シランドの一室でミラージュはベッドに横になっていた。  
今までの疲労も原因の一つなのだろうがエリクール特有のウィルスで風邪になっ  
てしまっていた。クラウストロ人は身体が丈夫なので滅多に病気なんかにはかか  
らないはずなのだが。やはり慣れない環境というのは身体に相当の負担がかかる  
のだろう。  
 
・・トントン  
 
「ミラージュさん、入りますよ。」  
「あ、フェイト・・」  
「身体の具合はどうです?熱は下がりましたか?」  
「ん・・まだみたいですね。」  
「びっくりしましたよ。昨日いきなり倒れるんですから。」  
「きっと疲れが溜まってたんだと思います・・。」  
「しばらく忙しかったから仕方ないですね。」  
「ええ、すいません・・心配かけさせてしまいまして・・」  
「いいえ。ゆっくり養生して下さいね。」  
「ありがとう、フェイト・・」  
 
素直に感謝されてフェイトはちょっと照れた。ミラージュの素直というか従順な  
部分も彼女の魅力だ。たまに恐い一面も(クリフに)見せるが・・。  
 
「そうだ、晩御飯は食べましたか?」  
「あ・・もう、夜だったんですか・・。」  
「その様子だと今日は何も食べてないんじゃないんですか?」  
「・・はい。そうなりますね。」  
「ダメですよ!ちゃんと食べないと治らないですよ。」  
「・・えぇ、病気に食事は重要ですから。」  
 
ミラージュには医学の知識がある。病気の時は食事をちゃんと摂ることがどれほ  
ど大きなファクターを示すかは知っていた。  
 
「でも、食欲が無いんで・・」  
「あ、じゃあちょっと待っててください。」  
「・・フェイト?」  
 
フェイトはそう言うと部屋を出ていった。  
ミラージュは疑問を感じていたが熱のせいで頭が回らないので何も考えないこと  
にし、そのまま横になった。  
それからどのくらい経ったのかはわからない。ほんの少しの気もするし、ずいぶ  
ん長い時間経ったようにも思える。再び聞こえるノックの音。  
 
・・トントン  
 
「ミラージュさん、入りますよ。」  
「・・はい、どうぞ。」  
 
再び現れたフェイトは鍋を持ったまま入ってきて、その鍋をテーブルに置いた。  
部屋に立ち込める香りでミラージュにはそれが何かがすぐにわかった。  
 
「・・シチュー・・ですね。」  
「はい、そうです。以前ミラージュさんがシチューが好きだと聞いたんで。  
 自分の好きなものなら食べられますよね?それにシチューなら栄養もたくさん  
 あるし身体も温まりますよ。」  
「・・フェイト・・私のために作ってくれたのですか?」  
「はい。あ、でもちょっと作り方わからなくてソフィアに手伝ってもらっちゃい  
 ましたけど。」  
「・・ソフィア何か言ってました?」  
「え?特に何も。心なしか機嫌悪かったような・・?う〜ん。」  
 
ミラージュのためにシチューを作るから手伝ってくれ、なんて言われたらソフィ  
アの気持ちは複雑だ。ミラージュのことは嫌いではない・・むしろ好きである。  
でもそれは人としてであって恋敵としてではない。ミラージュとクリフが恋人同  
士かと思っていたが、どうやらそうではないらしい。昔は付き合っていたことも  
あるそうだがクリフの女癖が悪くてそのたびに喧嘩していたらしい。そして今で  
は完全に愛想をつかされてしまったというわけだ。  
ソフィアは最近ミラージュがフェイトに好意を抱いているのに気付いた。だから  
フェイトの手伝いをするのにあまり乗り気ではなかった。でもフェイトと一緒に  
料理している時間が楽しかった。  
 
「さぁ、ミラージュさん食べてください。拒否権は無いですよ。」  
 
フェイトは食器にシチューを注ぎミラージュの手元に渡した。まだ出来上がった  
ばかりなので湯気が出ている。  
ミラージュは笑みを浮かべてシチューをスプーンで飲んだ。  
 
「・・・・」  
長い沈黙。  
「あ、あれ・・・?お口に合わなかった・・ですか?おかしいなぁ。ちゃんとソ  
 フィアに言われた作り方でやったんだけどなぁ。僕には料理の才能がちょっと  
 足りてないのかも。ど・・どうしよう・・。」  
「フフッ・・すごくおいしいですよ。フェイト、ありがとう・・。」  
「ホントですか?良かったぁ。不味かったらどうしようかと思って。」  
「ホントですよ。フェイトも食べてみますか?」  
「じゃあ一口だけもらいますね。」  
 
