朝。今日もいい天気。そしてラインゴッドさん家の兄妹は今日も元気!  
「…お兄ちゃん、そろそろ起きて」  
「あ、後5分だけ…」  
「もう、お兄ちゃん…さっきもそれ言ってたじゃない!」  
 ラインゴッド家の長男・フェイトは昨日も遅くまでバトルシミュレーターゲームで遊んでいた  
ご様子。妹のマリアは呆れ顔…でも実はフェイトを起こす前に、彼の寝顔を観察してたのは  
ご愛嬌。それに大好きなフェイトの眠りを邪魔するのも何だか後ろめたいモノがあるし…。  
「ふぁぁ…おはよ、マリア」  
「おはよう、お兄ちゃん…って、和んでる場合じゃないわ。早くご飯を食べて頂戴!」  
「ご飯って…昨日は母さんが居なかったから…マ、マリアが作ったのか!?」  
「…作っちゃいけなかったの?」  
 出た。フェイト曰く「どうしてそんな事言うの、お兄ちゃん…光線」。マリアのこの訴え  
かける瞳には昔から弱く、首を振ろうにも振れないのだった…。  
「…分かった、ちゃんと食べるから…」  
「…本当?」  
「ああ、顔洗ったら食べにいくよ…待ってて」  
「うん!」  
 嬉しそうに居間に向かうマリアを見て、フェイトは大きなため息をつく。  
「(マリアの気持ちは嬉しいんだけど…どうも味のセンスが…なぁ…)」  
 
「美味しかったでしょ? ちゃんとこの前、お母さんに習ったんだから」  
「そ、そうだったのか(か、母さんは僕が可愛くないんだろうか…泣)…」  
 マリアの味付けは何故かいつも微妙で、こう…味が舌に残るというか…。  
「(…リーベルに食わしてやりたいよ、ホント…)」  
 後でよく歯を磨いておかないと…とマリアに対してゴメンと思いつつ、フェイトはテーブル  
を立った…。  
 
「お父さん達、今日はちゃんと帰ってくるって」  
「そっか…やっとまともな食事が…」  
「え?」  
「な、何でもない…!」  
 超高層ビルをぬう様に飛ぶエアカーの中でも2人の会話は続く。  
が、実はフェイトはこの空間が苦手だった。2人きりで自動運転なのをいい事にマリアが…。  
「お兄ちゃん…///」  
 このエアカーはガラスが黒張りなので外見からは中で何をしているか分からない。  
今思うと何でこんな車種を買ってしまったのかと後悔するところなのだが…。  
「マ、マリア…朝から何するつもりだよ…!」  
「いいじゃない…学校に行ったらお邪魔虫がお兄ちゃんを横取りしようとしてくるんですもの…  
だから今のうちに…ね?」  
「ね、じゃないよ…いつも言ってるけど、兄妹同士でこんなの…よくないと思うんだケド…」  
 そう、よくある「実は血が繋がってませんでした」は通用しない。フェイトとマリアは正真正銘  
の双子である。が、何の因果か妹のマリアは兄のフェイトが大好きで…。  
「第一…お邪魔虫って誰の事だよ?」  
「そうねえ…私以外でお兄ちゃんに近づく女、全部かな」  
「おいおい…そういうのはもっと具体的に…」  
 この異様なまでのマリアのブラコンっぷりは学園内でもかなり有名で、おかげでフェイトに彼女  
が未だにできない原因でもあるのだが…。フェイトもうんざりなのだが、可愛い妹の手前…そんな  
事を言ったら何が起こるか分かったモンじゃない。  
 が、そんなマリアの妨害にめげず、フェイトにモーションをかけてくる猛者が学園内には何人か  
存在しているのもまた事実で…そう、例えば…。  
「例えば、新任体育教師のネル先生よ! どう見てもお兄ちゃんに色目を使ってるとしか思えない  
あの態度! ぜーったいにお兄ちゃんに気があるんだわ!」  
「何言ってるんだよ…ネル先生はいい人だぞ…優しいし、キレイだし…」  
「お兄ちゃんは騙・さ・れ・て・る・の! ああいう女は生徒を弄ぶタイプに決まってるんだから!」  
「…それってマリアの妄想だろ? ネル先生に失礼じゃないか…」  
 
