シーハーツのアーリグリフとの国境に程近い町アリアス。先の戦乱の影響を最も強く受けたのは、
前線基地としての役割も果たしたここであろう。フェイト=ラインゴットは、数多の苦難を乗り越
え、この世界を仲間たちと共に救った後、この国に残ることを決めた。そんな彼が第一に決めた仕
事がこの町アリアスの復興作業への従事だったのである。その作業も幾許かの月日が流れた末に、
もう終わりに差しかかろうとしていた。
「色んなことがあったなあ…」
フェイトは、あの戦いの最中に使わせてもらっていた部屋をそのまま借り受けるような形となっ
ていた。二階の窓から廻りを見渡す。荒れ果てた町並みは、自分も含めた復興団の尽力により、新
しい姿を見せていた。だが、それよりも印象的だったのは、矢張り人々の間にに少しづつではあっ
たけれど確実に笑顔が増えていったことだろう。労苦もあったけれど、何より代えがたいものを、
フェイトは得ることが出来たと確信している。だけれども、ここに残ったそもそもの理由というの
は、そんな殊勝なものでは無かった。
夜も更けて、人々がとうに寝静まったころ、コンコン、と扉を叩く音が聞こえる。こんな時間に
自分を訪ねてくるのは…勿論誰だかはわかっている。
「はい。開いてますよ」
音を立てないようゆっくりと扉を開けて、すっと閉める。扉の向こうから現れたのは彼の想い人、
そして、ここに残った理由。
「クレアさん」
「ふふ、もう寝てしまっていらしてるのでは、と心配でした」
別に彼女自身は意識はしてないだろうが、夜着、というか白の襦袢のみを羽織ったその姿は、恐
ろしく扇情的であった。てってって、とフェイトに向かって歩き、その胸にゆっくりと飛び込む。
フェイトはそれをしっかりと両腕で受け止める。
「貴方をおいて寝ることが出来るわけないじゃないですか」
「もう、そんなことばっかり」
笑顔を浮かべてそう返すと、何やら言葉を続けようとする、が、上手く行かないようであった。
「…フェイトさん、お父様も無事沈めましたし…その、あの今日も…」
もじもじしながら言おうとする、その言葉の先を知って、おどけた表情でフェイトは、
「今日も?何でしょうか?」
笑いながらそう言うと、クレアは顔を真っ赤にして、ポカ、とフェイトの胸を軽く叩く。
「も、もう…フェイトさんの…意地悪」
そんな表情も、フェイトにとっては喜びの一つであった。普段の彼女は、一見慈母の如き暖かさ
を秘めてはいるけれど、自分の感情を素直には出したがらない傾向がある。それは背負わされた重
責の重さに多分に影響されているとは思うのだが。でも、ここで見る、自分が引き出しているこの
クレアの表情は、紛れも無く彼女の内から出でたものだと思う。それに嬉しさを感じつつ、でもこ
んな表情を見ると、余計続きの言葉を言わせたくなってしまうな、とも感じるのであった。
「…ええ。僕は意地悪です。ですから、どうしたんです?」
意地の悪そうな笑みを浮かべてそういうと、クレアは言葉に詰まって、うぅ〜と唸りだす。
「何ですか?言ってくれなきゃわかりませんよ」
次第にクレアの目の端に雫が浮かんできたので、やりすぎたかなあなどと反省をしようとしたと
ころ、
「あ、あの…伽を…しに…」
恥ずかしさに頬を染めて、上目遣いにそう呟いてくる。うわぁ…と内心呟いて、
「良く出来ました」
「ぇ?…あ…んんっ」
そのまま相手の唇に自分の唇を重ねて、寝台に押し倒す。少しの間みじろきしていたので、落ち
ついてきたところを見計らって、唇を一旦離す。するとクレアは抗議の声をあげて、
「は、はぁ…もう、急になんて…」
「ごめん。でも、ちょっと我慢出来なかった」
ふくれっつらをしようとするクレアの唇をもう一度塞いで、襦袢の上から胸をもみしだいた。襦袢
自体は薄い生地なので、割と感触は直には及ばないもののしっかり伝わる。極上の柔らかさを体感し
ていると、生地の上からでも先がプックラと膨れ上がっているのがわかる。それを軽く触ると、クレア
の喘ぎも大きくなる。そして、襦袢を脱がそうと肩に手をかけた段になって、クレアはフェイトを引き
離そうと、力を込めようとする。実際にはあまり込められてはいないのだが。
「だ…だめぇ…」
はっきりと拒絶の意思を露にするクレアに、訝しげな表情を向けるフェイト。