ミラージュはスプーンを渡しミラージュの食器のシチューを一口飲んだ。  
お互い気付いてないが何気に間接キスだ。  
シチューを含んだフェイトの顔が歪んだ。  
 
「・・・・ッ。ミラージュさんごめんなさい・・。」  
「・・何で謝るんですか?」  
「だ、だってこれ・・不味いじゃないですか・・。とてもじゃないけど食べられ  
 ないですよ・・。」  
「・・味は・・・確かにちょっと悪いかもしれませんね。でもおいしいですよ。  
 初めてフェイトが・・私のために作ってくれた料理ですから・・おいしいんで  
 すよ。おいしくないわけないんです。とても嬉しいんです・・。」  
「ミラージュさん・・・。」  
 
ミラージュの飾り気のない言葉にフェイトはドキっとした。そしてそれがミラー  
ジュの嘘偽りのない本音だった。  
 
シチューを食べて身体も温まりお腹も心も満たされたミラージュはいつの間にか  
眠りに落ちていた。気付くと夜中の2時だった。ミラージュが横を向くと傍でイ  
スに座ったまま眠っているフェイトが居た。ひょっとしてずっと看病し続けてく  
れたのだろうか。そう言えば額には濡れタオルが乗せられている。  
 
「・・フェイト・・・」  
 
フェイトはTシャツの格好のまま眠っている。スースーと寝息を立てるフェイト  
の顔は実年齢よりもずっと幼く見えた。これにはカワイイと思うしかなかったミ  
ラージュだが彼女からすれば普段のフェイトでもカワイイのだ。8才も年下の男  
の子に恋心を抱くなんて不謹慎かとも思ったが自分の気持ちにウソはつけない。  
ミラージュはフェイトに腕をまわしてフェイトを自分のベッドに寝かせた。  
さすがにこれにはフェイトも気付いて眼を覚ました。  
 
「ミ、ミラージュさん!?」  
「ダメですよ。こんな格好で寝てたら今度はあなたが風邪ひいてしまいますよ。  
 そうなったら元も子も無いでしょう?ほら、布団をかけますよ。」  
 
ミラージュは腕をフェイトにまわしたまま話している。  
 
「・・あ、あの・・ミラージュさ・・ん、・・その・・・」  
 
さすがにこの状況ではまともに喋ることができない。そして苦し紛れな言葉が出  
た。  
 
「・・身体はもう良いんですか・・?」  
「ええ。あなたが作ってくれたシチューと看病のおかげですよ。すっかり熱もひ  
 いたみたいです。ずっと看病してくれたんですね、ありがとうフェイト。」  
 
ミラージュの腕の中でフェイトは頷くことしかできなかった。ミラージュの様な  
美しい女性の顔がすぐ目の前にあるのだから。顔も見ることができない。フェイ  
トの顔は赤くなっていて湯気が出そうになっていた。まるで先刻のシチューだ。  
そんなフェイトにミラージュは気付いた。  
ミラージュは何も言わずに腕を引き寄せてフェイトをしっかり抱きしめた。  
 
ミラージュの優しい香りがより一層近づいたかと思うと唇に熱い何かが触れるの  
を感じた。と思った瞬間半開きになっていたフェイトの口内に異物が入ってくる  
。まるで何か違う生き物がいるかのような錯覚に陥った。  
フェイトには何が起こったのか理解するまで時間がかかった。  
やがてミラージュの顔が離れたかと思うと、二人の唇が糸をひいた唾液で繋がっ  
ている。  
 
「!!〜〜〜#@♭※☆$■◎!??」  
 
フェイトは混乱している。約6秒間操作不能。目が星だ。 
 
「何言ってるかわかりませんよ、フェイト。」  
ミラージュは微笑したまま言った。  
やっと混乱から復活したフェイトは、やっと事の顛末に気付いた。  
「・・ミ、ミラージュさん・・」  
「なんでキスしたかって?」  
「え、ええ・・。」  
「あなたへの感謝の気持ち。・・とあなたへの好意が理由ですよ。」  
「!」  
「いつも真っ直ぐな・・あくまで私個人の見解ですが・・・あなたを見ていると  
 だんだん惹かれていく自分がいたのです。」  
「・・え?・・それってつまり・・・」  
「あなたが好きなのですよ、フェイト。」  
「・・・・」  
「私みたいなおばさんじゃダメですか?」  
「いや、あのっ・・ミラージュさんはスタイルもいいし、仕事もできるし、頭も  
 良いし、・・っていうか27才はおばさんじゃないですよ!  
 ・・それに、とても美人じゃないですか。ぼ、僕なんかじゃもったいないくら  
 いのっ・・!!」  
 
