#15[可愛い?]レイ+ネリ  
 
 ネリンが、ぶつぶつと仕事の愚痴を垂れ流しつつ、車庫までレイオットについて行った時の事だった。  
 
 不意に、レイオットはネリンの方に向き直り、わざとらしく背中を覗き込む。  
 「何ですか? スタインバーグさん」  
 「背中にゼンマイでもついていそうだなー。お前さん」  
 「しっ失礼なっ!!」  
 やおら、酷い事を言い出した青年に、監督官は肩を怒らせた。  
 そんな事言ったって、自分より頭一つ分は小さくてコンパクトな彼女が、持ち前の勤勉さでちょこまかと動き回るのだ。  
 
 (おもちゃみたいだな)  
 
 何だか面白い。  
 
 視界の中に彼女を映し続けるレイオットは、つい思ってしまう。  
 濃紺の制服の後ろを、ちょっと確認したくなっても仕方のない事だ。  
 「私を何だと思ってるんですか、あなたはっ」  
 「労務省魔法管理局トリスタン支部所属二級魔法監督官、ネリン・シモンズ女史」  
 膨れっ面で睨みつけてくる彼女に、馬鹿正直な返答を口にする青年。  
 「…………」  
 「…………」  
 睨み合う事しばし。  
 そして聞こえる、心底呆れましたと言わんばかりの溜息。  
 「いいですよ、全くもう。馬鹿にして……」  
 「馬鹿にしてるつもりはないんだが」  
 レイオットは、サングラスを指先で押し上げると苦笑した。  
 「可愛いと思ってるんだけど」  
 ネリンは一瞬固まったが、すぐにむっとして言い返す。  
 「ど――せ私は、ちびっこの童顔ですよっ!!」  
 青年の本心は物の見事に歪曲されて伝わっていた。  
 
 (ま、こんなもんか)  
 当然といえば当然の結果である。  
 
END 06/08/29  
 

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