「ど…どうしたんだい?」
「や…約束…昨日」
「昨日?」
そういえば、確か…。刺激を受けたせいもあってか、若干大胆になったクレアが、
「その…私からって言ったじゃないですか…もう」
息があがっているが、確実に言葉を紡ぐ。ああ、そういえばそうだった。ついつい忘れてしまっては
いたのだけど、そんな約束を確かにした。
「ああ、ごめん…でも、出来るのかい?」
自分から、といってもクレアの性質を見るとなんだか難しいような気がする。
「ま…任せてください。これでも私、勉強したんですからね…」
どうやってしたがは敢えて聞かないことにして、ベッドの端に腰掛けて、彼女に身を任せることにする。
クレアはおもむろにフェイトの着ているものを上から順に脱がしていく。こちらも夜着だったので、それは
対して手間にならないようだったが、妙にそのシチュエーションにくるものがあったのか、フェイトも
クレアの指が当たる度にゾクゾクするものを感じていた。
そして、下着一枚になったころ、
「さあ、参ります…」
などと、少し緊張した様子で、ゆっくりと脱がしにかかる。そして目の前に現れた逸物を見て、顔を
染めながら若干ひるむ。
「こ、これが…その…」
半立ちになったそれをしっかりと見据える。まだ緊張しているんじゃないか、という思いと、気恥ずか
しさを込めてフェイトは、
「その、さ、無理しなくていいから…」
と言うが、その言葉を聞いたクレアは首を横に振って、
「いえ、私に任せて…」
と、決意を見せてその白くて細い指を、フェイトの陰茎に絡める。
「う…あ」
僅かに触れただけで、フェイトは声を上げる。クレアはこれで良いと思ったのか、
「熱い…そ、それでこれをこうすれば…」
と言いつつ、上下にゆっくりと扱きたてる。それだけでフェイトはせりあがってくるものを感じる。自然に
逸物も硬さを得ていった。
「ああ、凄い…これが、フェイトさんの…」
「クレアさん、…その」
感心していたクレアは何かに気付いたように、
「フフフ…あの、次に参りますね」
と言って、一旦陰茎に触れていた手を止める。次?といって咄嗟に浮かんでくるものが無いうちに、フェイト
は下に暖かさを感じた。まさか、これは…
「く、クレアさん?」
クレアは舌先でチロチロとその陰茎の先を味わっていた。丹念にまるで汚れを取るかの如く。中途半端な快感
を与えられ続けていると、クレアは更に次の段階へ進んでいった。唇でゆっくりと触れながら、しっかりとその
陰茎を奥まで咥え込む。
「く、クレアさん?…うぁぁ…!」
亀頭のから懸命に奥まで唇を往復させる。時間が経つにつれて次第に舌まで絡めてくるようになった。情熱さ
さえ感じる愛撫で、陰茎に感じる刺激も相当に大きなものだったが、つたなさを感じるそれよりも、クレアが
自分を上目遣いに見ながら、それを扱き上げているという光景が、が、彼を快感を押し上げた。くちゅくちゅ
と淫猥極まりない音が響き渡る。そして。彼女がその銀の髪を後ろに掻き揚げる段になって、思わず彼は彼女の
頭を股間に押し付ける。
「出、でる!…うぁぁぁ!」
溜まっていた欲情がクレアの口のなかに開放される。
「ん?んん…ぐ…」
その量の多さに、クレアは思わず咽ぶ。
「は、はあ…クレアさん、ごめん…」
無理矢理押し付けてしまったのはやり過ぎに思えて、思わず謝る。
「け…けほっ…いえ、その…私のほうこそ、全部飲んで差し上げられなくて…」
「え?…」
まだ咽びながらも、そうやってフェイトに答える。
「そんな、無理しなくたって…」
「で…でも、男の方は、飲んでしまったほうが嬉しいんじゃ」
クレアはそうやって言ってから、
「その、正直言えば苦いですけど…フェイトさんのモノですし…喜んで欲しいから…」
「クレアさん…」
気持ち、目頭に熱くなったような感覚を覚える。が、そんなフェイトを見て照れたようにしてから、
「フェイトさん、その…まだ、大丈夫ですよね」
「え?」
「あ、その…もっと大丈夫かって…」
「ああ…。勿論…」
一度は逝ってしまって硬さもやわらいだが、今の行為で寧ろ昂ぶりは大きくなった。すると、クレアは
もう一度股間に顔を近づけて、
「フェイトさんって…おっぱい好きですよね?」
「え?…ええ?」
いきなりとんでもない質問をしてきた。先ほどまで伽の一言を言うのに震えていた女性だとは思えない。
