「参ったな」  
寝台の上で横になりながら、レイオットはぼやいた。  
まさかこうまで持続性のあるものだとは思わなかった。  
現在ではそのほとんどが破棄されてはいるが、かつては催淫効果のあるスペルというものも存在していたということはレイオットも理解していた。難しい理屈は分からないが、脳内の情報伝達物質をそれ向きへと一時的に攪乱させることで、そのような効果があるらしい。  
しかしまさかそれと同質のものを魔族が使うことがあるということは考えていなかった。  
夕方に発生したケースSAに駆り出され、鎮圧したはいいのだが、その際に魔族の魔力圏内に触れてしまった。  
物理的な攻撃というものを受けなかったため、その場は放っておいたのだが、どうやらそれが失敗だったらしい。  
その魔族が何を考えていたのかは知る由もない。ひょっとしたら、そうなった女性がそういうものに飢えていたということがあるのかもしれないが……。  
現場では何ともなかった上、そもそも気付かなかったのだが、家に帰る頃には既にその欲求は耐え難いものになっていた。  
しばらく横になっていれば収まると思っていたのだが……やはりそういうわけにもいかないらしい。興奮が強すぎて、眠るどころではない。  
「しかたない……シャワーでも浴びるか……」  
発情期の猫――避妊手術をしなければ近いうちにシャロンにもそうすることになりそうだが――それと同じように、冷水でも浴びていれば少しは収まるかもしれない。  
そして、その間に自分で慰めておけばいい話だろう。  
ちなみに、レイオットはポルノ雑誌や写真集といった類のものは持ってはいない。  
カペルテータという少女と同居しているというより、掃除を頼んでいるエレナの存在がその大きな理由だ。  
彼女はベッドの下は勿論、家具の裏だろうと天井裏だろうと、そういう類の書籍があれば麻薬探知犬よりも鋭い嗅覚で発見し……寝台の上に積み上げてくる。  
それで特に何か言われるということもないのだが、それが彼女に掃除を頼んでから二、三回ほど続いた頃には、さすがにやりにくいものを感じ、レイオットはそれらを処分した。  
特にそれらに愛着があったわけでもないし、元々はジャックから無理矢理に押し付けられたものだ。レイオットにはさしたる精神的ダメージも無かった。  
下着とタオルを手に、レイオットは浴室へと向かう。  
「…………はぁ」  
レイオットは溜め息を吐いた。  
先客がいた――カペルテータだ。  
そうだった……この時間は、彼女が入浴している時間だ。  
タイミングが悪い。  
抑えきれない飢餓感の中で、食べ物の匂いだけをかがされるような真似ほど、欲望を認識させるものはない。  
 
(………………くそっ)  
レイオットは歯を食いしばり、腹に力を入れた。  
全身から嫌な汗が流れ、気が狂いそうにすらなる。  
食欲と睡眠欲と性欲から、完全に解放されることは難しい。人である以上……生きている以上、気持ち一つでどうにかなるという問題ではない。  
狂おしいほどに、レイオットの男性器は膨れあがっていた。  
がちゃっ  
不意に響いた物音に、レイオットは身じろぎする。  
…………どうやら、カペルテータの入浴が終わったらしい。  
壁にもたれかかり、熱に浮かされたように、レイオットは浅く呼吸する。  
浴室からカペルテータが姿を現す。  
「…………レイオット」  
「なんだ?」  
ここにいるべきじゃなかったと、レイオットは後悔した。  
さっさと自室に戻っていれば、このような姿を晒すことはなかったというのに……。  
「欲情しているのですか?」  
「女の子が……ストレートにそんなこと言うものじゃあないと思うんだけどね」  
「……そうですか」  
相変わらず、カペルテータは無感情に言い放つ。  
(ああ……やはり俺はここにいるべきじゃなかった)  
人と全くの同じ姿ではないし、成熟した女でもない。だがしかしカペルテータは幼いとも呼べない少女だ。しかもその顔立ちは整っていて――美しいとすら言える。  
嗅覚までもが鋭敏になっているのか、麻薬のように少女と石鹸の匂いがレイオットの欲情を刺激する。  
動物的な欲望に、理性が支配されていく。  
「ああ……どうやら、さっきの魔族の仕業らしい。そういうわけで、早くそこをどいてくれると有り難い」  
浴室で行う行為を隠す余裕すら、もはや無い。  
しかし、カペルテータはその場を移動しない。  
ややもすると、今すぐにでも彼女を陵辱してしまいたいとすら思っているというのに……。  
「レイオット。私を抱きたいですか?」  
レイオットは呻く。  
答えられない。  
常識云々を言えばそんなつもりは彼には無い。しかし本能が拒否の台詞を言わせない。  
ここで頷いても彼女は何も感じないというのは分かっている。  
 
