2ch投下版 レイ×ネリ  
[密室は情熱の部屋] (タイトル苦し紛れ)  
 
 労務省魔法管理局トリスタン支部。その一角。  
 ネリンはレイオットと地下の食堂で、いつものように仕事の打ち合わせをしていた。ついでに他の予定の調整をして数日の休みを取り付け、さあ帰ろうという時だった。  
 「何だ、珍しいな。今日はもう上がりなのか」  
 「ええ、ここ暫く休みが無かったし。スケジュールも何とか調整できましたから」  
 「後は帰るだけ、か……。送っていこうか?」   
 「え? あーでも……」  
 ネリンはちらりと、普段は埋まっている彼の隣の席を見つめた。  
 今日は、待機期間に突入して暇を持て余しているフィリシスが、カペルテータを連れてショッピングに出かけている。  
 事前に約束を取り付けていたらしく、店の開店時間に合わせて早めにおちあい、そのままカペルはフィリシスに連れていかれた。  
 「カペルなら、今日は一日中フィリシスに引きずり回されるだろうさ。特に心配はいらんだろう」  
 肩を竦め、レイオットは軽く受け流す。  
 ネリンの心配は、実はその事ではなかった。  
 車庫での一件以降、何度か肌を合わせたのだが、時間が経つにつれ次第にこの青年と二人になるのが怖くなっていた。彼に溺れそうで怖いのだ。  
 だから、会う時は人の多いこの場所で会っているし、スタインバーグ邸に行った方が近い場合でも、かたくなに拒んでいる。  
 当然、これまでのように気軽に泊ったりせず、どれほど遅くなろうが必ず家に帰った。  
 あからさまではあったが、二人きりにならない、という事を除けばネリンは至って何時も通りに振舞っている。  
 レイオットもそれについては何も言わず、これまた何時も通りのぐうたら振りを発揮していた。  
 「この時間なら、まだ、バスも電車も混んでるんじゃないか?」  
 そう言って腕時計を覗きこむ。  
 10時17分。  
 朝の通勤ラッシュはとっくに終わっているが、買い物などの個人的な用事をこなす人々で、少し混んでいる時間帯だ。  
 「うー……」  
 「これから帰るってんなら、無駄に体力すり減らす事も無いだろう」  
 「じ、じゃぁ……。お願いします……」  
 家に帰るだけなら大丈夫だろうか。時間的に人の気配も有るし問題は無いだろう。そう考えて、ネリンはしぶしぶとだが承知した。  
 「荷物を取って来るので、ここで少し待っていて下さい」  
 「了解。監督官殿」  
 青年は、いつものようにわざとらしくおどけて見せた。  
 
   ****   ****   ****   ****   ****  
 
 カチャ……。  
 
 普段あまり聞かない音を耳にして、机の前のネリンは振り向いた。  
 「!」  
 「へー、以外ときちんとしてるんだな。仕事部屋っていうと、もっとこう……雑然としたイメージがあるんだが」  
 「スタインバーグさん!!」  
 レイオットがドアを背にして立っていた。時間差で後をつけて来て人の目が外れた隙に入り込んだのだろう。  
 彼は物珍しそうに室内を見回していた。  
 「もう、こっちのフロアは関係者以外の立ち入りは禁止なんですよ、すぐに出て下さいっ!」  
 ネリンが、抗議の声を上げた。  
 「んー、まあそうなんだけどな、ちょっと興味が」  
 あちらこちらと視線を動かして周囲を見物しながら、彼はゆっくりと部屋の中央に向かって歩きだした。警戒している割に、こうも簡単に隙を見せる監督官の甘さに、青年は内心で苦笑する。  
 「駄目ですよっ! 下で待っていてくださいって……」  
 ネリンはふと気が付いた。  
 
