、ケチャップ! ピザまんのケチャップ!」  
 (何か…顔にもついてるし。一体どんな食べ方を…)  
 「おにいちゃん?」  
 「え? あ、何でもない。……随分汚れちゃってるね。そこのホテルで、お風呂借りようか」  
 「うん」  
 
 
 路地裏にて、あまりのあっけなさに細かい描写や戦闘シーンをカットされた、三人の男達(の半死体)が発見されるのは、次の日の事だった。  
 
 
 
 
 
 「……あれ? これって…」  
 フェイトの部屋の前を歩いていたソフィアは、奇妙な物体を発見した。  
 「……何か見覚えが…?」  
 U字磁石のような形をした、それ。軽い気持ちで持ち上げようとするが…。  
 
 「……あれ?」  
 
 グッ  
 
 「……あ…れ…!?」  
 
 グゥッ  
 
 「あ……れ……れ…ぇぇ…!?」  
 
 ググゥゥッ  
 
 「……がに股で何やってんだい、アンタ」  
 いつの間にか、背後の廊下の壁にネルがもたれ、呆れたように自分を見ていた。相手が女だと、ソフィアに恥じらいはない。  
 「ネルさん、これって何でしょう?」  
 「え? ……これって…………ああ。ミラージュが首にくっつけてた輪っかだろ?」  
 「あ、そっか…。道理でこんな重く……ん?」  
 「どうかしたのかい?」  
 
 思考中…。思考中…。思考中…。思考……  
 
 「……ネルさん。今日、ミラージュさんって見ました?」  
 「いや? 見てないけど…」  
 「……じゃあ……マリアさんは?」  
 「それも…。けど、一体な……!!」  
 「………」  
 「………」  
 
 ガチャッ  
 
 全ては、アイコンタクトで意志疎通。  
 フェイト部屋の向かいの、マリアの部屋のドアノブを回し、開けた。  
 がらんとした主無き部屋の、簡素な机の上に、一枚のメモが花瓶で留められている。  
 
 『ふと、世界の中心へ愛を叫びに行きたくなりました。byマリア』  
 
 「まさか……あの女の子って……」  
 「マリアさん……またアルティネイションで実験を……!?」  
 「……どうする?」  
 「決まってます。……取り返しましょうっ、フェイトを!!」  
 
 
 
 
 
 仕事上各地を転々とするネルは、緊急の場合に備え、ペターニのホテルの部屋を2,3、常にキープさせている。使いたかったら自由に使っていいと、フェイトは彼女にそう言われていた。  
 
 浴槽は、一人用。ホテルの一室に入り、フェイトは早速風呂の用意を始めた。そして湯が貯まり、あとは入るだけになった時…。  
 
 「やだ」  
 
 「……あのね…ミーシャちゃん…」  
 「やだ。おにいちゃんと入る」  
 確かに、十歳くらい歳の離れた娘だ。まだ、父親とお風呂に入っていても、何の問題もない年齢だ。  
 しかし、ヤバイ。いくら何でも、ヤバイ。赤の他人の自分が、他人様の娘さんと二人っきりで風呂に入るのなんか…。  
 「……おにいちゃん…私の事が嫌いなんだ…」  
 「いや、嫌いじゃないよ? 嫌いじゃない、うん。嫌いじゃないんだけれども、やっぱり一緒にっていうのは…」  
 「嫌いなんだ……」  
 「いや、だから…」  
 「イヤなんだ。どっか行っちゃえとか思ってるんだ…」  
 「そうじゃなくて……」  
 「さっさと二束三文で売っ払おうとか考えてるんだ…」  
 「それ、どこで覚えた?」  
 「どうせ……私なんて……」  
 「………」  
 
 
 旗鑑フェイト号、撃沈。  
 
 「ほらほらっ、おにいちゃん。早く」  
 (そうだよ……相手は子供なんだよ。別にいいじゃんっ、どうでも。細かく考えてると、将来ハゲるだろうし。……………………………クリフみたいに)  
 しゃがみ込んでミーシャの背中のボタンを外し、ワンピースを引っ張り上げる。  
 
 (………はい?)  
 
