アストラエアの丘、そこには、三つの女学校が建ち並んでいました。  
聖ミアトル女学園、聖スピカ女学院、聖ル・リム女学校。  
そして、その敷地のはずれにある3校共通の寄宿舎である、いちご舎。  
アストラエアの丘……それは男子が立ち入る事の許されない聖域でした……。  
 
学年も学校も違うさまざまな思いを秘めた乙女だけによる百合色学園ライフ。  
そんなヒミツの花園で起きる出来事をあなたもちょっと覗いてみませんか……?  
 
 
          *          *          *  
 
 
Episode 2.『深夜のお茶会 After...』  
 
 
ひょんな事から、渚砂たちの部屋でお茶会を催すことになった、6人の少女達。  
その面々もミアトル4年生の渚砂と玉青、スピカ3年生の光莉と夜々、ミアトル新入生の  
千代、スピカ新入生の蕾――様々な立場の組み合わせで、デスクライトの仄かな灯りを頼りに  
始められた深夜のお茶会は、校則違反のスリルも相まって粛々と盛り上がっていたのでした――。  
 
 
 
お互いの交友関係や楽しいエピソードの話題でひとしきり盛り上がった後、先輩である渚砂と  
玉青に光莉が相談したい事がある、と切り出した。  
それは――。  
 
「電気アンマ……ですか?」  
 
玉青が大きな目をパチクリさせる。光莉が仄かな灯りにも鮮明にわかるほど真っ赤になって  
頷く。隣では夜々が天を仰ぐ格好をしていた。新入生の二人は思わず顔を見合せて赤くなる。  
二人とも意味は理解できているようだ。  
渚砂は何故かそっぽを向いている。普段は相談には一番乗ってくれる娘なのだが……。  
 
「えっと……詳しい事情を伺っても宜しいかしら?」  
玉青が苦笑しながら先を促す。光莉は夜々の顔をじっと見つめていたが、やがて思い切った  
ように玉青に打ち明けた。  
 
人に話すのは恥かしい内容だけに、光莉の話は遠まわしになったり、言葉に詰まったりして  
中々先に進まなかったが、玉青が辛抱強く聞き取ったところ、どうやら、ルームメイトの  
夜々からされる電気アンマが、ちょっと辛いと言う事らしい。端で話を聞きながら夜々は  
バツが悪そうに頬を掻いている。  
 
「要するに夜々ちゃんの電気アンマが執拗だから毎日受けるのは辛いと言う事ですね?」  
「えっと……! その、執拗とかじゃなくて……その……はい……」  
「う〜〜ん……」  
玉青が困った表情を夜々に向ける。夜々は先輩から諭された様に申し訳無さそうに俯く。  
それでもチラチラッと玉青の様子を窺う悪戯っぽい仕草が玉青には憎めなかった。  
 
「光莉ちゃん、こんなに可愛いですものね。個人的には夜々ちゃんが光莉ちゃんを虐めたく  
なる気持ちはわかりますけど……」  
微笑みながら玉青が言う。蕾が少し膨れたような表情をする。自分の憧れの『光莉先輩』が、  
上級生とは言え、愛欲の対象の様に言われるのはちょっと面白くない。  
(只でさえ夜々先輩に独占されてるのに)  
夜々の事も好きなのでそれがイヤと言うことではないが、玉青の様に貴婦人然とした美人の  
先輩に割り込まれたら自分の番が遠くなるばかり――。  
(あわわわ――)  
そこまで想像して慌てて首を振る。憧れの先輩に対して自分はなんて邪な事を考えてるの  
だろう。そう思ってコホンと咳払いして再び面を上げると――。  
(くすくすくす……)  
ふと忍び笑いしている視線に気づいた。玉青と夜々が二人して蕾を面白そうに見ている。  
「蕾ちゃんの百面相、面白いよ♪」  
「な……なな……!!」  
夜々に耳元で囁かれ、蕾は反射的に否定しようとしたが、深夜なのを咄嗟に思い出し、  
慌てて口元を押さえた。その仕草が可愛らしく、玉青や渚砂も微笑ましげに見つめる。  
 
「……で、話を戻しますが、夜々ちゃんの気持ちはわかりますけど、やはりされる側の  
気持ちは大切にしなければいけないと思いますの。夜々ちゃんも光莉ちゃんに嫌われたく  
ないですよね?」  
「はい……」  
反省したように夜々が頷く。  
「変な言い方かもしれませんが、今欲張りすぎて後で冷めてしまうより、日々物足りない  
ぐらいの方が長続きすると思いますの。炎の様な激しい情熱よりも炭火の様なじんわりと  
した暖かさの方が相手の心を蕩けさせる事もあります――友情・愛情、並べてそういう所が  
あると思いません?」  
玉青の詩人めいた諭し方に思わず渚砂は溜め息をついてしまう。彼女のルームメイトは  
良家の家柄・端麗な容姿・聡明な頭脳、と全てが秀逸だ。  
 
