大晦日。僕はいつものようにソフィアの家に来ている。
この時期も毎年父さん達は忙しく、研究室にこもりっぱなしだった。帰ってくるのはだいたい4日を過ぎたぐらいだろうか。
両親と一緒に正月をむかえた記憶は中学に上がったあたりから無かったりするので、その頃からずっとおばさんとソフィアにお世話になっているという事になる。
結構長い間お世話になってるんだな、と。僕はこたつの中で足を伸ばしながら思った。
ちなみに、この家にこたつがあるのはおばさんの趣味らしい。
……どこでこんな古いもの入手したんだろう?まぁ、いいや。
こたつの中でごろごろと時間を潰していると、ソフィアがおぼんを持ってやってきた。
「年越しそば持ってきたよ」
「ありがとう。あ、美味しそうだね」
「へへー、今年は私が作ったんだよ」
「そうなのか、お疲れ様。それじゃ、食べようか」
「うんっ」
ずるずると2人で蕎麦を食べる。おばさんはどうしているのか?と聞くと、まだ下でおせち料理の準備をしていると答えが返ってきた。
大変だなぁ、と思いつつ毎年手伝わない僕は駄目人間だと思う。
けど、それはおばさんに「フェイト君は休んでていいわよ」と言われているからであって完全に僕が駄目人間な訳ではない。いや、もう、それは断じて違う。違うと信じている。
そんな事を考えながら、蕎麦の残り汁を飲む。七味入れ過ぎたと後悔した。
「もう今年も終わりだね」
「そうだな」
テレビからはカウントダウンの声が聞こえて来る。
賑やかな街並みが映し出され、アナウンサーが変なテンションで数を数えていた。
「5!4!3!2!1!」
「「「「0!!」」」
大きな花火が上がり、テレビにでかでかと“新年あけましておめでとうございます”の文字が映し出された。
「あけましておめでとう。えっと、今年も色々迷惑かけると思うけど……よろしくね」
照れ臭そうに笑うソフィアに「こちらこそ」と僕も笑顔で返した。