古今東西。男というものは顔をつき合わせて酒を飲むとくだらない話をする生き物である。それはいつの時代だろうと、どんな世界だろうと変わりはしない。
「で、フェイトはどんな女が好みなんだ?」
「ぼく? 僕は…その、胸が大きい人がいいなあ」
コップ酒片手に、口にはスルメ(あるのか?と聞いてはいけない)を咥えて完全オヤジ化したクリフ・フィッターが問えば、これまた赤ら顔のフェイト・ラインゴットは両手に一升瓶(だから聞いてはいけない)を抱えておぼつかない口調で答えるわけである。
「おっぱいのデカイ女か。だからお前ソフィアちゃんとかいいんだな。ぽっちゃり系が好きってやつか」
イッヒッヒと笑うオヤジ。ヒックとフェイトは反論する。
「別にソフィアだけじゃなくて…ほら、ミラージュさんとかクレアさんとかファリンさんとか…いるじゃん?」
「見事なまでに巨乳派か。そういや、おまえって胸でかい女には態度違うモンな。だがな、ミラージュはオレんだ。やらんぞ」
「ううう。ミラーヒュさーん」
さり気なく大人気無い発言をかますクリフに、わりと本気で泣きが入るフェイト。
その有様を横目で見ながらお猪口を傾けていたアルベル・ノックスは鼻で笑った。後ろの方で顔を真っ赤にしたタヌキ、もといロジャー・S・ハクスリーが踊っている。いつもよりも尻尾のふくらみが3倍増しだ。
「フン。阿呆が…下らんことで泣いてるんじゃねえ」
「なんだよー、アルベルだって好きな女の子くらいいるだろ…」
とりあえず鼻水をふけ、フェイト。
「黙れ童貞。俺は貴様らとは違う。そんなことに興味はねえ」
クリフ爆笑。容赦ないアルベルにフェイトは隅でいじけ始めた。そのまわりでくるくると踊るタヌキ。
「にいちゃーん。気にすんなよ? オイラは踊ってればハッピーだぜ」
「しくしく。もう一人で森の中はイヤだよう。神様のアホー」
壁に向かってブツブツとなにやら呟く主人公。多分、何回目かの人生なんだろう。
「そう言うお前はアレだろ。実はマザコンじゃないかと俺は思うんだが」
ようやく笑いから立ち直ったクリフがアルベルに言う。ちなみについさっきまで腹を抱えて床を転がっていた。ヒデエ。
「死ぬか。貴様?」
スラリと刀を抜いて立ちあがるアルベル。目が据わってるんだが、足元がふらついてるあたりこいつも酔っ払いか。
「じゃあれか。男の方が好きなのか」
うんうんと頷くクリフ。殺されるかもとか考えてないらしい。
「女と間違う美形だもんな。露出度高いし」
「そうだよね。プレイヤーも始める前は女だと思ってたらしいよ?」
「アルベルの兄ちゃん、素でボケるからオイラは面白いけどナー」
「それは言えてる。案外ヘタレだし」
「アルベルが女だったら、おっぱい大きかったかなあ」
「兄ちゃん変態?」
「貴様ら……」
いつのまにか復活したフェイトとロジャーも加わってわいわいがやがや。ぷるぷる震える浴衣姿のアルベルがどこか笑いを誘う。
「まとめてぶっ殺す」
轟音。爆発。
そして今日も今日とて日常茶飯事となった一行の夜は更けていくのであった。