強い風が吹き、雲の流れは速い。  
広い草原、風の足跡を表すかのように、背丈ほどの草がガサガサと音を立てる。  
日が…沈みかけてきた。  
 
「今日も…日が暮れる…か」  
ここはカルサア修練所、屋上。  
風に揺れる髪を抑えながら、一人の女性が海に沈む夕日を見つめていた。  
「…これから…どうしようか…?」  
夕日に赤く染められた煉瓦造りの壁の上に座り、ネルが哀愁に漂っていた。  
光り輝く海が眩しく、ネルは目を逸らすかのように壁から降りる。  
「今更、シランドに戻れもしないし…今日はココで野宿かな…」  
壁伝いに歩き、屋上の隅で止まった。  
「今日は雨も降らないだろうし…星を見ながら寝るのも悪くないかな…」  
流れる雲を見つめ、その中に仲間の姿を見出してしまう。  
今の自分の心にはあの者達は眩しすぎる。  
ネルは目を閉じ、壁に寄りかかりながら寝る事にした。  
頬を撫でるような風の流れが気持ち良く、ネルはすぐさまウトウトしてしまった。  
しかし、それがまずかった。  
ネルが周囲への警戒を怠っている時、  
「ああああああ!!!」  
耳が裂けんばかりの雄叫びと共に、右肩にとてつもなく鈍い痛みが走る。  
「ッ…あああ!!」  
ネルは突如襲ってきた痛みに転げまわる。  
すると、自分の両腕両足の自由を失ったのに気がついた。  
 
霞がかる視界の中、ネルは自分の状況を感知した。  
自分の左右に腕と足を押さえつける男が一人ずつ、  
正面には鉄パイプを握り、息を切らすものが一人。  
計三人の男どもに囲まれている状況であった。  
「く…、誰だいあんたら…?」  
ネルがかすれる声で言う。  
その問いに鉄パイプを握り締める男が答えた。  
「お、おおおお、俺たちは…おおお、お前、お前らに、じじじ、  
 人生を、め、メチャメチャにににされ、され、たたたたた…」  
舌が回らない鉄パイプの代わりにネルの右半身を抑える者が答えた。  
「紅髪のクリムゾンブレイド、ネル・ゼルファー。  
 俺たちはお前らシーハーツの奴らに人生をメチャメチャにされた者だ。  
 俺は停戦協定なんか認めない。ここでお前を見かけたのは神の思し召しだ」  
絶対不利な状況の中、ネルは強気な態度を崩さない。  
「あ…あんたらみたいな外道が…神を語るんじゃないよ…。  
 まぁ…神様と言っても、あんたら程度じゃ貧乏神が関の山かな…」  
先程喋った男は、顔に血管を浮かび上がらせネルの頬を引っ叩いた。  
「随分生意気じゃねぇか…。ぇえ!!??」  
ネルの顔を掴み、男は睨みつける。  
「そういうアンタの方が…生意気だと思うけどね」  
男は歯をギリギリさせ宣告した。  
「トコトンむかつく奴だ。やっぱお前は殺す。おい、早く殺っちまえ!!」  
促された鉄パイプの男は震える手で鉄パイプを振り上げようとしていた。  
両手を塞がれていては施術をお見舞いしてやる事も出来ない。  
ネルは、自分の終わりを認め、目を瞑った。  
頭の中に今までの事が走馬灯のように浮かんでは消えた。  
 
消えては浮かび、浮かんでは消える記憶。  
しかしその中に一つだけ、消えないものがあった。  
ネルの精神がそれにそっと触れてみる。  
急にそれは眩い光を放ち、頭の中を覆い尽くす。  
『…フェイト…』  
頭を埋め尽くすのはネルの記憶の中のフェイトだった。  
そのフェイトの表情は様々で笑う顔があれば怒りの顔がある。  
一つ一つが宝。セフィラにも負けないほどの心の至宝。  
ネルは死を恐れなかった。なぜならそれ以上に恐れる事が生まれてしまったからだ。  
それは記憶の消滅。今、頭を巡るフェイトへの思いが消えてしまうのが死に勝る恐怖だった。  
『フェイトには…迷惑をかけっぱなしだったね…。どうしよう…、今更未練が沸いてきたよ。  
 もしも未練を残したまま死んだ者の魂が霊となるならば、私の魂が人々の害にならない事を願おう。  
 …最後にもう一度、フェイトの顔を見たかったけど…それも既に叶わないんだろうな…』  
「早く殺っちまえぇ!!!」  
鉄パイプの風を切る音がする。  
その、ほんの0コンマ数秒の間に、ネルの頭の中で何かが光った。  
その時だった。  
 