 二人きりだ。  
 
 ずっと避けていた空間が目の前にある。こんなにもたやすく、その状況は訪れた。  
 
 
 「どうかしたのか? 監督官」  
 
 
 ふわりと、レイオットが笑みを浮かべる。  
 いつもと同じように。  
 
 机の前で荷物をまとめていたネリンは、おもむろにその場から離れ始めた。視線を逸らす事も無く背中を見せないように、机づたいに後ずさっていく。  
 青年の右手が伸びた。  
 「!!」  
 しかし、彼女に触れずにすり抜け、壁に届いた所で止まる。  
 同時にネリンは追い詰められていた。壁に張り付くように背中を預け、自分のすぐ右側には書類棚が据えられている。左側にはレイオットの右腕。完全に囲まれていた。  
 青年はさらに距離を詰める。壁に肘までつけてしまうと、殆ど二人の身体は密着する。左手で彼女の襟もとに掛っている髪をよけると、覗いた首筋に柔かく接吻けた。  
 その感触にネリンは震える。静かに首筋を遡るレイオットの唇に、けれどストップをかける。  
 「だ、駄目です。仕事場ですよここは」  
 「じゃぁ、何処ならいい?」  
 「場所の問題じゃありません。何処だろうと、駄目な物は駄目です」  
 強い口調でネリンが呟いた。だれが耳にするとも解らない職場で、声を荒げる訳にはいかない。  
 「つれないなー」  
 とぼけた口調で呟くレイオットの吐息が、ネリンの耳をくすぐる。  
 
 「ただ求めるだけなら、他の方となさって下さい」   
 「俺が他の女を抱いてもアンタは平気なんだ?」  
 「ご、ご自由に。別に……恋人とかじゃ、無いんですから……」  
 事実、受け入れたのは確かだが好きだと言われた訳ではないし、本格的に付き合おうと提案された訳でもない。恋人といった意識も無いのだ。気にならないと言ったら嘘になるが、そんな事をはっきりと言われても困る。  
 戸惑うネリンを見ながら、レイオットは含み笑いと共に言葉を重ねた。  
 「他の女を抱いていても、考えるのはアンタの事だよ。ネリン・シモンズ。アンタの事を考えながら、他の女の中でイク」  
 「…………」  
 「俺が、他の女を抱いても、アンタは平気なんだな?」  
再び繰り返した。  
 「……っ……どうして、そんな事言うんです? ……そんな……酷い」  
 青年のあまりな言い様に言葉がつまったネリンは、何かを堪えるように俯き、羞恥に身体を震わせる。  
 「他の女じゃ駄目なんだよ。他の女で満足なんて出来ない。俺はアンタがいいのさ」  
 レイオットの声は何処までも普段と同じで、微塵も甘いところが無い。  
 もう一度彼女の肌に唇を這わせ、壁についていた手を降ろすと制服のボタンを外していく。すべて外し終わると手を潜り込ませ、ブラウスの上から彼女の身体を撫で回した。  
 「アンタは? 俺じゃ駄目か? 他の男の方がいい?」  
 首筋、耳元、顎先、頬、額。何度もネリンの肌に唇で触れ、舌先でなぞる。その度にネリンの身体が揺れた。  
 「……ほ、他の人って……」  
 そんなの考えた事が無い。  
 「抱きたい」  
 青年が腕を回して彼女の腰を引き寄せる。  
 「駄目です。職場ですよ、ここは」  
 「アンタを家まで送り届けて、そこで続きをやってもかまわないが?」  
 「……っ!」  
 「今まで以上のいやらしい声を、何度でも上げさせてやる。手加減はしない。仕事が休みなら必要無いだろ?  
 俺の下ではしたなく乱れる様を存分に愉しませてくれ、監督官殿」  
 レイオットは、わざとらしく下品この上ない発言をする。  
 「…………」  
 「さあ、どうしたい?」  
 ずるい。用意された答えが一つしかないではないか。  
 「卑怯です」  
 強い口調でネリンが言う。  
 レイオットは軽く笑うと、ネリンのメガネを外して制服のジャケットに入れた。自身もサングラスをコートのポケットに落とす。  
 「何とでも言ってくれ。俺には最初から切れるカードが無いんだ。どんな手でも使うさ」  
 「卑怯ですよ」  
 レイオットが覗き込むように顔を近づけた。舌先で彼女の唇をくすぐる。俯いていたネリンは顔を上げ、恨めしげに視線を絡めるとレイオットの求めるままに唇を開いた。  
 すかさず舌が滑りこみ唇が交わる。いつもとは違う、ただ優しいだけではない理性を融かす堕ちるような接吻け。  
 「ん……」  
 ネリンが震えた。腰が砕けそうな快感に襲われる。  
 レイオットが、左手でブラウスのボタンを下まで外し続けてブラのフロントホックを外す。外見に似合わぬ豊乳が晒け出された。  
 ゆっくりと唇を離すレイオット。  
 「卑怯者……」  
 何度も同じ言葉を繰り返すネリンについ苦笑が洩れる。  
「俺が卑怯なら、あんたは嘘つきだよ。監督官」  
「嘘なんて、付いてません。私……」  
 