雰囲気に流されている、ということもあるのだろうが。クレアは上目づかいをしながら、
「だって、昨日も、今日だって随分と熱心にして…昨日なんて…まるで赤ちゃんみたいに…」
事実を申し立ててきた。
「いや、男って大体そういうもので…」
「一般論じゃなくて、フェイトさんのことを聞いています」
何だか責め立てる様な様子だった。数瞬の後、フェイトの口から、
「…好きです」
という言葉が漏れてきたが、クレアはそれに満足せず、
「何が好きなんですか?」
先ほどの逆襲のようなことをする。
「だから、胸…が」
「ちゃんと言ってください。誰の、何が好きなんですか?」
フェイトの顎をそっと撫でてそう耳にささやきかける。
「で、なくては私はこの先をしてあげることが出来ません」
この先…ということはこの質問内容からも容易く想像が出来た。それに耐え難い誘惑を感じて、ついつい
クレアの誘いにのってしまう。
「クレアさんの…おっぱいが…」
「フフ、じゃあ…してあげますね」
仕返しが出来たと思ったのか、ようやくその返答に満足して、鷹揚に頷いて体を股間に思いっきりよせる。
そして肩からそっと襦袢をずらす。が、胸にひっかかって上手く行かない。フェイトが胸から垂直に布をおろ
して、クレアのたわわに実った白い胸が、その全貌をあらわす。そして、
「うあ…」
フェイトの予想通りの行動に出た。量感のある、見事な美しさを保った乳房が、彼の陰茎をすっぽりと挟
みこむ。熱くたぎる己の肉棒に対して、クレアの肌は若干冷たくて、それも一つの快感に繋がった。
「すご…フェイトさんの…あ、あついよぉ」
たぷん、と音を立てるかのようにして、両胸を交互にずらして、刺激を与えようとする。只挟まれているだけ
でも凄かったが、こうして責め立てられると、矢張り快感も大きくなる。
「クレアさん…ど、どこでこんな…」
「ふぇ?」
疑問の声を上げてから、一旦胸を支える手の動きを抑えて、
「その、本とか…もありますけれど、男性兵士が…その…立ち話をしているのとか…」
俯いてそう答える。兵士にも、そういう妄想をしてしまうものもそれはいるのだろう。なにせ、普段の格好が
シーハーツの女性兵士はとかく挑発的だ。クリムゾンブレイドの二人も、下手したら誘っているように見えるく
らいである。そんなことを言うと、
「あの、それじゃあ、出きるだけ露出抑えるようにしますね。その…私は、あなただけに…」
と、言ってから、再び両胸による奉仕を再開した。クレアの乳房の感触は、さんざ嬲っただけあってもの凄く
良いことはわかっていたのだが、こうやって直接的な刺激を与えられると、また違った味わいがあった。挟み
込む胸の形が押さえ込まれるに従って少しゆがんで、それがまた一層のいやらしさを醸し出す。
「フェイトさぁん…おっぱい、どうですか?」
と聞かれてはいるのだが、その答えは彼女は聞くまでも無く知っている。挟まれて硬さをとっくに取り戻した
陰茎が何よりそれを物語っている。しっとりと、だけれども確実に挟み込まれた陰茎に、クレアの舌先が伸びる。
急激に刺激を与えられて、このまま胸の中で果ててしまいたい願望におそわれるが、一つのことが頭をよぎる。
「あ、ちょ…ちょっとクレアさん待って!」
「ふぇ?」
最初とは違って、今度はフェイトから待ったを出した。その訳を問いただそうとして、クレアも原因にいき
あたった。
「その、僕ら…」
「ええ、そ、そういえば…」
「まだ、本番までいったことが…」
「そ、そうですね…」
さんざんお互いをこの二日で愛し合ったものの、まだ最後の一線を越えることは無かった。無理矢理には
出きるだけしたくなかったのだけど、この様子からすると、クレアは明らかに求めてくれている。だったら、
最初のは痛いとはいえ、未来図には必要な一歩であることも含めて、折角だからこの場でしてしまったほう
が良いだろうと思える。もっとも、彼女をもっと味わいたいという気持ちが大分であったようなのだが。
「フェイトさん…お願いします」
しゅるり、と帯紐を解けさせて、裸形を光に浮かび上がらせる。相変わらず見事すぎる肢体に釘付けになって
いると、彼女は自分からベッドに仰向けに横たわる。
「フェイト…さん…は、はやく…」