「女性に向かって大の大人が三人がかりか…感心できないな」  
 
ギィンッ!!  
甲高い金属音が響き、数秒後には対隅で鉄パイプが地面に落下する音がする。  
時間が止まった。  
ネルを含めそこに居た者達は状況を把握できず体が固まったままだった。  
「ひッ…ひひ…ひィィィ!!」  
鉄パイプを握っていた者は発狂しながら何も持たない手でネルに向かって  
手を振るい始めた。  
 
そんな男の顔面に硬い拳が叩き込まれる。  
男は屋上の真中まで飛ばされ、顔のあらゆる所から血を流し、気絶した。  
「フェ…フェイト…?」  
「だ、だだだ…誰だお前ぇはぁ!!??」  
残った男の内の先程喋っていた男が立ち上がり、何かの構えをしている。  
しかしその顔からは明らかに脅えが見えるし、先程の怒声も勇ましいんだか怖がっているんだか  
分からないぐらい震えていた。  
「今から…十数える。その間にココから消えろ」  
フェイトが剣を構え、男二人を見据える。眼からは殺気が窺えた。  
「こ、こここ、こっちは二人居るんだぜ…!」  
地べたに這いつくばっている男を立ち上がらせ、勇んでみせる。  
「……一…」  
「ひひひ…お前なんか…三秒でミンチに出来るんだぜ…」  
「……二…」  
「いいのかよ…?はったりじゃねぇ…!」  
「……十!!」  
フェイトの剣が男二人の眼前を過ぎる。  
「ひぃぃぃいぃい!!!」  
すぐさま男たちは駆け出し、中央で伸びている鉄パイプ男を拾い上げ、逃げていった。  
フェイトはフゥッとため息をつき、剣を鞘にしまう。  
「な…なんで…ここに…?」  
肩を抑えながらネルは立ち上がり、小さな声で呟いた。  
「お迎えに上がりました」  
フェイトが手を差し出す。  
しかしネルはその手を握り返さず、視線を逸らし俯く。  
「…それは、黄泉の国からの迎えかい?」  
「いいえ、未来からの迎えです」  
 
フェイトが手を差し出し続けるも、ネルは正直になれなかった。  
「へ、下手な事言うんじゃないよ。それに…もう戻れないんだよ…」  
ネルは後ろを向き、フェイトの顔を見ないようにした。  
「…本当に…そう思ってるんですか?」  
フェイトは手を戻した。  
ネルが黙って頷く。  
「…ごめんなさい!」  
「え…?」  
トン…。  
ネルの体が崩れた。  
 
「うっ…」  
目を覚ました。まだ頭がくらくらする。目の前には木張りの天井が見える。  
体の下はふかふかしていた。ベッドの上のようだ。  
「ココは…?」  
ネルは体を起こしあたりを見回した。  
「気が付きましたか…」  
すぐ横にフェイトが腰を下ろしていた。  
「フェイト…。そうか…私はあの時…、ふふ…余計な事してくれたね…」  
「何のことですか?」  
フェイトは惚けた顔で答えた。  
「私はあのまま…居なくなった方が良かったのさ…邪魔しないでくれ!」  
ネルは俯き、舌を噛もうとした。  
ガリッ!  
「っぅ!!」  
ネルの口内から血が流れる。  
 
しかしそれはネルの血ではなかった。  
「…流石に…痛いですね」  
流血したのはフェイトの指。舌を噛もうとしたネルの口に自らの指を差込み、防いだのだ。  
「な、ちょっとフェイト、何やってんだい?待ってな、今治すから……ヒーリング!!」  
えぐれていたフェイトの指はすぐさま元通りになった。  
「何でこんな事するんだい?邪魔しないでくれって言っただろうに…」  
ネルは自分が噛んでしまったフェイトの指を擦りながら言った。  
「…逃げるのは無しにしましょう?そんなんじゃ、誰も報われませんよ」  
ネルの眼を見つめ、フェイトが言う。  
「良いんだよ…。別に私が死んだところで…誰も悲しみはしなかっただろうさ…」  
ネルは俯き、悲しみの表情を浮かべた。  
「そんな事ありません。あなたが居なくなったら、皆悲しみます」  
「誰が悲しむって言うんだ。こんな狂った女が一人居なくなったって…誰も悲しま…」  
言いかけたネルの口を塞ぐようにフェイトの口が重なる。  
「ネルさん…」  
そしてフェイトの腕がネルの体を強く抱きしめる。  
 
