グギュルルル…ギュルギュル…  
「うっ……やばい…腹が…」  
フェイトが腹を抑えて唸っていた。  
ここはアリアスの総領主館、客室。  
先程晩御飯を食べた後で、調子に乗って料理という料理を貪り続けたフェイトに天罰が降りた。  
ピーーーーーー。  
「き、きたぁぁぁぁぁぁ!!!」  
フェイトはすぐさま部屋を飛び出し、ト イ レ へと駆け出した。  
 
第一関門 ミラージュ・コースト  
 
フェイトが階段を下りようと、通りを曲がった。すると、  
「あら、フェイトさ…」  
ドン!!   
二人はぶつかり、階段を転げ落ちていった。  
そして踊り場で止まった。  
「いたたた…はっ!大丈夫ですかミラージュさん!?」  
フェイトはすぐさま体を起こした。が、  
「フェイトさんって…強引なんですね…」  
落ち着いた口調でミラージュが言う。  
何の事か?と一瞬フェイトは戸惑ったが、すぐにその理由を感知した。  
フェイトが起き上がるときに右手を置いた場所。そこには柔らかい感触がある。  
フェイトが起き上がるときに左手を置いた場所。そこには微かな湿り気がある。  
つまり右手は胸を、左手では陰部を、立ち上がる土台にしていたのだ。  
「でも…少し強引過ぎますね」  
「あっ、こ、これは、あの、その…」  
いつの間にかフェイトの両手は収縮運動を繰り返していた。  
「ん…あっ…もうちょっと…右の方が…んぅ!!」  
ミラージュの喘ぎ声に顔を赤くしたフェイトは、すぐさま手を離した。  
「ご…ごめんなさぁい!!!」  
フェイトはすぐさま逃げ出した。  
「あっ…。ふふ、若い証拠ですね」  
 
第二関門 マリア・トレイター  
 
「うっ!!!きたきた!!ヤヴァイィ!!」  
フェイトは全速力で走りながらも腹に刺激を与えないように、慎重に走る。  
しかしそれは無駄な努力に終わった。  
フェイトがある一室の前を通り過ぎようとした時、ドアが開いた。  
「あっ…フェイト…」  
バゴン!!  
フェイトはマリアとドアをふっ飛ばしながら倒れこんだ。  
一瞬気を失ったがすぐに意識を取り戻し、立ち上がろうとしたが、  
「ん…?」  
唇に柔らかい感触がある。フェイトはまたもやその理由を感知した。  
フェイトの固い唇にマリアのマシュマロのような唇が当たる。  
マリアはゆっくりとフェイトの顔を離させ、小さく言った。  
「あのね…私を求める気持ちは分かるけど…こんなベタな方法はいけないわね」  
「な、何言ってんだよマリア!!そんな事…」  
否定しようとするフェイトの顔にマリアの顔が近づいてくる。  
「でもね…君がその気なら…私は何時でもかまわないわよ」  
マリアが唇を突き出してきた。  
フェイトとしてもその好意に答えてあげたかったが、  
ギュルギュルゴォルジュル!!!  
「ききききき、きたぁぁぁぁ!!!」  
絶叫と共にマリアを突き放し、フェイトは風のように逃げていった。  
「何なのかしら?…でも…脈はあり、って事よね」  
なぜかマリアはガッツポーズをした。  
 