ああ、お兄ちゃんは優しすぎる…どうして分からないのかしら、狙われてるって事に…。  
などと妹としての使命感に燃えるマリアにはフェイトの擁護発言も通用しない模様だが…。  
「と、とにかく、僕らは兄妹なんだから…な、分かってくれよ、マリア」  
「分かんない!」  
 普段大人びた印象があるマリアだけにこういう時に駄々っ子バージョンがまた可愛らしく、  
兄であるフェイトとしてもイマイチ、ガツンと言えないのが難点だったりする。  
 と言っているうちに…。  
「ホ、ホラ、学校が見えてきたぞ…な、マリア?」  
「…はぁい」  
 
 生徒専用駐車場にエアカーを止め、やっと開放されたフェイト。一時間目は体育実技なので  
マリアと顔を合わせずにすむ…と思うと、少しは気が楽になる…。  
「おや、フェイトじゃないか?」  
「あ、ネル先生…」  
 偶然にも、上の階の教員用駐車場からネル先生が降りてきた。今日は1時間目から女子の体育が  
あるためにジャージ姿だが…何故か胸元が開いているような…。しかしまあ、何と間の悪い…。  
「お、おはようございます、ネル先生」  
「おはよ、フェイト…でもさ、何か忘れてないかい?」  
「え?」  
「(私の事は『ネル』でいいって言ったろ…?)」  
 フェイトの耳に唇が触れるか触れないかのギリギリの所までネルは接近し、呟く…。  
当然、マリアはそれが面白くない。  
「ストーップ! 先生、私達、急ぎますから失礼します!」  
 と無理矢理フェイトを引っ張って校内に連れて行くという手段に出る。ネル先生もネル先生で…。  
「何言ってんだい、まだチャイムが鳴るまでかなりあるじゃないか!」  
「でも急ぐんですッ!」  
「ふ、2人とも落ち着いて…く、苦しい…」  
 朝っぱらからこんな調子で、フェイトの精神と体は放課後まで持つのだろうか…? 
 
 フェイト・マリア・ネルがあーでもないこーでもないと口論していると…。  
「ネル先生ぇ…そんなとこで何やってるんですかぁ?」  
「朝っぱらから騒がしい奴らだ…やはり阿呆だな」  
 アルベルとファリンの2人が連れ添って階段から降りてきた。どうやら今日もアルベル  
のエアカーでの登校らしい。が、アルベルは大学部でファリンは高等部…どういう接点が?  
「1限目の前に職員朝礼があるだろーが…そんなとこで油売ってる場合じゃねえぞ、阿呆」  
「わ、分かってるよ…!」  
 これを聞いてニヤリとしたのはマリアだった。すぐさまネルからフェイトを引き離し、  
腕を組んで走り去る!  
「では先生方、失礼しま〜す!」  
「あ、ちょ、ちょっとお待ちよ!」  
 ネルが止めるより先に脱兎の如く逃げ出すマリアとフェイト…やられた。  
「…まーた逃げられたなぁ、ネル先生?」  
「…んな事より、さっさと職員朝礼に行くよ!」  
 アルベルに冷やかされ、ネルは不機嫌そうに校舎の方へと走り去って行った…。  
「やれやれ…ここの教師にゃロクな奴がいねえ…」  
「アルベル先生はどーなんですかぁ?」  
「…俺か? まだマシさ」  
 ファリンの髪をクシャッとかき、アルベルは自身ありげに呟いた。クスクスとファリンも笑っている。  
「1限目に遅れるんじゃねーぞ」  
「はぁい、分かってますよぅ!」  
 
キーンコーンカーンコーン…。  
「うっしゃあ! 1限目の体育始めっぞ、オラァ!」  
 1限目はクリフ先生・アルベル先生の体育(男子)。向こうのグラウンドではネル先生・  
クレア先生の体育(女子)も行われている。  
「センセー、今日は何をするんですかー?」  
「おう、いい質問だ! 今日はなぁ……アルベル、お前が説明してやれや」  
「…お前、何も考えてなかったのか? …阿呆が」  
 仕方ねえ…と悪態をつきながらもクリフの前に進み出るアルベル。と、体育倉庫の方  
から幾つかのボールを、運搬ロボが運んで来て…。  
「今日はドッジボールをする」  
「え―――――――――――――――――ッ!!!!!!!!????????」  
 
 ズバシュッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!  
 