「私は構いません」  
いつもなら……何かの冗談の流れでその言葉を聞いたとしても、レイオットは拒否していただろう。  
しかし、この状況でのその誘惑は耐え難いものだった。たとえ彼女の言葉に、彼女の感情が篭もっていないとしても……。  
ゆっくりと、レイオットはカペルテータへと近付いていく。  
そして……彼女の目の前で腰を下ろす。  
腰脇にあるスカートのボタンを外すと、ぱさりと床に落ちた。  
無言のまま、装飾の無いショーツを下ろしていく。  
カペルテータは抵抗しない。そんなレイオットをただ無表情に見下ろしている。  
細く……白く艶めかしい太股の間から、少女の性器がのぞく。  
レイオットは立ち上がり、左手でカペルテータの胸を掴んで彼女を壁に押し付けた。  
空いた右手で、カペルテータの秘部を弄ぶ。  
感情のないこの少女に、この行為がどれだけの意味を持つのかは分からない。しかしそれでも、劣情に浮かされながらも……偽善だと思いながらも、レイオットは手順を省こうとは思わなかった。  
薄い茂みを掻き分け、割れ目を中指でなぞり、秘唇を撫で回す。  
堅い蕾を揉みほぐすように、愛撫を続ける。  
声一つ立てず、カペルテータはその行為を受け入れる。  
……そして…………潤いこそしないものの、刺激による反射か……そこは仄かに息づいた。  
荒い息を吐きながら、レイオットはベルトを外し、チャックを下ろして男性器をその中から取り出した。  
先走る雫で、その先端はぬらぬらと濡れていた。  
「カペル。……いくぞ?」  
「はい」  
少女を壁に串刺しにするような錯覚を覚えながら、レイオットはカペルテータの秘部に男性器を埋め込んでいく。  
狭い膣道がレイオットのものを拒絶するように、固く締め上げる。  
しかし、それが気持ちいいかどうかを考える……味わう余裕はレイオットにはない。  
「すまん。動いていいか?」  
「はい」  
 
脈打つ怒張は、少女の中にあるというその事実を認識するだけで達しようとしていた。しかし、それでもやすやすと射精には至らなかった。  
レイオットは強引にカペルテータの中を突き進み、そして奥を突く。  
少女の体に自分の体を押し付け、腰を打ち付ける。  
我ながらケダモノのようだと思いながら、レイオットはその行為を止めることが出来ない。  
「はっ……あっ」  
やがて……短く呻いて、レイオットは欲望をカペルテータの中へと吐き出した。  
粘つき、熱い感触が膣内を満たしていく。  
レイオットの胸の中で、やはりカペルテータは無表情だった。  
彼女の頭の上で、レイオットが肩で息を吐く。  
「……レイオット?」  
「ぐっ…………ううぅっ」  
レイオットは苦しげに呻く。  
カペルテータの中で、彼のものは一向に衰える気配を見せない。  
「すまんカペル。……どうやら、まだのようだ」  
「……はい」  
どうやら、魔族が使った催淫スペルは予想以上にやっかいな代物だったらしい。  
劣情は収まるどころか、強引にその炎を持続させてくる。  
おそらく、催淫効果をもたらすために必要な脳内情報伝達物質が枯渇するまでこの効果は続くのだろう。  
「カペル……」  
「はい」  
「…………すまないが、これが終わったら……今日のことは、出来ればでいい……。忘れてくれ」  
「はい、分かりました」  
レイオットはそのまま、ピストン運動を再開した。  
 
 
―後日談―  
 
「スタインバーグさん」  
「……そのうちな」  
むぅ とネリンは眉根を寄せた。  
「まだ何も言ってませんよ?」  
「いや。……言わなくても分かる。あんたがこうやって俺に書類を書かせた後は、必ずと言っていいほど、俺の資格申請の話が出てくるからな」  
「分かっているなら、早く資格を取って下さい」  
「だから……そのうちな」  
「そう言ってもう何ヶ月が過ぎていると思っているんですかっ!」  
しかしネリンが怒鳴っても、いつものようにレイオットは彼女から目を背けた。  
「……って、あれ?」  
「どうかしたか? シモンズ監督官」  
「いえ、カペちゃんがですね……」  
「カペルがどうかしたか?」  
ネリンに促され、レイオットは庭でシャロンをあやすカペルに目を向けた。  
「スタインバーグさん。カペちゃんに何かありました?」  
そうネリンに言われ、レイオットはカペルテータを眺めるが……相変わらず無表情なままで、今までと変わりない。  
「いや何も。……気のせいじゃないか?」  
「そうですか? 心なしか……。まあ、そうなんでしょうけど」  
一体何が引っ掛かったのか……ネリンは小首を傾げた。  
しかしそれも数秒のことで……。  
「で? いつになったら資格をちゃんと取るんですか?」  
「…………そのうちな」  
 
いつものように、スタインバーグ邸に怒声が響き渡った。  
 
 
時は常に流れていく  
変化は常に起こり続ける  
人は変化の跡を完全に消すことは出来ない  
しかしそれでも日常は続いていく  
昨日と今日の自分の日常に違いがないと信じて  
これこそが日常だと思いながら……  
 
―END―  
 
 
 
 
 
―ボツEND―  
 
ネリン「あれ? お昼なのにスタインバーグさんはまだお休みですか? 昨日の調書を書いてもらわないといけないんですど」  
カペル「腎虚です」  
ネリン「じ……? って、ええっ!?」  
カペル「昨日の魔族との戦闘で催淫効果のあるスペルを受けたため、昨晩から明け方までずっと私と性行為をしていました」  
ネリン「はいっ!? せっ!? 性っ!? ……あの……?」  
カペル「…………さすがに、連続で**回は堪えたようです」  
ネリン「……………………(震えている)」  
カペル「シモンズ監督官?」  
ネリン「レイオット・スタインバーグうううううぅぅぅぅ〜〜〜〜っ!!!!」  
 
数十秒後、レイオットの自室からこの世のものとは思えない悲鳴が響き渡った。  
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル