エリザは、シランドの施術学園に通う、少女である。  
もともと、彼女の家は、そこまで裕福ではなく、そんな資金はなかったのだが、  
ある日、フェイトという人から、10000フォルを援助してもらい、  
弟の面倒を見ながらも、学園に通うことができた。  
 
しかし、もともと、普通の家庭で育った彼女は、シスターや施術の名門の家庭から  
来ている子達から見れば、落ちこぼれであり、  
現に、国語、数学などの学問は上の方にもかかわらず、この学園の最重要科目の  
施術はビリであった。  
 
ある日、彼女は、担任である、マジョ・レ女史に職員室に呼ばれた。  
エリザが緊張した面持ちでそこへ行くと、  
案の定、自分の成績と思われるデータを片手に、彼女はため息をついて言った。  
「あなた、あまり言いたくは無いのだけれど、この学園辞めなさい」  
予想はできていた。もともと、施術は生まれつきのセンスと家柄によるものが大きい。  
マジョ・レ女史もいじわるではなく、彼女のためを思って言ったのだろう。  
しかし、子供のころからの夢を捨てることもできず、また、資金援助してくれたフェイトの  
こともあり、引き下がるわけにはいかない。  
エリザは女史の前にひざまずき、なんとかお願いをした。  
女史も彼女の気持ちが半端でないことを悟り、またため息をついて、  
「・・・本来なら、こういう方法は好まないんだが、あなたが残りたいと言うなら・・・」  
と言って、エリザを連れ、図書室へ向かった。 
 
図書館は学園が誇る施設の1つである。  
ここにある書籍は、施術関係はもちろんのこと、生物学、一般教育など、  
様々な本が並び、王宮のそれに匹敵するものであった。  
しかし、マジョ・レ女史はその部屋を無視するかのように歩き、  
やがて、『関係者以外立ち入り禁止!』の看板が下がった扉まで来ると、その足を止めた。  
エリザも彼女の後ろで歩みを止めると、  
「いいかい?この先は、魔にとりつかれた本や、禁呪として、使用不能とされた施術の  
 本などが置いてある。今から、私は、この部屋に行き、強制的に、中に眠る素質を  
 覚ます本を取ってくるが、おとなしくしてなよ?」  
と女史は忠告し、闇の中に消えた。言われたとおり、エリザはその場で、  
『施術大全書』と呼ばれる教科書を読んでいたが、やがて、足音とともに、  
女史が再び闇の中から現れた。  
そして、彼女の方へ、その本をポンっと放ったので、  
エリザは慌てて、教科書で、その本をキャッチした。紙の破れる音がした。  
「・・・その本は大昔、施術の使える人間を増やそうと、実験、および検証した結果を  
 収めた本だ。人体改造、脳移植・・・さまざまな方法が試みられた」  
女史がタルそうに説明する。もともと、彼女はこういうしゃべりかたをするのだが、  
今の口調は、それよりもさらにタルそうだ。  
エリザが彼女の説明を聞きながら、ページをめくると、確かに、そこには、  
言葉では形容し難い、残酷な方法で、施術を目覚めさせようとした実験などがあった。  
エリザは吐き気に覆われたが、女史の説明は続いていた。 
 
「・・・んまあ、そんな馬鹿なことをやってた愚か者は置いといて、  
 私が折り目をつけたページがある。そこを見てみろ」  
女史の言われるまま、エリザは折り目のあるページをめくった。  
「・・・なんて書いてある?」  
「性的な刺激と純潔について・・・」  
エリザはその項目を呼んで、赤面した。  
あまり、そういう知識はないが、さすがにどういうものかは知っている。  
女史はエリザのその反応を見て、苦笑し、  
「その実験だけは、確実と判明され、証拠もあった。しかし、見ての通り、  
 これは、女性差別に繋がりかけない内容だろ?だからお蔵入りになったんだが・・・」  
女史はエリザの肢体を調べるかのように見ると、  
「お前がどうしても、というなら、この方法を使え。街で香水掛けて、  
 露出度高い服着て、男を誘惑すれば、すぐにできる。ついでに初体験もできるしな」  
「!!女史!」  
エリザは真っ赤になって、女子に怒った。  
「悪い悪い。調子に乗ったな。・・・だが、これは事実。  
 お前に才能が無いのも事実。方法がそれしかないのも事実。」  
女史の顔が珍しく、真剣になり、エリザも女史の言葉に偽りが無いことを悟った。  
「1年」  
「えっ?」  
「1年で答えを出せ。答えが出ない場合でも、即退学にするからな。」  
それだけ言うと、女史はその場を去った。  
エリザは手に持っている、唯一の希望と向き合い、チャイムが鳴ると、本をかばんにしまい、  
教室に戻った。 
 
