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 それは、良く晴れた日のことだった。  
 あるアパートの一室へ、一通の手紙が届けられた。  
「映美さん!」  
 彼は、手紙を手にしながら妻の名を呼んだ。  
「どうしたの、源一郎さん」  
 おっとりしている性格の夫が、珍しく興奮している。  
「来たんだよ。招待状が!」  
「招待状?」  
 映美は、源一郎から受け取った手紙の差出人を確認した。  
「マジック協会国際連合日本支部?」  
「そうだよ。FISMから招待状が来たんだよ!」  
 FISMとは『Fe'de'ration Internationale des Socie'te's Magiques(マジック協会国際連合)』の略称であり、世界最大規模のマジシャン協会である。  
 映美は、隣で興奮する源一郎から手紙を受け取った。  
「今度、FISMが新人用のマジシャンのコンテストを実施することになったんだ。それに出られることになったんだよ」  
 本文を読む映美に合わせるように、源一郎は内容を説明した。  
「凄いじゃない」  
「うん。このコンテストでいい成績を残せば、もっと仕事の依頼が来るようになるよ」  
 源一郎は、まだまだ駆け出しのマジシャン。  
 資質もよく、指捌きもいいが、今ひとつ大きな仕事が来ない。  
 この業界、ただ巧いだけではなく、何かウリがないと大口の仕事を取るのは難しい。  
 そして、実際に多くの有名プロ達は、すべからくコンテストで好成績を残して名を売っている。  
「開催地はスペインなのね。出発は……一ヶ月後ね。お土産は、ご当地の飾り物とかがいいかな」  
「何言ってるんだい。キミも一緒に行くんだよ」  
「私も?」  
「そうだよ。ボクの晴れ舞台を、キミに見て欲しいんだ。それに、キミ一人を日本に残していくなんて出来ないよ」  
 まだ新婚の二人。  
 ラブラブ度は絶好調。  
 何日も離れるなんて我慢出来ない。  
「それじゃ、私も行こうかな」  
 こうして、二人揃ってのコンテスト行きが決まった。  
 
 一ヶ月という月日は、あっという間に過ぎていく。  
 そして、いよいよコンテスト当日となった。  
 世界各国から招待された者が集っただけあり、新人のコンテストとはいえ、そのレベルは極めて高いものだった。  
 源一郎も、余すことなくその技術を発揮したが、結果は惜しくも二位だった。  
 しかし、観客の拍手を多く受けたのは、紛れもなく源一郎だった。  
 表彰とアフターパーティーを終え、二人は宿泊している部屋へ戻ってきた。  
「惜しかったわね。私は源一郎さんが一位だと思ったのに」  
 映美は、少し憮然として椅子に腰を下ろした。  
「仕方がないよ」  
 しかし、当の源一郎はさばさばしていた。  
「拍手だって、一番源一郎さんのが大きかったのに……」  
「それでいいんだよ」  
「え?」  
「ボクのマジックは、コンテストで優勝することじゃない。あくまでも、お客さんを喜ばせるためのものなんだ。だから、拍手が一番大きかったというのは、ボクにとっては一位よりも嬉しいよ」  
 そういって、優しく包み込むような笑みを見せた。  
「源一郎さん……」  
 映美の胸が高鳴った。  
 包み込むような心の大きさに、映美は惹かれたのだ。  
「流石に疲れたね。映美さん。先にシャワーを浴びてくるといいよ。ボクは少し道具の手入れをしないといけないから」  
 一流は道具を大切にする。  
 それは、マジシャンであっても変わらない。  
「それじゃ、先に浴びてくるわね」  
 映美は、着替えを手にするとバスルームへと消えた。  
『今日が最後なのよね……』  
 映美は、期待しながら念入りに体を洗った。  
 映美がバスルームから出てくると、入れ替わりで源一郎が湯をもらった。  
 コンテストという緊張を強いられる場所に出たせいか、いつもより長めの湯だった。  
 源一郎は、髪を乾かしながらバスルームから出てきた。  
「あれ? 映美さん」  
 映美は、ベランダに出ていた。  
「どうしたの?」  
 源一郎も、ベランダへ出てきた。  
「風邪ひいちゃうよ」  
 今は11月。  
 風呂上がりの夜風にしては寒い。  
「夜景を見たくなったの」  
 映美は、じっと夜景を見ている。  
「私、前はあの光を避けて暗闇に紛れていたのね」  
 それは、かつて怪盗であった頃の映美を指していた。  
「もしかして、戻りたくなったの?」  
 かつて『怪盗ルシファー』として世間を騒がせていた映美。  
 夜景を見ているうちに、怪盗ルシファーへの想いが沸いたのか。  
 しかし、映美は静かに首を左右に振った。  