「僕が悲しみます。…それじゃ足りませんか?」  
 
ネルは言葉を失った。何を言おう物にも言葉に成らなかった。  
フェイトが赤く腫れているネルの首筋を擦りながら呟いた。  
「ごめんなさい…本当はこんな事したくなかったんですけど…。  
 愛する人に手を加えるなんて…最低ですよね…」  
ネルの顔が活きた表情を取り戻した。  
「い、今なんて…」  
フェイトは返事の代わりに再びキスをした。  
しばらくそのまま時間が過ぎる。  
ネルの眼から一筋の涙が零れた。  
『ありがとう…』  
 
抱き合うネルの豊かな胸からは、長い道のりを全力疾走した時のような、  
激しい動機が伝わってくる。  
二人は舌を絡ませ合う。ネルとしてはそのような行為を知る由も無かったが  
勝手に体が動いてしまう。  
フェイトがネルの首に手を回し、短く整えられた髪の毛を逆撫でする。  
そして、いったん唇を離し、うなじへと舌を滑り込ませる。  
ネルは短く反応し、やわい喘ぎをあげる。  
そのまま舌を動かし、首筋、鎖骨、胸の脂肪へと滑らせていく。  
「ん…ハァ…」  
全身が性感帯なんだろうか?  
そう思わせるほどネルは過敏に反応する。  
『大丈夫かな…?』  
トスッ…  
フェイトはネルの体を優しくベッドに押し倒した。  
「あっ……」  
ネルは羞恥心のあまり、頬を赤く染めたが、何かを決心したかのように  
ゆっくりと目を閉じた。  
フェイトはゆっくりとネルの服を脱がしていく。  
そしてネルはフェイトの前に一糸纏わぬ姿をさらけ出した。  
均整の取れた抜群のプロポーションに、決め細やかでかつ、薄らと汗ばんでいる肌。  
どれをとっても美しい。  
それを目の前にしたフェイトはどんどん興奮してくるが、あえて落ち着こうとする。  
「ネルさん…」  
フェイトはそろりと豊満な乳房に指を忍ばせる。  
「ん…!」  
ネルの体が少しばかり浮かんだ。  
 
「気持ち良いんですか?」  
ネルは黙って頷く。  
フェイトは壊れ物を扱うかのように丁寧にネルの胸を揉んでいく。  
内から外へ、外から内へ、と手を動かしていく。  
柔らかなタッチで揉みしだくと、ネルの胸は信じられないほど柔らかに形を変える。  
「…フェイトォ…」  
ネルがかすれる声で言う。  
「どうしたんですか?」  
「その…気持ち良いんだ。だから…もっと…もっと…」  
フェイトは言われるがままにネルの胸を愛しつづける。  
快楽に浮かぶネルの胸はすっかりと薄桃色に染まり、固く尖った先は天を仰いでいる。  
フェイトが何の前触れもなしにしこった胸の中心を口に含む。と、  
「ぁぁああっ!!!」  
激しい漏叫と共にネルの体が大きく跳ね上がる。  
感じているんだな、と嬉しくなってきたフェイトは、丹念に舌を使い、激しく勃起した  
桃色の突起を愛撫する。  
「んぁ!あ!あ!ぃい!」  
フェイトに自分の胸を弄られ続けたネルは、赤子のように叫び、甘い喘ぎをあげ、フェイトの  
肢体にしがみ付く。  
ネルの息は乱れて、体もぐったりとしている。  
そんなネルを虐めるかのように、フェイトの指がスルスルとネルの股に入り、  
付け根の淡い茂みに潜入する。  
  クチャッ  
「んんぅ!!」  
甲高い喜叫が上がる。  
 