家に帰宅すると、彼女は大きく、ため息をついた。  
結局、あの後にあった施術の授業、女史の言葉を否定したいために、  
一番がんばったのだが、やはりだめだったのである。  
部屋戻り、彼女は、『施術大全集』の基礎中の基礎、  
『ファイアーボルト』の練習に取り掛かった。  
頭に炎のイメージを浮かべ、それを手先から発射する・・・  
「はっ!ファイアーボルト!」  
彼女の声が狭い部屋に響き渡るが、何も起きない。  
はぁ・・・。  
彼女はまた大きくため息をついた。  
そして、なんとなく、女史から借りた、本を開けてみることにした。  
『その1、  
  自慰行為による施術力の違い。  
   施術を苦手とする、実験体乙にそのままの状態、彼女の異性と愛し合ってるイメージ  
   を叩き込ませたあと、自慰行為をさせた状態での実験を行った結果、  
   基本術である、「ファイアーボルト」の成功率が22%上昇。これは、己の中の  
   素質が性的快感とともに外に現れたからである(参照図1)』  
なんとも恥ずかしいことをさせたものだ、とエリザは真っ赤な顔で思った。  
実験のためとはいえ、催眠術で彼と激しく愛し合っている状態にされ、  
大勢の人間の前で、自慰行為をさせるなんて・・・。  
彼女はその項目だけ読むと、本を怒りをぶつけるように、ボン!と閉じた。  
そして、彼女は、気分転換に、最近は待っている小説を書こうとして、インクがないことに  
気づき、隣の弟の部屋へと向かった。  
 
コンコン・・・  
ノックしたが、反応はなし。  
姉の特権で、無理やり部屋に入るエリザ。  
「なによコレ・・・」  
自分の部屋とは違い、弟の部屋は、まるでごみだめのように散らかっていた。  
「まったく・・・いつまでもこれじゃあ、お嫁さんなんか来ないわよね」  
と愚痴をこぼしながら、掃除を始めた。  
さすが、女の子である。部屋はあっという間に綺麗になり、あとは本を整理するだけとなった。  
そこで、エリザの運命が変わるとも知らず、エリザは積んである本を整理し始めた。  
「っ!!」  
開始1分で、エリザの手が止まり、顔がみるみるうちに赤面した。  
そこには、複数の男性にレイプされる女性を描いた漫画があった。  
彼女は、それを破ろうとしたが、先ほどの本のこともあり、じーと内容を見始めた。  
そして、レイプされている女性がだんだん快感を覚え、男達の言いなりになるのを見て、  
今まで、感じたことの無い、妙にいやらしい気分になったことに気づくと、首を横に振り、  
やはり破ろうとしたが、なぜか破れない・・・。  
 
結局、弟の部屋にはそのほかにも、ヌード写真集などがあったが、彼女は、  
男と女の絡みがある本だけ自分の部屋に持ち込み、  
弟が帰宅し、本がないと文句を言うと、すべて捨てたと答えた。 
 
エリザは深夜遅くまで、施術の特訓をしていた。  
毎日の訓練は当たり前のことであるが、実は、2週間後に施術の実技試験があるのだ。  
基礎中の基礎のファイアーボルトさえ、まともに使えないエリザは、  
毎回、それが行われるたびに、皆の冷ややかな笑いの的にされてきたが、  
女史の話もあって、いつもよりも気合が入っていた。  
しかし、  
「はぁ〜!ファイアーボルト!」  
彼女の努力もむなしく、呪文は、悲しく部屋に反響するだけであった。  
「あなたには才能がないのも事実」  
女史の言葉が頭によぎる。  
しかし、その言葉を振り払うように、首を振り、自分の頬を両手でパンっと叩いて、  
気合を入れなおし、再び、練習を始めた。  
 
