あの子は何故執拗に俺達を妨害するのか考えてみたことがある…。  
彼女曰く「普段では如何に強い相手でも決して直々には挑まない」だとか。  
その時には理由が全く解らなかった…でも、今なら解る…。  
あれは…  
彼女なりの…  
 
 
スフィア社、210階の一角。  
「ッはぁ……はぁ……はぁ…」「なんて…でたらめな奴だったんだ…。」  
「……全くだ…この小さな身体の…どこに…あんな凶悪な力があるんだ…。」  
 彼らは疲れ果てていた。というのも、今目の前にいる少女と一戦交えたばかりなのだ。  
実際、彼女の実力はスフィア社をまもるだけあって伊達や酔狂で身に付く領域ではなく、  
皆何度も死にかけた末の辛勝だった…。  
 
「それで……このさきに最後の敵がいるのか…。」  
「そのようだな…。」  
「…どうする?俺はこのままいっちまった方が良いだろうと思うんだがな」  
「…フン、クロセルの時みてぇだな。俺も同じ意見だ。」  
「…………………………………………。」  
少女は微動だにしない。さっきまでは地に刺さった槍を杖代わりに  
立ち上がろうとしていたのだが、とうとうその気力も尽きたようだった。  
「そうね。今のうちに倒しておきたいし…。」  
賛同したのはマリアである。  
 
「……」  
皆が進もうとしたその時  
「ちょっと待ってくれないか?」  
唐突にフェイトがそう切り出した。  
「それは「いったん撤退しよう。」ってことか?」  
「………」  
問いただすクリフに目で肯定の意を伝えるフェイト。  
「え?」「!?」「…」「!」「フェイト!?」  
言い出しっぺがフェイトでなかったら皆こうも驚きはしなかっただろう。  
いままで後退の意見を言ったのはソフィアぐらいだったからだ。  
だが、ただ一人、少女だけは何故か安堵したような表情を浮かべていた。  
もっとも誰にも気づかれないような些細な変化で、本人も無意識のうちに浮かべたのだが。  
 
沈黙する一同…。  
「…いいさ。」  
「!?」一瞬にして驚愕の表情を浮かべる者4名。  
「……(お前のことだ、滅多にない事を言うくらいだから何か魂胆でもあるんだろう?まぁ、だいたい予想は付くがな…。)」  
「……(…協力してくれるのか?)」「………かまわん。」  
「………(ありがとう、クリフ。)」  
話がまとまり、ようやくフェイトは口を開く。  
 
「みんな、ごめん。僕はこの子を手当てする為に撤退しようと思う。いったん外へ戻ってくれないか?」  
そのセリフに一番驚いたのは他ならぬ少女自身だった。無理もない、ものの数分前まで殺し合っていたのだから。  
「な………!」(マリアも負けず劣らず強烈に驚いていた。)  
「どういうつもり!?何でこんな子の面倒なんか!」  
「だって、こんな小さい子がこう妨害してまで隠蔽しようとする何かが居るんだ、  
中途半端な心持ちじゃ全滅するのが落ちだよ…。それに、このままこの子が死んじゃったらどうするのさ?」  
「で、でもフェイ…」「黙れ。」  
「!?」  
一瞬で首筋にレヴァンテインを突きつけられてひるむマリア。  
「俺は些細な嫉妬心から人を見捨てるような選択をする者は嫌いだ。わかるか?」  
さすがのマリアも反転したフェイトには何も言えず、ただただ何度も首を縦に振る。  
 余談だが、最近のフェイトはこのように性格が反転することがよくあった。デストラクション能力の覚醒に起因するかは不明だが、  
いままで引いたことが無いという理由の大半はこの反転したフェイトが非常に好戦的であると言うことに由来する。  
「よし、じゃあどこに運ぶかは別としても…とりあえず彼女を連れてここから出ようか。」  
何も言えずうなずく一同。  
「彼女は僕が担いでいく。ほかのみんなはエレベータまでの脱出路を確保してくれ。」  
皆が部屋を出たあと…。  
「さてと…道のりは短いけどその間に傷が悪化したら困るしね。ちょっと目を閉じててね。」  
……………」  
近寄るフェイトを警戒するものの、言われるままに目を閉じるしかできない少女。  
「……?」  
しかし痛みが一瞬で消え、不審に思った少女は少しだけ目を開けてみた。すると、周囲に緑色の煙状のものがまっていることに気がつく。  
「………これは?」  
「止血剤と鎮痛剤のブレンド薬。このように使いたい対象のまわりに撒くだけで  
身体に浸透して、速効で鎮痛効果があるのさ。まあ、自作品なんだけどね。」  
「…………」  
 