 生徒達から一斉にあがった不満の声と同時に響き渡る、ボールの切り裂かれる音…。  
アルベルが剛魔掌で空中に放り投げたボールを破裂させたのだ…。  
「俺がやると言ったらやるんだよ…文句あるか、阿呆共…?」  
「あ、ありませ―――――――――――――――――――――――――んッ!!!!!!」  
 アルベルの恐ろしさは皆よく知っている。ここは従うしかなさそうである。だが、フェイトは…。  
「…ん、リーベル…何かあったの…?」  
「フェイト…お前寝てたのか? 今日はドッジボールだってよ…あ〜あ、ガキじゃあるまいし…」  
 先程のマリアとネルとの一件で疲れたフェイトは不覚にも居眠りをしてしまい、アルベル  
の発言にも気づかなかったので、友人のリーベルに事の真相を聞こうとしたのだが…。  
「…その代わり」  
 皆の心のブーイングをかき消すようにアルベルは続ける…。  
「今日のドッジボールは女子との合同授業だ」  
 
「よっしゃ――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!」  
 
男子達から響き渡る歓声。向こうのグラウンドでストレッチをしていた女子達も思わず  
動きを止め、見入っている。これにはネルとクレアも…。  
「アルベル先生…男子が騒がしいのですが…?」  
「ああ、実はな、今日は女子との合同授業って言ってやったんだよ」  
「そ、そんな、困ります! こっちは今日、バレーを…」  
「こっちはドッジだ。バレーもドッジもそう変わりゃしないだろーが」  
 通信機を通して連絡を取るアルベルとクレア。勝手に合同授業にされては敵わない。  
ここは断固講義せなば。と、見かねたネルがクレアから通信機を奪う。  
「アンタねえ…そっちの都合を押し付けるのはやめとくれよ!」  
 響くネルの怒声。ここでアルベルはクリフに強制的にバトンタッチ。  
「クソッ、こういう時だけ俺かよ…あー、もしもし?」  
「クリフ先生かい!? こっちにはこっちの授業予定があるんだけどね!」  
「ま、まあ、そう言うなよ…お、そうだ! こーしねえか? 男女混合でチーム分けして  
4チーム作って、俺達教員もチームに加わわるってのはどーだ?」  
「はぁ?」  
 苦し紛れの案がネルに通じるとは思えないが、一応言ってみるクリフ…。  
「(でよ、こっからが重要だ…負けた奴は他の3人に昼飯おごるってのは…)」  
「(却下だね)」  
「(フェイトと同じチームにしてやっからよ)」  
「(うッ…!)」  
 フェイトと同じチーム…フェイトと同じコートで…ドッジボール!?  
 
