あの後、夜が明けても、結局ネルはシランドへは帰ってこなかった。  
仲間の意見もあり古代遺跡へ向かうのはネルが戻って来てから、という事になった。  
一体彼女はどこへ行ったのだろうか?  
仲間内に不安の色が見え隠れする。  
 
「ネルさん…どこ行っちゃったんだ?」  
ここ、シランド城の礼拝堂ではフェイトが深くため息をついていた。  
フェイトの脳裏には昨日のネルの様子が浮かび上がる。  
今まで見せた事無いほど気持ちが弱まっていたネル。  
自分に全部打ち明けてくれたものの、そのまま何も言わず去っていってしまった。  
フェイトは自分の力の無さを噛み締めた。  
自分はもう少し彼女の気持ちを汲み取ってあげれなかったのか?  
自分が下手な同情を見せるから何処かへ行ってしまったのか?  
そして、自分は彼女の事をどう思っていたんだ?と。  
「さようなら…か…。」  
ネルが別れ際に残した言葉。  
その時の光景が映画のワンシーンのように鮮明に蘇ってくる。  
フェイトは又ため息をついた。  
礼拝堂の中にはたくさんの人の姿があった。  
神に祈りを捧げる人、今日を生きている事を喜び合ってる人。  
参拝出来る時間ともあってあまりにも様々な人がいた。  
そしてその中から一人、フェイトに近づいてくる人影があった。  
 
「今日は、フェイトさん。どうしたんですか?顔色が悪いですけど…。」  
現れたのはクレアだった。  
シーハーツの制服に身を包み、いつも通り清楚な雰囲気を漂わす。  
「クレアさん?どうしてココに?」  
フェイトにしてみればクレアはアリアスで働いているというイメージが強く、  
シランドに居る事は驚きであった。  
「仕事ですよ。向こうでの任務も減ってきたので最近は行ったり来たりしてるんです。」  
彼女は口元に笑みを浮かべる。  
任務が減ったと言う事は紛争が治まってきたという事。  
現時点では納得の出来る答えだ。まぁ別段疑う必要も無いのだが。  
「…話を戻しますよ。フェイトさん、具合でも悪いんですか?」  
クレアは右手でフェイトの額に手を当て、左手で自分の額に手を当てる。  
「熱は…無いみたいですね。」  
手の平を離し、フェイトの横に腰を下ろす。  
「熱とか…そういう類の物じゃないんです。…ただ…ちょっと考え事してて…。」  
フェイトは視線を下に下ろし、いかにも落ち込んでいるという雰囲気を出した。  
「考え事…ですか。それにしても顔色が悪すぎます。何か…あったんですか?」  
「いえ…特に…。」  
クレアには面倒をかけるまいと、フェイトが口にした。  
しかしそんな態度がクレアに熱を付けてしまった。  
「嘘はいけないわ。何も無いわけ無いでしょ。  
 何があったか、話して下さい。きっと力になってあげれますよ。」  
クレアはフェイトの手を握り、じっとフェイトの眼を見つめた。  
真剣そのものの瞳に見つめられたフェイトには、この人になら話してもいい、と言う考えが浮かんできた。  
 
「…わかりました。でも…。」  
フェイトは周りにいる人々を気にする。  
流石にこの話は一般人には聞かれたくなかった。  
そしてその事をクレアはすぐに悟り、口を開けた。  
「ココじゃまずい話なんですね?  
 神に懺悔する話でもないでしょうし…良ければ私の部屋で…。」  
クレアはフェイトの手を引き、立ち上がらせ、そのまま自分の部屋へと向かった。  
 
「それでは…話してくれますね?」  
自分の部屋の周りに人の気配が無いのを確認し、鍵を閉めた。  
そして、イスの上に腰を下ろし、ベッドに座るフェイトと向かい合う形を取った。  
フェイトは頷き、そして昨日の事を話した。  
流石にネルとの行為の事は省いたが、それ以外は余す事無く話した。  
ネルが初めて見せた弱さの事、ネルの態度がおかしかった事、  
そして「さようなら」と言って去っていった事。  
クレアも昨日のフェイトのように何も言わずに聞き入る。  
「…と言う事なんです。正直…僕には何が何だか分からなくなってきました。」  
フェイトは無力な自分に嫌気がさし、拳を強く握り締める。  
「そんな事がありましたか…。要は…ネルがどんな考えを持って、どこへ行ってしまったか?  
 と言う事ですね?」  
話の大半を理解したクレアは、フェイトが言いたかった事を大まかにまとめた。  
「そうです…。あなたなら分かりませんか?同じクリムゾンブレイドとして  
 長年あの人と付き添ってきたあなたなら!?」  
急にフェイトは興奮し始めた。  
フェイトとしては一刻も早くこの出来事を解決させたかったのだ。  
 
