「ふふふふふ……」  
 ロミリオは眼前にあるソレにうっとりと目を細めた。  
 華奢で、脆く、いかにも貧弱でありながら、内側から光を放っているかのようなその艶やかさ。微かな刺激にうち震える柔らかな輪郭。  
 彼は静かに目を閉じると、ソレの周囲に漂う芳醇な香りを愉しんだ。  
 ほのかな甘い香り。適度に抑えられ、控えめで上品。貴婦人のような清楚な雰囲気の奥に、娼婦のような淫靡さを隠していた。  
「素晴らしい」  
 呟いた青年の口元がほころぶ。  
 これからソレに手を付ける事を想像し、欲望を募らせる。  
「君の全てを僕に見せておくれ。本当の姿を、あられも無い淫らな姿を晒け出すんだ」  
 青年はちらりと自分の唇を舐めた。瞳に妖しい光が浮かぶ。  
「さあ、僕を感じさせておくれ」  
 青年は嬉々として、目の前にあるソレに手を伸ばした。  
 
 
 
 
「ああ、いつ食しても素晴らしいですね。このプリンは」  
 ロミリオは、高級家具の置かれた私室で一人、恍惚とした表情でそう呟いた。  
 
END 06/10/15   

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