第三関門 ネル・ゼルファー  
 
「そ、そういえば…トイレって何処だっけ!?」  
唸る腹を押さえつけながらフェイトは辺りを見回す。  
今思えばフェイトはここで用をたした事は無かった。  
「…何やってんだい?あんた…凄く怪しいよ」  
会議室からネルが出て来た。  
「ちょ、丁度良かった…。ネルさんトイレって何処ですか!?」  
「はぁ?そんな事も知らなかったのかい?この先だよ」  
ネルが自分の後ろを親指で指しながら言った。  
「有難う御座います!!」…と、  
バゴ!!  
床に穴が開いた。フェイトはその穴に足を取られた。  
「うぁ…ああああ!!」  
ドシャァ!  
フェイトは倒れこんだ。そして起き上がろうとした。  
「ん、何だ?目の前が暗い…それに…なんか甘い匂いがする」  
フェイトが舌をチロッと出してみる。  
「あっ…!」  
その声でフェイトは三度その理由を感知した。  
「フェイト…アンタって奴は…!!」  
そう、フェイトの顔がうずめていたのは、ネルの股間。ネルの顔からは怒りが窺える。  
「あ…ご、ごめんなさい…!」  
フェイトが立ち上がろうとネルの体に手をかけた。  
「ぁあっ!!な、何すんだい!?」  
手のかけ所が悪かった。フェイトが立ち上がろうとすると、ネルのパンツがずり落ちた。  
「ぉお…」  
フェイトの視線が一瞬釘付けになったが、ダガーを抜く音がしたのですぐさま逃げていった。  
「フェイトの奴…ただじゃ済まないよ…!!」  
 
最終関門 クリフ+???  
 
「やった…着いた…!!」  
トイレに着いたフェイトは安堵の表情を見せた。  
しかし、ココでアクシデントが発生。なんと、二つある便器の両方に先客が居たのだ。  
フェイトは悩んだ。そして一つの結論にたどり着く。どちらか片方は確実にクリフだ、と。  
なぜならクリフは飯を食べた後必ずといって良いほど、トイレの支配者になるのだ。  
『片方がクリフだとすると…もう片方は一般人だな…』  
ギュルルピーーー!!  
「ぬぬぅぅ…!!」  
限界が来たようだ。しかしトイレは満席。そこでフェイトは最終手段をとることにした。  
クリフを蹴落とす、という最終奥義。  
とりあえずフェイトは右の扉をノックしてみた。  
「おう、入ってるぜ」  
「ぃ…ます…」  
クリフの声がしてきた。もう一つ声がしたのは隣の人の声だろうと思い、フェイトは続けた。  
「クリフ、早く出てくれよ!!我慢できないんだ!!」  
フェイトが忙しなくドアをノックする。  
「もう少し待ってろ!もう少しで出てやるから」  
「待てないから言ってるんだよ!!」  
焦るフェイトとは裏腹にクリフは落ち着いてみせる。  
「ふん…男としては時に忍耐も必要だぜ…!」  
「何すかしてんだよ!!あ〜!!出るぅ!!我慢できない!!!」  
我慢できなくなったフェイトは最終手段である便座のっとり作戦を決行すべく、少しドアから離れた  
 
「でっぁあああ!!」  
勢いをつけてフェイトがドアを蹴り開いた。が…、  
「…フェイトさん…!」  
中に居たのは…クレア・ラーズバード。  
フェイトは狐に摘まれたような顔をし、どういう素振りを見せたらいいか分からず、  
「あ…クレアさん……どうも…こんばんわ…」  
「変態!!」  
クレアはビンタがフェイトを捕らえる。  
フェイトの頬は紅葉型に赤く腫れ、  
『ク…クレアさんのあられもない姿が…』  
先程立ち上がったときひょっこりと姿をあらわしたクレアの陰部に股間を膨らませながら、  
地面に倒れていった。  
クレアがドアを閉めなおすと同時に、左の便座からは、  
ジャァァァァ…。  
水洗の音と共にクリフが出てきた。  
「馬鹿だなぁ、お前ぇは!!すっかり騙されやがって。  
 だから言ったろ?少し待ってろって……おい、聞いてるか?」  
床で伸びているフェイトの腹を軽く蹴飛ばしてみる。すると…  
「うぁ!!こいつ失禁しやがった!!お、俺のせいじゃねぇぞ!!」  
戸惑うクリフに向かって右の便座から声がしてきた。  
「クリフさん!!責任とって片付けてください!!」  
この話は一週間と経たずにシーハーツ全土に伝わった。 

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