「そうですね……」  
夜々が光莉を見て申し訳無さそうな表情をする。  
「ゴメンね、光莉――私、光莉の事大切にしなきゃいけないのに……光莉が辛いならもう  
これからはああいうことはやめにするね。ちょっと寂しいけど、光莉に嫌われたくないもの」  
「ち、違うよ、夜々ちゃん!」  
夜々の反省の言葉に光莉が驚いて首を振る。光莉の意外な反応にきょとんとする夜々。  
「わ、私……夜々ちゃんにああいう事をされるのがイヤなんじゃないの。その……私が  
ミアトルの先輩達に教えて欲しいのは……」  
チラッと玉青と渚砂の方を見る。二人とも光莉の次の言葉を待つ。  
「ど、どうすれば、その……や、夜々ちゃんの電気アンマを受け入れられるようになれるか  
……なの」  
恥かしい告白をしたように光莉が真っ赤になって俯く。夜々は呆然としていたが、光莉の  
言っている意味がわかると、こちらは嬉しくて頬を染める。  
「夜々ちゃんの電気アンマがイヤだったら、先輩達に相談しに来たりしないよ。ちゃんと  
夜々ちゃんに自分でお願いする――わ、私は夜々ちゃんが私にしてくれる事を全部受け止  
められるようになりたいの。だって、夜々ちゃんは私にとって大切なお友達だもん――」  
普段なら最後の「お友達」に少し落胆する所だったが、そんな事が些末事に思えるほど、  
夜々は有頂天になった。みんなの前なのに思わず光莉を抱きしめて頬擦りしてしまう。  
光莉が小さく悲鳴をあげたが、それを嫌がらない姿を見て他の4人は蕾でさえも暖かい  
気持ちに包まれる。  
 
「なるほど……」  
夜々の抱擁が一段落した頃合いを見計らって玉青が切り出す。  
「フフフ……でも、どうして私たちですの? スピカにもその手の話に詳しいお姉様方は  
いらっしゃるでしょう?」  
「えっと……その……」  
光莉が少し困ったような表情をする。  
「恥かしい話ですけど、私、去年の転入から親しくしてもらえた先輩が……いないんです。  
私が身構えてしまうせいでしょうか、先輩だけじゃなく、同級生でも下級生でも――あ、  
勿論夜々ちゃんと蕾ちゃんは別ですけど」  
意外な話を聞いたように玉青と渚砂は顔を見合わせた。美しい物が集まると言われるスピカの  
中でもとりわけ美しい少女と評判の彼女がそんな悩みを抱えていたとは。  
 
「だからその、こういうお茶会に誘っていただけた先輩にお話を聞いていただきたくて。  
それに、ミアトルの『お部屋番制度』には……こういった事も妹達に伝授する噂を聞いた  
ものですから」  
「ああ……そうでしたか」  
合点が行ったのは玉青一人のようだった。スピカの二人は勿論、渚砂や千代も何の事か  
わからない表情をしている。  
「ええ、確かに。ミアトルのお部屋番制度の中には妹にお姉様と仲良くなる方法を授ける  
しきたりがありますわね」  
「た、玉青ちゃん。それって、その……電気アンマのやり方をお姉さんが妹に教えるって  
事……?」  
渚砂の声が上ずった質問に玉青は肯定も否定もしなかった。ただ、片目を瞑って微笑んだ  
だけだ。  
「も、もしかして、私達が千代ちゃんを……?」  
渚砂が千代を見ると、今まで慎ましく控えて給仕をしていた千代がぱっと表情を明るくして  
いた。渚砂と目が合うと恥かしそうに視線を逸らし、時折渚砂を盗み見るように上目遣いで  
見ている。  
(う……お部屋番制度って……奥が深い)  
これもミアトルの伝統がなせる業か――渚砂は溜め息をつく。  
 
 
「フフフ……今申し上げたとおり、ミアトルのそれはお姉様と妹の大切な儀式の一つですの。  
ですから、他校の方々に堂々とお教えできるものではありませんわね」  
玉青が上品な口調で言う。そう言われるとスピカの生徒である光莉はただ恐縮するしか  
なかった。流石に無理強いも出来ず、諦めようと思った時――。  
「た、玉青ちゃん。そんな事言わずに教えてあげようよ。光莉ちゃんの健気な気持ちを  
台無しにしちゃ可哀想だもん」  
渚砂が光莉の援護をする。その言葉を待っていたように玉青はにっこりと微笑む。  
「渚砂ちゃんがそう言うなら……勿論、私にも異存はありませんよ。そもそもこのお茶会は  
禁忌を破って開かれたものですし」  
玉青がウィンクするのを見て渚砂も安心したように微笑む。  
「ですが、蕾さんはどうされますか? あまりミアトルの伝統には興味がおありでない  
ご様子でしたし――」  
「そ、そんな!」  
玉青の言葉に蕾は思わず大声を出しそうになる。ここまで来て自分だけ仲間はずれなんて  
ない――でも、光莉ほど切迫した事情もない身とあっては、やはり退出した方が良いの  
だろうか?  
 