「ううん。あの暗闇に、もう私の居場所はないわ。私の居場所は、夜景の中のひとつの灯り。愛する人と一緒に生きていく家。それが、私の居場所」  
「映美さん……」  
 映美は、源一郎に微笑んだ。  
「風邪ひくよ。部屋に戻ろう」  
 源一郎は、映美の肩に手を回すと、抱き寄せながら部屋へと戻った。  
 
「それじゃ、休もうか」  
 食事はパーティーで済ませており、入浴も終わった。  
 時刻も遅く、後は寝るだけだった。  
「あの……源一郎さん……」  
「どうしたの?」  
「今夜……どうですか? もちろん、源一郎さんがよろしければですけど……」  
 夜のお誘いである。  
 映美は、少し頬を朱に染め、照れくさそうにしている。  
「でも……持ってきてませんよ」  
 源一郎は、コンドームを持っていなかった。  
 今回はマジックのための渡欧であり、夜の営みは想定していなかった。  
 流石に、マジックでぱっと出すなんてことも出来ない。  
「着けなくていいです……」  
「でも、確か、そろそろ……」  
 計算でいけば、そろそろ排卵日。  
 時差で体のリズムが狂うから、前後する可能性があることを考えれば、コンドームは欲しいところ。  
「……赤ちゃん欲しいな……」  
「映美さん……」  
「ダメ?」  
 映美の言葉に、源一郎は答えに詰まった。  
『子供が産まれるとなると、何かとお金が掛かりますね。今のボクの稼ぎで養っていけるだろうか……』  
 腕がいいといっても、まだ駆け出しの新人。  
 今は二人だから生活していられるが、子供は産まれる前から色々とお金がかかる。  
「お金なら心配しないで。内職でもなんでもして働くから」  
 経済的理由から子供をつくっていなかった二人。  
 もし、源一郎が躊躇するとすれば、お金の問題しかないと判っている。  
 子供は二人で育てるものだから、働く必要があればそうするつもりでいた。  
「大丈夫ですよ」  
 源一郎は、いつもの笑顔を見せた。  
「お金はボクが稼ぐので、映美さんは家のことをお願いします。これから赤ちゃんも産まれて大変になりますから」  
「えっ……それじゃ……」  
 源一郎を見つめる映美。  
 源一郎は、映美の待ち望んでいる言葉を口にした。  
「赤ちゃん、つくろうか」  
「はい」  
 映美は、笑顔と共にしっかりと返事をした。  
 避妊の失敗によるものではない。  
 無軌道なセックスによるものではない。  
 夫婦共に、子供を授かることを望んで産まれてくる子ほど、幸せな子はいない。  
「映美さん」  
「源一郎さん」  
 お互い、相手の背に手を回すと、唇を重ねた。  
 長い長いキスの後、二人並んでベッドの縁に腰を下ろすと、源一郎は胸を愛撫をしながらパジャマのボタンに手をかけた。  
 源一郎の手が、ゆっくりと映美のパジャマのボタン外していく。  
 手が肌に触れているわけではないのに、期待で映美の鼓動が速くなる。  
 すべてのボタンが外されてはだけた胸には、魅惑的なレースのハーフカップブラが姿を見せた。  
 源一郎は、ブラの上から丁寧に、ゆっくりと乳房を愛撫していく。  
「んっ……んっ……」  
 映美が、愛撫に反応して声を漏らす。  
 源一郎の手は、そのまま下へとスライド移動し、映美の体を撫でながら股間へと滑り込んだ。  
 パジャマの中に潜り込んだ指は、ショーツ越しに自分を受け入れる場所をまさぐった。  
「あっ……あんっ……」  
 声が大きくなるにつれ、映美の体はほんのりとピンク色に染まった。  
 源一郎は、映美の上着とブラを外すと、抱き抱えてベッドに寝かせた。  
 自分の上着は、襟首に手をかけてひっぱって一瞬にして剥ぎ取った。  
 素早い脱衣は、ステージマジックで必要になるが、相手を待たせたくないこういうときには便利だった。  
 映美のズボンを脱がし、それに続いてショーツも奪った。  
 
「……綺麗だ……」  
 思わず言葉が口をついた。  
 一糸まとわない姿を晒す映美の姿が、いつにもまして神々しく感じられたのは、命を宿らせる女性の神秘を強く意識したからかも知れない。  
「……源一郎さん?」  
 動きが止まった源一郎を、映美が呼んだ。  
「あ、いや、ゴメン。あまりに綺麗なんで、思わず見とれてしまったよ」  
「もう……」  
 映美は、顔を紅くした。  
 源一郎は、顔を映美の股間へと沈めると、舌で受け入れ口を嘗め始めた。  
 ゆっくりと何度も陰唇やクリトリスを嘗め上げ、ときには膣口内に舌を入れる。  
「んっ……んっ……はあぁぁっ……んっ……んううっ……はああぁっ……」  
 映美は、常時喘ぎ声を漏らすまでに感じた。  