すでに、夜もかなり更けた。しかし、エリザは一人、黙々と練習をしていた。  
だが、さすがに体力の限界がきたようで、呪文詠唱のイメージを集中することも  
ままならない状態であった。  
「はぁ〜。あたしってば、やはり才能ないのかなぁ〜」  
悲しげにため息をつくと、エリザはベッドにドサッと腰を掛けた。  
そして、自分のお尻の下に硬く、四角いものが当たったことに気づいた。  
お尻にあたっていたのは、先刻、弟の部屋から没収したエッチな漫画であった。  
 
彼女の脳裏に再び女史の言葉がよみがえる。  
「性感と純潔の施術覚醒の関係性・・・か・・・」  
エリザは次に、最初に読んだ項目を思い出した。  
自慰行為を行うことで、施術の力が増幅することを。  
じつは、エリザは多少、そういったコトは知っていたものの、実際、したことはなかった。  
しかし、彼女が疲れて、あまり頭が働いていないこともあってか、  
彼女は弟の部屋で最初に見つけた本を読んでみた。  
 
簡単な内容はわかっていたものの、全部の流れを理解していなかったエリザは、  
教科書を読むように、最初からゆっくり読み始めた。  
主人公の男子は、好きな女の子がいたが、彼女が、夜、援助交際をしていたことで、  
頭が狂い、そういった類の連中と昼間の体育館で、彼女を犯す・・・  
最初は、この主人公はばかだなぁ〜とか、こんな連中いるの?みたいな感想を  
持ちながら読んでいたが、徐々にそういうシーンになってくると、  
疲れて頭が働いてないこともあり、顔が火照って、ボーとしてきた。  
そして、嫌々ながらされてきた少女も、行為が進むうちに、自ら求めるようになったシーンを  
見て、  
(この子、こんなことされて気持ちいいんだ・・・)  
と考えたとき、自分の股が濡れていることに気がついた。  
「嫌だ!・・・パンツ、変えなきゃ・・・」  
彼女が慌てて、パンツを変えようと、それを下ろしたとき、彼女の大事な部分が擦れたため、  
「あ・・・」  
今まで感じたことの無い、恥かしいような、気持ちいいような感覚を感じてしまった。 
 
「・・・本当にこんなことされて気持ちいいのかな?」  
彼女はやや呼吸を荒くさせて、本の少女に自分を重ねてみることにした。  
まず、男二人によって、上着とブラがたくしあげられる・・・  
エリザも同じように自分でたくし上げた。  
やや、小さいながらも、綺麗なピンクの突起とともに、彼女の双丘が外気に晒される。  
深夜のため、気温がやや低かったが、より気分を深めることとなった。  
「あ・・・なんか、私・・・エッチだなぁ〜」  
とつぶやきながらも、本の次の行為に移った。  
男達に胸をもまれるシーン。  
彼女は自分の小さな胸に、自分の手を被せると、やさしく肩を揉むように、  
揉み始めた。  
「あ・・・ううん・・・変な感じ・・・」  
彼女の乳首が勃起し、エリザはそのとがった部分を指でくりくりしたり、摘んでみたりした。  
ここまでは本になかったのだが、彼女が感覚を求めた結果、そこにたどり着いたのである。  
「次は・・・」  
エリザは、自分の中に湧き上がる、変な気持ちがより一層強くなってきていて、  
やめようにも、やめられない状態になってしまった。  
「えええ〜!こんなことをするの!」  
彼女が驚くのは無理も無い。次のシーンは、主人公が、少女のアソコに指を入れて  
かき回すシーンだったからである。  
普段、用を足すものとしかその部分を認識していないエリザは、戸惑いながらも、  
よりこの感覚が得られるのならと、おそるおそる、指を自分の股の割れ目に入れた。  
 