「ま、待ってください、玉青御姉様! ここまでみんなして仲良くなったのに蕾ちゃんだけ  
仲間はずれなんて可哀想です!」  
そう言って蕾の前にせり出してきたのは千代だった。大人しく控えめな彼女が急に積極的に  
なった。我知らず、蕾を押し退けようとするほどに。  
「こ、こら……! 邪魔だってば! いきなり前に出てこないで……」  
蕾が押し返すが、千代は梃子でも動かない。普段の彼女らしからぬ自己主張だ。  
「でも千代ちゃん、ミアトルの儀式をお教えするのですから、ここからの作法は全て  
ミアトル流で執り行われなければなりませんわ。蕾ちゃんにそれが約束できるかしら?」  
「はい! 約束できます! 私がさせますから!」  
「ちょ、ちょっと! 何を勝手に決めてるのよ!!」  
懸命に玉青を説得する千代とそれに突っ込む蕾の掛け合いが面白くて夜々がこらえきれなく  
なったように笑い出す。光莉もクスッと笑みを漏らした。  
 
「そうですか、可愛い妹の頼みを無碍に断るわけにはいきませんわね」  
玉青が今度は千代にウィンクする。さっきと同じく、了承の意味だ。千代は喜びを満面に  
表し、ぺこりとお辞儀する。  
「蕾さん……いえ、蕾ちゃんもそれでいいですか?」  
「は、はい……!! 玉青先輩……」  
突然振られて背筋をピンとして返事をする蕾。彼女の言葉を聞き、玉青は小首を傾げた。  
「ミアトルでは上級生の事は『御姉様』とお呼びするのが慣わしですよ、蕾ちゃん」  
「あ、は、はい……」  
その時、蕾は玉青だけでなくみんなの注目が自分に集まっている事に気がついた。  
「よ……よろしくお願いします。玉青御姉様、渚砂御姉様、夜々御姉様……それと……」  
最後の一人の所で蕾は言いよどんだ。彼女にとってはそれは軽々しく口に出来ない大切な  
言葉――相手の御姉様もそれがわかっているのか、じっと蕾の言葉を待った。  
「よろしくお願いします――光莉御姉様」  
蕾は恥かしさで真っ赤になりながらもハッキリと正面を向いてその言葉を言った。光莉が  
にっこりと微笑む。  
「よろしくね、蕾ちゃん――一緒に御姉様方に楽しい事を教えていただきましょう」  
「は、はい……!!」  
その言葉を聞いて蕾は感激で胸が一杯になった。  
 
(なるほど……玉青『御姉様』はなかなかの策士でいらっしゃる――)  
夜々はチラリと玉青を見る。ミアトルの儀式を他校に教えられない、と言いながら渚砂を  
使って光莉を、千代を使って蕾を引き込んだのだろう。こうすれば光莉や蕾は自分達の  
ためにみんなが禁忌を犯す事に対する心配が小さくなる。  
夜々の視線に気づいたのか、玉青がこちらを見て上品に微笑んだ。夜々は玉青が渚砂を  
巡ってエトワールに正面から対抗した噂を聞いている。ここまでの玉青の様子を見れば、  
その噂はまんざら嘘でもない様に思えた。  
 
「それでは今からミアトルの伝統の一つ――伝授の儀式を行いますわ。皆様、宜しいです  
わね?」  
玉青が問い掛け、全員が頷く。  
「それと、僭越ながらご注意を――」  
少し真面目な表情で玉青が居並ぶ面々の顔を見渡した。  
「今晩の事はミアトルは勿論、スピカの先輩方にも内緒にしてくださいね。大事な  
エトワール選を前に火種を燻らせる様な真似はしたくないですから」  
玉青と同様、全員が真顔になって頷いた。  
 
 
          *          *          *  
 
 
「伝授の儀式――と言ってもそんなに大げさなものではありませんけどね」  
クスッと玉青は悪戯っぽく笑う。  
「ただ、準備は必要ですの……皆さん、下半身は下着一枚になって下さい」  
う……と思わずその場にいた面々が一瞬引くが、教える内容の性質上、仕方がない。  
「わかりました。光莉……」  
「うん……」  
この深夜の授業の言いだしっぺである光莉と夜々が立ち上がってパジャマの下をスルリと  
落とす。二人とも滑らかな肌で、デスクライトの常夜灯に仄かに浮かぶその光景は幻想的  
ですらあった。  
「あ〜〜! 先輩達……じゃなかった、御姉様方、校則違反じゃないですか!!」  
蕾が素っ頓狂な声を上げて指摘する。夜々は黒のショーツ、光莉は淡いピンクのショーツ  
だった。しかし、二人とも大人びた印象はあるとは言え、それほど卑猥なランジェリーと  
言うわけでもないが――。  
「スピカの校則じゃ下着と手袋は白じゃないといけないんですよ? 基本じゃないですか」  
「そう……だけど、夜々ちゃんが……」  
光莉が困ったように夜々を見ると、彼女は惚ける様に口笛を吹いていた。そもそも普段の  
彼女はソックスも太股まである黒のオーバーニーソックスだ。生徒の自主性を重んじるとは  
言え、校則にはそれなりに厳しいスピカの中では大胆な格好とも言えるだろう。ちなみに  
光莉のランジェリーの大半は夜々が無理矢理買ってくれたものだ。スピカ5大スターの  
鳳天音に見初められてからというもの、夜々は光莉のお洒落に積極的だった。電気アンマの  
事もそうだが、時折夜々は光莉の事となるとやりすぎな所もあり、色々と彼女を困らせて  
しまう。  
 