陰漆に湿った生温い感触が指先に当たる。  
フェイトは乱暴にならないように、そのまま真珠を探し始めた。  
生い茂る草の根を掻き分けて、人差し指が陰核に当たる。  
「あぁあっ!!……いやぁ…そこ…」  
フェイトは弦を弾くように、肉の真珠を擦る。  
「ん…あっ!…ああぁあ…」  
ネルの性感部からは次々と蜜が溢れてき、フェイトの指を潤していく。  
フェイトは指に絡みつく精液を堪能しながら、それをクレヴァスの中に進行させていく。  
まず人差し指の第一間接が刺さり、吸い込まれるように全て埋まった。  
「ひぁっ!!」  
次に中指、薬指と入っていく。  
ネルの秘所は力が抜けたようにズブズブと指をめり込ませていった。  
「あ!…ふぁぁ、んぁ…ひゃ!!」  
フェイトは玩具で遊ぶかのようにネルの膣内を愛撫する。  
ネルの口からは止まる事無く感声があがる。  
フェイトが指を抜くと、後には惚けたようにぽっかりと口を開けた花弁が残った。  
「ネルさん…」  
フェイトは興奮しきった己をネルの秘所にあてがった。  
「…入れて…おくれ…」  
ネルがか細い声で答え終わるや否や、体の中に巨根が進入してきた。  
「あぁあぁあぁああ!!!」  
奥まで突き刺さってくる物にネルは感喜の漏声をあげる。  
「うぁ…ネルさん…気持ち良い…!」  
「ふぁ!!あ!もっと!もっとぉ!!」  
フェイトの腰の速度が上がっていく。  
ネルの膣内は締りが良いものの、処女ほどとまではいかない。  
しかし、その溢れ出す愛液と漏れる喘ぎは、処女以上に甘かった。  
 
「あぁ!!良い…フェイトの…太くて固くて、最高に良いよぉ!!」  
「ネルさんも…凄い…!」  
引いては寄せる快楽の中、二人はお互いの存在を確かめ合う。  
高調して行く感情のおかげで、二人が絶頂を迎えるまで、そう時間はかからなかった。  
「あっ!出る!!」  
フェイトはネルの中から己を引き抜こうとしたが、  
「ん…ハァ…!」  
ネルがフェイトの腰を抑え、引き止める。  
「お願い…もっと、もっとフェイトを感じさせて…」  
激しく息切れし、ネルは哀願する。  
「う!出る!!うぁぁ!!」  
「ああ!!イク…イクぅぅ!!!」  
二人はお互いに、性欲の塊を放出しあった。  
「はぁ…はぁ…」  
フェイトは力を無くし、弱々しくなった自分自身を引き抜いた。すると、  
「んうむ!!」  
「ぁあっ!!」  
ネルがすぐさまフェイトのものを口に咥え、奉仕を始めた。  
「せっかくなんだから…もっと楽しもうよ…ん…ヌチュ…」  
恐ろしく気持ちいい口内に、フェイトのものはすぐさま活力を取り戻した。  
「あ…良い…出るぅ!!」  
ドピュ!ビュルルル!!  
ネルの口を激しい精液が埋め尽くす。  
「んぅ…」  
ネルは上を向き、それを溢さないように飲み干す。  
「美味しい…でも…まだ足りないな…もう一度…飲ませておくれ…」  
横になり自ら股を開く。  
フェイトはそれに賛同した。  
「イキますよ…」  
ネルは微かに微笑み、頷いた。  
 
「この俺が…データごときにィィィ!!!!!!」  
 
時は流れる。  
創造主である『ルシファー』は倒され、  
世界を覆っていた未曾有の危機は去った。  
平和なときが流れ、人々は各々の思いを抱き、人生を旅する。  
ココは…イリスの野の岸辺。紅と青の対の髪色を持つ男女が腰を並べていた。  
 
「あれは何だい?白い烏かい?」  
「ははは!白い『カラス』なんて居ませんよ。あれはカモメです。」  
空にはカモメが空を覆うように飛ぶ姿が見える。  
二人は笑いあい、口を交えた。  
見るもの全てが恥ずかしくなりそうなほど長い口付けだった。  
もう、二人を邪魔する物は無い。  
鳥たちはこの物達を祝福するかのように高く舞い上がっていく。  
その翼に風を目いっぱい浴びて、澄み渡る空に。  
雲よりも空よりも、天よりも高く。  
そして今日もまた…日は海に沈む。  
          End 

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