くちゅ・・・くちゅ・・・  
ゆっくり指を動かす。本の中では、少女は3本の指を挿れられるのだが、  
エリザは、3本を入れることに抵抗を感じ、とりあえず、1本だけでかき回した。  
「あ・・・すごいいやらしい音・・・」  
自分が始めて聴く、水音に、エリザは「いやらしさ」を感じた。  
しかし、その「いやらしい」音のおかげで、自分はよりこの行為に浸れることも、  
同時に知った。  
「あ・・・なんだろ・・・意識が遠のくような・・・気持ちいい・・・」  
そして、ついに、彼女はその行為に快感を覚え始めた。  
くちゅ・・・くちゅ・・・ずちゅずちゅ・・・  
最初は戸惑っていたのに、エリザは一気に3本指をいれ、自身を激しくかき回した。  
「ああ!ああ!いい!!こんなの!こんなの!」  
隣の部屋で眠る弟や、隣家にこんな破廉恥な声を聞かれぬよう、精一杯絞った声で、  
彼女は喘いだ。  
空いている手でページを捲る。  
つぎのシーンは、主人公が女の子に、性器を、割れ目に挿入するシーンである。  
エリザは、その漫画に描かれている、男の子のモノと同じくらいの大きさのこけしを  
持ってきて、すでにぐしょぐしょになっている、秘所に入れた。  
 
「うう・・・ううん・・・」  
さすがに、こけしは彼女3本の指よりも太く、中々入らない。  
しかし、ニュルっというような感触の後、こけしの頭は彼女の中に納まった。  
「はぁぁぁぁぁぁ!」  
彼女はすこし痛みを感じたが、それ以上に得られる、快感にうれしい悲鳴をあげた。  
そして、本のこのあとの展開を無視し、こけしを握った右手を前後に激しく動かした。  
じゅぷじゅぷじゅぷ・・・  
大きな水音が静かな彼女の部屋に響き渡る。  
「あっ、あっ、あっ、あっ!」  
エリザは、こけしの前後の運動に合わせて、喘いだ。  
そして、右手だけでなく、左手もこけしをつかむと、より一層、その運動を強めた。  
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、ああああああああ!」  
長い悲鳴の後、彼女の体から力が抜け、こけしが刺さった部分からは  
大量の生暖かい液体が流れ出した。  
「あ・・・ほんとだ・・・すごく気持ちいい・・・」  
彼女は悦にはいった顔で、そうつぶやくと、朝がくるまで、その行為を繰り返した。  
 
学校に着くと、エリザの股間がヒリヒリした。  
「あぅ〜オナニーしすぎると、バチが当たるのね・・・」  
彼女は少し、夜の自分の行動を反省したが、  
(こんなに気持ちいいなら、今日もやろーっと)  
と決意すると、ついつい顔が緩んでしまった。  
 
やがて、授業開始のベルが鳴り、ドアの教室を開けて、先生が入ってくる・・・  
はずだったのだが、担任のマジョ・レ女史の姿は無く、代わりに教卓に立っていたのは、  
エリザよりもやや年上の、銀髪のおねえさんであった。失礼かもしれないが、  
マジョ・レ女史よりも美人だし、スタイルもよかった。  
その、おねえさんは教室を見回すと、笑顔を見せると、  
「マジョ・レ女史は、研修のため、本日は欠席するそうです。  
 変わりに、私、クレア・ラーズバートが皆さんに授業を教えますので、  
 みなさんよろしく!」  
そう挨拶をすると、体を45°曲げて、一礼をした。  
教室内から、特に男子から、拍手や、ヒューヒューと口笛を鳴らす音がした。 
 
クレアおねえさんの授業はとてもわかりやすく、  
それに、彼女自身が親切な人なので、女史の授業よりも集中できた。  
(こんな美人で優しい人なら、彼氏の一人二人はできるんだろうなぁ〜)  
ドジでおっちょこちょいで周囲に迷惑をかけてしまい、中々恋愛ができないエリザは、  
彼女を憧れの目で見ていたが、  
(きっと、毎夜毎夜、たくましい彼氏にあんなことされたり、こんなことされたり・・・)  
いつのまにか、そっちへ考えが逸れてしまった。  
(やだ!わたしったら!)  
恥ずかしさを隠すように、机に伏した瞬間、勢いあまって、  
ゴン!!  
鈍い音が教室に響いた。  
「いたたたた〜」  
エリザは涙を浮かべながら、強打した額を押さえた。  
クラスメイトはまたかと言わんばかりに、失笑と冷ややかな視線を送ったが、  
クレアおねえさんは、教卓から慌てて駆けつけてきて、  
「大丈夫?」  
と優しく言うと、エリザの額を摩ってあげた。  
クレアから、大人の香りがした。  
「はい、大丈夫です!」  
彼女はなぜか、顔を赤らめながら、笑顔で元気に答えた。  
安心した表情を見せ、エリザの頭をなでると、クレアは教卓に戻っていったが、  
その後姿を見て、  
(クレアさんってすてきだなぁ〜)  
彼女の目は、明らかに同性に対するものと違っていた。  
 
