ここは宇宙船ディプロの中。  
FD空間から帰還した彼らは、セフィラを手に入れるために、  
ディプロでエリクールへと向かっていた。  
 
「ふぅ…」  
マリアがため息を漏らす。  
リーダー不在の間に、様々な報告書が、自分のデスクには溜まっており、  
彼女はそれの処理に追われていたのだった。  
「まったく、エクスキューショナーのおかげでさんざんだわ」  
マリアは最後の報告書をまとめると、そのままイスにもたれかかり、天を仰いだ。  
女性の部屋とはいえ、宇宙船。飾りけのない天井を見ると、  
一人で閉じこもっていたせいか、なんとなく寂しさを覚えてしまう。  
「フェイトは…どうしているのかしら?」  
マリアがふと彼の名前を口に出してしまう。  
頭の中に彼のヴィジョンが浮かぶ。  
自分をかばってくれているりりしい彼の姿…。  
街中で彼と話してくれたときに見せてくれる優しい笑顔…。  
「フェイト…」  
自然と彼女の顔が赤くなっていく。  
 
最初は、自分と同じ、ロキシ・ラインゴッドの被験者として、彼のことを追いかけていた。  
しかし、エリクールで彼と出会い、彼と一緒に戦っていくうちに、  
彼に対して、恋愛感情が芽生えはじめてしまった。  
そのことに気づいてからは、彼とまともに話せなくなってしまった。  
恥ずかしい。そのうち、『私はキミが好きなの…』と口走ってしまいそうで怖い。  
冷静なクオークのリーダーも彼の前では恋する乙女でしかなかった。  
 
「フェイトに会おう…」  
彼のことを考えていたら、マリアはじっとしていられなくなった。  
彼に会いたい。そうすれば、なんだか満たされる気がする。  
そう思い、彼女は自分の部屋をあとにした。  
 
廊下にマリアの靴の音が響く。  
「おい!準備はまだか!!」  
「リーダー達のサポートをするんだ!ぬかるなよ!!」  
あちこちから、エリクール到着に備えるクオークのメンバーの声が飛び交っている。  
(みんな、私たちのために必死なのね…)  
それときたら、自分は自分の感情のために、男に会おうとしている。  
マリアは、自分を情けなく思ったが、しかし、彼に会いたいという気持ちは変わらなかった。  
 
コツ…  
マリアの足が止まる。  
「来ちゃった…」  
目の前にある無機質な自動ドア。その向こうに、自分の好きな人がいる。  
「いい、一目合うだけよ…。私は彼の様子見に来ただけ。  
 いいわね、マリア…」  
自分にそう言い聞かせると、マリアはドアに近づく。  
「…おかしいわね?」  
しかし、センサーは反応せず、ドアは沈黙を保っていた。  
「ロック…しているみたいね。寝ているのかしら?」  
マリアは気になって、耳をドアにつけた。  
「ああん…」  
突如、女の声が自分の耳に入って、思わずマリアはたじろいだ。  
 
(ソ、ソフィア!!)  
声の主は、ソフィアとしか思えなかった。  
(なぜ、彼女がここに!!)  
ものすごく嫌な予感がしたが、  
彼女は真相を突き止めなくてはいけないという衝動にかられた。  
もう一度耳をドアにつける。  
「あぁ…フェイト…気持ちいいよ…」  
間違いなく、これはソフィアの声だ。  
しかし、その声は快楽に喘いでいる声としか思えないほど、甘いものであった。  
(ちょっと…これは何!!二人は何をしているの!!)  
マリアの背中に汗が流れる。  
頭の中に、どうしても拭えない一つの不安が現れる。  
「ソフィア…ソフィアぁ!!」  
パンパンパン…  
「!!!!」  
不安はやはり当たっていた。  
ソフィアの甘い声、フェイトがソフィアの名前を呼び、そして、肉のぶつかりあう音…  
フェイトとソフィアはここで愛し合っていたのだった。  
 
「そ、そんな…嘘でしょ…」  
マリアの身体が崩れ落ちていく。  
「あぁ…!!フェイトぉ〜!!イクぅぅうう!!」  
「ソフィア…僕もそろそろ…!!」  
二人が昂ぶり、限界が近づいたのだろう。  
行為が激しくなり、性器と性器がこすれ合ういやらしい水の音が一段と大きく聞こえる。  
「フェイト…そんな…」  
ソフィアが彼を好きなのは、自分の彼に恋する身であることもあり、  
彼女の視線からそれがよくわかった。  
だが、自分も彼女に負けない自身はあった。  
たしかにソフィアとフェイトは幼馴染で、つきあいも長いかもしれない。  
だけど、自分も彼と生死を短い間だけど共にし、  
そんなものは補えていたと思っていた。  
だが、結果は現れてしまった。  
彼はマリアよりソフィアを選んだのだ。  
「あああ…フェイト…はぁああああ!!」  
「ソフィア…出るっ!!」  
二人の愛し合う行為が終了したらしい。  
マリアはゆっくり立ち上がると、ふらふらとその場を後にした。  
その目は光を失っていた。  
 
ドンドンドン!!  
マリアはある部屋の前に来ると、そのドアをなんども乱暴に叩いた。  
「うるせーな、誰だよ!!」  
中から、金髪の男、クリフがややうんざりした顔で現れた。  
ここはクリフの部屋だったのである。  
「悪いわね。うるさくして」  
マリアはそう言うと、彼に自分の身体を預けるように倒れこんだ。  
「お、おい!!なにしてるんだよ!!」  
クリフは、突然の出来事に戸惑っている。  
(うっ!いい匂いだ…)  
マリアの青い美しい髪から漂う、シャンプーの香りがより一層、彼を困惑させた。  
「…クリフ、お願いがあるの」  
「な、なんだよ!言って見ろよ!」  
冷静な口調で話すマリアと対照的に、相変わらずどぎまぎしているクリフ。  
「抱いて」  
「な、何!?」  
思わぬお願いに、クリフが顔を赤くする。  
「ば、馬鹿!何を言ってやがる!大体お前には―――!!」  
「いいから抱いて!!!」  
マリアの口調が突然厳しくなった。彼女の肩はなにかに怯えるように、  
小刻みに震えている。  
 
「…いいんだな、俺に抱かれても?」  
なんとなく事情を察し、クリフはマリアの身体を優しく抱きしめた。  
「いいの…お願い…今は何も聞かずに抱いて欲しいの…」  
クリフはそれを聞くと、優しい顔になった。  
マリアの身に何が起こったか、それは関係ない。今は、彼女を抱きしめてやる。  
それが自分のマリアにしてやれる唯一のことだ。  
彼はそう悟った。  
「わかった・・・とりあえず、今は泣いとけ」  
「ありがと…」  
そのまま、マリアは彼の胸の中にうずくまり、  
何かが切れたように、わあわあと声をあげて泣き声をあげた。  
クリフは、そんな彼女の頭を彼女が泣き終わるまで撫で続けた。 
 