クレアの方の昂ぶりも、フェイトに奉仕することで格段に大きくなっていった。それに加えて、これで本当
に一つになれる、といった喜びが、銀髪の麗人をより急かすのだろう。誘いを受けて、踊りかかるようにして
彼女に向かう。濡れそぼって、最早触る必要もないまでに秘所は潤ってしまっている。清楚さを感じる彼女が
ここまでしてくれているのだ。答えないわけにはいかない。優美な曲線を描く足を掴んで、限界までいきりた
った己を、彼女に向けて、
「クレアさん…いきます…」
「は、はい…」
感極まった声で答える彼女に、一応の断りを入れる。
「最初は痛いと思いますけど…できるだけ優しくするから」
「はい…お願いします」
そんなやりとりの後、ようやくピンク色の秘所の先に剛直を入れ始める。
「うああ…」
「く…はあ…」
まだ入り口に差し掛かったばかりだというのに、剛直に向かって快感が襲い始める。奥に入れればいれるほ
ど、彼女の苦渋の表情も増す。
「だ、大丈夫ですか?」
「はい…続けて…」
一定の奥深さに達したとき、陰茎が一つの壁らしきものにあたった。矢張り本当に初めてのようだった。も
とより疑ってはいなかったのだけれど、これほどの美姫がよくこれまで男の手にさらされなかったものだな、と
も思う。同時に、初めてを奪えるという、また特別な喜びを味わえると思うと、また格別な思いがある。
「クレアさん…その、痛いと思うからここは一気にいきますね」
「は…はい…」
覚悟を決めて、フェイトをしっかりと抱き寄せる。そして相槌をうったのを見計らったかのように、フェイト
は一気に己の分身をもって処女の証を破る。
「っ…ああああああ…」
声にならない叫び声を上げて、クレアがのた打ち回ろうとする。が、実際にはこの体勢では彼の体を引き寄せる
ことぐらいしか出来なかった。
「クレアさん!大丈夫ですか?」
「っ…は、はい…だいじょ…」
大丈夫、と言おうとはしているものの、そこには明らかに痛みに苦しむ表情がある。破瓜の証と情欲の証を流す
その場に向けられたものは入れたままに、美しい銀の髪を手で上から撫でるようにして、接吻で落ち着かせようと
する。ぴちゃぴちゃと音をさせながらするそれに落ち着きを取り戻したのか、クレアは潤んだ瞳で、
「ふぁ…ありがとうございます…もう大丈夫ですから、続きを…」
コクリと一回頷いて、ゆっくりと腰を引いてはついていく。
「ん…ああん、はあ」
段々と喘ぎを交えていくクレアの声に、フェイトは満足を覚える。それにしても…
(うう、気を抜くと直ぐに…)
多分いってしまうであろうと、フェイトは思った。初めてだから当然きついのであるけど、それだけでは無くて、
最早既に、フェイトのモノに絡み付いてくるかのような印象を受けるほどに、淫猥な動きをクレアの膣内に感じ
ていた。更なる快感を得たいという気持ちと、まだこのままイキたくないというある意味矛盾した気持ちを持ち
つつ、腰を打ち付けるスピードを速くしていく。それに応えるようなクレアの喘ぎも、更にスピードと高さを上
げていった。
「ああ、いい、ふぇ、ふぇいとさぁん」
「く、クレアさん、も、もう僕…」
クレアの絡みつく襞の刺激に耐え切れず、限界を感じて逸物を引き抜こうとするが…
がしり、と絡まるクレアの美脚に邪魔されて、引き抜くことが出来ない。
「クレアさん?」
このままだと…と言おうとすると、クレアは横に首を二回ほど振った。その意思表示を受けて、そのまま
抽挿スピードをアップして、乳房を軽く刺激させ、
「クレアさん!!」
「ああ…フェイトさん!い、いく…」
全てをほとばしりを彼女に注ぎ込んでしまった。イキすぎて矢張りぐったりしてしまったクレアが意識を
戻すまで、そのままの様子でフェイトは待つことにした。クレアの股の間からは、情交の証がたっぷりと
流れ出ていた。
いとおしいクレアが目を覚ましたとき、その瞳には涙が数滴こぼれていて、フェイトは不安を感じた。
無理をさせすぎたのだろうか?だが、その表情から何かを読み取ったかのように、
「ああ、違うんです。フェイトさん…これは、その…嬉しいんです」
「嬉しい…?」
コクリ、と一つ頷いて、夜空を瞬く、星に目を向ける。
「だって、あなたと一緒になれるなんて…夢にも思わなかった」
感極まった声で言うと、流れる雫の量も多少増したようだった。