エリザはやや年上の「大人の女性」から目が離せなかった。  
チョークを落とした際、それを拾おうとして、見えた谷間・・・  
国語の授業中、生徒の朗読を聞きながら、教卓を右に左に往復している際、  
強調される彼女の美しい太もも・・・  
板書する際、黒板の下あたりを書くため、屈んだ際、あらわになるヒップライン・・・  
エリザの視線は、もはや男子達と変わらないものであった・・・。  
 
休み時間になり、エリザは屋上へ、かばんを持ってあがった。  
屋上は普段人がこないところで、施術の練習にうってつけであった。  
なお、教室からかばんをもってきたのは、教科書と、アノ本を見るためである。  
 
とりあえず、午後の演習に備えて、ファイアーボルトを練習しようとした。  
すると、昨日、練習したときにはなかったものが頭で見えるようになった。  
(こ、これは!?)  
エリザはその違いに驚きながらも、これなら、と思い、  
「ファイアーボルト!」  
呪文を唱えた。  
グォオオーーーーー!!!  
大きな炎が、彼女の手先から発射された。予想通り、成功したのだ。  
彼女は、炎を放った両手をマジマジと見たあと、顔が緩み、  
「やったー!やったー!」  
とぴょんぴょん跳ねながら、努力が報われた瞬間を喜んだ。  
 
(この本に書かれていることは本当だった・・・)  
エリザは、自分に成功をもたらせた本をかばんから取り出した。  
(それに、この本のおかげで昨日は気持ちよかった・・・)  
昨日の出来事を思い出し、悦に入るエリザ。  
(オナニーでこれだけできるなら、次の段階はもっとうまくなれるんだろうなぁ・・・)  
彼女は期待を込めて、目的のページを捲り、次の項目を呼んだ。  
『その2、同性同士の絡みと施術  
  本来、女性同士(男性同士)の絡みはタブーとされているが、この実験において、  
  法は無視してよい、ということで実験を開始。  
  実験甲と乙を特殊な薬品で思考を麻痺させ、性的な行為を求めるようにしたところ、  
  激しくお互いを慰めるかのように愛し合った後、両者の潜在能力が図2のように・・・』  
(さすが、禁断の書物、こんな違法なことまでしていたのね)  
感心しながらも、ややどきどきしながら、その項目を熱心に読むエリザ。  
しかし、同性同士の絡みなど、発覚すれば投獄されかれない、重罪である。  
宗教国家なので、そいういった取り締まりは厳しいのである。  
 
「はぁ・・・この方法は現在の状況じゃ、無理ね」  
彼女が諦めて、次の項を読もうとしたとき、屋上と校舎をつなぐとびらが音を立てた。  
エリザは慌てて、本をかばんにしまった。  
 
扉の奥から姿を現したのは、銀髪が美しい、クレアおねえさんであった。  
「あっ・・・」  
顔を赤くして、彼女を見るエリザ。  
クレアも、エリザに気づいたのか、エリザのほうを見ると、微笑んだ。  
「どうしたの?こんなところで・・・」  
彼女の美しい銀の髪が、風を浴びて、サラサラとなびく。  
エリザはそんな美しさに目を奪われた。  
「あの・・・その・・・午後からの施術の特訓を・・・」  
もじもじしながら質問に答えるエリザ。  
クレアは、ふふ、と笑うと、エリザの横に座った。  
エリザの鼓動は早くなり、エリザは視線を合わせないようにしたが、  
何も知らないクレアはゆっくり語った。  
「あなたのことは女史から伺っているわ。一人落ちこぼれの生徒がいるって」  
この言葉にエリザは、はっとなり、クレアの顔を見た。  
「ふふふ・・・そんな緊張しないで。女史はね、あなたのことが気に入っているのよ。   
 こんな勤勉な生徒は滅多にいないって。だから、女史がここを離れている間、  
 私にあなたの面倒をしっかり見てほしい、って頼んできたのよ」  
優しくそう言うと、エリザの左手を両手で握り、  
「施術は生まれつきの才能じゃないわ。大丈夫よ。  
 私もできる限りの手伝いをするわ」  
施術を使えるものが限られている理由、このクレアはそれを完全に理解していない  
ようにも聞こえた。しかし、、彼女の言葉からは、いやみやそういった類の感情はなかった。  
つまり、彼女は精一杯、私を気遣ってくれたのだと、エリザは悟った。  
 