「じゃあ小さな傷口はもう止血できてるだろうし、ジェミティまでいこうか。いくら何でも宿ぐらいあるだろうし」  
「こ…こないで!」  
「でも止血しても動くとすぐ…」「あぅっ!」  
両足に突如激痛を感じてうずくまる。  
「ほらまた傷口が開いちゃった。実はこの薬、欠点があってね…止血してもすぐに動くと  
せっかくの鎮痛効果もなくなってしまうんだ。傷はとりあえず僕が使える魔法で止血しておくからね」  
「……」  
言った通りに魔法で止血し、こんどは抵抗しなかった少女を抱き上げて出口へと歩き出す。  
「あ、ところで名前訊いてなかったね。君の名前は?」  
「………………レナス…。」  
「レナスっていうんだね。僕はフェイト、フェイト・ラインゴッド。よろしくね」  
「……(コクリ)」  
 
「片づいたか?」  
「ああ、しっかりここの奴らは全滅させておいたぜ」  
「よし、脱出だ」  
「ああ。」  
 
「…………」  
皆が転送ゲートに移動しようとする中、  
レナスを抱きかかえたまま受付の方を見つめる。  
(ぜったいに、もどってくる。必ずだ……!)  
 
「………………」  
レナスは一人、複雑な心境で窓の外の雨を見ていた…。  
あの戦いの後、傷ついて倒れかけた状態だったがカルサアへ運び込まれた  
(「ジェミティで療養というのもなんだろう?」とネルが言ったためだ)  
レナスはフェイトの魔法と介抱によってある程度歩けるぐらいには回復した。しかし、  
それ以来いつも暇さえ在れば窓の外を眺め、ため息をつくようになっていた。  
と言うのも  
(………フェイト………さん……)  
ずっとフェイトが治療してくれたときの顔が頭に浮かんで離れないのである。  
いや、そういうことは前からでもあったのだ。と彼女は自覚する。  
(多分、試練の遺跡で初めてあったときから…)  
「でも、どうして……?」  
その呟きに答える者は居なかった。  
その時だった。部屋のすぐ外の廊下側から物音がしたのだ。  
「………誰?」  
呟いて扉へ向かう。いままで物音を聞くなどと言うことがなかったために確認してみたくなったのである。  
「……?」  
そこには誰も居なかった。  
そこにはありふれた調度品以外何もなかった。  
ただ一つ。  
部屋の前に置き手紙があったことを覗いて…。  
「これは…まさか!?」  
拾ったその手紙にあった「フェイトより」という単語を見て急に嫌な予感がして急いで開封する。  
……それには、こう書いてあった…。  
 
「レナスへ  
面と向かって同じ事を言うことは出来ないだろうから、  
このような形での話になるけど許して欲しい。  
僕達は君が守っていたスフィア社へもういちどいってみることにする。  
おおかた君が守っていたモノはこの世界を脅かすような脅威、だろう?  
ブレアさんもほぼ同じことを言っていた。それは社の連中も感づいていたようだしね。  
例え君にいかなる理由があろうとも、僕達の世界を崩壊させるような存在を放っておく訳にはいかない。  
でも、僕達はここへ必ず戻ってくる。怪我人を放っておく訳にもいかないだろう?  
戻ってきたら、また君の介抱をしないとね。だから、まっていてくれ。  
…さて、長話してる場合じゃなかったか。そろそろ俺はいくことにする。  
生きて帰ってこられたならば、また会おう。  
                             フェイト」  
「…………あの人…行ってしまったの…。」  
手紙を胸に抱き、部屋へと戻るレナス。  
彼女もうすうす感じていたのだ。彼はたとえ自分の身が危なくとも  
理由さえあれば戦いに行ってしまうような人なんだと。  
 
