「っ…ん…ふぅ…ひぁ…んっ!」  
その小さな身体で初めて受ける感覚に戸惑いながらも、リムルはそれを懸命に受け止めていた  
決してすべてが快感という訳ではなく、  
くすぐったいだの、何だか変な感じという気分の方が強かった。  
 
 
だけど目の前で、いや自分に跨ってゆっくりと、丁寧に丁寧に自分に触れる彼を見ていると  
何だかそんな気分も全てがふぁっと暖かい感覚へと変わっていくようだった。  
 
 
事の発端は、彼の21歳の誕生日プレゼントの内容の相談を、  
彼の親友に行ったことだった。  
 
「けーたん。フェイズは何が好きなのよ?リムはフェイズに何かあっと驚くプレゼントをしてやりたいのよ」  
 
彼の長年の親友はうーん…と首をひねって考え込むと  
「えーとねえ…リムちゃん!かな!」  
と自信たっぷりで答える。  
「そそそそそんな訳ないのよ!けーたん!」  
予想外の返答の内容を慌てて否定する。  
「いや違わないって!いやいやホント!親友が言うんだからマジマジ!…」  
 
 
「だからな、リムちゃん。こういうのはどうだ?」  
と言って何かをポソポソと耳元でささやく  
 
 
「な、何言ってるのよ…そんな事リムがしても…フェイズは…フェイズは…  
ふーんそうですか!って言って流すのよ!絶対なのよ!」  
 
驚き慌てふためくリムルの様子を楽しむようにニヤニヤ眺めながら彼の親友は  
「いやいやいや。それしたら絶対喜ぶから!絶対だ!な?試してみようよ!そして結果は…  
あ、フェイズから聞くから!な?」  
 
彼の親友から何だか頭がクラクラする提案を持ちかけられて、リムルはふらふらになりながら、  
彼と住む家路につく  
 
いくら長年の親友お墨付きの『フェイズが喜ぶこと』とは言え  
恐らくけーたんが期待している結果とは程遠くなるような気がして  
 
普通のプレゼントも用意しておく事に決めた。  
寒がりの彼が風邪をひかないように、セーターを編むのだ。  
ただし今から間に合うかはよく分からないのが難点だが…  
一日に編み物に費やせる時間と自分の作業速度から割り出すと、何とか間に合う計算になった。  
だからきっと大丈夫。そう思って彼女は決戦の日に向けて準備を進めた。  
 
そしてついに2月3日が訪れた  
 
結局セーターは間に合わなかった。やはり色々予定通りにはいかないもので、  
あと少しというところで間に合わなかったのだ。  
 
フェイズはエルダーの同胞が祝ってくれるらしく、昨日からそちらへ訪問していた。  
リムルも一緒に行かないかと誘われたが、セーターの事もあるから、  
弟子に教える約束があるからと嘘をついて、いつもより少し軽やかな彼の後姿を見送った。  
 
夕方には帰ってくると言う言葉を、自分にもお祝いをして欲しいと思っていると都合よく解釈し、  
それまでには間に合うようにとひたすらひたすら寝る間も惜しんで編み続けた。  
 
 
 
「…目が覚めましたか?リムル」  
「!!え?フェイズ……どうして…!?」  
気がついた時には夕方まで戻らないはずの彼が目の前にいるではないか!  
「…夕方には戻ると言ったでしょう?」  
 
……ばかばかばか。リムはおばかさんなのよと彼女は自分の中で彼女を何発か殴る  
 
セーターは当然だとしても、まだ何も誕生日パーティーの準備が出来ていない  
あったかいスープもないし、昨日から準備していたローストビーフもまだ形になっていない。  
そしてクッキーなんてまだ小麦粉と牛乳とお砂糖とに分離したままだ。  
 
「フェ…あの…ごめんなのよ…」  
 
「どうして君が謝る必要があるんですか?」  
と言ってくすりと笑う。  
「だってフェイズの誕生日なのに…準備が何も……」  
「いいんですよ、エルダーの村でたくさんごちそうになりましたし…それに」  
 
彼は今までひた隠しにしていた編みかけのセーターにも気付いているだろう  
「僕のために頑張っていてくれてたって事が分かりましたから」  
「ちっち違うのよ!これはフェイズの為なんかじゃあ…!」  
 
何だか必至になだめられているような気がして、悲しくなっていつもみたいにバカな意地を張ってしまう  
 
「じゃあそういう事にしておきます」  
 
料理もセーターも、何一つ形となった物をあげられない自分が悔しかった。  
何か、何かないか。何か何か何か…あ、ひとつだけあった。アレだけど…  
もうやぶれかぶれだ。ケイの言葉を信じて実行するしかない。  
 