「似合ってないかな、蕾ちゃん?」  
自分の下着姿を夜々以外の他人にチェックしてもらう――こんな機会は滅多に無いので  
光莉は蕾に聞いてみた。聞かれた方の蕾はたちまちうろたえて真っ赤になる。  
「そ、そ、そんなわけないじゃないですか! お、お似合いですとも! とっても、その  
……セクシーでステキです!! で、でも……」  
しどろもどろになりながらも蕾は思っている事を全て言い切った。憧れの光莉に対する  
賛辞を惜しむ理由などどこにもない。校則違反は気になるが、それに言及する前に――。  
「じゃあ、別にいいでしょ? それに今はスピカじゃなくミアトルの儀式の最中だし」  
夜々が笑って突っ込むと蕾は「うっ……」と唸って押し黙る。  
「これならば天音様もたまらず誘惑されちゃうよ、ね?♪」  
夜々の言葉に流石にそこまで恐れ多い事は……と困ってしまう光莉だが、夜々が嬉しそう  
なので自分も困った笑顔を返す。  
 
(そうでしたわね……光莉さんは鳳天音様の……)  
玉青も光莉がそんな下着を身に着けている理由に合点が行った。  
(もしかしたらこの電気アンマのテクニックをお教えするのは敵に塩を送る事になるの  
でしょうか……?)  
少しその事が頭をよぎったが、それも面白いかも、と思う。渚砂とベストカップルになる  
資格があるのか、今のエトワール様に強敵をより良い状態でぶつけてみるのは興味深い。  
 
「では、次は渚砂ちゃんですね♪」  
今度は玉青の顔が露骨に明るくなる。千代も興味津々の目で渚砂に注目する。  
「アハハ……困ったねぇ……」  
苦笑しながら渚砂もパジャマの下を落とした。シンプルな薄いブルーのスポーツショーツが  
常夜灯の光に鮮やかに浮かび上がる。体にフィットする素材で少し食い込んだ股間の部分が  
玉青には悩ましい。  
 
「ウフフ……ステキなお尻ですね、渚砂ちゃん♪」  
さっきまでとは裏腹に子供の様な表情でお尻に擦り寄る玉青。  
「ひゃあん!? ……び、吃驚させないでよぉ〜」  
大声を上げないように渚砂は悲鳴を押し殺した。玉青は幸せそうにすりすりしていたが、  
はっと我に帰り、自分も立ち上がる。  
「私も脱がないと、ですね」  
再び上品に微笑むと皆と同様、するっとパジャマの下を脱ぐ。お嬢様らしく清楚な白の  
ショーツではあったが――。  
「わぁ〜〜♪」  
「か、可愛い〜!」  
夜々と光莉が感嘆する。玉青の下着はレース素材をふんだんに使用した、セクシーな下着  
だった。色も飾りも品良く、けれど見せる所は見せる――乙女の秘密の割れ目の部分は  
シンプルな素材でその筋の形をうっすらと想像させ、お尻は双球の半分を晒しながらも  
レース素材が扇情的になり過ぎないように縁取られている。この中では一番凝った作り  
だった。  
「フフフ……」  
スピカの生徒達の賛辞にまんざらでもない表情の玉青を、渚砂は改めて見つめる。  
 
「玉青ちゃん……そんな下着も持ってたんだ」  
「ええ、これも花嫁修業の一環ですから」  
「へっ……?」  
唖然とする渚砂に玉青は艶やかに微笑む。  
「花嫁になる前には殿方との夜の御勤めの作法も学んでおきませんと……ね♪」  
「はぁ〜〜〜……」  
クスクスと悪戯っぽく笑う玉青を見て、どこまで本気なのだろう? と渚砂は感心しながら  
もそう思う。  
そう言えばミアトルは良家の花嫁育成学校の側面もあり、学園生活全般に花嫁修行に  
関わる内容も多く、在学中から婚約する女生徒もいる、と玉青自身が話していたが……。  
(玉青ちゃんって……なんでも凄いねぇ)  
才色兼備はもとより、渚砂の髪や服のコーディネイトをしたり、様々なセンスの良さが  
感じられ、それが誇らしげでないのがすごい、と渚砂は思う。  
(エトワール様とはまた違うタイプの美人……だねぇ)  
こんな凄い人達がどうして自分に縁があるのだろう、と渚砂が思っていると、下級生達が  
立ち上がる気配がした。  
 