翌朝早く……。  
レナスは結局一睡も出来なかった。  
半ば放心状態でベッドに入ったまま夜が明けてしまったのだ。  
することもなく窓際に乗り出し、そして  
(……ん?あれは?)  
6人ほどの男女の一行が歩いているのを窓から見つけた。  
6人のうち5人はみなかなりの傷を負っていたが、そのなかで1人だけ軽傷で済んでいる蒼穹の髪の青年がいた。  
「フェイトさん!?」  
窓から身を乗り出し確認する。……フェイト達だった。  
いてもたってもいられなくなり、入り口へと向かう。  
 
「フェイトさん!!」  
「……やぁ、ただいま。レナス」  
「皆さん…よかった……。」「ああ……あんな奴に……負け…て、たまるか。」  
相づちを打ちそうになり、慌てて治療が必要な皆の現状を把握する。  
「話は後です。とにかく皆さんの治療をしないと…。」  
 
レナスです。  
あの時から3週間ほど経って…。  
私が彼とやりあったときの傷もなおり、私はそのまま彼らと一緒にいます。  
フェイトさんは始めの2,3日で完治し、それ以降ずっと剣の修行をしています。  
どうやら自分のせいでみんなが重傷を負ったと考えてるみたいなのです。  
そして、他の皆さんも2週間ほどで回復し、みな一様に宿の中庭を使って過酷な戦闘練習をしています。  
おかげで私は回復剤の調合にかり出されて大忙し。  
でも、いつのまにかこのような役割になって、それを不快と思わず、むしろ希希として調合をしている自分が不思議でなりませんでした。  
あの時から、私は…。  
 
でも、彼らがあの人を倒した時に気づくべきでした。  
彼らは、もっと凶悪な存在と戦わなければならなくなったのだ、と……  
 
イセリア・クイーンを倒してからちょうど1月たった頃…。  
「みんな、きいてくれ。」  
食後の食卓でフェイトがそう切り出した。ちなみに、レナスはこの場には居ない。  
フェイトが回復薬を出来る限り大量に作って欲しいと言ったため、今頃は部屋で調合中だ。  
「……そろそろ言い始める頃だろうと思ってたぜ、あれだろ?あの宝珠」  
「そうだ」  
相変わらず察しの良いクリフが言う。それに答え、フェイトは続ける。  
「みんなも文脈を見た通りだ。あれは災厄を封印した宝珠だと、対の片割れの天使からも訊いただろう?  
あれを何とかして破壊し、災厄を消滅させたい。そう思った僕達は今まで苛烈な修行をしていた…。」  
皆を一別し、間をおいて、告げる。  
「いまが実行するときだ、とおもう。」  
沈黙がしばし、場を支配する。  
「そうね。今なら戦える、そんな気がするわ。」  
そう言ったのはマリアだった。  
「この場合、賛成と言うよりも、反対する理由がないと言うべきだね。」  
「腕が鳴るぜ。」  
ネル、アルベルも賛同する。  
「「……………」」  
クリフ、ソフィアは何も言わない。前者は言うまでもないため、後者はフェイトを信用しているためだ。  
「よし、じゃあ…………今日は早く寝るぞ、あの子には俺からうまく言っておく。」  
 強敵と戦うときには長時間反転状態で戦闘するためにしばらく反転状態でならさないといけないのだ。  
所謂ウォーミングアップと言ったところか。  
そしてその一言で、会議は終わり。それぞれが部屋へと戻っていく。  
 