「…ひっく…ひっく…」  
マリアから泣き声が消えた。  
「…気は済んだか?」  
クリフは優しく問いかける。  
マリアは黙って頷いた。  
「そうか…そいつはよかった」  
「…迷惑…かけたわね」  
「気にするな…」  
クリフはマリアの背中をかるくぽんぽんと叩いた。  
「元気出せよ…」  
「……」  
しかし、マリアは彼の腕に抱かれたまま、動かなかった。  
「マリア?」  
「すぅ…すぅ…」  
泣きつかれたのだろう、マリアは彼の暖かい腕の中で寝息を立てていた。  
「…寝ちまったか」  
クリフは苦笑すると、彼女を自分のベッドに寝かした。  
「ううん…フェイト…なんで…」  
寝言を言うマリアの目から一筋の涙が零れた。  
「馬鹿…美人が台無しだぜ…」  
クリフはその涙を手ですくった。  
マリアの顔には、傷のように涙の通った跡がついていた。  
クリフの心が締め付けられた。  
「まったく…マリア、お前は繊細すぎるんだよ」  
 
クリフは、この青い髪の少女を一人の女として、愛していた。  
出あったときこそまだ小ささかったが、マリアは時が経つにつれ、  
その美しさをどんどん現していった。  
彼女は才女であった。運動以外は、何をやらせても自分よりも上だった。  
そしてなにより彼女に惹かれたのは、  
冷静さに秘めた彼女の優しさと、悲しみであった。  
自分の存在を知ったときのマリアが何かに取り付かれたかのように、  
救いの手をさがしていたときは、彼も見るに耐えなかった。  
だから、彼女に紋章遺伝学を施したロキシ博士の子、フェイトのことを知り、  
彼を迎えたいと彼女が言ったとき、自分も嬉しかった。  
これでマリアは救われる。そう信じたからだ。  
だが、ロキシは死亡。ムーンベースにあったデータ、それにFD人にルシファー…。  
もはやマリアの『存在』は、この銀河の存亡を賭けたものであるとわかり、  
悲しくなった。ロキシを恨んでやりたかった。  
ロキシを憎むに憎めなくなったマリアの葛藤する姿…  
唯一の救いは、フェイトへの恋心。  
彼女とマリアが結ばれれば、マリアは幸せになれたかもしれない…。  
しかし、マリアはフェイトに選ばれなかったのだ。  
マリアの心の中は絶望だらけになっているだろう。  
救いたい…。  
可愛そうな愛する人を自分が救いたい…。  
 
無意識にクリフはマリアの額に唇を近づけたが、  
「…俺は何をやっているんだ?」  
こんなことをしても、彼女は救われない…。  
これは、自己満足のためでしかない。  
クリフは、自己嫌悪に陥り、マリアから顔を離した。  
「すぅ…すぅ…」  
マリアの安らいだ寝顔。  
しかし、その裏にはどれだけの悲しみがあるのだろう。  
「すまねえ…俺には、お前を幸せにしてやる方法がわからねえ…」  
自分がフェイトならば、彼女を救えただろうに…。  
クリフは、マリアを選ばなかったフェイトと、なにも出来ない自分に腹が立った。  
「すまねえ…」  
もういちど、唇をかみ締めて、クリフはマリアに謝る。  
強く噛んだために、唇から血が流れていた。  
そして、クリフは自分のこの悔しさを忘れようと、そのまま床に寝転んだ。  
 
それからしばらくして、  
「ここは…」  
マリアが目を覚まし、ベッドから身体を起こす。  
ベッドの下には、クリフが寝転び、大きないびきをかいていた。  
「そうか…私、関係のないクリフに迷惑をかけてしまったわね…」  
自分の弱さが他人に迷惑をかけてしまった。  
マリアは自責の念に駆られた。  
「クリフ…ありがとう…」  
マリアは、ごろんと寝返りをうった彼に感謝の言葉を述べると、  
彼の机にあったメモ用紙に何かを書くと、それを机の上におき、  
彼の部屋を後にした。  
 
「くそ!こんなにエクスキューショナーが入り込んでるなんて!!」  
翌日、エリクールのイリスの野に転送されたパーティーは、代弁者に追われていた。  
ムーンベースで大苦戦を強いられた代弁者。それが複数、彼らを追いかけている。  
「くそ!早く走れ!!」  
フェイトが皆をせかす。  
「ま、待ってよフェイト…私、もう走れないよ…」  
ソフィアが息を切らし、苦しそうな表情をしている。  
「ソフィア、がんばれ!!もう少しの辛抱なんだから!!」  
「う、うん…がんば…きゃっ!!」  
ソフィアの足がもつれ、彼女は転んでしまった。  
「ソフィア!!」  
フェイトが慌てて彼女に駆け寄る。  
(フェイト…)  
それを見ていたマリアは、ソフィアがうらやましかった。  
ソフィアが転んだとき、彼女が放置され、代弁者に殺されてしまえば、  
彼は私のものになったのに…。  
(ば、馬鹿!!何を考えているの!私は、最低よ!!)  
マリアは首を大きく横に振り、二人の前に走り出て、銃を追ってくる敵に構えた。  
 
「行って!!ここは私が食い止める!!」  
「な、何を言っているんだ!マリアこそ早く逃げるんだ!!」  
マリアは、フェイトが自分の身を案じてうれしかったが、  
自分はソフィアが死んでしまえばいいと思った人間、  
彼に優しい声をかけてもらう価値もない、そう思っていた。  
「いいから行って!私の銃なら、いくらかやつらの足止めはできる!早く!!」  
代弁者の影が次第にはっきりしてくる。  
「マリアさん…」  
ソフィアが不安げな顔でマリアの後姿を見る。  
「…分かった。ここは任せるよ」  
フェイトはソフィアを抱え上げた。  
「ちょっと!フェイト、だめよ!!私も戦う!!」  
マリアを放っておくわけにはいかない。  
ソフィアは、必死に彼を止めようとした。  
「無茶を言うな。お前のその足では戦えないだろう?」  
「そ、それは―――!!」  
ソフィアは、転んだ拍子に足を捻挫していた。  
集中力を要する紋章術に、足の痛みは大きなマイナスであった。  
「…分かったな。ここはマリアを信じよう」  
「うん…」  
しかし、ソフィアはやりきれない表情をしていた。  
「マリア、死ぬなよ!!」  
フェイトも同じような顔をし、そう叫ぶと、野原を駆け出した。  
 
「死ぬな、か。簡単に言ってくれるわね」  
後に残された青い髪の少女が苦笑すると、銃の安全装置を解除した。  
代弁者がマリアの射程内に入る。  
「さあ、命が惜しくないなら、かかってきなさい!!」  
マリアの銃の乾いた音が、辺りにこだました。 
 