(いよいよ、千代ちゃんと蕾ちゃんか……)  
光莉や夜々の様に1学年違うだけならあまり自分と身に着けるものは変わらないだろう  
けど、1年生ともなるとやはり色々な面で違う。特に下着などは――。  
(熊さんのプリントパンツだったりして。クスクス……)  
渚砂がそんな事を思ってると、灯りから離れた位置で玉青が手招きしているのが見えた。  
 
「わ、私たち……?」  
「は、はい!」  
蕾と千代が玉青の所に行くと、玉青は彼女たちを近くに寄せなにやら小声で話をし始める。  
そして――。  
「え? こ、これを私達が……!?」  
「や、やだ……これなんて、凄い……」  
戸惑う新入生の声が聞こえ、玉青がなにやら諭すと二人してもそもそと着替え始めた。  
 
やがて静かになると、灯りの所に玉青を先頭に三人が戻ってくる。玉青は満足そうな表情で、  
新入生の二人は恥かしげに彼女の後ろについてくる。  
「お待たせしました。妹たちの衣装替えが済みましたの……さぁ、御姉様方に見ていただき  
ましょう」  
玉青が二人を自分の前に押し出す。二人は――特に蕾は抵抗したそうにしていたが、玉青が  
許してくれそうにないのを悟ったのか、渋々灯りの元に進み出た。すると――。  
 
「わぁ〜お! セクシー♪」  
「つ、蕾ちゃん……それ……」  
「わ、私が選んだんじゃありません! 玉青様が選んで……その……」  
スピカの二人が目を丸くするのを見て蕾はますます真っ赤になる。それは仕方ないだろう。  
蕾はこの年になるまで、腰紐で結ぶショーツなど穿いた事が無い。  
玉青は自分のランジェリーコレクションからセクシーな下着を選んで新入生の妹二人に  
穿かせたのだ。  
蕾のはスピカらしく清楚な白――なのだが、その面積は小さく、三角形の大きさが腰まで  
届いていない。Tバックとかでは無かったが、お尻は半分見えているし、前も秘密の部分  
だけが不透明で、サイドはシースルーなのだ。蕾のまだ十分に成長しきっていない体には  
完全にミスマッチだが、それが似合っていないわけではなかった。むしろ逆にそんな格好を  
させられて恥かしがってる蕾は上級生のお姉様の保護欲をそそっていた。  
「蕾ちゃん、可愛い〜〜♪」  
「ちょ、ちょっと! 夜々さん! み、皆さんが見てますよ〜〜!」  
蕾は抱きついてくる夜々から逃げようとするが、大人びたランジェリー姿を見られる  
恥かしさと抱きつかれる照れくささに、力が入らない。  
 
「千代ちゃんのも可愛いねぇ〜♪」  
例の暢気な口調で渚砂に言われると千代は硬直して真っ赤になった。  
千代が身につけさせられたランジェリーは、薄いピンクのやはり面積の小さいタイプだった。  
結ぶタイプではないがサイドはやはり紐である。可愛らしいリボンがあしらわれているが、  
僅かに見る者を和ます効果はあるが、全体的に見て扇情的であるのは変わらない。  
「わ、わ、わたしは……その……!」  
セクシーなランジェリー姿を渚砂に見られている事で岩の様に固まってしまった千代。  
玉青が面白そうにお尻をつついているのも気づかない。  
 
「さて……では、最初は光莉さんと渚砂ちゃんからですね」  
「「え!?」」  
玉青の指名に同時に声を上げる光莉と渚砂。  
「妹達に電気アンマの楽しさを教えてあげるには、まずお姉さまから見本を示さないとね?」  
玉青はウィンクして一同を見た。  
 
 
          *          *          *  
 
 
「それに、光莉さんも知りたいんですよね、電気アンマの極意を」  
部屋にある二つのベッドに光莉と渚砂が寝ている。その足元には夜々と玉青がそれぞれ  
座っていた。ベッドの間には二人の新入生がちょこんと正座して、左右のお姉さん達を  
キョロキョロと見ている。ベッドの間、つまり新入生の前に置かれたデスクライトの常夜灯の  
光が届くか届かないかの距離に光莉と渚砂が下半身ショーツ一枚で寝そべっている姿は  
太股の陰翳が強調されて妙に艶めかしい。  
 