青年の左手がネリンの乳房を緩く弄び始めると、彼女の息が乱れた。頂に指を這わせ、その周辺だけをいじる。  
「じゃぁ、何故俺を避ける?」  
「……こ、怖かったから」  
「どうして?」  
「それは……」  
「怖いのは俺じゃなくて、自分だろう。抱かれることを望んでいる自分が怖いんだ」  
虚実関係無くわざとそう断定する。腰の周辺をさまよっていた右手をタイトスカートの裾に掛けると上へ滑らせ、太股を露わにした。  
 ストッキングは股の半ばで途切れ、ベルトで吊られている。それが、彼女の清潔さからずれていてひどく艶めかしい。  
「っ! や……ちょっ!」  
ネリンが、レイオットの手をスカートから外そうとする。  
「んじゃ、これは?」  
スカートから離れた手は太股の内側を滑り奥へ向かった。  
下着の上から中指を滑らせる。  
「んっ、やっ……」  
ネリンが足を閉じるより早く、ねじ込んだ自分の足を一気に引き上げた。膝とつま先を壁につければ、彼女は脚を開かされた状態で身動きが取れなくなる。  
すでに淡く湿り気を帯びているそこを何度もなぞり、時折、小さな先端をくじる。  
「くふ、あぁ……ぁん、んんっ」  
ネリンが悶える。拒絶を示して自分の腕を掴む華奢な手が余計にレイオットの欲情を煽った。  
「は、ああ、ゃ、やぁ、だ、駄目……」  
「アンタはやっぱり嘘つきだよ。こんなにしてるくせに拒むんだから」  
羞恥心を煽る言葉を使って真面目な監督官を責め、指先で嬲る。  
「……ち、違う、……そんなんじゃ、ぁ、ゃ、やめ……」  
秘芯に刺激を送りながら器用に姿勢を低くしていき、彼女の脚の間に膝まづいた。  
「……いや、駄目よ、お願い、ダメ……止めて……」  
ネリンは逃げようとしてもがくけれど、脚の間のレイオットが腰を掴んで抑え込んでいる為どうにもならない。  
彼女の秘部に唇を寄せ下着の上から数回、軽く接吻けると、青年は薄く開いた唇から舌を伸ばしてねぶり始めた。  
「っんっ! ぁ、あぁっ!!」  
「大きな声を出して、困るのはアンタだよ」  
レイオットは注意を促す。低く静かな呟きは、それだけに脅迫としてネリンに届いた。  
「っ! ……ぅ、っっ……んぅ」  
怯えたそぶりを見せて、彼女は唇をかみしめた。必至に洩れそうになる声を抑える。  
薄い布越しに感じる熱と舌の動きが徐々にネリンを融かしていった。  
 
「は……はっ、ぁ、ああ、ん、んっ……ぁん、はっ……ぁ、あ、ぁ……」  
ちろちろとくすぐったかと思えば、強く舌を押し付けてねっとりとしゃぶりあげ、時折は優しく愛撫する。青年は目を逸らしたくなる様な淫靡な舌使いで、延々と真面目な監督官を翻弄し続けていた。  
「ぁああ……、だ、ダメ、だめよ……駄目ぇ」  
刺激され続けるうち、どうしていいか解らなくなって、ネリンは無意識に手を伸ばす。自身の秘所に顔を埋めている青年の黒髪に、震える指が差し込まれた。  
「……お願い、もう……ぅん、んんっ」  
その声に顔を上げれば、豊乳の向うで潤んだ瞳が青年を見下ろしていた。切なげに訴える表情が、いやでもレイオットを昂ぶらせる。  
 