そんなフェイトの様子を見て、クレアは多少考えた後、こう言った。  
「ええ、分かります。彼女が何故消えてしまったか、そしてどこへ行ってしまったか。  
 場所の方は大体ですけど…。」  
「教えてください!!大体でも構いません!!」  
フェイトはクレアの手を掴み、唾が飛ぶのではないかと言うくらいに口を開け叫んだ。  
しかしクレアは、  
「…教えられません。」  
きっぱりと言った。  
しかしその態度がフェイトには気に入らなかった。  
フェイトはクレアの肩を揺さぶりながら叫ぶ。  
「何でですか!?どうして教えられないんですか!?ねぇ!クレアさ…」  
パァン!!  
二人しかいない部屋、この乾いた音は否応無しに響き渡った。  
「少し…落ち着ちついて下さい…。」  
クレアは穏やかな表情をしながらも身の毛がよだつほどの凄みを発していた。  
しかし熱を上げるフェイトはそんな事どうでも良かった。  
痛みが走る頬を抑えながら再びクレアに向かい、声をあげる。  
「落ち着いてなんかいられませんよ!!早く教えて下さ…」  
パシンパシン!!  
今度は二回、乾いた音が響く。  
「落ち着いて下さいと言いました…。とりあえず…今は言う通りにしてください…。」  
クレアの眼はとても悲しそうだった。それ故にフェイトは言う通りにするしかなかった。  
「…落ち着けと言うのも無理な話かも知れません。私だって叩くなんてことはしたくなった。  
 でも今のあなたがネルの元へ行ったって、何にもならないから…。」  
クレアは赤く腫れたフェイトの頬を擦りながら言った。  
 
「何にもならないって、どういうことですか!?」  
「それは…教えて分かる事じゃありません。」  
「…どういうことですか…?」   
「それを教えるにも…まず落ち着いて…」  
フェイトの顔に血管が浮かんだ。歯からはギリギリという音がしてきた。  
「一体何が言いたいんだ!?さっきから落ち着け落ち着けって…!  
 落ち着いていられる訳ないだろ!!」  
顔を引きつらせたフェイトは握った拳で壁を叩く。  
「そんなに落ち着かせたいなら…あなたが落ち着かさせて下さいよ。」  
フェイトはクレアの体を掴むとベッドへと押し付けた。  
「ちょ…フェイトさん、何を…?」  
抵抗するクレアを押さえつけ、フェイトはなおも続ける。  
「僕は落ち着けません。だからあなたの体で落ち着かさせて下さいよ。」  
フェイトはクレアのスカーフを引き剥がした。  
「うっ…。」  
クレアの制服から胸の谷間が覗く。しかし今のフェイトはこんな物では収まる訳が無い。  
次に制服に手をかけ、思い切り引っ張る。  
ブチブチブチッっとボタンが飛んでいく。  
「きゃぁっ!!」  
体を覆うものが消され、胸が露と成ってしまったクレアは双丘を手で隠し羞恥の声をあげた。  
「隠す必要なんて無いですよ。」  
フェイトは自分のズボンを脱ぎ捨て、大きくなった物をクレアの口の中へと押し込んだ。  
「むふぅ…!!」  
口内に異物を押し込まれたクレアの顔は歪んだ。  
 
「気持ち良いですよ、クレアさん…。んぅ!!」  
己の物を押し込んでいるフェイトの下半身に熱い物がこみ上げて来る。  
「あぁっ!!」  
フェイトは自分の物を口から引き抜き、クレアの上半身に濁液を散布させた。  
「っっぁあ!!」  
濁液に汚されたクレアは身を曲げた。そして少し考え込んだ。  
「ハァッ…ハァ…気持ち良いですよ…。もう一回…。」  
快楽に酔いしれたフェイトはもう一度クレアの顔にナニを近づけたが、  
「あなたに…一つだけアドバイス…。」  
クレアの人差し指がフェイトの鼻の頭をチョンと突付く。  
「…何ですか?」  
フェイトの動きが止まる。  
「今あなたがしようとしているのは…自己欲求を満たすだけのただの自慰行為と一緒。  
 そんなのでは落ち着く事なんて出来ないわ。」  
そう言うとクレアは自らフェイトの物に手をかける。  
「ぁッ…クレアさん、何を…?」  
「ん…チュパ…ヌチャ…」  
クレアは何も言わずフェラを続ける。  
無理やりやらせていた時とは明らかに違う快感がフェイトを支配する。  
一度出したばかりだというのに、又熱い物がこみ上げてくる。  
「ぁぁっ、出る!!」  
フェイトは二度目の射精をした。  
「んんぅ…!!」  
クレアは自分の口内に放たれた精液を溢す事無く飲み干した。  
 