「え、ええ……そうです……けど」  
自分から言い出したことだが、いざとなると尻込みしてしまう。目の前にいる夜々は期待に  
満ち溢れた目で薄明かりの中でもわかるほど爛々と目を輝かせているし、ベッドの脇でじっと  
見つめる蕾の目も真剣だ。今更止めるとは言いだせない。  
「な、渚さんは電気アンマの事はご存知でしたの?」  
我ながらずるいと思ったが、自分の関心を少しでも逸らそうと渚砂に質問を振る。  
「わ、私……!?」  
突然話を振られた渚砂は目を白黒させるが、玉青の興味深そうな視線を感じ、コクリと頷く。  
「えっと……その……知ってたよ。アハハハ……」  
笑いでごまかそうとしたが、玉青が更に真剣な目で問い詰めてきた。  
「渚砂ちゃん……どこで電気アンマの事を知ったのですか?」  
「うっ……」  
私はお教えしてないですよね? とばかりに詰め寄る玉青に思わず引いてしまう。  
「そ、その……この前、静馬様から……話を聞いて……」  
それを聞いて玉青以外の面々も思わず顔を見合わせる。あの花園静馬と電気アンマの話に  
なって何も無かったと言うのは非常に考えにくい。渚砂はその場を言いぬけようとして一番  
まずい話を振ってしまったようだ。  
 
「静馬様から……それで、その後は?」  
「うっ……その……」  
結局、渚砂は図書館での出来事を全て話してしまうことになった。偶然とは言え、図書館での  
夜々と光莉の逢引を覗いてしまった事、静馬から彼女たちがやっている行為が電気アンマと  
言う技であることを教えてもらった事、そして……光莉が電気アンマされる姿を間近で見て、  
自分も同調し、その場で自慰をしてしまった事――。  
 
「渚砂さんに見られていたんだ……少し恥かしいです」  
「ご、ごめん! その……いけない事だと思ったんだけど……」  
光莉の呟きに渚砂が謝ろうとすると、光莉はやんわりと目で制してかぶりを振った。  
「渚砂さんは悪くないですよ。あんな所で秘め事をしていた私達が悪いんだし……」  
チラッと夜々を見る。夜々はバツが悪そうに頬を掻いた。  
「でも、なんというか……」  
光莉がじっと渚砂を見つめるので渚砂は真っ赤になって俯いてしまう。  
「渚砂さんが私と同調して一緒に気持ち良くなってくれたなんて……なんだか不思議な気が  
します」  
「光莉ちゃん……」  
フフフ……と悪戯っぽさと嬉しさがあいまった表情で光莉が渚砂を見ると、渚砂は何か  
体が熱くなるのを感じた。渚砂だけではない。話を聞いていた下級生の二人も、そして、  
夜々や玉青までも――女の子が女の子に電気アンマされて悶える姿を別の女の子が見て、  
その気持ちが同調し、自分も気持ち良くなってしまう――この感覚は女の子だけにしか  
わからないだろう。  
 
「今の光莉さんと渚砂ちゃんのお話――これだけでも電気アンマって、素敵な事だと  
思いませんか?」  
玉青が新入生達に言うと、二人はその場でコクコクと頷いた。今から彼女達は御姉様達が  
電気アンマされている所を見せてもらえるのだ。渚砂が感じた体験を自分達も経験できる  
となれば、期待で胸が膨らんでいく。  
蕾と千代はお互いに背中合わせになり、蕾は光莉の、千代は渚砂の方を向いて座り直した。  
これから憧れのお姉さまが電気アンマされる姿を一瞬でも見逃すまいとばかりに、じっと  
目を凝らしている。  
「もし、渚砂ちゃんの時の様に気持ちよくなってきたら、遠慮なく自分で慰めてもいい  
ですよ」  
玉青が声を掛ける。気のせいか少し忍び笑いをする表情で――。  
「でも、そこには光源がありますから、その姿を見られるのは覚悟してくださいね」  
「「あ……」」  
思わず二人はその状況に気づいて真っ赤になった。電気アンマされる姿を見られるのは  
恥かしいが、自分で慰める姿を見られるのはもっと恥かしいかもしれない。  
 
「お互いに向かい合って抱き合ったらどうかな?」  
夜々が提案する。  
「御姉様達の姿はお互いの肩越しに見て――そうすれば密着して気持ちいいかもよ?」  
「「……」」  
蕾と千代はお互いに顔を見合わせた。夜々の言う事はわかる。どうすればいいのかも。  
だけど――。  
「そんなの……恥かしいです……」  
蕾が躊躇った。下半身が恥かしい下着だけの姿で抱き合うなんて……それに肩越しに  
光莉のほうを見れるようにすると、前面は完全に密着する状態になるだろう。そうすると  
千代の体温がまともに感じられて、そして――。  
 
「こ、こんな感じでしょうか――?」  
そう、こんな感じで胸やお腹は勿論、素肌の太股まで――。  
「……って! あんたはいきなり何やってるのよ!?」  
蕾が躊躇している間に千代が立ち位置を変え、膝立ち状態で前面から蕾に密着してきたのだ。  
「何って……お姉さまの言いつけですから……」  
「言いつけって、私は何も承知してな…………はぅん!」  
千代が膝立ちで動いた時、彼女の太股が蕾の割れ目のあたりを擦るように刺激した。  
「ご、ごめんなさい! ……痛かったですか?」  
「い、いいえ……」  
弾みで大事な所を蹴ってしまったのか、と心配する千代に蕾は辛うじて返事をする。  
擦られるように太股が当たっただけで、蹴られたわけでもなく、痛くもないのだが――。  
 