「どうして欲しい?」  
 
 ことさら優しく、レイオットは彼女に話し掛けた。  
 「…………」  
 少し待っても答えは聞かれず、内心でにやりと笑う。  
 それでこそネリンだ。  
 青年は濡れそぼる秘芯に舌を伸ばして、再び彼女に愉悦を与え始めた。  
 「!!」  
 一瞬彼女の腰が強く跳ね、ぶるりと股が震える。伸ばされた彼女の手が、レイオットの頭を抱き込むように落ちてきた。  
 「〜〜〜〜〜〜っ!!」  
 監督官は、背を丸めて必死に声を抑えていた。激しく身体を震わせて訪れた快感をやり過ごそうとしている。  
 「っ……ぅ……く、ふっ……はっ……はぁ……はぁ……」  
 荒い呼吸を繰り返しながら、俯いたネリンの唇が何事かを呟いた。  
 
 「何?」  
 「…………っ……」  
 「聞こえない」  
 「……ぉ、……ぃっ……」  
「聞こえないな。もう一度言ってくれる?」  
 優しく言うと、ゆるゆるとネリンの頭が動き視線を合わせた。朱に染まった肌と濡れ光る藍碧の瞳。  
堪らない。身体がざわめく。  
「……ぉ、おねがい……ぅ……。だ、ダメ、ゎたし……も、もう……ぁ、あの……」  
途中までは何とか声に出すが、それから先は聞こえなくなる。何度も口を動かして言葉を続けようとするが、恥ずかしさが優先するのか形にはならないようだ。  
「それで?」  
 「……ぁ、あの……あ、の……ぁ……ぅ……」  
 「言わないと解らないよ? ネリン」  
 さりげなく名前を呼ばれてびくりと震える彼女。視線が泳ぎ始めた。  
 レイオットは内心面白くて仕方が無い。かわいそうだが、どうしても彼女の口からその言葉が聞きたくて、質の悪い遊びを続ける。  
 
 「ネリン?」  
 
 内心をちらとも見せず平然と問いかける。  
 
 「……ほ、欲しい……の……」  
 「何を?」  
 「……ぁ……す、……スタイン、バーグ……さん、……の……」  
 「俺? 俺の何を欲しいって?」  
 「――――っ!」  
 「言葉にしないと伝わらないよ?」  
 
 ネリンの表情が更なる羞恥で歪む。  
 
 「……い……意地悪、だわ……、……貴方、こんな……時まで……」  
 
 ぽつぽつと呟くと、すねたように顔を逸らした。どうやら限界らしい。まあ、ネリンにしては頑張ったから、ここらで善しとするか。  
 レイオットは丁寧に下着を脱がせると、直接秘部に舌を這わせた。  
 「っふっ! ぁああっ! ……アン、ア、あっ……あっ、ああ、あ、……」  
 今までよりも強くなった刺激に、ネリンの吐息が乱れる。  
 レイオットは秘肉を割って更に奥へ舌を差し込んで掻き回し、存分に彼女を味わった。  
 散々嬲られたそこはぬかるみ、淫液を溢れさせて震える。指を追加して彼女の秘所全体をたっぷりと愛撫し、改めて二度程イかせてからレイオットはやっと立ち上がった。  
 
   ****   ****     
 
 「……ふ……ん……」  
 ネリンの唇からぽつりと声が漏れた。  
 秘肉を押し開きながら、硬く張り詰めているレイオットの剛直が、ゆっくりと侵入してくる。  
 自分の中を隙間無く埋めていく快感。  
 「んんっ」  
 ある程度まで来ると少し抵抗があり、それを越える瞬間の気持ち良さに、軽い目眩を覚えた。無意識に反応した身体は、青年の剛直を締め付ける。  
 更なる一体感と快感とを求めて、レイオットの首元に絡めた腕に力が入った。  
 レイオットがネリンの耳朶を甘噛み、這わせた舌先を耳の付け根へと滑らせる。頬を辿って重なる二人の唇。  
 「ふ……」  
 「ん、んんっ」  
 ネリンが震えた。レイオットが繋がったまま腰を揺すり上げたのだ。尻を掴み、動き易い位置へ少しづつ修正する。  
 その度に彼女の中でうねる男根が最奥をくすぐり、上げられた右の太股が震える。  
 開かれた制服からこぼれた豊乳が揺れた。  
 唇を放すと彼女の様子を窺いながら、レイオットは静かに動き始める。もどかしい程ゆっくりと、ネリンの中を何度も擦った。  
 充分過ぎるほど潤っている秘所が、刺激を受けて蜜を溢れさせる。肉茎が出入りする度に滴り、卑猥な音を立てながら青年のものに絡み付いた。二人の淫液が混ざり彼女の太股をいやらしく濡らしていく。  
 (やだ……。私……)  
 「ん、ん……っは……あん、ん……あ、あっ……」  
 身体と耳を通して伝わる濡れた粘膜の響きに、羞恥心を掻き立てられる。  
 青年にも聞こえているだろうし解るだろう。それを意識すると益々恥ずかしく、レイオットから与えられる快感と共にネリンの身体を高揚させた。  
 「ぁアン……だ、ダメ……ぁ、あ、あ、あ、ぁあ……」  
 下腹部から、ひっきりなしに伝わる堪らなく甘美な痺れ。  
 (……身体……溶けそう……)  
 解るのは互いの荒い息ずかいと、自分の中を満たす熱。  
 交わる程に悦楽は増し、身体がレイオットを求める。確実にこの男に絡め取られているとネリンは心のどこかで感じていた。  
 彼の求めをはっきりと断れない。  
 彼の指先が自分をなぞると、どうしようもなく身体の奥が熱くなる。   
 「ぁあ、ぁ、……あ、あん、ぁ、は……ぁア、アン……ん、んん」  
 彼女の口からは抑えきれないあえかな吐息が何度も零れ落ちた。  
 