「ホントに僕で・・良いんですか?」  
「ええ。また同じこと言いますか?」  
「あ、いえ・・大丈夫です。・・ちょっと意外だったので・・。」  
「意外でしたか?」  
「ミラージュさんが・・僕のこと想っていてくれてたなんて・・。てっきりクリ  
 フかと思ってました。」  
「みんなそう言います。でもクリフは私にとって”単なる”仕事のパートナーで  
 すよ。向こうはどうか知りませんが私はそうとしか思っていません。でも仕事  
 以外のパートナーはフェイト、あなたにお願いしたいのです。」  
 
フェイトは今度こそミラージュの気持ちを受け止めた。  
 
「は、はい!あの・・こんな僕で良ければ、お・・お願いします!!」  
「はい。こちらこそ。」  
 
満面の笑みを浮かべたミラージュはさらにフェイトを強く抱きしめた。  
今度はフェイトもミラージュの身体に手をまわして抱きしめた。  
そして二人はお互いを求めるように唇を貪りあった。  
 
ここで忘れてはいけない。ミラージュはクラウストロ人だ。女性とはいえ常人の  
数倍の力はある。それに彼女はクリフより強いじゃないか。  
フェイトはきつく抱きしめられ背中に痛みを感じていた。そのためミラージュの  
身体とひどく密着していた。抱き合ってわかったが彼女はフェイトよりわずかに  
身長が高い。足を絡ませるとわずかにつま先に届かない。  
フェイトは彼女の身体の柔らかさを全身で感じた。それにキスも相まってフェイ  
トの身体は素直に反応していた。それがミラージュの下腹部らへんに伝わったら  
しい。ちょっとヤバイと思ったが先手を打ったのはミラージュだった。  
 
「・・フェイト、硬くなってますね。」  
「あ・・・、はい・・。そうみたい・・ですね。」  
「私の服を脱がせてくれませんか?」  
「!!」  
 
またまたいきなりの事で動揺するフェイト。もうすでに二人の気持ちは繋がって  
いるのだから自然な成り行きだ。でも、フェイトには初めての体験だ。女性の服  
を自分が脱がせるなんて・・。  
 
ミラージュはずっとベッドに寝込んでいたためパジャマを着ていた。ミラージュ  
がパジャマなんてあまり想像できないがちょっと小さめのを着ている彼女はギャ  
ップがあってとてもカワイイ。どうやらソフィアに借りたらしい。いたるところ  
に可愛い(?)ネコのプリントが施されている。  
震える指先で前のボタンを外し始めるフェイト。胸のところにさしかかった時わ  
ずかだが指先が胸に触れてしまった。  
 
「あ!ゴメンなさい!」  
 
思わず謝るフェイト。  
ミラージュはフェイトの手をつかみ自分の胸に当てた。フェイトの掌にさっきよ  
りも確かな感触が伝わる。ブラジャーをつけていないミラージュの豊かな胸は興  
奮で熱を帯びわずかに汗ばんでいる。先端は硬くなっていた。  
 
「・・フェイト、私を気持ち良くさせてください・・。」  
 
そう言うとフェイトの手をつかって自分の胸を刺激する。こういう風に刺激する  
んだ、とフェイトに教えるように。  
 
やがてフェイトはミラージュの誘導がなくても自発的に胸をゆっくり刺激してい  
く。胸だけ露出しているパジャマ姿はなんとも欲望をそそる。  
 
「・・んんっ、フェイト・・あッ!・・とても上手ですよ・・。」  
 
フェイトの飲み込みが早いのかミラージュは感じていた。そして乳首を舌で刺激  
しだした。  
 
「あっ、あぁ!ダ・・ダメですよ・・。昨日からお風呂に入ってないんですから  
 。き、汚いですよ・・。」  
「そんなことないですよ・・。とってもいい匂いがしますし。」  
 
さすがのミラージュもちょっと恥ずかしかったが身体は拒絶していない。  
それどころかもっとして欲しい様子だ。  
 
「・・フェイト、そろそろ全部脱がせてくれますか?」 

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