「フェ、フェイズ…こ、これがぷ…プレゼント…なのよ…っ!」  
 
そう言ってリムルは彼の方めがけて突撃し、膝の上に跨った。  
そして彼の唇を奪うと、更に彼の上唇を彼女自信の唇で柔らかく食み、ちゅうっと音を立てて吸い、  
そして顔を離し、か弱く震える声で言った  
 
「リ…リムがププププレゼントなのよ…煮るなり焼くなり…  
 フェイズのすすす好きにすれば…!いいのよ!」  
 
彼女にはその台詞の真の意図はつかめなかったが、  
顔から火が出る程こっ恥ずかしいセリフだったという事を、口にして改めて思い知る。  
 
きっと彼は「何を言ってるんですリムル。君がプレゼントだなんて僕はゴメンですよ」  
とか言って軽くあしらうにきまっているのだ。だって自分なら自分をプレゼントされてもうれしくない。  
こんな意地っ張りの子なんて…  
 
台詞を言ってしまってから、そんな考えがグルグルギュルギュル回ってしまっている彼女に対する  
彼の返答は、彼女の想像とは180度違っていた。  
 
「…ほ、本当に…いいんですか?」  
 
 
エルダー人にとって21の誕生日は特別だ  
21になるとエルダーでは成人として認められるのだ。  
そして今まで規制されていた色々な事が許されるのだ。  
彼も今日生まれて初めて酒を口にし、その慣れない味に戸惑いつつも上機嫌であった。  
 
 
「リムちゃんは誕生日プレゼント何くれるつもりなんだろうな?」  
皆が自分の誕生日を祝ってくれて、いつもよりハイテンションな中、  
いつも通りのニヤニヤ笑いを浮かべたケイがやってきた  
 
「……多分編み物の類だと思うよ。最近夜中まで遅く起きて何かしてるし、  
勝手に僕の服を取り出してるみたいだし…」  
 
「へーえ。愛されてるねーフェイズ。道理で先週会った時眠そうだった訳だ。  
俺はてっきりフェイズが寝かせてないのかと…」  
「どういう意味だよケイ!僕たちはそんな関係じゃ……!」  
 
声を荒げるフェイズに対して親友は、  
「まあまあ。そんなに荒れるなよ。ところではい、これ。お前への成人のお祝いだよ」  
 
そう言って彼の手に握りしめさせられたものは……  
「なっなななな!なんだよこれ!要らないよ!!」  
 
童貞の彼から見ても明らかにわかるそれはどう見てもゴムだった。  
レムリックの文明レベルでは到底存在できない代物。過去のエルダーの最新技術を使った代物だ  
「大体どうしてこんなのが残ってるんだよ?!バレたら…!!」  
 
するとケイはちっちっちと指を振り  
「大丈夫。後3つしか残ってないから!」と自信満々に答える  
「良くないだろ?!って使ってるのかよ!と、とにかく僕はいらないよ!」  
 
そう言ってもう一度親友の手の中にそれを押し込んだ  
 
こんなの持ってたら勢いに任せてしまうかもしれない…という事は絶対ケイには言えないけれど  
 
「へー。後悔しないの?この後家に帰って、せっかくの21の誕生日の夜に、  
 リムちゃんがごちそうとプレゼント用意して待ってるんだぞ?」  
「無・関・係!大きなお世話だよ、ケイ!」  
 
そう言って余計な事を吹き込む親友から慌てて離れると、その後は何事もなく宴会を楽しんだ。  
しかし彼はきっとリムルが張り切ってあまり頼りにならない腕をふるっていると思っていたので、  
懐かしのエルダー伝統料理を腹八分目までにとどめておいた。  
 
青年は帰路に着く途中、彼女と自分との事を考えていた。  
毎日毎日同じ釜の飯を食べ、同じ部屋で寝起きし、生活する。  
冒険をしている最中だと仲間という名の運命共同体で通ったが、  
今は冒険をしているだけでもない。でも肉体関係はない。  
お互いそれで居心地がいいのだからそれで問題ないとは思う。  
 
しかしそれももうすでにそれが辛くなってきている事も、青年は自覚していた。  
リムルは僕をどう思ってくれているんだろう。きちんと男として見てくれているのかどうか  
という事を、日に10回以上は考える。  
 
でも考えるたびに、彼女はそんな事を望んでいないという結論に達してしまう。  
彼女は姿は成長した。心もこんなバカな自分を助けてくれるほどに広くて優しい子だと思う。  
だけど知識は…知識だけはどうやら偏っているらしく  
自分と夜二人きりだというのによく寒いからという理由で布団に潜り込んできたり、  
夏場は薄いスリップドレス一枚で就寝についたり、そのほかにも事あるごとに  
自分に接触してくる。  
わざとやってるのではないかと疑う事もあったがどうやらそういう訳ではないらしく、  
いつも自分に触れると彼女は本当に安心して眠るのだ。  
 