(ここって……他の女の子に触れられただけでこうなっちゃうんだ――)  
蕾は初めての体験に頬を染め、ドキドキと心臓の鼓動が早くなる。ほんの少し、太股が  
当たっただけでこれなら――。  
(電気アンマされちゃうと……どうなるんだろう……)  
蕾は経験こそ無いが、電気アンマが女の子の股間を足でグリグリする技である事を知って  
いる。今の事故?を踏まえて、電気アンマされる事を想像するだけで下半身の力が抜けそう  
になる。  
「千代ちゃん……しっかり支えてよ……」  
口調はツンとしてるが、声に力がない。心細そうに抱きついてくる蕾に対し、千代は  
微笑んで自分もギュッと抱きしめるようにする。実は自分も不安だったが、蕾の気持ちが  
感じられる今の状況なら、不安なのは自分だけでないのがわかり、気持ちが落ち着いてきた。  
(一人よりも二人の方が支えあえていいかも……)  
千代はそう思いながら夜々のアイデアにちょっと感謝した。  
 
 
          *          *          *  
 
 
「準備は良いですね? では夜々さん、始めましょうか?」  
玉青が渚砂の両足を持つと、斜め向かいに位置取る夜々もそれに倣って光莉の両足を掴む。  
される側の渚砂と光莉の体が一瞬強張り、お互いの視線が不安げに交錯した。二つの平行に  
並んでいるベッドに分かれた二組はお互いにする方とされる方が反対の方向になるように位置  
取り、されている方は反対のされている方の表情が見えるようになっている。  
「これもお互いに同調しやすいようにですの。良いアイデアだと思いません?」  
玉青がにっこりと微笑んだ。確かに電気アンマは雰囲気も大事だ。自分の他にされている  
女の子の悲鳴や喘ぎ声を聞いたり、苦痛と快感の狭間で悶える表情を見たりするのは、気分を  
盛り上げる効果は間違いなくある。実際に渚砂は光莉が電気アンマされる姿を見てオナニー  
してしまったのだ。  
 
「夜々さん、始めはお互いを意識しあわないで、一番やりやすい方法にしましょう。私は  
渚砂ちゃんにするのは初めてですけど……」  
玉青はサラリと言ったつもりだろうが、声がほんの少し上ずっている、と夜々は見抜いた。  
玉青にとっては今まで大事に取っておいた機会なのだ。こうして自然に?電気アンマを出来る  
機会を得て動揺するのは仕方が無い。  
(それに、玉青様もご自分も楽しみたいでしょうしね♪)  
玉青は渚砂に電気アンマするのを楽しみたい。夜々も光莉に電気アンマするのを楽しみたい。  
しばらくはそのドキドキする時間を過ごしたいのは夜々も同様だった。  
 
「いきますよ、渚砂ちゃん」  
「う、うん……」  
優しくね、と言おうとして渚砂は口に出すのをやめた。玉青が優しくしてくれないはずがない。  
自分と違って淑女で優しいながらもちょっぴり悪戯っ子な所もある玉青だが、笑って許せる  
様な悪戯しか仕掛けてこない。ちょっとお世話されすぎなところもあるけど、それは――。  
「ひゃん!?」  
思わず大き目の悲鳴を上げてしまい、慌てて両手で口を蓋する。自分の太股に玉青の素足が  
当たる感触に驚いてしまったのだ。  
(なんだか、ゾクゾクしちゃうよぉ……)  
渚砂は下半身の方から震えが込み上げてくるのを感じた。玉青の足はそんな渚砂の心中を  
知ってか知らずか、太股を擦るように股間に侵入してくる。  
(あ、当たっちゃう……あそこに……)  
反射的に思わずキュッと太股を閉じようとするが、既に玉青の足は渚砂の太股に割りいれ  
られていて、渚砂が太股を閉じた事で逆に股間に押し付けられた。  
 
クニュ……。  
 
「あっ……!」  
思わず喘ぎ声を上げて仰け反る渚砂。そして足を太股と股間の三角地帯に挟まれる形と  
なった玉青はその渚砂の大事な所の柔らかさにドクン、と胸を打ち抜かれる。  
(柔らかい……ですの、渚砂ちゃんのここ)  
ここまで来るのに今までどんなに我慢してきたか――それを考えると玉青には感慨深い  
ものがある。下心を面に出さないように気をつけていたが、光莉の話からこの様な自然に  
電気アンマに持っていく流れに持ってきたのは決して偶然ではなかった。  
(ずっと……狙ってましたのよ、渚砂ちゃん♪)  
そう思いながら玉青は渚砂の股間に食い込ませるように足をあてがいながらグリグリと  
ショーツ越しに割れ目のあたりを責め立てた。玉青の足が動く度にショーツが渚砂の  
股間に食い込んでその形が段々浮き出てくる。玉青は更に上下に足を動かして、その  
食い込みを深くしていった。渚砂の太股が切なそうによじれる。  
 
