寝返りを打とうとして手が動かせない事にきづき、レイオットは目が醒めた。他にも色々と違和感があるようだ。  
 「――――」  
 瞼を開けて身動きのとれない状況を確認して、溜息をついた。  
 こんな状態になるまで気がつかなかったのはきっと、ここ暫くの夜間出動のせいだろう。  
 そして何故だか、所定の位置に居る筈のカペルは、今、自分のすぐ近くにいる。  
 自分の目の前で展開されている光景を不思議な気分で眺めながらレイオットは赤い髪の少女に話し掛けた。  
 「何故こういう事になっているのだろう」  
 「どうやら魔族が発生したようなのですが」  
 「それが、どうやったらコレに繋がるのかな?」  
 「私はどうやら、その魔族が発動させた魔法に影響を受けているようです」  
 言いながらも、カペルの口調は淡々としていた。その手はリズミカルに上下しているというのに。そのギャップが何やら笑いを誘う。  
 「あーー。そうなんだ…」  
 レイオットは、その魔法がどういう類のものか察して苦笑した。  
 どうやら、特定の個人に向けてではなく、手当たり次第に魔法を撃っているのだろう。その辺はさすが魔族だ。  
 だから、カペルは影響を受けたのかもしれない。  
 
 件の魔族とおぼしき物が活発に動いているらしい。かなり離れた場所から魔法特有の爆発音が聞こえる。音からして、戦術魔法士が投入されたようだ。この騒ぎもやがて収まるだろう。  
 
 取りあえず、こっちにとばっちりが来なければいいな。この状況はかなり情けないし。  
 
 そんな事をぼんやりと、頭の隅で考える。  
 カペルの頭が下がってきて、暖かなものに自分が包まれた。  
 そのての知識を、いつ何処から仕入れてくるのか解らないが、思ったより器用に彼女の頭が動く。刺激を受け続けたそれは、比較的冷静な意識とは裏腹にその先にあるものを目指して猛っていた。  
 
 (なかなかシュールだな)  
 年端もいかない子供に縛り上げられて、己を弄ばれている様が滑稽だ。  
 自分としては、どせなら妙齢のおねーさんにアレコレいたして欲しい所だが、ここには残念ながら彼女しかいない。まあ、それなりに気持ち良かったりするので、これはこれでいいか。  
 (この魔法の効果時間って、どのくらいだったっけ…)  
 やくたいも無い事をだらだらと考えながら、レイオットは、腰から這い上がってくる感覚に身を委ねていった。  
 
  end  
 

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