「シモンズ監督官、こんなとこでナニやってんだ?」
壁に体を預け、レイオットはネリンの背中に静かに声をかけた。
「!!」
ネリンはあわててスカートの裾をととのえると体を起こす。
「ス、スタインバーグさん……。あの、い、いつから……」
レイオットは、意地の悪い笑みを口元に浮かべた。
「今なら、ここには誰も居ないとでも思ったんだろう」
「…………」
ネリンは顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。
「ま、監督官にも、そういう時があると解って、俺は安心してるよ」
「な……」
レイオットの微妙に含みのある口調に不穏なものを感じ、ネリンは体を固くする。
「次があったら、俺を呼んでくれ。そういうことならいくらでも協力するから」
「! き、きょ……な、何を言ってるんですか!」
「一人でシテもつまらないだろう? そういうことは、二人の方が楽しいんじゃないか?」
おそらく、彼は全て見ていたのだ。自分のはしたない色々を。ネリンは眩暈をおぼえる。
「ただここは、誰も居ないように見えても、時折誰かしら保守に訪れる。用心はした方がいいな」
ネリンが言葉をなくしているの様を面白そうに見つめながら、レイオットは容赦無く言葉を続けた。
「実は見られるのが好きだっていうなら、ここでナニをシテも、俺は止めないがね」
むしろ自分も参加してやると、言外に含めていた。
「じゃあ、俺は帰るけど、あんたはどうする? 家まで送って行くぞ?」
「ひ……一人で帰ります」
「左様で」
レイオットは苦笑すると、ネリンを一人残してさっさと部屋を出ていった。