『フェイト、下がってな! アンタは私が守ってやるよ!』  
『ネ、ネル先生…///』  
『…ネルでいいっていったろ?』  
 
 ネル先生お得意の妄想がまた始まった。これさえなければいい先生なのに…。 
 
「(どーだ?)」  
「(こ、今回だけだよ…!)」  
「(うっし! 負けたら、ちゃんと昼飯おごれよな!)」  
 
 と言うワケで男女合同試合スタート。が、メンバーがメンバーだけに棄権する生徒が  
続出、結局いつものメンバーだけが残ってしまった…。  
「手加減無しだ…後悔すんじゃねえぞ、クソ虫共」  
「ハン…そのセリフ、そっくりそのままお返しするよ!」  
 棄権した生徒達(高等部と大学部の男女ら)が外野で見守る中、第一試合が始まろうとしていた…!  
「足引っ張んじゃねえぞ、阿呆共!」  
 アルベル先生のチームは、先生・ファリン・タイネーブ・リーベル・マリエッタという  
という構成。先生は人間離れした動きができるし、親友同士のファリン・タイネーブは絶妙の  
コンビネーションが得意であるし、リーベルとマリエッタはクラウストロ星系の出身で身体能力が  
高い…まさに、これ以上ないというベストメンバーではなかろうか?  
「アンタ達、遅れるんじゃないよ!」  
 対するネル先生のチーム。先生・フェイト・マリア・ソフィア…そして何故かロジャー…。  
「…何でお前がいるんだ、ロジャー?」  
「フッフッフ…あんちゃん、水臭いぜ! メラ燃える展開じゃんよ!」  
「また小等部の授業を抜け出したのかい? …ま、今回は多めに見てやるよ(フェイトのためにね)」  
「さすがお姉様!」  
「…先生と呼びな」  
 ネル先生も身体能力が高いし、フェイトもスポーツは万能、マリアに至っては「アルティ  
ネイション」の力を使えばボールを紙風船の様にする事もできる。ソフィアは運動が苦手で  
あるが、紋章術でカバー可能だろうし、ロジャーは小さいので小回りが効くし、腕力もある。  
こちらもアルベル先生のチームに勝るとも劣らない、ドリームチームと言えるだろう。   
「そ、それでは、試合を始めます…」  
 ネル先生とアルベル先生との間にスパークする見えない火花にオドオドしながらも、クレア  
先生のホイッスルによって、いよいよドッジボール対抗戦が始まった!  
 
 だが、試合開始にも関わらず、両チームには複雑な想いが渦巻いていた…!  
 アルベル先生のチームでは…。  
「(ククク…昼飯は『スペシャルBランチ』で決まりだな…)」  
「(アルベル先生は寝相が悪すぎですぅ…おかげで…眠い…ですぅ…)」  
「(…私、場違いなんじゃあ…?)」  
「(ちくしょー、何でマリアちゃんと同じチームじゃないんだよ! トライア様の馬鹿〜!)」  
「(リーベルったら…よそ見してていいのかしら…?)」  
 
 一方のネル先生のチームでは…。  
「(フェイト、絶対に私が守ってやるからね! …あ、引っ付くんじゃないよ、マリアッ!)」  
「(あーもう、試合に集中できないじゃないか…マ、マリア、そんなに体を引っ付けるなって…!)」  
「(フフ…お兄ちゃんたら、照れちゃってカワイイ…そろそろ、例の作戦決行ね♪)」  
「(…私、場違いなのかも…ファリンちゃん達のチームがよかったなぁ…)」  
「(イ、イカン! オイラともあろう者が、お姉様達が魅惑的過ぎて試合に集中できんじゃん!)」  
 という感じだったりして…。  
 が、この試合も「お兄ちゃん大好き」なマリアにとっては作戦決行のためのステップに過ぎ  
なかったのだ!  
「おりゃぁッ、喰らえ、クソ虫ッ!」  
 ボールが飛び交い、疲弊していた両チームを奮い立たせるかの如く、アルベル先生の気功掌  
混じりの剛速球がネル先生のチームを襲う! そのターゲットは…マリア!?  
「(マリア、『アルティネイション』だ!)」  
 兄のフェイトは、てっきりマリアが能力を使ってボールを柔らかくするものだろうと踏んで  
いた。幼い頃、車に轢かれそうになった際、マリアは向かってくる車の材質を紙に変えた事  
があった。その結果、紙の車はクシャクシャになり、持ち主は激怒したが、マリアを轢きそう  
になった事も事実だったので大人しく引き下がったのだが…。  
 バコ!  
「きゃあっ!」  
 バタ!  
「マ…マリア…ッ!?」  
 