「…………さて。」  
フェイトは歩き出した。彼女へその旨を伝えるために。  
 
(……これだけ、作れれば良いかしら?)  
言われたとおりにあるだけの材料を使って回復剤を作り上げ、一休みするレナス。  
その時。  
コンコン  
 
と、扉をノックする音。  
「…?フェイトさんですか?」  
「そうだ、開けてくれ、話がある。」  
はい、と答えて鍵を外し扉を開ける。  
 
と、そこに立っていたのは見覚えのある反転フェイトだった。  
「どうぞ、散らかっていて歩きにくいと思いますけど。」  
「いや、かまわん」  
レナスは少々畏まってしまう。反転状態のフェイトを見たことはあっても話したことはあまり無いのだ。  
「えっと、話って何ですか?フェイトさん」  
「ああ。…率直に言う、俺達はあの宝珠を−災厄を破壊するために、翌朝ウルザ溶岩洞へ出る」  
「え…?」  
驚くのも無理もない、まだイセリア・クイーンを倒し、仲間の半分以上が重傷を負ってから1ヶ月しか経っていないのだ。  
「仲間と相談して決めた、君は巻き込みたくない。だからここにいてもらう」  
「…………」  
沈黙するレナス。彼女は今葛藤していた。  
片方はこのままいかせて良いの?みんな死んでしまうかもしれないのに?と思う心。  
そしてもう片方はきっと大丈夫、フェイトさんなら帰ってきてくれる。と思う心と。  
だが、どのみちこうなった以上、元来好戦的で  
それでも反転前の人格の影響で災厄を消そうと決心した彼(等)を止めるのは不可能だった…。  
長い長い静寂の中…ついに口を開く。  
「…………帰ってきて、くれますよね?」  
「ああ、もちろんだ。たとえ死にかけようとも、な」  
「………」  
 
そして翌朝少し遅くに、彼らは出ていった。  
今は昼、もう彼らが溶岩洞へ着いて1時間近く経つ時刻だ…。  
(フェイトさん……)  
レナスは一人で調合を続けていた。何かしていないと不安でたまらなくなるのだ。  
それでも、心は依然として晴れない。  
蘇生剤を10コほど作ったところでもう止めようかと、乳棒を置いたその時!  
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!  
唐突に凄まじい大地震が5秒ほど起き、起きたとき同様すぐに治まった。  
「この振動は…!まさか!?」  
だが、それはレナスからフェイトが言ったことを忘れさせるには十分だった。  
 
素早く荷物をたたみ、念のために今まで作っておいた回復薬をバックパックに入れ、急いでウルザ溶岩洞へ走る。  
途中何度も断続的に起きる地震で、彼女の脳裏に最悪の予想が浮かぶ。  
(おねがいフェイトさん、皆さん…無事でいて…!)  
だが、彼女の脚ではバール山脈まで20分近くかかる。  
ようやく遺跡に着いたのは全力で走って15分後、彼らが  
「それ」と戦闘を始めてから1時間以上経過していた…。  
 
そして、フェイト達を探そうとしていた彼女は見てしまった。  
全身傷だらけで遺跡の壁へもたれ、力無くうなだれるフェイトを…。  
他には誰も居ない…フェイト一人だけだった…。  
「な…!フェイトさん!」  
急いでフェイトに駆け寄るレナス。  
「……レ……レナ……ス?」  
「そうです!私ですフェイトさん!しっかりしてください!」  
「お…ま…どう……て……ここ…に…?」  
「ダメです!喋らないでください!今治療しますから!」  
涙目で回復剤を飲ませ、薬を塗るレナス。  
「……………。」  
レナスが作った大量の回復薬を使い、一命を取り留めたフェイトは突如  
立ち上がり溶岩洞の方向へ戻ろうとする。  
だが、瀕死の状態で歩けるはずもなく、ガクリと膝を崩し、倒れ…  
「フェイトさん!」  
寸前でレナスに支えられた。  
「だめです!安静にしていなくちゃ!」  
「ダメだ…まだ、クロセルの…間に…仲間が………。」  
そこまで答えて、フェイトは意識を失った。  
「クロセルの間…?そこに皆さんが…。急がないと!」  
レナスはその言葉を聞いた瞬間にフェイトを担ぎ、走り始めた。  
あの打たれ強いフェイトですら瀕死の重傷だったのだ。  
他のみんながどうなっているのかとは考えたくない…。  
 
フェイトを担ぎ、クロセルの間へ急いだレナスが見たもの…。  
それは、かろうじて生きているフェイトの仲間達だった…。  
「そんな!早く蘇生させないとみんな死んでしまう!!」  
急いで蘇生を試みる…。  
あるだけの蘇生剤を全員へ使用して、回復剤と強心剤を使用する………。  
その繰り返しだった…。  
やがて…。  
持ってきていた全ての回復剤を使い果たし、全員をほぼ奇跡同然に  
蘇生したときにはフェイトも気がついていた。  
二人は無言でアリアスの宿へ全員を運ぶ。遺跡にどういうワケか  
置いてあった大八車に5人を載せ、極力揺らさないように、でも急いで走る。  
ようやくアリアスに着いたときはほぼ日が暮れていた。  
 