「…クレアさん…どうして…?」  
息を切らしたフェイトが訊ねた。  
「…少しは落ち着きましたか?」  
クレアは粘り気の残る口でそう一言だけ喋ると、  
自分の体を最後まで護っていたものを自ら脱ぎ捨てた。  
そして、フェイトの前に座り込み、また一言だけ言った。  
「フェイトさん…どうぞ…。」  
クレアは自分から股を開き、両手の指で己の秘所を大きく開いた。  
ゴクンっとフェイトは生唾を飲んだ。  
「な、何がどうぞなんですか…?よして下さいよ。」  
自分の感情とは違う種類の声が出てきた。  
「私の体に…火をつけた責任…取って下さい…。」  
クレアは目を閉じた。  
そんな彼女に見て、フェイトは自分の取ってきた行動が恥ずかしくなってきた。  
なんで自分はこんなに勝手なまねをしたんだろう、と。  
そしてその恥ずかしさを消すために、クレアの言葉を本能で飲み込んだ。  
「責任…取らせてもらいます。」  
フェイトは己の物でクレアの華奢な体を貫いた。  
「っぁああ!!」  
痛みか快楽かが良く分からない喘ぎが漏れてきた。  
「うっ…気持ち良い!!」  
 
腰を動かすフェイトから力が抜けてきた。  
そんなフェイトに活を入れるかのようにクレアが囁く。  
「こ…之くらいじゃ…まだ…火は…消せません…っうん…。」  
クレアの股間からは激しく蜜が溢れ出てくる。  
フェイトの股間に三度熱い物がこみ上げてきた。  
「うッ…出る!!」  
フェイトは腰を動かすスピードを上げた。  
「ぁあ!!フェイトさん!!イク!!イクゥ!!」  
「っぁあぁあ!!」  
二人は同時に絶頂に達した。  
「…クレアさん…。」  
フェイトがクレアに口付けをしようとしたが、  
「…………。」  
クレアは何も言わずフェイトの顔を押しとめた。  
 
お互いに服を着直した所で、フェイトは口を開いた。  
「さっきの話…教えてください!どうして…何にもならないんですか?」  
クレアは重い口を開いた。  
「…もしも、さっきまでのあなたにネルの居場所を教えたら…  
 何も考えずに向かったでしょ?」  
「ええ、勿論ですよ。」  
「それが駄目だったんです。」  
クレアは続ける。  
「ネルが去って行った理由。それは…フェイトさんの事が…好きだからですよ。」  
「え…!?」  
「あの娘は不器用だから…直接思いを伝えることは出来ないんです。  
 だから、どうしても影から支えるぐらいしかしようとしない。  
 しかし彼女は疲れたんですね、そんな自分に…。そして、  
 そんな時に度重なる精神的疲労が溜まって…あなたに救いを求めた。  
 その時に…感じてしまった…、あなたに思われてないということを…。」  
「そんな…そんな事…。」  
「でも…そうじゃなきゃネルは消えたりはしませんよ。  
 …フェイトさん少しでいいから…ネルのことを思ってあげて下さい。  
 ネルがあなたをどう思っているか…考えてあげて下さい。  
 そして…ネルが今までどのように尽くしてきたか…思い出してあげて下さい。」  
その言葉でフェイトは全てを思い出した。  
自分を支えていてくれた人。クヨクヨする自分を叱咤してくれた人。  
落ち込んだ自分を励ましてくれた人。そして、自分の事を心から思っていてくれていた人の事を。  
全てを思い出した時、フェイトの目から大粒の涙が零れ出した。  
そんなフェイトの頭をクレアが優しく撫でる。  
「もっと、泣いてあげて下さい。その分、彼女の事を分かってあげれるから。」  
「うああああぁああぁ……ああぁあぁああああああ!!!」  
クレアの胸の中、フェイトは眼が乾ききるまで泣き叫んだ。  
 
「クレアさん…ネルさんの居場所を教えてください。」  
眼を真っ赤に染めたフェイトは立ち上がった。  
「…あなた達が本当の意味で仲間に成った所に行ってみてください。  
 おそらく…そこにネルは居ます。」  
その言葉を聞き、フェイトは部屋を飛び出そうとした、が  
「フェイトさん!!」  
クレアが呼び止める。  
「…彼女の事、よろしくお願いします…。」  
フェイトは短く会釈し、部屋を出て行った。  
一人残ったクレアは呟いた。  
「エレナ様、居るんでしょう?」  
その言葉と共にドアの影からエレナが顔を出した。  
「ご、ごめんね。聞くつもりは無かったんだけど…」  
頭を掻きながらエレナがクレアの元に寄って来た。が、  
「エレナ様…人を打つのって…痛いですね…。」  
クレアは赤く腫れた掌を見ながら呟いた。  
「こんな手の痛みよりも…心が凄く痛い…。」  
エレナは何も言わずクレアを見つめる。  
すると、クレアの眼から涙が溢れてきた。  
「これで…これで良かったんですよね…?」  
「クレア…。」  
「私のした事は…まち…間違って…無かったですよね…?」  
エレナは優しくクレアの顔を自分の腹へとうずめ、頭を撫でながら言った。  
「大丈夫、何も間違っていないわ。…あなたは本当に優しい子。  
 誰がなんと言おうと私が保証するわ。  
 あなたは友達想いで…そして…とても心が強い女よ…。」  
クレアはエレナの服を握り締め、小一時間泣きじゃくった。  
 
第二章  終 

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