…………………………。  
………。  
あんな屈辱は今まで味わったこともなかった。  
あんなに怒りと、自分の無力感を感じさせられたこともなかった…。  
だが、奴はまだなりを潜めている…。  
だから…だから愉しい…あの破壊神にこの身に刻まれた怒りを百倍にして返すのが…。  
…準備は…徐々に整いつつある……。  
 
「……さん、フェイトさん。食事の支度、出来ましたよ」  
半分眠りについていた視界に少女の顔が見える。自分が旅を共にし、自分が初めて愛した少女の顔だった…。  
「ああ、いつもすまない…レナス。」「いえ…」  
素直に礼を述べると少々頬を赤らめる。  
俺と彼女、レナスは…武者修行の旅に出ていた。何故旅に出たのか。答えはきわめて単純明快だ。  
…………仲間を一度殺し、俺をも瀕死の目に遭わせた「奴」を完全に倒すためだ。  
あの時は致命傷を与えられず、封印するに至らなかった…。  
あれから1年近く経つ…。あの仲間達はレナスが奇跡的に蘇生してくれた…だが死にかけた反動は大きく、  
仲間は皆シランドでベッド上での生活を余儀なくされている…。  
そして、俺はその時から彼女と旅に出た。  
最初、一人で行くつもりだった…だが…彼女は傍にいたかったのだ…。どれだけ道のりが辛いか解っていても、  
あの時の俺達のように死ぬかもしれないと悟っていても…。  
 
その気持ちを訊いた俺は、一緒に旅をすることに決めた。  
 
「奴」を倒すため、新しい剣を作り直し(愛用していた剣はあのとき、  
戦いの中で粉々に破壊された)フェイズガンの二丁拳銃戦闘法も取り入れた。  
そして、旅の間、レナスには何度も手合わせしてもらっている。  
「奴」には今一歩及ばないが彼女も相当に強い。それは1年前から実感済みだ。  
 
食事の後………  
「では……行きますよ、フェイトさん。」  
「ああ……始めよう。」  
いつもの通り、巨大な長槍を持ち、いつもの通りいうレナスに律儀に答え、両手剣を構える。  
今までの、そして標準の剣より3割ほど刃渡りが長い肉厚の巨大な剣だ。  
そして、その言葉を合図として、戦いが始まる。  
一瞬で間合いをつめるレナスに向かい、剣を払う。  
それを寸前で避け、槍をないでくる。剣の刃で受け、そのまま懐からフェイズガンを出し、撃つ。  
(当然レナスに怪我をさせたい訳がないので弾の威力は最弱に設定してある)  
だが撃った先にはレナスはおらず、後ろで電磁波を感知、全力で回避にかかる。  
さっきまでいた空間を、巨大な龍型の波動が貫く。  
「ははっ……」  
(やっぱり、やるな…)微かに笑いながら右の手もフェイズガンに持ち替え、  
波動の動きから予測した射手の位置に乱射する。  
撃った直後に剣へと持ち替える。弾をくぐり抜け、眼前へ迫るレナス。  
毎度の事ながらどうしてこうも素早いのか不思議なものだ。  
呆れるばかりにでかい槍にこれまた呆れるばかりにでかい剣で迎え撃つ。  
 
繰り出される攻撃を何度も受け流しつつ、反撃に出る。  
ちょうど光輪を発し、必殺の一撃を放とうとした槍の刃に遠心力で威力を増した剣があたり、槍をはじき飛ばす。  
しまった、と言う表情を浮かべたレナスの喉元にフェイズガンを突きつける。  
表情が一瞬凍り、その後でほほえみ、いうレナス。  
「ふぅ…参りました、フェイトさん。」  
………それで、今回の手合わせは終わった。  
剣をしまい、フェイズガンを点検する。  
…さすがにレナスの特注品だけになんのがたも無い。極上品といっても差し支えない最高の銃だ。  
「もう全然かなわなくなりましたね、流石です」  
「ありがとう。でも、それでも足りないんだ…まだまだ強くなってみせるさ…。」  
「そういえば…フェイトさん。どうして、フェイズガンを使おうと思ったのですか?」  
こちらも槍をしまい、服装を非戦闘状態へ戻していたレナスがふと思い出したように訊く。  
「ん?ああ…以前、文献で見たんだ。」  
「文献…ですか?」  
そうだ。と答え、持ち始めてからの癖ですでに手慣れたガンアクションを始める。  
「もう1000年ほど前か…そのころには悪魔、と呼ばれる存在が多数居たんだ。」  
「………?悪魔…DEVILの事ですか?」「ああ。」  
懐に二丁の大型フェイズガンをしまい、続ける。  
「でも、いまはそんな存在はこの宇宙のどこにも存在しない。  
……そりゃあ、エクスキューショナーは居るが、な。………何故だと思う?」  
「さぁ……解りません……。」  
 