「パルスエミッション!!」  
光の弾が連続で代弁者に襲い掛かる。  
「ぐわあああアアアアアsじょいぎうfdfd」  
一人目の代弁者の首が吹き飛んだ。  
「ひとつ!!」  
突如、マリアの周りが暗くなる。  
「上!?」  
上空から代弁者がまるで天使のように飛んでいる。  
「己が罪科をその身に刻むがよい」  
これは代弁者の強力な精神攻撃、ディバインウェイブの合図である。  
「させるものですか!!」  
バンバンバンバンバン!!  
「うがあああああ!!!」  
マリアの容赦ない連続の対空射撃を受け、代弁者が落下する。  
「ふたつ!!」  
とたん、背後に殺気をマリアは感じた。  
「ひれ伏すがよい…」  
代弁者が衝撃波を飛ばす。  
しかし、マリアはそれを華麗にステップで交わす。  
マリアの短いスカートに切れ目が入った。  
「甘いわね!グラビティビュレット!!」  
弾速の遅い強力なエネルギー弾がその代弁者を襲う。  
「ぐががががががが!!」  
「重力の檻に閉じ込められなさい!」  
「ぐぎゃあああああああ!!」  
負荷に耐えられず、代弁者の身体が粉々になった。  
「みっつ!!エクスキューショナーも大したことないわね!!」  
 
これならいける、マリアはそう思ったが、  
「愚者が…」  
再び背後に強烈な殺気を感じた。  
「しまっ―――!!」  
しかし、少し油断していたこともあり、代弁者の光の柱から逃れられなかった。。  
「きゃああああ!!」  
マリアの身体に激しい痛みが走る。  
「はっ!!」  
「ひれ伏すがよい…」  
後続の代弁者もそれに加わり、光の柱をマリアに浴びせる。  
「くっ!!きゃっ!!いや!!」  
逃れることの出来ない彼らの波状攻撃は、まるで光の牢獄であった。  
マリアのプロテクターが破壊され、ところどころ服も破れた。  
しかし、外傷はひとつも負ってはいなかった。  
彼らの恐ろしさは、内部から身体を破壊するところにあったのだ。  
みしっ…!!  
「うぐっ!!」  
骨のへし折れる音がし、マリアが苦痛の表情を浮かべる。  
(くっ!今ので、あばらが何本かいったみたいね…)  
しかし、そんなことはおかまいなしに代弁者の攻撃は続く。  
(どうやら…私もここまでみたいね…)  
足、そして腕に激しい痛みが走る。  
もはや、彼女の命は風前の灯であった。  
(みんな…ごめんなさいね…私はもう駄目みたい…)  
覚悟を決めた少女の脳裏に青い髪の少年の笑顔がよぎった。  
(フェイト…最後に…あなたが好きって伝え…たか…た)  
マリアの目から涙が流れた。  
 
「エリアルレイド!!」  
「ぐぎゃやぁあssjtぽhhxsdtgkt@k@hupeyrytnb;!!」  
マリアの周りに爆風が置き、彼女をなぶり殺しにしようとしていた敵が一蹴される。  
砂煙が消え、爆風の起こった場所に金髪の筋肉質の男の姿が確認できた。  
「クリ…フ…」  
マリアはその男の名前を呼んだ。  
「マリア……マリア!!」  
クリフが彼女に駆け寄り、彼女の身体を抱き上げる。  
「しっかりしろ!!マリア!!」  
マリアはもはやわずかな布きれしか身体に纏っておらず、  
彼女の控えめな胸が露出していたが、クリフはそんなことよりも、  
露出した肌のあちこちが青くなっていることに驚き、愕然とした。  
「クリフ…みんなは…無事…なの?」  
マリアの声。だが、その声はか細く、今にも消えていきそうだった。  
「ああ、ああ…みんな無事だ。だから、しゃべるな!!」  
「よかっ…た…」  
マリアが安心した表情を浮かべ、その目をゆっくり閉じた。  
カチャ…  
マリアの手から、彼女の愛銃が落ちた。  
「マリア?…マリア!!」  
クリフがマリアの身体を揺する。  
しかし、彼女は動かない。  
クリフがマリアの胸に耳をつける。  
トク…トク…  
かすかであるが、まだ心臓は生きていた。  
「マリア!!今、ディプロに運んでやるからな!!」  
クリフはマリアの身体を抱え上げ、通信機でミラージュと連絡を取る。  
『ザ…わかりました…ザザ…至急…転送…ます』  
「ああ、早く頼む!!このままではマリアが!!」  
『ええ…今、転送します!』  
次の瞬間、クリフの身体が光に包まれ、彼らはエリクールから姿を消した。  
 
「…というわけだ。だから、お前たちは俺達に構わず、先にセフィラを取ってきてくれ」  
『ああ、わかった。…彼女を頼んだよ』  
「こっちは任せとけ。それよりも、お前たちこそ、頼んだぞ」  
『わかっている。それじゃ』  
「ああ…ちょっと待て。さっきは…すまなかったな」  
『…謝らなくてもいいよ。僕にも責任はあったわけだし…』  
「そうか…」  
『………とにかく、彼女を頼むよ』  
プツンという音とともに、フェイトとの通信が終了する。  
クリフは、医務室の外の壁に寄りかかっていた。  
『緊急治療中』  
ドアの上の赤いランプが転倒しており、そこに書かれている文字がはっきりと目に映る。  
「くそ!!」  
クリフが壁に拳を打ち付ける  
「なぜ…なぜ、もっと早く助けに行かなかったんだ!!」  
 
 
シランドまで逃げ失せた一行は、当然マリアの話題を誰ともなく出した。  
「おい!マリアを助けに行こうぜ!!」  
マリアを愛しているクリフは、一人で戦っている彼女を放っておけなかった。  
「そうだよ…。わたしは足手まといになるから、みんなで助けに行ってあげて」  
ソフィアもみんなにお願いする。  
自分のせいでマリアが危険な目にあっていると思い、彼女は泣いていた。  
「駄目だ…」  
しかし、フェイトは首を横に振った。  
パーティーに一瞬、沈黙が走った。  
クリフが、彼に歩み寄り、そのむなぐらを掴んだ。  
「お前…マリアを見殺しにするのか…?」  
クリフの肩は振るえ、その口調には怒りが込められていた。  
 