 ちょ…ちょっと待ってくださいよ?(コロンボ風)  
 
 (え? ……は、え、う? なっ?)  
 何だろう、この娘。  
 ワンピースの上からでは分からなかったが、かなり…いや、有り得ない程のプロポーションだ。  
 普通、このくらいの年齢だったら、まだ上の下着は必要ない。それなのに…この娘は、出るところがしっかりと出ている。将来お墨付きってカンジに。  
 バストとヒップがしっかり出っ張っていて、ウエストがくびれている。  
 (……HAHAHA、何を考えているんだい、僕。僕はロリコンなんかじゃないだろ? ちょっと発育が早いだけの子供じゃないか。そんな小娘に何をするってんだYO!?)  
 「……おにいちゃん、どうかした?」  
 「ん、何でもない。ほらっ、さっさと入っちゃおう?」  
 「うんっ」  
 まず、フェイトが浴槽に入る(一応股間を見られないよう、細心の注意を払った)。  
 それから、ミーシャが入る。一人用でも、親子二人が入るくらいのスペースはあった。  
 
 赤い実がひーとーつ  
 青い実がふーたーつ  
 白い実がみーいっつー  
 
 「………」  
 
 サンメリーダの森で  
 ふくろうが啼ーいーたー……  
 
 どこかの民謡なのだろうか。  
 ミーシャはご機嫌な様子で、フェイトの膝の上で歌っている。  
 いや、歌っているのなら問題ない。問題ないのだが、歌と一緒に踊っている。  
 身体を激しく上下させて、ぱしゃぱしゃと湯を叩きながら、上機嫌で歌っていた。  
 当然、ミーシャが腰を上下させるたびに、フェイトの足の上に柔らかい臀部が押し付けられる。  
 「……ねぇ。やっぱ出ていい?」  
 「だめー」  
 逃がさないつもりなのだろうか。  
 ミーシャはにっこりと笑うと、突然彼の胸に抱き付いてきた。  
 
 (あああああっっ、胸が! 胸がぁぁぁぁっっ!!)  
 
 「……あれ? 何か硬いものが…」  
 
 (オー・マイ・ゴッドォォォォォォ!!)  
 
 呼んだか?  
 
 (出てくんなルシファァァァァ!!)  
 
 「あ、知ってる。男の人って、Hな気分になると、ここがおっきくなるんだよね」  
 「あははははー、何の事かなー? さあ、やっぱりそろそろ出…」  
 
 ガシッ  
 
 「だーめ」  
 ミーシャに腕を掴まれるが、今度こそ本当にヤバイ。それはもう、シャレにならないくらいに。  
 
 (………あれ?)  
 
 ふと、違和感を感じた。更に力を入れ、立ち上がろうとする。  
 
 (……あれれ?)  
 
 立ち上がれない。いくら力を入れても、決して立ち上がれなかった。  
 
 「だめだよー、おにいちゃん。こんなに苦しそうなのに……」  
 (まさか…!?)  
 つまり…自分は、この遙かに年下の少女に押さえ付けられている。  
 つまり…力負けしている。  
 (う…ウソだろ!? 確かに僕は非力な方だけど…)  
 「だいじょうぶだって。私に任せて」  
 「っ!?」  
 竿を、小さな手に握られた。身体を押さえ付ける力とは逆に、そっと指で包み込む。  
 「だっ、ダメだってっ、ミー…シャ……! 止め…!!」  
 言葉を続けられなかった。  
 根本からカリまで、まんべんなく筒状にした掌を往復させる。先端部分を撫で回す。裏筋を指の腹で、そっと撫でていく。  
 (ヤバイ……!!)  
 最近寝る間も惜しんで研究に没頭していたので、当然自家発電の時間など無かった。  
 勃起したのさえ久し振りに感じる。  
 で、当然敏感になっているワケで…。  
 当然、射精というものは、自分の意思では妨げられないものなワケであって…。  
 
 「あ!」  
 (ああ………)  
 