「文献によるとだ。」 
 今度はつけていた籠手を外し、状態を確かめる。  
その籠手は絶対零度さながらに凍り付いていた。が、不思議と冷たくはない。  
もっとも、その絶対零度の力を攻撃力に転化するタイプのものだ、使い手が凍えていてはどうしようもない。  
「その時代…一人の悪魔狩人が居たらしい…巨大な魔剣を軽々と振るい、大口径の大型二丁拳銃を難なく操り、  
魔性の者を片っ端から切り伏せていった狩人が、な…。だから、  
悪魔達は全滅し、この世界には居ないんだ…。だが…」  
続けて良いか?と目線だけで問う。  
「続けてください……。」  
「その文献をを書いたのはその狩人のパートナーだったらしい。  
いろいろ込み入ったことまで書いてあってな『彼は復讐のために戦っていた』そうだ。」  
「あ………」  
それでいいたいことが解ってしまったのだろう。彼女はうつむいて呟いた。  
「ご、ごめんなさい…。」  
「いや、いいんだ。もとより、剣だけでの戦闘には限界を感じていたし、な。」  
「………………」  
自分は復讐のために旅をしている…。そのことについては何もいわない。  
だが…レナスは…俺に無理矢理付き合っているのだとしたら…?  
そう思い立って、不意に謝りたくなって…  
「レナス…。」  
そっと………抱きしめる。  
「フェ、フェイトさん……!どうしたんですかいきなり!?」  
狼狽し、慌てて離れようとするレナス。抱きついたことは何度かあっても  
抱きしめられたことはあまり無いのだ。  
「済まない……」  
「え……?」  
動きが、止まった。  
「本当に…済まない…俺の所為で、俺の都合で…こんな「練習」に1年も付き合わせて…。」  
 
「フェイトさん……そんなこと…ないです。」  
レナスの手が背中へ回る……。  
「私はフェイトさんが好きなんですよ。それに……「俺と一緒に行こう」っていってくれたじゃないですか。」  
回された腕に力がこもる。…………俺は…。  
「あの言葉は嘘だったんですか?」  
「いや、そんなことはない。」それは、断言できる。  
「なら、問題なしです。私は…一生あなたについて行くと決めましたから…だから、泣かないでください。」  
そういわれて、俺は自分が泣いていたことに気づいた…。  
涙をぬぐい、その気持ちを言葉にした。  
「……………ありがとう………レナス…………。」  
「いえ…。」  
どちらからでもなく、キスを交わす…。  
「もうすぐだ…。」「ええ……。」  
顔だけ離れ、目の前の相手にしか聞こえないような声でささやき合う…。  
「……後僅かで、「奴」を倒す…そうしたら…。」  
「ずっとついて行きますからね。」  
「いや、………一緒に、暮らそう…。」  
その言葉は予想外だったようだが、こころのどこかでは期待していたような面持ちで見つめるレナス。  
「はい…ずっと…一緒ですからね……。」  
 
……………………………。  
準備は順調、何もおそれることはない……………。  
俺には…仲間が、帰るべきところが…。  
そして…何より………愛する者が居るから…………。  
 
「…フェイトの奴、今頃どうしてるんだろうな…。」  
「さあな、だが…「奴」を滅ぼそうという意志は変わらねぇさ。頑固だからな、あいつ」  
「そうね、私達も早く回復しないと…ね…。」  
「ああ、フェイトには出来る限り手助けをしたいものだね…。」  
「……私達を助けてくれたあの女の子も一緒なんでしょうか?」  
「恐らくそうだろうな。あの二人、恋人同士っていう言葉が似合いそうだったしな。年齢はこれでもかと言わんばかりに離れてるのに…。」  
「「「……………」」」  
「そ、それにフェイトもあのガキに救われたそうだし…。」  
「それ以上喋るな糞虫。これ以上完治を先送りさせたいのかこの阿呆。」  
 
 
フェイトとレナス、仲間達と…そして…「破壊神」。  
彼らの再会と、決着には今ひとつの時間が必要だった………。 

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