「ここから先は自分でやってみな、監督官」
「え? で……でも」
「大丈夫だって。ほら、ここを押さえて」
「や、こ、怖いですよ、なんだか……」
「教えたとおりにやれば平気だよ。大丈夫、ゆっくりやればいいから」
「は、……はい……」
「ん、んん。こ、こんな感じ、ですか?」
「そうだなー、そんなに力を入れなくても大丈夫だよ。そう、……そんな感じで。
なかなか上手いよ、監督官」
「そうですか? うん……えーと……」
「次は、ここに一度奥まで入れて、……ぐるっと回して」
「は、はい。…………駄目、できませんよ。何だか固くて」
「大丈夫、そのまま最後まで入れるんだ。あともう少し」
「ほんとに? 奥まで届いてます?」
「本当だって。こうすると、当たってるのが分るだろ? 大丈夫だから続けて」
「は、はい……」
「なんかさぁ……」
キッチンに立つレイオットとネリン、二人の後ろ姿を見ながらジャックが呟いた。
「会話だけ聞いてると、ナニやってんだって感じで、ドキドキするねぇ」
向かいのソファーに座っているフィリシスが呆れて笑う。
「ジャックも相変わらずだね、そういう所は」
カペルテータが、紅茶のお代わりを煎れながら質問した。
「鳥をさばいているだけなのに、どの辺がドキドキするのか判りません」
「カペちゃんには、ちょっと分んないかー」
「分ったら、それはそれで問題があるんじゃないの?」
二人は意味ありげに笑う。
どうやら大人の世界の事らしい。
後でレイオットに聞いてみようと思うカペルだった。