その夜は結局宿へ泊る事になった…。  
個室が司令室を使っても足りないため、必然的に唯一意識のあるフェイトとレナスが一緒の部屋で寝ることになる。  
さっきからレナスはフェイトの目線を感じつつ、回復薬の調合をしていた。  
最後の調合が終わったとき………  
「………レナス」彼が呼んだ。  
「フェイトさん……?」  
「ちょっと、外へ行かないか?」  
意外な申し出に少し戸惑いつつも  
「ええ、いいですよ。」と返すレナス。  
領主屋敷を出て、周囲を歩く二人。  
「…………がとう……。」  
「え?」  
「……ありがとう……レナス…君のおかげで、今俺は生きている…。」  
とたんにじわりと涙が溢れるレナス。フェイトに抱きつき、泣きじゃくる。  
「フェイトさん…生きてて…良かった…フェイトさん…フェイトさん」  
「すまない……逆に、心配かけてしまって…。」  
ううん、と首を振るレナス。  
「いいんです、こうしてフェイトさんが生きていてくれるから…」  
そっ、とフェイトの胸に手を当てる…。  
「ほら、生きているって実感できるでしょう?」  
「……ああ…そうだな………。」  
傷が痛むためか、多少ぎこちなくほほえむフェイト。  
「……………レナス…。」  
「…………何ですか?」  
「……俺は…君が好きだ」  
ぎこちない笑みのまま、率直に自分の気持ちを明かすフェイト。  
その顔を見て、彼女は自分の気持ちに気づいた。  
自分もフェイトのことを好きになっていた事に、である。  
「…………私も、です……。」  
そして二人は、友人同士が交わすような短いキスを交わした。  
 
                終章  
ウルザ溶岩洞でフェイト達が「それ」と戦ってから3ヶ月が経った。  
あの翌日、シランドへ向けて出発。ペターニで2日休憩を取った後、無事シランドへ到着した。  
フェイト達はシランドでそのまま静養することになる。  
フェイトの方はすでに回復し、レナスは仲間の看護をしていた。  
ただ、あの絶望的な戦いのショックかフェイトはあの時以降反転したままになっている。  
あのあと、ほかの仲間達は4,5日ほど昏睡状態だった。今はみな目が覚めているが、  
一度死にかけた反動か、このまま最低でも半年はベッドの上から動けないらしい。  
どういうワケか回復薬しか効果がないのだから仕方がない。  
 
そして…。  
「どうしても行ってしまうんですか?」  
「ああ、もう決めたことだ…。」  
「…………」  
フェイトは新たに旅立とうとしていた。  
今度は仲間もいない、一人旅をするつもりだったのだ……誰にも負けないくらい強くなると言う目標をもって…。  
「止めはしません…あなたは、そういう人ですものね…。」  
そして、レナスも決めていた。  
「ああ、だから……「だから、私も一緒に行きます。」  
突然言おうとしたセリフを遮られてきょとんとするフェイト。  
「……………何?」  
「だから、私も一緒にあなたと旅に出ますと言っているんです。」  
「いや……で、でも看病とかは…「心配ありません。みんなのために調合の為の  
レシピを残しておきましたから、薬もあれで事足ります。」  
しどろもどろになって何かを言っても斬り返されて、ついに反論できなくなるフェイト。  
「フェイトさん…。」  
そっ、とフェイトの手を取り、ほおずりするレナス。  
「おねがいです、傍に…傍にいさせてください……。」  
そういう彼女の眼からは一筋の涙が流れていた…。  
「レナス……………解った…俺と一緒に行こう…。」  
その言葉に、彼女は…。  
「はい…!」  
涙を浮かべたまま、けれど満面の笑顔でうなずいた。  
 
「もう後には引けない…。行くぞ…準備はいいか?」  
「いつでも大丈夫です。」  
 
END 

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