 ゆったりとしたリズムで、何度も自分の中を往復するレイオットの猛り。  
 (……もう、駄目……)  
 もっと激しく自分を貫いて欲しい。  
 「…………」  
ネリンは唇を開いた。しかし……。  
 
 言えない。  
 
 自分からねだるなんて、そんなはしたない淫乱じみた真似事は出来ない。これ以上恥ずかしい事を口に出したくなかった。このままでは本当に溺れてしまう。  
 「ぁああっ……!」  
レイオットの剛直が、一番敏感なところを強く擦り上げた。  
大きく声を上げそうになって、ネリンは慌てて口を抑える。  
 「っく、ふ……ぁ、あぁ、は、あん、だ、だ、め……そん、な……は、ぁあ、ぁ……」  
 誰かに声を聞かれたら大変だ。  
 個室の方はたいがい出払っているとはいえ、誰も居ない訳ではないのだ。壁一枚隔てた廊下には時折人の足音や話し声が響いていた。  
 仕事場に男を連れ込んで色事に及んでいる自分。言い訳なんて出来よう筈もない。  
 両隣の部屋には誰も居なかっただろうか。そんな事が気になる。  
 横目でドアを見れば、鍵が掛けられていた。レイオットだろう。では最初に聞いたあの音は鍵の音か。  
 よかった、ひとまず誰かが慌てて扉を開く事はない。ネリンは霞む頭で何となく思った。  
 「あ、あっあっ……アン、は、……は、あっ、ぁあっあっ、ぁあん……」  
 彼女の身体が愉悦に震える。口数が減り、熱に浮かされた瞳が時折青年を求めて揺れた。  
 「……いい子だ……」  
 レイオットは囁いて、朱く染まった肌に唇を寄せた。首元から遡るように優しく接吻けを繰り返す。  
 「ん、ぁふ……は、くふ……」  
 密やかな感触が伝わる度に、彼女の秘芯はイオットを締め付ける。熱い剛直を求める自分のそこが、なんだかいやらしくて恥ずかしかった。  
 レイオットは丁寧に彼女の敏感な場所を何度も擦り上げる。溶けて柔らかくなったバターの中に自分を浸してかき回しているような感じだった。  
 それぐらい肉襞は柔らかく自分を包み込んで蠕動する。奥へ奥へ、引き込もうとしてうねり、それに逆らって腰を引く度に痺る様な強い感覚が身体を走った。何処までも甘美な快感に酔い痴れる。  
「ふ、……ぅん……、わ、わたし……もう、んん、これ、いじょぅ……は、ああん……」  
 ネリンが呟いた。  
 言ってしまえば終わりだと思いながらも、決心は簡単に揺らぐ。身体を犯す麻薬のような快楽をひたすら求めたい。  
 「……ス、スタイン…バあグ……さ、ぁ、……ぁあぁん」  
 媚を含んだ甘い囁きにレイオットはぞくりとする。濡れた瞳が切なげに青年を見つめていた。  
 彼女に応えてやりたいが、レイオットはもう少し彼女から得られる悦楽を愉しみたい。限界ぎりぎりの酩酊感を味わいたいのだ。その方が、達した時の快感も増す。  
 