だが、フェイトはそれに怯えることなく、真剣な表情をしていた。  
「今更、僕たちが助けに行ってどうなる?ミイラ取りがミイラになるだけだ!!  
 …それに、マリアなら大丈夫さ。彼女も危険になれば、撤退するだろうし…」  
「な、なんだと!!」  
クリフの怒りが頂点に達した。  
そして、むなぐらを掴んでいる少年の顔を思いっきり拳で殴った。  
「うぐっ!!」  
フェイトの身体が吹き飛ばされる。  
「お前というヤツは…マリアの気持ちも知らないで、よくもそんなことが言えたもんだな!!」  
クリフが彼をもう一発殴ろうとするが、それをネルが食い止める。  
「やめろ!!こんなところで喧嘩してどうする!!」  
「離せ、ネル!!こいつは、とことん殴ってやらねえと気がすまねえ…!!」  
フェイトは身体を起こし、口元を袖で拭う。袖に大量の血液がついた。  
どうやら口の中が切れたらしい。  
「フェイト!!大丈夫?」  
ソフィアがひょこひょこと足を引きずりながら、心配そうな表情で彼に歩み寄る。  
「待ってて…今、回復してあげるから…」  
「ソフィア、やめろ!こんなやつ、回復なんてするな!!」  
「クリフ…頼むからやめてくれ…」  
クリフが再び暴れだし、彼を抑えているネルが苦しそうな表情を浮かべる。  
「マリアはな…マリアはな!!お前が好きだったんだよ!!  
 お前が好きだということを支えにして生きてきたんだよ!!」  
 それなのに、お前はそんなあいつの気持ちも知らないで…!!」  
「お、おい…クリフ?」  
ネルは見た。フェイトに叫び続けるクリフの目からは涙が流れているのを。  
しかし、彼の涙を見たのは彼女だけではない。  
ソフィアも、そしてフェイトも見た。  
「マリアが…僕を…?」  
「そうだ!!」  
信じられないような表情をしている少年に、クリフはますます怒りを募らせる。  
 
「いいか!あいつは自分の存在を早く知ってしまった。  
 そして、お前の親父を恨むことで、なんとか生きてきた。  
 だが、お前の親父は死んだ。もはやあいつには、  
 新たに芽生えたお前への恋愛感情しか支えにならなかったんだ!」  
「そう…だったのか…」  
言われて見れば、最近のマリアの態度がおかしかった気がする。  
それもマリアが自分を好きだったからか…。  
フェイトは、クリフに言われてみて、初めてマリアの気持ちを知った。  
「どうして知ったかは知らないが、  
 あいつはお前が自分以外の女と付き合っていることを知った。  
 今のあいつには、絶望しかねえ!  
 いつ死んじまっても、おかしくねえんだ!!」  
「!!」  
クリフの衝撃的な一言にフェイトが目を丸くする。  
「マリアが…死ぬ…?」  
「そ、そんな…」  
驚いたのはフェイトだけではないようだ。  
他のみんなも、クリフの言葉を聞いて、愕然としていた。  
「………」  
全てを語ったクリフは、拳をぎゅっと握り、門の方に振り返った。  
「クリフ?」  
「…俺はマリアを助けに行く」  
それだけ言うと、クリフは走り去って行った。  
「そうか…私たち、マリアのこと、全然わかってあげなかったね…」  
「うん…。みんな、みんな…私のせいなんだ…」  
フェイトを奪い、そして、マリアが一人戦場に取り残される原因を作ったソフィアが、  
たまらなく、顔を手で隠しながら泣き出した。  
「ソフィアが悪いんじゃない…みんな僕がいけないんだ…」  
フェイトは、自分のふがいなさを呪い、地面に拳を叩き付けた。  
 
「しかし、俺も馬鹿だな…」  
壁に打ち付けた拳から血が流れる。  
「あいつは悪くねえよ…だれを好きになろうが、それはアイツの勝手だからな…」  
クリフの肩が震える。  
「馬鹿だな…俺にはあいつの代わりはできねえから…つい、  
 あいつに押し付けるように しちまったな…」  
クリフはそのまま、床に膝をついた。  
ぽたぽたと、クリフのズボンに水滴が落ちてきた。  
そのとき、赤いランプが消えた。  
「クリフさん…」  
ドアが開き、白衣を着た女性が現れる。  
その声を聞き、クリフはゆっくり立ち上がった。  
「終わったみてえでな…」  
「ええ・・・」  
しかし、女性の顔は暗かった。  
「どうした?…まさか!!」  
「いいえ…命は取り留めたわ。怪我も、ここで少し安静にすれば、直るでしょう…」  
「なら…どうして?」  
「心よ」  
「心?」  
女性は黙ってうなずく。  
「そう、今のリーダーには生きようという気持ちがないの。  
 だれかが、彼女を支えてあげないと駄目でしょうね…」  
「そう…か…」  
クリフがうつむいた。やはり、マリアは絶望に取り付かれていたのだ。  
「わかった…あとは、俺とミラージュがどうにかするよ…」  
「お願いします…。とりあえず、リーダーを部屋に運びます」  
「ああ…」 
 
マリアの部屋の前でクリフは腕組をしていた。  
部屋の中では、ミラージュが看病に当たっている。  
本来ならば、自分がマリアの力になってあげたかったが、  
不器用な自分ではかえって傷ついてしまうと思い、同じ女同士ということで、  
彼女に自分の代わりを任せた。  
「…」  
一人で立つには、寂しすぎる廊下。  
たまにドタバタとした喧騒が聞こえてくるが、  
それがなくなると、自分が取り残されたようで、なんともいえない嫌悪感を抱いてしまう。  
プシュー…  
ドアが開き、ミラージュが出てきた。  
「ミラージュ、どうだった?」  
クリフは、彼女のほうに歩み寄るが、当の本人はクリフの姿を見ると、  
悲しげな表情を浮かべ、うつむいてしまった。  
「…やはり、状態はあんまり良くねえんだな?」  
ミラージュが黙って頷いた。  
「そうか…」  
クリフもそのままうつむいてしまう。  
「すみません…。私でも今のマリアの心のケアは難しいと思います。  
 なにせ、ショックになる出来事が多すぎました」  
「そうだな…」  
二人は何も言えなくなり、黙り込んでしまった。  
マリアの生まれながらの不幸、決して自分達にはわからないであろう彼女の悲しみと苦しみ。  
どうすれば、それを拭い去ってあげればよいのだろうか?  
 