 ミーシャの手の中で、竿がビュクビュクと振動した。先端の鈴口から白っぽいものが吐き出され、湯の中を漂う。  
 フェイトは既に恥ずかしいを通り越して、死にたいとさえ思っていた。  
 ある意味、自家発電中を見られたのより恥ずかしい。  
 
 「……まだ苦しそうだね……」  
 
 かなりの量を放出したのだが、彼自身は未だに硬度を保っていた。まるで眠っていたものを起こしてしまったかのように、益々いきり立ち、蠢動を続けている。  
 現実逃避しているフェイトには、今、ミーシャが何をしようとしているのかさえ見えていない。視界の隅っこで、誰かが動いているというくらいの認識である。  
 
 「んっ…と…」  
 
 再び、彼自身から電流が迸ってきた。  
 その刺激にハッと意識を引き戻した時には、既にミーシャの行動は完了していた。  
 
 自分自身が、すっぽりと、何かに包まれている。  
 上気した顔で自分の胸に凭れ、震えているミーシャ。  
 
 「………いくら何でもそれだけはヤバイ!!!」  
 
 立ち上がろうとしたが、既に少女の奥深くへと突き刺さっていた肉棒が肉壁に擦り付けられ、二人は同時に小さく叫んだ。  
 「お…おにいちゃん、動く…ね……」  
 
 ってゆーかミーシャ、処女膜は!?  
 痛くないの!?  
 その年齢で処女じゃないの!?  
 
 いや…先ず何よりも、さっさと引き抜かなければならない。このままでは、自分は完全にそっちの人の仲間入りを果たしてしまう。  
 
 頭ではそう分かっているのだが…。  
 
 「んっ…あっ、はぁぁっっ…!」  
 
 水の抵抗で、素早くは動けない。  
 引き抜くぐらいの高さまで腰を上げ、再び根元まで挿入させる。  
 途切れ途切れではなく、溜息のように深々と、響かせるように長々と、ミーシャは喘ぎ声を漏らした。  
 その緩慢な動作を繰り返していく内に、だんだんとフェイトものぼせ始めたらしい。  
 
 (あはははー、いいじゃん、もう。別に我慢しなくて。動物だって、一ケタの年齢でもう交尾とかしてるしさ。それにこれって、逆レイプだろ? 殆ど。ならいいじゃん?)  
 
 天井を向いていた顔を引き戻すと、そっとミーシャの半開きの唇に口付けた。  
 
 「んっ……」  
 
 積極的な行動に多少戸惑った様子の彼女だったが、直ぐに受け入れるかのように舌を伸ばしてきた。互いの舌を絡め合わせている間に、フェイトの手が胸へと伸びる。  
 「んんんっ……」  
 既に性感帯は十分に発達しているようだ。将来は間違いなく巨乳になるであろう乳房を優しく包み込み、指の腹でピンク色の蕾を摘む。  
 「んあぁっ……はっ……ふぅぅっ……ぃぁぁぁぁぁぁっっ…!」  
 どうやら刺激され過ぎたらしく、震えるように叫ぶと、動きを止めて荒い息を吐く。  
 「ミーシャちゃん? ちょっと立ち上がるよ?」  
 一言断ってから、フェイトはミーシャを抱き、その場で立ち上がった。浴槽の縁に腰掛け、腰に手を回したまま揺さぶり始める。  
 「んあっ、はっ、ぁっ…ひっ」  
 素早く、小刻みに動く。絶頂から回復したらしく、やがてミーシャもフェイトの腰の上で跳ね始めた。  
 「んはっ、やっ、あああっ、ぃふぅっ…!」  
 素早く、大きく動く。フェイトは彼女の腰に手を回して身体を支え、目の前の小さな突起を口に含んだ。  
 
 「ぁううっ、あっ、あんっ、やぁっ、ぃぃっ……お…にいちゃ…ん……気持ち………いい…?」  
 「うん…。くっ…。気持ちいいよ……」  
 小さい体なので、当然膣も狭い。まだ男根を受け入れ慣れていない筈の身体で、淫魔のような激しさで腰を動かしているのだ。締め付けも尋常ではなく、喋るのさえ困難に思える。  
 「んぁっ、ふぁふぃぃっ、ああっ、いっ、んっ」  
 ミーシャの動きは、蝋燭の消える最後の一瞬の明るさのように、更に激しくなってきた。  
 「ぃあっ、んんぃっ、ふぃっ、あっ、ぁ…あああああっ……!」  
 胎内に湯よりも熱い液体が流れ込み、二人は同時に絶頂を迎えた。  
 フェイトは肩に顎を乗せているミーシャを抱いたまま、浴槽の中へと座り込む。  
 「……大丈夫? ミーシャちゃん……」  
 
 (……………ん?)  
 