 「……もう少し、……もう少しだけ、我慢して……」  
 「…っ、……ぁ、だ、ダメ……ん、おね、がい……だ、め……」  
 青年は、一度動くのを止めた。優しい口調で繰り返し、彼女をなだめる。  
 「あと、少しだけだから……良い子だから、……我慢して……」  
 「……ぅ、く……んん……」  
 身体を小刻みに揺らして官能に耐えながら、彼女はレイオットを見つめ返す。それを了承と踏んで再び腰を使い始めた。  
 「あ、あ、アぁ……、あアン、……ん、んっんっんん、んぅ……」  
 抑えても抑えきれない愉悦を含んだ吐息が、ネリンの唇から零れる。職場で交わるという特殊な状況がネリンの感度を上げていた。レイオットにされるがまま、汗ばむ身体が揺れる。  
 「はっ、ア、ぁん、ぁああっ……んく、んっんっんっ」  
 「……っ、くっ……ふ……」  
 レイオットがピッチを変え始めた。今までどちらかと言えば緩かった動きが、にわかに強くなる。  
 少しずつ捻りを加えながら、本格的な深突きに入った。奥へ届かせるように何度も突き上げ、秘肉をえぐる。  
 一層強く彼女を貫いた時、今までにない強いうねりと彼女の身体のふるえを感じとった。  
 「あっっ――」  
 ネリンの唇が大きく息を吸い込んで開く。咄嗟にレイオットは左手をネリンに噛ませた。  
 「っ、っ――――――っ!!」  
 背中をのけぞらせ壁とレイオットに身体を預けた彼女が大きく震える。噛ませた手に鈍い痛みが走った。  
 「……ふっ…………っ!!」  
 ほぼ同時にネリンの秘所が限界まで張り詰めた剛直を強く締め付ける。レイオットは彼女の中で思い切り爆ぜた。  
 コンドームをつけていない事が一瞬脳裏を過ったが、それよりも欲望が勝る。解放感が強い快感となって全身を満たした。  
 「んんっ!」  
 自分の中へ直接放たれた熱いものを感じてネリンは更に震えた。長いとも短いとも思える緊張が過ぎると、落ちるように身体が弛緩する。  
 足に力が入らず、壁とレイオットに挟まれて支えられているだけで、自力では立っていられそうに無かった。ずるずると座り込んでしまいそうだ。  
 彼はすべて吐き出してしまおうと、2、3度強く彼女に己を擦りつけた。ネリンが敏感に反応する。吐息が零れ、再び彼を締め付けた。  
 レイオットは口に当てていた手をそっと離すと、小指の側にネリンがくいしばった後が残っていた。  
 
 瞬間的に身体を突き抜けた強烈な感覚に、ネリンは頭の中が真っ白になっていた。荒くなった呼吸の度に、自分の中に残っている男根で下腹部が痺れる。  
 「……んぁ、……ぁ、ふ……ぅ……」  
 身体がなかなか落着かない。気を抜くと再び身体が昂ぶって、自分の意思とは無関係にレイオットを締め付ける。  
 それが解るのでネリンは恥ずかしくて堪らなかった。早く抜いて欲しいのに彼は一向にその素振りを見せず、自分の肩口に頭を乗せ乱れた息を整えている。  
 
 「あ――……」  
 
 ネリンがその変化に気が付いた。自分の中にあるそれが、緩やかに硬度を増していく。  
 それに合わせて、レイオットも身体を動かし始めた。起立が先程までの勢いを取り戻していく。  
 あからさまな変化を己の内側に直接感じてネリンはうろたえた。  
 「ぃ…ぃゃ……、いや……ん、ぁあ……だめ……」  
 「……もう一度……」  
 レイオットが彼女の耳元に唇を寄せ、ぬるりと耳朶から耳の奥へ凹凸をなぞって舌を忍ばせる。  
 「んんっ!」  
 耳に掛る吐息と舌の感触に、ざわざわした不可思議な感覚が背筋を走る。  
 「ぁ……だめ……これ、いじょうは……」  
 何時までもこんな事をしていてはいけない。  
 そう思っても、身体は再度快楽を貪り始める。一度絶頂を経験して昂ぶった身体は、僅かな刺激にも大きく反応し、全身を悦楽が蝕んでいくのを受け入れた。身体の奥から溢れ出す熱と、ぞくぞくと震える身体。  
 レイオットは本格的に抽送を開始して、ネリンを落しにかかる。彼女にはそれを拒む事は不可能だった。そもそも逆らう事自体が思いつかない。  
 