「やはり、フェイトさんじゃなきゃ駄目ですかね?」  
ミラージュがぽつりとつぶやく。  
いささか廊下が静か過ぎた。クリフの耳に、彼女の言葉が全て入ってしまった。  
クリフの体の芯が熱くなる。  
俺は駄目で、あいつならいいのか――――!!  
目を見開かせ、マリアの部屋へと歩いていくクリフ。  
「クリフ?」  
彼の様子がおかしいと感じたミラージュが、彼の肩をつかむ。  
「離してくれ…俺がやってみる」  
振り返らなかったが、クリフの言葉には怒りや焦りが感じられた。  
「クリフ!ひょっとして、さっきの私の言葉を気にして―――!!」  
「違う!!……違うんだが、俺だってあいつが…心配なんだ」  
終わり際の彼の悲しそうな口調。  
ミラージュも一人の女。彼のその口調から、彼の心がわかってしまった。  
「そう…ですね。私が止めることもないですよね?」  
「ミラージュ?」  
クリフがミラージュのほうを振り返る。  
彼女はいつもと変わらない笑顔に見えたが、  
どこどなく、その笑顔が無理をしているようにも見えた。  
「気にしないでください。…マリアを…お願いします」  
ミラージュはそれだけ言うと、クルッと体の向きを変え、廊下を歩き出した。  
いつもとかわらない、美しい歩き方で歩くミラージュ。  
しかし、その後姿が寂しく見え、クリフもまた、ミラージュの気持ちを知ってしまった。  
「すまねえな、ミラージュ…」  
彼女の思いに応えることはできない。  
そして、寂しげな彼女を抱きしめることもできない。  
自分はマリアを愛しているから…。  
 
シュー…  
センサーが反応して、機械仕掛けのドアが開いた。  
マリアの部屋の電気が外に漏れ出してくる。  
「マリア、入るぞ」  
クリフが彼女の部屋に足を踏み入れた。  
しかし、ベッドに横たわっていたマリアは自分に背中を向けたまま、何も答えなかった。  
「マリア?」  
「…何の用?」  
マリアの言葉が胸を突き刺す。  
今の彼女の言葉は、明らかに自分を突き放すものであった。  
「おいおい、そんなこと言うなよ。お前と俺の仲じゃないか」  
なんとか笑顔を保ちながら、クリフはさらに足を進める。  
「入ってこないで!!」  
より強い拒絶の声。  
クリフの足が止まってしまう。  
「…お願い。今は一人になりたいの」  
マリアの肩が震えている。  
いつもの強気な彼女はなく、隠れていた弱い部分をクリフに露にしているマリア。  
クリフの胸が締め付けられた。  
そして、もはや彼の心は限界に来た。  
ツカツカツカ…  
「来ないでって言ってるでしょ!!」  
マリアが初めて顔を彼に見せた。  
 
「マリア…泣いていたのか?」  
「え…?」  
マリアの目は赤くなっており、涙の通った跡がはっきりとわかった。  
「あれ?なんで…私は…泣いてなんか…」  
自分が泣いていたことを信じられないようで、涙を手で拭うマリア。  
しかし、拭っても拭っても、涙はとどまることは知らなかった。  
「マリア…寂しかったんだな…」  
マリアの体がびくっとなる。  
心を見透かされた。弱い自分を見られた。  
「そんなこと…お願い…出てって…」  
隠したかった自分の姿を見られ、手で顔を隠すマリア。  
しかし、その手をクリフが掴み、どけてしまう。  
マリアの視界に、自分を哀れむような表情をしているクリフの顔が映る。  
「マリア…」  
「同情なんていらないわ…」  
なぜだか彼の視線が痛い。  
マリアはその視線から逃れるように、顔を背けた。  
「同情なんかじゃねえ。俺は…お前が好きなんだ…」  
クリフが自分の思いを告白し、彼女の顔を自分の方に向けさせる。  
「今なんて…」  
マリアが信じられないような表情をしたが、  
クリフはそんなマリアの顔を自分の胸に抱き寄せた。  
「あ…」  
彼の鍛えられたごつごつとした胸板が妙に心地いい…。  
彼とこうしていると、なんだか心が安らいでいくような気がした。  
 
「マリア…すまねえ…お前を愛するあまり、俺は…」  
クリフの目から一筋の涙が落ちた。  
「クリフ…」  
マリアはようやく理解した。  
自分を想いつづけていた彼が、今の自分の様子を知って、  
どれだけ心配して、こういった行為に及んだかを。  
「マリア、好きだ!!」  
涙を流しながら、彼の唇がマリアの唇と重なる。  
「クリフ…」  
マリアはそれに抵抗することもなく、目をつむり、初めてのキスを味わった。  
初めてのキスは、夢に描いていたレモンの味よりも少ししょっぱかった。  
そして、どちらかがいうこともなく、お互いがさらに相手を求めて、  
口の中に舌を滑り込ませる。  
「ん…んんあ…クリフ…」  
彼の頭を抱き寄せながら、舌の付け根まで彼の舌と絡ませる。  
お互いが舌を吸い上げると、唾液のいやらしい音が耳に入り込んだ。  
「マリア…」  
クリフはそのままマリアをベッドに押し倒す。  
もう、自分を抑えることが出来ない。  
寂しさに身を滅ぼしてしまいそうな愛しい人(マリア)を、  
すみずみまで愛してやりたくなった。  
それはマリアも同じであった。  
彼の優しさを受けていくうちに、心のわだかまりが解け、  
そして、心の中に新しい感情が芽生え始め、  
彼を受け入れようとした。 
 
マリアとクリフが見つめあう。マリアの視界には、  
美少年であるフェイトとはまたちがった、がっしりとした男の顔があった。  
(やだ…クリフってこんなに男らしいんだ…)  
マリアが顔を赤くする。  
「お? この俺に惚れちまったか?」  
マリアのその様子を見て、クリフが意地悪く笑う。  
「な…!!そんなわけ…ないでしょう!!」  
マリアがさっきこの男の魅力に惹かれたことを否定するように、彼に怒鳴る。  
しかし、否定したくても、胸の鼓動は収まらず、自然と視線が逸れてしまう。  
「まったく…気が強いな。でも、俺はお前のそういうところが好きだぜ」  
クリフはそう言うと、優しくマリアの首にキスをする。  
「あ、あれ?なんで…どうしてこんなに気持ちいいの?」  
普段の、あの筋肉馬鹿とのクリフからは思いもよらない行動に、  
マリアは動揺してしまった。  
そんなマリアの頬をクリフの無骨な手が優しく撫でた。  
「落ち着けよ…。俺がこんなことして驚いているのかよ?」  
「だって…」  
「久しぶりだろ?こうして人の暖かみに触れるのは。気持ちいいんだろ?」  
クリフの言葉に応えず、マリアはますます顔を赤くしてしまう。  
やはり、なんだかんだ言っても、年頃の女性だな、  
クリフはマリアの態度がかわいらしく思い、微かに笑うと、  
マリアの服を一枚ずつ、ゆっくりと脱がしていく。  
「あ…やだ…」  
徐々に肌に外気が触れてくる。  
その感触がなぜかとても気持ちよく感じ、体が火照ってくるのをマリアは感じた。  
やがて、マリアは白の下着姿になった。  
「お前って…綺麗だな…」  
マリアのスタイルに思わずクリフがため息を漏らす。  
マリアのくびれたウェスト。すらりとした白い脚。  
胸はやはりやや控えめな印象だったが、逆にそれがスタイルのよさを強調している。  
 