 何と、マリアはアルティネイションを使わず、モロにアルベル先生のボールを受けてしまった  
のだ! 急いで駆け寄るフェイトだったが…。  
「チッ、悪かったな…おい、起きろ! おい!」  
 さすがにアルベル先生もフェイトと同じ考えだっただけに、少しだけ罪悪感を感じたらしく、  
試合を中断して倒れたマリアの側に寄ってきた。だが、反応がない。  
「しょうがねえなぁ…おい、フェイト…お前、コイツを保健室まで運べ」  
「ええッ!? ボ、僕がですか?」  
「お前の妹だろうが…コイツが俺のボールを喰らったのはお前の『監督不行き届き』だ」  
「そ、そんなぁ…」  
「お、俺が行きましょうかッ!?」  
 これぞチャンスとばかりに沸いて出てきたリーベルだが…。  
「テメェは黙ってろ、阿呆…チームの人数が減るだろうが」  
「す、すんましぇん…」  
 アルベル先生からしてみれば、フェイトがマリアを保健室に運ぶ事でネル先生のチームが  
一気に三人になり、なおかつ外野に最低1人入れないといけないという都合上、狙われやすい  
ソフィアが外野、内野はネル・ロジャーになる事を見越していたのだ…!  
「…分かりました、じゃあ、ちょっと行ってきます…」  
 ヨッとマリアをお姫様抱っこの要領で抱きかかえ、フェイトはヨタヨタと保健室の方へと  
向かう事に。それを見ていたネル先生とクレア先生は、当然面白くない…。  
「(クッ、マリアの奴…ワザと能力を使わなかったね!)」  
「(フェイトさん…)」  
 
 で、ここはエターナルスフィア学園内・保健室(大学部の方)。  
「ロメリアせんせーい! 先生、いないんですか?」  
 保健室に空しく響くフェイトの声。どうやら保険医であるロメリア先生は出張中らしい。  
ボードには『ケガをしたら適当にメディカルマシンで治療してください、よしなに』とある。  
「…『よしなに』…って、言われてもなぁ…」  
 
 本当ならあの場でソフィアにヒーリングで治療してもらうのが一番だったのだろうが、そんな  
事をしたらマリアが黙っていないだろう。マリアはソフィアが嫌いなのだから。  
「仕方ない、先生もいないみたいだし、ベッドに寝かせておくか…」  
 どうせなら涼しい窓際の奥の方のベッドがよいだろう、とフェイトはマリアを抱えたまま移動。  
シーツを動かし、ゆっくりと妹を寝かせてやる。だが…。  
「(…普段のアレさえなければ、可愛いんだけどなぁ…)」  
 改めて間近で見るマリアの姿。しかもいつもと違って今回は体操着(エターナルスフィア  
学園は小・中・高・大学ともに一環して専用の体操着を購入する義務あり)…。  
 まあ、ソフィアに比べれば胸は小ぶりかもしれないが、それでもスタイルは母のリョウコに  
似て良い方と言える。いや、むしろよい。小さい頃からいつも一緒にいるだけに、こういう  
状況だと、改めて「成長したなぁ…お兄ちゃんは嬉しいゾ!」と思ったりするんだろうが…。  
「(…って、実の妹に何を考えてんだ、僕はッ!?)」  
 イカンイカンとブルブルと首を振り、フェイトは我に帰った。今朝の登校途中での出来事  
が尾を引いているのかもしれないが、とにかくマリアの「お兄ちゃん大好き!」は異常とも  
思える程の情愛なので、このままでは自分も踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまいそうで…。  
「(これじゃ、ケダモノだよ…あやうくサイテーな兄貴になるトコだった…)」  
 とは言え、妹が心配なのは事実である。アルベル先生の投げた剛速球が当たった場所は腫れて  
おり、見ていても痛々しい。昏倒した妹を見守る事しか、フェイトにはできないのだろうか?  
「…ごめんな。アルベル先生の言う通りだ…僕が、マリアを守ってれば…」  
 だが、ここで考えていても仕方がない。フェイトはまたグラウンドに戻ろうと椅子から立ち  
上がろうとするも…何かが体操着(ちなみに今は夏服)の裾を引っ張って…。  
「お・兄・ち・ゃ・ん♪」  
 フェイトの体操着の裾を引っ張っていたのは…他でもない、マリアである。  
「やっと…2人きりになれたわね、お兄ちゃん…」  
「マ、マリア…? 気絶してたんじゃ…!?」  
「ウフフ…ギリギリの所でボールの材質を変換したの…ちょっと痛かったケドね」 

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