そういう姿を見ると男として見られていないのだという事を痛感しへこんでしまう。  
 
でも、今日で21になった。もう大人なのだ!  
今度彼女がそんなそぶりを見せたら、思い切って聞いてみよう!と彼は心に決めた。  
 
 
陽も落ちかけたころに二人の家に到着すると…  
彼女は、今までずっと隠していただろう編みかけのセーターらしき物体と一緒に眠りに落ちていた。  
「………」  
これは見なかったことにするのが優しさだろうか  
 
しかしいくら寝不足とはいえ家に帰ってきたことにさえ全く気付かないとは…相変わらず不用心すぎる。  
これだから心配なのだ。しかも当の彼女はすーすーと気持のよさそうな寝息を立て。長いまつげを一定間隔で上下させている。  
 
……寝顔は天使なんだけどなあ…  
 
しばらくじーっと見つめていたが、その視線に何か感じるものがあったのか彼女が目を瞬かせた。  
 
自分の存在に気づきガバっと体を起こした彼女は慌てふためいて、酷く落胆していたようだった。  
彼女の涙や悲しむ姿に自分が弱いことは十分承知しているので、何とか落ち着かせようとしていたのだが…  
 
何を思ったか彼女はこちらに突進してきて膝にまたがり、あろう事か唇を奪ってきて  
更に耳を疑うような言葉が彼女から飛び出たのだった。  
 
いつもの自分ならははは、と何とか交わしたかもしれない。  
でも21の誕生日、ケイの言葉、そして何よりも今なお右膝に続く少女の柔らかな太股と股間節の触感に抗えるわけがない。  
むしろ抗ってはいけないような気がするのだ  
 
「…ほ、本当に…いいんですか?意味わかって言ってるんですか?」  
 
すると顔をほんのりと赤らめたリムルは目をそらしながら恐る恐る口にする  
 
「…ちょっとは知ってるけど…でもあんまりよく分からないのよ……」  
「血が出るかも知れないんですよ?多分すごく痛いですよ?」  
 
「で、でも…」  
 
蚊の泣くような小さな小さな息を、彼女は僕にふりかけた。  
 
フェイズが…リムでいいって思ってくれているなら…リム……がんばるのよ  
 
どうしてそう一歩引いてしまうのか。自分では精いっぱいのつもりだったが愛情の示し方が足りないのか  
そう思うと頭の中で何かが爆発するような感じがしてその爆風に押されるかのように、  
いつの間にか僕はリムルの両腕を掴んでベッドに押さえつけていた。  
白いワンピースが重力に従うと共に、彼女の華奢な身体のラインを露わにする。  
あまり大きいとは言えない自分の腕の中にすっぽりと納まるその身体に自分の身体を重ねる。  
 
「僕はリムルがいいんですよ」  
思えば、初めてこんな風に力ずくで彼女の行動を制御した気がする。  
やはりその為だろうか。明らかに彼女の目は小動物のように震えている。  
しかしその上目遣いと潤んだ瞳がが堪らなく下半身を刺激するのだ。  
 
目が赤くなってはいないだろうか。彼女はこの目を見ると酷く怯えるだろうから  
細心の注意を払い、リムルに、僕に言い聞かせる。  
 
「いいですか?今からいくつか注意点を述べます。よく聞いて下さい」  
「は、はいなのよ…」  
まるで教師が生徒に言い聞かせるようだが、残念ながらそんな余裕は僕にはない  
押さえつけていた腕を離し、指に指を絡ませ、上半身全体を、まつ毛とまつ毛が触れそうな位の距離にへと寄せる  
 
「まず…僕も初めてなので…よく分かりません。リムルも…初めてですよね?」  
確認するように彼女に問うと、彼女はコクンと頷いた。  
「ですから上手くいかないかもしれません。もちろん最大限の努力をしようと思います。」  
彼女はまたコクンと頷き、  
「最初からうまくはいかないのよ。諦めなければいつか成功するのよ」と言う。  
僕はできるだけ優しく笑うとまた続けた。  
 
「後…途中で辛かったり痛かったり怖かったり…とにかく止めてほしいって思った時には遠慮なく力いっぱい僕を殴ってください。  
もしそれでも止まらなかったら遠慮なくファイアボルトを放ってもいいですし、  
若しくはケルベロスを呼んでも構いません。それだけは本当に…悲しい思いをさせたい訳じゃ無いんです」  
 
自分でも途中で何を言っているかよく分からない。もう大分思考が麻痺してきたようだ。  
彼女は何度も頷いて  
「大丈夫なのよ。フェイズが優しいことは…リムよく分かってるのよ」  
そう言うと、彼女はすべて了解したと言わんばかりに瞳を閉じた。  
 
「そ、それでは失礼します…」  
そして僕は恐る恐る彼女身体に指を伸ばした。  
 

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