「馬鹿…あまり見ないで…」  
クリフの視線から逃れようと、手で見られると恥ずかしい場所を隠すマリア。  
「おいおい…もっと見せてくれよ…」  
クリフが耳にキスをし、そのまま這うように唇を首筋まで走らす。  
「あん…」  
ぞくぞくっとした、感触がマリアの身体を駆け巡り、  
思わずマリアは甘い悲鳴をこぼした。  
「感じているのか?」  
「ああ…そんなこと…言わないで…」  
この身体の火照りを否定できず、マリアが弱弱しい声を出す。  
マリアはこれから彼と性行為することは、そういう年頃でもあり、理解はしていた。  
しかし、初めてということで緊張しており、全身の神経が敏感になっていた。  
「これも脱がすぜ」  
さきほどのキスがよほど効いたのか、マリアの隠そうとする力は弱まっており、  
クリフは彼女の手を難なくどかし、ブラジャーをそのまま上にずらした。  
徐々に露になるマリアの胸。  
まだ穢れを知らない彼女のピンク色の乳首がなんとそそるものだろうか。  
「マリア…お前の胸は綺麗すぎる…」  
クリフは大きな手で、彼女の小さな胸を、まるで壊れ物を扱うかのように、  
ゆっくりと、丁寧に揉み始めた。  
「やぁん…だめぇ…」  
マリアが身体をくねらせる。  
容姿に似合わず、なんと優しく手つきなのだろうか。  
クリフの指がじぶんの乳首を触る瞬間が、、  
彼の手が自分の胸を味わうかのように揉む瞬間が、  
なんともいえずに気持ちいい。  
あまり自慰行為もしないマリアは、自分以外の人間に胸を愛撫されるのは、  
恥ずかしい反面、未知の快感が自分の身体を駆け巡るので、それの虜になりそうだった。  
 
「はぁ…クリフ…気持ちいい…」  
マリアの目は潤み、その表情はクリフにさらなる性欲を生み出させる。  
クリフは彼女の片方の胸の先端を口に含み、もう片方の手をショーツに滑り込ませた。  
マリアの陰毛は濡れており、さらさらとはしておらず、  
手にまとわりつくようにべっとりとしていた。  
「よかった…感じてるみてえだな」  
クリフは一旦、彼女のショーツから手を引き抜くと、その手を見た。  
指には、汗とは明らかに違う、生暖かい液体がまとわりついており、  
部屋の明かりを受けて、怪しく光っていた。  
「か、感じてるだなんて…」  
自分がいやらしい女に思え、マリアが顔をすくめる。  
「クリフ…あまりいじめないで…」  
上目遣いでクリフを見やるマリア。  
その表情はとてつもなくかわいらしく、クリフはますますマリアが欲しくなった。  
「そんな顔されると、ますますいじめたくなるぜ…」  
クリフは少し意地悪く笑うと、ショーツに手をかけ、それをマリアの足から脱ぎ去った。  
「きゃ!!」  
マリアは慌てて、自分のアソコを両手で隠す。  
自分のもっとも恥ずかしい場所であるととともに、  
クリフの愛撫を受けて、濡れているアソコは見せたくなかった。  
「馬鹿…それじゃ、お前のきれいなアソコが見れねえだろ・・・」  
クリフがマリアの手を掴む。  
「う〜…」  
マリアがうなり声をあげるが、大した抵抗も見せずに、そのまま手をどかされた。  
成熟した証として、綺麗に生え揃った青い陰毛がクリフの目に映る。  
そして、先ほど確認したように、そこはマリアの愛液でてかてかしており、  
なんともいえないいやらしさを見出してしまう。  
 
「マリア…舐めさせてもらうぜ」  
彼女の愛液まで愛してやりたい。  
クリフは、顔を彼女の秘所に近づける。  
鼻にマリアの愛液のにおいが飛び込んでくる。  
「いいにおいだ…」  
「や、やめてよ…恥ずかしい…」  
マリアが少し頬を膨らませる。  
「悪い悪い…少しおふざけがすぎたな…」  
子供のようにかわいらしい仕草を見せてくれるマリアがほほえましく思い、  
クリフはマリアの頭を軽く撫でると、彼女の割れ目に舌を挿入した。  
「あ…ひゃん!!」  
舌の生暖かい、湿った感触がマリアの膣内に広がり、  
なんともいえない感覚に、マリアがかわいらしい悲鳴をあげた。  
一方、クリフの口内にも、まだそこに男を出迎えたことがない、  
処女の膣の奥から漏れ出してくる甘いエキスが広がってくる。  
その味をさらに求めて、クリフはかき回すように舌を動かし始めた。  
「いやぁ…だめぇ…そんなにかき回さないで…」  
ちゅぷちゅぷといやらしい水音とともに、自分の膣壁に彼の舌が当たり、  
マリアの呼吸が荒れてくる。  
マリアから漏れる愛液の量は徐々に増え、クリフの口にどんどん注がれていく。  
ごくごく…  
それをわざと喉を鳴らして飲んでいくクリフ。  
「ああ…そんなに音を立てないでぇ…」  
自分が本当に淫乱だとマリアは思ってしまい、思わず両手で顔を隠してしまう。  
しかし、クリフの行為は収まらず、自身に何かが昇ってくるのを感じ、  
マリアの喘ぎ声の出る間隔が短くなっていく。  
「そろそろかな…」  
クリフは舌をマリアのアソコから離すと、自分も服を全て脱ぎさった。  
ここに、クリフとマリアを隠すものはなくなり、二人が生まれたままの姿で対面する。  
 
「クリフ…」  
彼の鍛え抜かれた胸筋が露になる。  
その素晴らしさにマリアは頬を染める。  
視線を少し下にずらすと、そこにはやはり立派な彼の性器が、マリアを求めて膨張していた。  
(すごい…クリフのってこんなに立派なんだ…)  
初めて見る男性器だったが、彼のペニスは肉体と同様、太くて立派だった。  
そのため、それを見ても恥ずかしいという気持ちは起こらず、  
逆に雌の本能から、それに見とれてしまった。  
そして、ある一つの欲望が彼女に生まれた。  
「クリフ」  
「なんだ?」  
「その…クリフの…オチ○チ○をさ、しゃぶっても……いいかな?」  
真っ赤に顔を染めながら、彼におねだりをするマリア。  
クリフもマリアのこのお願いが嬉しく思い、頷くと、彼女の顔の前にそれを突き出した。  
マリアはそれをおそるおそる手に取る。  
彼の心臓の鼓動がわかるように、彼のペニスは脈を打っており、そして熱かった。  
「すごい…硬くて…トクトクと動いてるよ…」  
ペニスをさすりながら一通り眺めると、  
マリアは喉を鳴らし、やや緊張した面持ちで口を開けて、彼のペニスを咥えた。  
「うっ!!」  
今度はクリフに、口の中の生暖かさが伝わる。  
マリアの吐く息が先端の割れ目にかかり、それだけでイキそうになる。  
「ん……」  
マリアが彼の裏側の筋を丹念に舐め上げる。  
「あぁ・・・すげえ気持ちいい…」  
クリフが思わず声を漏らす。  
「ん…きもひいいのね…もっほきもひよふひへあへる…」  
玉袋を口に咥え、ころころと舌で転がし、そして、先端の割れ目に舌を這わせる。  
「やべぇ…こりゃ…本当に気持ちいいわ…」  
「ん…あむ…」  
マリアはそれを聞いて喜び、膨らんだ先端だけを口に含むと、サオを左手でしごき始めた。  
 