「僕もです」
素直に自分の感想を告げた。自分だって、彼女を想ってはいたけれど、ここまでの関係になれるなんて
思っていなかった。遠くで見ていることしか出来なくても、それでもいいと思えたからここに残った。
「ずっと…ずっと、あなたが、この領主館に顔を出してくれるようになってから…」
「ああ…」
彼女に出会ったのは、ここ、アリアス領主館にてのことだった。別段特別な出会いとはいえなかっただろう。
すくなくともロマンチズムを刺激されるようなものではなかった。けれど、フェイトはここで迎えてくれる彼女
に確実に癒されてきた。自分の心の中でいざというときに支えてくれたのが彼女だった。最も、
「ここに通うようになった原因は、無料だからなんて理由からでしたけど」
「まあ…」
呆れたような様子で一言だけ返された。
「でも」
ぐいっと、彼女の肩を引き寄せて、
「ここに残ったのは、本当に貴方がいたから、なんです。貴方に癒されて、恩が返したくて、
少しでも…」
照れくさそうにしながらそう言うと、
「ふふ、でも、私は本当に…不安でした」
呟くようにしながら言葉を続けていく。
「だって、貴方は和平が成って、ようやく思いが告げられるっておもったら、何も言わずに行って
しまって」
バンデーンを追い払ったときのことだろう。シーツを握り締めている手に力が入っているのが分かる。
「半ば絶望的な気持ちを抱えていたところにあらわれてくれて…あの時どんな気持ちだったか、私は
悟られずに居ようとして…全てを貴方から、この」
窓の先の空をそっと腕にて指す。
「空の向こうの、遠くの人なんだと聞かされて、また…」
独白は続く。
「だから、全てが終ったとき、あとちょっとなんだな、って…でも叶わないなら、いっその事…
なんて思った
りもしました」
愛しさがこみ上げて来て、きゅっと腕の中に引き入れる。
「でも、貴方が残ってくれて、夢想が現実に変わって…でも、どこかでまた行ってしまうのではないか、なんて
思って…」
溢れる想いに身を任せる。そんな彼女に再び口付けをしてやる。
「んん、ぁ…だけど、これからは一緒なんですよね、フェイトさん」
「ええ、貴方が望むなら。どこまでも、そして、いつまでも」
二人は影を重ねて、お互いの想いに沈んでいく。
暫くすると、体に着いた愛液やら精液やらを拭い去ってクレアは、
「匂い、着いちゃってますよね。遅いお風呂行ってきますね…」
恥ずかしそうにして、襦袢を再び身にまとってそう呟く。
「はは、何なら僕が洗ってあげましょうか?」
フェイトは笑いながらそう冗談を飛ばした。が、クレアは、一瞥してクスリとした後、フェイトの
右腕を手に取る。
「ふふ、じゃあ軽く着物を着てくださいね」
その言葉にフェイトは慌てる。
「ええ?その、冗談のつもり…」
「あら?一度言ったことを撤回するんですか?それともそんなに…」
俯いて語勢を弱くして、
「私と一緒は、お嫌ですか?」
「い、いや…そんなわけ無いですけど」
そういわれては断る術も無いが、体を洗ってそれで終わりというわけにはいくまい。お互いに理性を
保つことは難しくなりそうである。まあ、何のかんの言って体は正直なもので、すっかりと着替えを終
えてしまったのであるけど。
「さあ、参りましょうか。みんなを起こさないようにしないと」
と言って、ゆっくり歩みだす。そんな彼女に誘われて、まあこういうのも
ありかな、とフェイトは幸せを感じていた。
が、ギィ、と扉を開けると…
「ああ、あなた…」
クレアが扉の開けた先に見たのは…いつも厨房で貧乏くじを引いている女性兵士だった。彼女も長らくこの地
に滞在して、復興作業に従事していた。部屋もこの階のものを割り当てられていたのだが。兎も角、扉の脇にへ
たれこんでいた女性兵士は、目に涙を浮かべて、
「す、す、…すみません」
とペコリと頭を下げたかと思うと、泣き出しながら走ってどこかへいってしまった。あの様子では十中八九、
中での情事を聞かれていたのだろう。ちょっと顔をあわせづらくなるな、と思ったが、
「クレアさん?どうしたんですか?」
その場で立ちすくんでいたクレアに訝しさを覚えたフェイトが聞いてきたので、
「なんでもありません」
と言って、気にしないようにして浴場へ向かうことにした。
FIN