 重みがだんだんと増していく気がした。更に、何か柔らかいものに圧迫され、浴槽が狭くなっていく。  
 「……ひぁっ…!?」  
 不審に思っていると、不意に敏感になっている自身を撫でられた。  
 「まだ休むには早いですよ? フェイトさん」  
 「………え!?」  
 不審には思っていたが、確認するのが面倒で、そのまま寝てしまおうかと考えていたフェイトだったが。額の上に、見知った女性の声が落ちてきた。  
 「………ミラージュさん!? えっ、あれっ…ミーシャちゃんは…!?」  
 「あら。私ですよ?」  
 「……なぁっ!?」  
 「マリアがアルティネイションの実験で若返らせようとしたんですけどね……自力では戻せなくなって、そのまま逃亡しちゃったんです」  
 「じゃ…じゃあ、ミーシャちゃんは…」  
 「小さい頃の私…になりますね。あ、因みにミーシャは愛称です」  
 「そんな……」  
 「ふふ……ロリコンさん」  
 「はぐっ…!! ……いやっ、それより! 早くどいて下さい!」  
 
 当然、ミラージュも裸である。  
 胸が尻が太腿が…。  
 あの体型が、ここまで成長したのか……などと考えている場合ではない。よほど溜まっていたらしく、再び自身は硬度を取り戻しつつあった。  
 
「私も随分とご無沙汰なんですけど…。ミーシャだったら良くて、私はダメなんですか? やっぱり真性のロリ…」  
 「違います! その……」  
 「あら、若いですね……もう回復しちゃってますよ」  
 「……あぅぅぅぅ……」  
 「さて。……連続何回出来ますかね…?」  
 
 
 
 
 
 「ほら、ミラージュってよ。俺の通ってる道場の師範の娘だろ? それでガキの頃から知り合いだったんだけどよ。……あいつが十歳くらいだっけ。それから敵わなくなったんだよ」  
 額に手を当てて目を閉じ、ベッドで寝転がる青年の隣で、クリフは回想するかのように呟く。  
 「恐ろしい娘だったぜ、ありゃ。……あ、今もそうだけど。ちょっとしたイタズラでも、きっちり千倍返ししてくるんだよなぁ…。あ、お前は十倍返しで済んで良かったな?」  
 そう言って笑うクリフに、何か言い返す元気さえ起きない。  
 
 「あら。きっちり千倍返しですよ?」  
 
 「うおっ!?」  
 突然ミラージュが入室して来た。思わず肩を震わせたクリフだったが、どうやら聞かれたらヤバイ所は聞いてなかったらしく、彼女はフェイトのベッドへと向かう。  
 「お早うございます、フェイトさん。昨日はぐっすり眠れましたか?」  
 「……すんませんでした。かんべんしてください……」  
 「私の信条は、千倍返しなんですけどねぇ…。まあ、分割払いでいいですよ」  
 
 (ええっと……千倍返しで……昨日十回で……)  
 
 残り……九百九十回?  
 
 「んじゃ、俺はお邪魔みたいだから……」  
 
 クリフ逃亡。  
 
 その後、ミラージュによって(下半身の一部を)鍛え抜かれたフェイトは、城内の女性達を味方に付け、密かに勢力を拡大していき、  
ついにはラッセルの跡を継いで執政官となり、シーハーツに更なる繁栄をもたらした名臣として、長く語り継がれる事になった………(らしい)。  
 
 未来が不確定になった世界の、ひょっとしたら、もしかしたらの可能性の一つ…。 

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