 「……は、ぁん、あぁっ……だ、ダ、メ……っっ……!」  
 彼女の唇から、抑え切れない艶めかしい吐息が零れる。あっという間に、彼女は上り詰めてしまった。  
 「んんっ、ふっ……、っ――――っ!」  
 身体に力を込めて、襲い来る衝撃に耐える。彼女の秘芯は痺れきって、快感だけをひたすら脳に伝えた。  
 計らずもイってしまったネリンにレイオットはふと笑みを浮かべる。自分を貪るように絞めあげ、うねり、彼女は剛直をその中に留め置こうとしていた。  
 「……止めてもいいの?」  
 ダメと小さく繰り返すネリンの耳元で囁く。  
 「……このまま、止める?」  
 緩やかな抽送で彼女をじらしながら、今度は言葉で追い詰め始めた。  
 「……そ、れは……」  
 「どっちでも俺は構わない。君が、それでいいなら……」  
 剛直を練り込むように、彼女の秘芯をゆっくりと擦り上げる。  
 「っ! ぁあああんっ!」  
 一瞬声が跳ね上がり、背を反らすネリン。  
 レイオットは、時折強く擦り込みながら、それでも決定打を与えること無くゆるゆると動く。  
 「んん……止めて……あ、あん、お、願い……も……ダメ……」  
 「止めていいんだ?」  
 「……ちがう……」  
 「このまま続ける?」  
 職場でこのまま続けるのは怖い。けれどこれ以上じらされ続けたらどうにかなってしまう。ネリンは否定とも肯定とも取れる言葉を呟いた。  
 「し、仕事場、なのに……」  
 「じゃぁ、止めるよ?」  
 わざわざ動くのを止めて、青年は彼女中の塊を引き抜きにかかる。  
 「あ、……だ、だめ……、止め、ないで……」  
 「いいの?」  
 「……い、いいの、……だから……っ、つ、続け、て……」  
 「欲しい?」  
 レイオットは中途半端に腰を引いた状態で動かない。生殺しの状況に堪え切れなくなったネリンは濁った思考が命じるままに、唇から欲望を吐き出した。  
 「……欲しいわ……すごく、欲しいの……。……じらさないで……おかしく、なり…そう……」  
 普段の真面目な監督官からは考えられない程の濡れた口調に、レイオットは内心ほくそ笑む。  
 ネリンを抱いた事は数えるほどしかない。初めて触れた時はそうではなかったのだが、あれで警戒したのか、なかなか理性を捨てきらないのだ。  
 レイオット自身加減していた事もあるが、彼女のたがを完全に外すには、一度、どうにもならない状況で追い詰めようと前々から考えていた。  
 折角のチャンスを利用しない手は無い。  
 レイオットはゆっくりと腰を進め始めた。  
 一番深くまで行くと、少し間をおいてから再びゆっくりと引き抜き、間をおいて緩やかに突き入れる。  
 抜き差しする度にぬかるんだ音が響いた。  
 この後に及んでじらし続けるレイオットにネリンがねだる。  
 「ぃ、意地悪、……しないで……ゎ、わたし……」  
 「イきたい?」  
 「……いき、たい……」  
 ネリンはあえぎながら同じ言葉を繰り返した。  
 「……いきたいの……我慢……出来、ない……」  
 レイオットは、一定のリズムを保って抽送を続けていた。一切の変化を持たせずひたすら同じ調子で動く。  
 「どうして欲しい?」  
 「……もっと……強くして、……もっと、ずっと、……気持ち良く、……なりたい……」  
 彼女を侵食し続ける甘美な疼きは益々強くなる。イッた時とほとんど同じ状態で、いつまで経っても収まる事が無かった。理性はいつの間にか消え去り、本能に任せてレイオットを求める。  
 完全に落ちた事を確認したレイオットは、内心を全く見せる事無くふわりと笑った。  
 「……ああ、……いい子だ、ネリン。一緒に、気持ち良くなろう……」  
 優しく彼女の唇に自分の唇を重ねる。彼女の唇を堪能しながら、少しずつ剛直を送り込むタイミングを変えていった。時折腰をうねらせて悶えるネリンの身体を、自分の身体で抑え込む。  
 「…んん、……ん、ふ、……ん、んっ、……ん……」  
 レイオットにさんざんじらされ、追い詰められていた彼女は、急速に高まってくる感覚についていけ無くなっていた。コントロールを失った身体はいいように操られる。  
 「ぁふっ……だっ、……だめ……んっ、あんっ、あっふっ……っんっ」  
 かろうじて抑えられてはいるが、今にも跳ね上がりそうな彼女の声が室内に満ちた。  
 