午後の授業、エリザが施術を披露する際、彼女の知るクラスメイト達は、  
にやにやしながら、彼女の失敗を見ようとした。  
しかし、彼女は昨日から、施術の才能の目覚めていたのである。  
普段よりも自信溢れる態度で、皆の前に現れたエリザは、  
休み時間行ったように、気を溜め、イメージを浮かべせ、詠唱した。  
「ファイアーボルト!!!」  
グゥオオオオオオオ!!!  
大きないうねり声をあげて、大きな炎がエリザの小さな腕から出される。  
クラスメイトは、落ちこぼれのエリザが施術に成功し、さらには、  
その成功したものが、ほかの同僚達よりも強力なことを理解し、  
肝を抜かれた。  
皆から拍手を受けるエリザ。  
拍手をする人物の中に、エリザはクレアが自分のことのように、喜んでくれてるのを見て、  
胸がキュンとした。  
 
夜を向かえ、施術の力を引き出すため、を名目の理由に、今日も自慰行為にふけるエリザ。  
「あは・・・あ・・・いい・・・!」  
昨日と同じく、こけしで自身を突く行為をしていたのだが、  
今晩、彼女をそういう雰囲気にさせているのは、弟の本ではなく、  
「あ・・・いい!クレア・・・さぁん・・・」  
甘い声で、妄想の中で自分を抱いている相手の名前を呼ぶエリザ。  
そう、彼女はクレアに抱かれたいと言う願望が生まれていた。 
 
翌日の放課後、エリザは、職員室のクレアのもとへ訪ねた。  
クレアは、エリザが来ると、笑顔で出迎えた。  
「エリザちゃん、昨日はおめでとう。昨日のことは、ばっちり記録したから、  
 女史も帰ってきたら、驚くわよ?」  
とクスクス笑って話すクレア。  
「はい・・・これも、女史やクレア先生のおかげです」  
ややテレながら答えるエリザ。  
しかし、エリザはこんな話をするために来たのではなかった。  
ふぅ・・・と一呼吸すると、  
「クレア先生!」  
少し声が上ずったが、その理由も知らないであろう、この大人の女性は、  
相変わらずの笑顔で、  
「うん?なにかしら?」  
と返してきた。エリザは続けて、  
「あの・・・今日の晩、私のうちで食事を食べませんか?」  
と言ったが、さすがにクレアも現在の自分の立場を考えて、  
「そういうわけにはいかないわ。ごめんね。休日の昼とかならいいんだけど・・・」  
と返した。しかし、エリザはここで引き下がらなかった。  
「いえ、今言ったことは建前でして、本当は、施術を見てもらいたいんです・・・」  
クレアは真剣にエリザの話を聞いた。  
「施術?またどうして?」  
「先生たちのおかげで、施術を使用可能になったのはいいんですが、  
 暴走を起こしてしまうことがあるんです。  
 明日に備え、術の練習をしたいんですが、このままだとできなくて・・・」  
もちろん、これはエリザのでまかせであるが、クレアは真剣に彼女の話を聞いた。  
そして、自分が女史にエリザの世話を特に見てほしいと頼まれているのを思いだし、  
「わかったわ・・・。暴走にはなにかしら、心の中に原因があるから、  
 その原因を一緒につきとめましょう」  
クレアはエリザの手をしっかりと握った。  
エリザがこの瞬間、表情を変化させたことに、クレアは気づかなかった。 

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