「うお…マリア…お前…うますぎるぜ…」  
多少ぎこちないところはあったものの、  
とてもマリアのフェラは初めてとは思えないくらいうまかった。  
というのも、マリアはフェイトのペニスをしゃぶりたいという欲求から、  
密かにそういったサイトや雑誌を見て、研究していたのである。  
残念ながら、フェイトのペニスをしゃぶるという夢は潰えたが、  
他の、自分を想ってくれる男性のペニスをしゃぶれ、マリアは嬉しかった。  
「マリア…そろそろやめてくれ…でないと…」  
限界が近づき、マリアにそれとなく伝えるクリフ。  
「いいよ…そのままはひへ…」  
マリアの手の動きが早くなる。  
「う!!出る!!」  
クリフのペニスから、どろどろとした液体がマリアの口内を汚す。  
「う…!!」  
マリアはその熱さと独特の苦みで、思わず吐き出しそうになったが、  
堪えて、ゆっくりとそれを全部飲み干そうと目をつむり、顔を上に向ける。  
「ん……」  
ごくん…  
マリアの喉がなり、クリフは自分の出した精子がマリアの喉を通るのを確認する。  
そして、その光景を見て、再び彼のモノは復活した。  
「どうだ…その…うまかったか?」  
きつそうに飲んでいたとはいえ、自分の体液がまずかったか?とは聞けず、  
そう尋ねてしまうクリフ。  
「ええ…少し熱くて苦かったけど、あなたの味がしておいしかった…」  
マリアは恥ずかしそうにゆっくり頷いた。  
「そうか…じゃあ、今度はこっちだな…」  
クリフは指をマリアのアソコに割り込ませた。  
「ああん!!……ええ、いいわよ…私も…最後までしたいの……」  
「マリア…」  
クリフはマリアと軽く口付けを交わすと、ペニスをマリアの割れ目にあてがった。  
 
「…行くぞ」  
クリフのペニスがマリアのヴァキナを分け入っていく。  
「んん…あああ!!」  
太いものが徐々に自分の膣内に入っていくのを感じ、マリアが喘ぐ。  
そして、クリフのペニスは少し進んだところで防壁にぶつかった。  
「本当に、いいんだな…」  
「ええ…来て!!」  
マリアが覚悟を決め、目をつむる。  
クリフはそれを確認すると、腰を推し進めた。  
なにかが弾けたような感触がペニス越しから伝わった。  
「あぅうう!!いたぁああああああ!!」  
処女を失ったマリアが痛さのあまり、涙を浮かばせた。  
「痛いだろうな…さすがに…」  
少し後ろめたさを感じ、クリフは腰を動かすことが出来ずに固まってしまう。  
「うぅ…お願い!!動いて…!!」  
彼の動きがないことを悟ったマリアが彼にそう伝える。  
「動いてって…いいのか?」  
「いいの…!!お願い…あなたを感じたいのよ…」  
マリアの目から、痛さとは別のところから来ている涙が零れた。  
それは、マリアが求めていた、自分を支えてくれる人を手放したくないという気持ちであった。  
「…わかった。なるべく痛くしない様に動くからな」  
クリフはそのことを悟ると、ゆっくりと、マリアの膣を痛めないように腰を動かす。  
「うぅ…あぅ…あはぅ…」  
本当にゆっくりとした動きであったが、  
それでも感じるらしく、痛みでうなり声をあげるマリアから、喘ぎ声も漏れ出している。  
そして、クリフが腰を引くたびに、逃すまいと、クリフのペニスをマリアの膣内が締めてきた。  
「マリア…すごく締まって…気持ちいいぜ…」  
気をぬくと、本当にすぐにイッてしまいそうなほど、マリアの膣内は気持ちよかった。  
「ああ…くぅ…よかったわ…あん…」  
マリアがほっとしたように、彼に精一杯の笑顔を見せた。  
(馬鹿野郎…無茶しやがって…)  
マリアの気持ちがうれしくなり、クリフは腰を少しずつ速めていった。  
 
「う…くふぅ……」  
やはりまだ慣れていないのか、苦しそうに彼からの刺激を、唇をかみ締めて耐えるマリア。  
しかし、ここでやめても彼女の思いを無駄にすると考え、クリフはそれに構わず、  
マリアの膣内を味わうように腰を動かし続ける。  
「はぁ…はぁ…あうぅう……」  
マリアは本当に辛そうである。  
徐々に強くなる痛みに、目を開けることも叶わず、  
しかし、それでも彼のために必死に堪えている。  
「マリア…もうすぐ…終わるからな…」  
あまり長くやっては、マリアの身体が持たないと判断し、  
クリフは終焉に向けて、腰を激しく動かした。  
「あぐぅ!!くぅううう!!」  
さらなる痛みが身体を駆け巡り、もはやマリアは痛みしか感じられなかった。  
「マリア…頑張れ…あと少しだ…」  
ペニスに再び精子が昇ってくるのを感じ、クリフはマリアをそう励ます。  
「うん…わかった……つぅううう!!」  
そして、何度か彼の腰が反復運動を行うと、  
「マリア…出すぜ!!」  
クリフは根元までペニスを差込み、昇ってきたものをマリアの膣内に注ぎ込んだ。  
「うくっ!?はぁぁぁ〜…」  
子宮に彼から出されたものが昇ってくるのを感じ、それが気持ちよく感じ、  
マリアはため息を漏らした。  
 
「…本当にこれでよかったんだな」  
勢いとはいえ、マリアを抱いてしまったことをクリフは後悔した。  
自分はマリアの好きな男じゃないと思っているからである。  
しかし、マリアはその言葉に首を横に振った。  
「そんなことないわ…。いやなら、はじめからセックスしたいとは思わなかったし」  
「そうか…それならいいんだ…」  
クリフはこれでよかったのか?と心の中で疑念を抱きながらも、  
とりあえずよしとしようとした。  
「…それに今は私の好きな人はあなたなのよ」  
マリアが小さくつぶやいた。  
「え?今なんて?」  
マリアの顔が赤くなる。  
「何度も言わせないでよ!私はあなたが今は好きなの!他の誰でもない、  
 クリフ・フィッターを愛しているのよ!!」  
マリアは恥ずかしさを隠すように、そう叫ぶと、顔をうつむかせてしまった。  
(マリアが…俺を?)  
クリフは自分の頬をつねった。  
痛い。  
「ほ、本当に俺なんかでいいんだな?」  
「ば、馬鹿!!私には…あなたしかいないのよ…」  
クリフが笑顔になる。  
「マリア!!」  
そのまま、マリアを自分の胸に抱き寄せた。  
「ちょ、ちょっとクリフ!!…でも、気持ちいいからいいわ…」  
マリアはそのまま彼の胸の中で目を閉じた。  
そして一つのことを思い出した。  
 