 「あ、ダメ、……あんっ、はっあっあっ……いや……っんふ、ぁあんっ……も、もう……」  
 レイオットは容赦無く剛棒を送り込む。一番敏感なポイントを中心に、膣全体を徹底的に責め立てた。  
 一度目よりも遥かに絞めあげの強くなった肉襞に逆らって、己の猛りを引き上げては打ち込むことを繰り返す。  
 ネリンは耐えられないのか、レイオットに預けていた身体を逃がすようにくねらせた。それを彼の両腕が強引に引き戻す。  
 彼女の腰を掴み、逃げようとする度に引き戻して己の杭を打ち込んだ。  
 「くふっ! ……ああんっ、あんっ、ア、はんっ、あっあんっあんっ!」  
 レイオットは逃げるネリンに合わせて剛直を打ち込むため、余計に深く貫かれる。  
 その度に艶声が溢れた。  
 強く突き込まれるにつれ、彼女の下腹部に甘い痺れが蓄積される。  
 「ぃ、いや、ぁ、あんっ、んっんっんっ……ダメ、あ、あふっ、んんぅ……す、すご、や、ああっ、はっ、あんっ!」  
 「……んっ……くっ……」  
 レイオットも限界にきていた、痺れる様な目眩にも似た快感に耐えられなくなっている。  
 更に抽送を強く激しいものに変えていった。  
 「ぁああっ! ……もう……んっんっんっんっ……だっ、だ、めぇ……」  
 ネリンが再び声を上げそうになった。それを遮るように、レイオットは夢中で彼女の口を自分の口で塞ぐ。目眩のような快感が二人の身体を突き抜け……、  
 
 「んん――っ!!」  
 「――――っ!!」  
 
 二人同時にイッた。  
 
   ****   ****   ****   ****   ****  
 
 乱れた呼吸がある程度整ってから、レイオットは彼女中にあったモノを引き抜いた。秘裂からは収まり切らなかった白濁が、ネリンの白い太股に筋を引きながら滴り、床に染みていく。  
 彼女は壁に背中を預けたまま崩れ、座り込んでしまった。どこか呆けた様子で床を見つめている。  
 先に身なりを整えたレイオットがネリンの向かいに腰を下した。彼女の汗を軽く拭って、慣れた手付きで下着を整えるとブラウスのボタンをはめていく。  
 「生きてるか? 監督官……」  
 「ひ、……ひどいです……スタインバーグさん……。こ、こんなコト、して……」  
 青年の問いかけに小さく文句で返事をした。その声は余韻が残っていてどこか甘い。  
 「悪かったな。でも、アンタ何時までも警戒してるからさ……」  
 「それは……それにしたって……。職場で、すること無いじゃ、ないですか……こんな、騙し打ちみたいに……」  
 「でも、久し振りで気持ち良かったろ?」  
 「――――」  
 ネリンは、目の前の青年から視線を逸らし、俯いたまま僅かに頷く。  
 そんな彼女の素振りに思わずレイオットは苦笑を浮かべた。  
 「もう少し休んだら、どこかで昼食をとって、それから帰ろう。おごるから」  
 「……当然です……」  
 ネリンがぽつりと呟いた。  
 軽く肩を竦めて彼女に接吻けたあと、レイオットは立ち上がって机の上のティッシュボックスを取り、自分が脱がした下着を拾い上げると一緒にネリンに差し出す。  
 「……もう、こんな真似、しないで下さいよ」  
 出されたものを受け取りながら、ネリンは何とも言えない微妙な表情でレイオットを見つめた。  
 

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