(う……んッ……なんだか、体が熱いよぉ……)  
ハァ……ハァ……と息を荒げながら渚砂は玉青の電気アンマに身悶えした。体中が火照った  
ように熱くなり、特にショーツ一枚の下半身は太股と下腹部を中心にじんわりと汗ばんでいる。  
特に玉青に責められてショーツが食い込まされたあたりは――。  
(う……おしっこ……?)  
なんだか尿意に似た感覚が込み上げてくる。だが、それがおしっこをしたいのではない事は  
何となく渚砂にもわかった。自分で排出したい感覚ではなく、体が勝手に何か湧きださせる  
感じ――。実際に、玉青の擦りたてる音も段々クチュクチュ……と湿り気を帯びた音  
に変わりつつあった。  
 
「ここを責められると、いい気持ちになりますの♪」  
玉青は上下に擦るマッサージの様な電気アンマで浮き立たせた割れ目の上の方にある突起に  
狙いをつけた。足の裏の第一関節近辺の盛り上がり部分をその突起にあてがい、強めの振動を  
加える――。  
「はぁ……ん!!」  
渚砂の体が電気ショックを受けたように仰け反り、そして――。  
 
じゅん……。  
 
(……!!!)  
体の中心から熱いものがあふれ出す気持ち――それを感じた時、渚砂の股間は少しずつ濡れて  
いた状態から、一気に噴出した洪水でびっしょりになった。ショーツはその吸水許容量を  
遥かに越えて下腹部から股間そしてお尻のほうまでが透き通ってしまっていた。渚砂の若草の  
繁みもはっきりと浮き出ている。  
「あっ……」  
渚砂はまるでお漏らしをした小学生の様に呆然とする。  
 
「ショーツがダメになってしまいましたわね」  
クスクス……と玉青が笑う声が聞こえ、渚砂は羞恥心でいてもたってもいられない気持ちに  
なった。ルームメイトや新入生の前で恥ずかしい所を見られ、逃げ出したい気持ちになる。  
「大丈夫ですよ、渚砂ちゃん」  
玉青が電気アンマを中断し、渚砂に抱き寄って来た。  
「電気アンマされた女の子がこうなってしまうのは当たり前の事なのですから――こうやって  
恥ずかしい所を見られたり見たりしてお互いの心の壁を崩して仲良くなっていく――それが  
この技の魅力の一つなのですよ」  
玉青が渚砂の火照った頬にキスをする。渚砂は更に真っ赤になった。  
 
「このままではショーツは意味がありませんから脱ぎましょうね。でも、それだと下半身  
だけ裸になって変ですよね?」  
玉青がそう言いながら渚砂の正面に回ると彼女のパジャマの上のボタンに手を掛けた。  
えっ!? と声も出せずに驚く渚砂に構わず、玉青は一番上のボタンを外した。  
「だから、全部脱いでしまいましょう――渚砂ちゃんの魅力を新入生達に見せてあげて  
ください」  
「ちょ……! 玉青ちゃんッ!?」  
玉青は本人の許可も取らずに渚砂のパジャマのボタンを外していく。小振りだが肌の綺麗な  
乳房が現れ、ピンク色の秘密の蕾も顔を出した。  
「渚砂御姉様――綺麗……」  
常夜灯に浮き立たされたその光景に千代は思わず「ほぉ……」と溜め息をつく。  
「ち、千代ちゃん……」  
渚砂は千代の視線を感じてうろたえそうになったがグッと我慢した。妹の前で動揺して  
醜態を晒すなど出来ない――日は浅いがミアトルの女生徒としての心構えは出来ているようだ。  
玉青は渚砂を寝かせるとショーツに手をかけ、それをゆっくりと降ろしていった。股間の  
部分が粘着した状態でその部分が下がるのが遅れ、玉青が両サイドを掴んで太股まで  
下ろした時、丁度逆三角形の形にショーツが貼り付いていた。  
 
「あっ……」  
もう少しで自分の全てが曝け出される所で渚砂は抵抗を感じる。このまま玉青に全てを  
委ねていいのだろうか? そんな躊躇いが少しあったが――。  
「私に任せてください、渚砂ちゃん……」  
玉青の瞳と渚砂の瞳がお互いを映しあった。普段の玉青とはどこと無く違う、真摯な  
眼差し――渚砂はコクリと頷き、玉青に身を任せる証明の様に下腹部に置いていた手を  
離し、胸の前で組んだ。  
玉青が渚砂の若草の丘にキスをする。薄明かりに浮かぶ二人の御姉様を間近で見て、  
千代は陶然となった。頬は紅潮し、瞳は潤んで御姉様達の幻想的な愛の営みを憧憬の  
眼差しで見つめる。  
 
そして、ゆっくりと玉青はショーツを引き降ろした。渚砂の処女の秘裂が初めて灯りに  
晒される――その柔らかそうな若草と綺麗に丘を割ったクレバスが玉青の目に映し出され、  
その頬はほんのりと上気した。  
 
 

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