「…そういえば、あのときもあなたの胸の中に抱かれてたわね」  
「うん?」  
「ほら…私があなたの部屋に押しかけて、『抱いて』って言った時よ」  
クリフの頭の中に、あのときの光景が蘇る。  
「あのとき、なんでその…セックスしなかったの?」  
あのときのマリアの目は死んでおり、抱けと言われても、  
とてもそういう気持ちになれなかったことを思い出す。  
「馬鹿だな…俺はな、少しやけになってそういうことをいった女を抱くことはしないんだ。  
 なにせ、俺は紳士だからな」  
『紳士』という、彼とはもっとも離れている言葉を聞き、マリアが思わず噴出した。  
「お、おい……ったく、ひでえな」  
「ごめんなさい…でも、嬉しかった。あのときのメッセージ、見てくれた?」  
「ああ、これだろ?」  
クリフがポケットからよれよれになっている一枚の紙切れを取り出す。  
 
「ちょっと、汗でこうなっちまったが、まだ書いてあるのは読めるぜ」  
「じゃあ、今読んでくれるかしら?」  
「おいおい、お前が書いた文だろ?俺が読んでどうする」  
「お願い…あなたに読んで欲しいのよ…」  
「ったく、しょうがないな…」  
クリフは苦笑し、肩をすくめると、その紙を広げた。  
「『今日はありがとう。おかげで少し気分が安らげました。でも、私は必要とされない女。  
 命を落としても誰も悲しまないでしょうね。でも、今日のあなたの胸は暖かくてよかった』」  
「まったく、何を書いたのかしらね」  
「おいおい、何度もいうようだが、お前が書いたんだろう?」  
クリフの言葉に、マリアは首を横に振る。  
「違うわ…私は必要とされない人間じゃなかった…。  
 あなたが私を想ってくれてうれしかったわ…。  
 そして、私も、そんなあなたがそばにいてほしくなったの…」  
マリアの目から涙が零れた。  
「好きよクリフ…これからも私を支えてくれる?」  
「ああ…そんな当たり前のこと聞くなよ」  
クリフはぎゅっとマリアを抱きしめた。  
そのまま、二人はしばらくお互いの体温を味わった。  
 
「ついに、ルシファーのところに行くんだね」  
カナンから戻り、セフィラを入手したフェイト達は、シランドの街の出口へと向かっていた。  
「ああ。私もいまだに信じられないよ。まさか、こんな戦いに巻き込まれるとはね」  
ネルが腕組をする。  
たしかに、エリクールで暮らしていたネルが、バンテーンやそれ以降の戦いに  
巻き込まれる筋合いはなかった。  
「すみません。ネルさんには迷惑をかけます」  
フェイトがネルに頭を下げたが、そんな彼の肩をネルはたたいた。  
「謝罪なんていらないさ。むしろ、あたしは感謝してるんだよ。  
 あんたに出会わなかったら、何も知らずに、あの『エクスキューショナー』とやらに  
 殺されていたかもしれないからね。」  
フェイトが顔をあげると、ネルは笑顔で頷く。  
「それじゃあ行きましょう」  
3人は再び歩み始めた。  
「うん?フェイト、あれもしかして…?」  
城門の前に見慣れた影が二つ見える。  
「ああ、もしかして…!!」  
フェイトがいてもたってもいられず、その影に走っていく。  
後の二人もそれに続いた。  
「よお!!」  
大きい影がそんな彼を見て、声をかけた。  
「クリフ!!」  
「心配かけたわね」  
その隣にたっている青髪の美少女も彼に声をかけた。  
「マリア!!もう大丈夫なんだね!!」  
彼の笑顔はやはりまぶしかったが、マリアは首を横に振る。  
そして、今の自分の支えとなってくれる人物と腕を組んだ。  
「あれ?もしかして―――」  
 
「はぁはぁ…フェイト早すぎだよ…」  
「本当、隠密の私が置いてかれるなんてね…」  
ようやく後の二人が息を切らせながら追いつく。  
「二人とも、心配かけたわね」  
なつかしい、燐とした声に二人が顔をあげる。  
「マリア!!」  
「マリアさん!!」  
嬉しそうに声をあげる二人。  
自分の恋敵であった、ソフィアも自分の回復を喜んでいてくれる。  
やはり仲間はいい。マリアは改めてそう思った。  
「あれ?もしかして二人は?」  
ソフィアは、マリアとクリフが腕を組んでいることに気づいた。  
マリアはクリフと顔を見合わせると、  
「ええ…今回のことがきっかけで…私たち…付き合うことにしたの」  
少し照れながら言うマリア。  
クリフもやはりはずかしいのか、人差し指で顔を掻いている。  
「そうなんだ、おめでとう!!」  
「ああ、私からも祝福させてくれ」  
「ありがとう…二人とも」  
マリアはクリフから腕を離し、二人の手を握った。  
「マリア、その……」  
「フェイト?」  
マリアの気持ちを知ってしまったフェイトは、彼女に何を言っていいのかわからなかったが、  
深呼吸すると、  
「おめでとう」  
と彼らを祝福した。  
「ありがとう…フェイト」  
マリアが彼に明るい笑顔を見せる。  
それは彼女の中で、ようやく彼への想いが吹っ切れたことを表していた。  
 
「よし!それじゃ、セフィラも手にはいったみてえだし、行くんだろ?  
 ルシファーを倒しに?」  
「まあ、話し合うのが先だけど、行こう!  
 これ以上僕たちの世界を破壊されないうちに!!」  
フェイトの言葉に一同が頷く。  
「よし!出発!!!」  
城門を出て行く一行。  
 
イリスの野を歩いてる途中、マリアは空を仰ぐ。  
明るい日差しを放つ太陽が目に眩しい。  
「どうした、マリア?」  
クリフが彼女に話しかけた。  
マリアはクリフの腕にしがみついた。  
「ううん…なんでもないわ…」  
「そうか…なんか心配事があったら、なんでも言えよ」  
「ありがとう」  
 
久しぶりに太陽がまぶしいと感じた気がする。  
こんな些細な事に気づかなかったなんて、私はかなり悩んでいたのだろう。  
でも、もういいのだ。  
私には、クリフが、自分を想い、支えてくれる人がいるから…。  
神よ、いるのであれば、私たちに輝ける未来をください。  
愛しい人と一緒に暮らせる未来をください。  
それが、今の私の一番のわがままです。  
 
                       〜終〜 

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