 それを証明するように、膣口からはとろりした蜜が溢れ出ていた。  
「源一郎さん……」  
 映美が、弱々しい声で呼んだ。  
「判った。挿れるね」  
 源一郎は、下に纏っているものを全て脱いだ。  
「違うの……私にも……源一郎さんのを嘗めさせて……」  
 今日の前戯は、子づくりのための準備。  
 そして、子供は二人でつくるもの。  
 それにも関わらず、一人だけが愛撫をされた状態でセックスに移るのは嫌だった。  
 源一郎にも気持ちよくなってもらいたいし、なにより大切な子種を胎内に注ぎ込んでくれるペニスを愛撫しておきたかった。  
「映美さん……」  
 源一郎に、異論はなかった。  
 映美が愛撫しやすいように、源一郎が仰向けに寝て、その上に映美が覆い被さる形でのシックスナインの体位をとった。  
 映美は、すでに十二分に勃起したペニスを右手にとった。  
『今日はよろしくね。オチンチンさん』  
 心の中で呟くと、そっと尖端にキスをした。  
 まずは口に含み、唇で先端を刺激すると、今度は喉の奥までディープスロート。  
 舌を巧みにペニスに絡ませて、頭を上下させてペニスをしごく。  
 左手は陰嚢や裏筋を刺激した。  
『うっ……久しぶりだから、すぐに出してしまいそうだ……』  
 大会直前は練習に集中していたし、その前は生理だったので、その間、溜まりに溜まっていた。  
 それでも、源一郎は射精することなく、映美の膣内で指を這わせた。  
 マジシャンという職業ゆえの器用な指捌きは、愛撫でも存分に発揮された。  
 テクニックが炸裂するたびに、映美の体は反応し、ペニスを加えている頭の動きは停止した。  
『んあっ……気持ちいい……これじゃ、私のための愛撫みたい……』  
 お互いの愛撫により体は昂ぶる。  
 先に耐えきれなくなったのは映美だった。  
「んああああっ!!」  
 映美は、背を仰け反らせると、大きく嬌声を挙げた。  
「はぁ……はぁ……はぁ……」  
 映美は、肩で激しく息をしていた。  
「もう……源一郎さんが気持ちよくならないといけないのに……」  
 映美の言葉には、軽くイってしまったことによる複雑な感情の色が混ざった。  
「大丈夫ですよ。ボクもそろそろ限界でしたから。あのまま続けられたら、出してしまうところでした」  
 源一郎は、映美の愛撫が充分であることを告げた。  
「それは困るわ。今日は、おナカの中に出してもらわないと」  
 今日は子づくりをしているので、膣外に射精されるのは困る。  
 一滴の精液も無駄には出来ない。  
「それじゃ、源一郎さん……」  
「うん……」  
 もう、これ以上の愛撫は不要なことは明白だった。  
 二人は、体位を入れ替えて正常位の準備をとった。  
 
「いきますよ、映美さん……」  
「来て……源一郎さん……」  
 源一郎は、立てられた両膝の間の腰を沈ませると、ペニスで膣口を捉えた。  
 さらに腰を落とすと、充分すぎるほど濡れている膣口は、何のためらいもなくペニスを受け入れた。  
「うんっ!」  
 映美は、挿入の感触に声を挙げた。  
 軽くイったばかりで、神経が敏感になっている。  
 源一郎は、ゆっくりと腰を前後させてピストン運動を始めた。  
 次々と膣内にあふれ出てくる蜜は潤滑油となって、ペニスの運動を補助する。  
 カリによって膣内から掻き出された蜜は、ベニスにまとわりつき、ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てた。  
「今日の映美さん、随分と濡れていますよ……」  
「そんなこといわないで……」  
 夫婦といえども、そのようなことを口にされると恥ずかしい。  
「映美さんが感じていると、ボクも嬉しいです」  
 源一郎は、もっと映美を悦ばせようと、カリで膣襞を強くこすって刺激を与え続けた。  
 さらに、豊満で張りのある乳房に食らいつき、舌で勃っている乳首を愛撫した。  
「うんっ……はっ……うあっ……」  
 映美の喘ぎは、もはや、声というよりは獣が喉を鳴らす呻きに近い。  
 それは、映美に絶頂が訪れることが近いという合図でもあり、胎内もその準備に入っていた。  
「映美さん……そろそろイキますよ……」  
 源一郎は、フィニッシュに向けて膣奥を攻めた。  
 ぐいっ、と奥へと突くたびに、尖端がこつこつと子宮口に当たる。  
「んんっ……イクッ……イクッ……」  
 すでに映美の肉体は快楽信号が飽和状態であり、いつイッてもおかしくない。  
「ああ……映美さん……イキますよ……膣内に出しますよ……」  
 射精に向けて、源一郎の腰の速さは最大限までに加速される。  
「んんっ! 来てっ! 膣内に! 膣内に出してっ!」  
 映美は、源一郎の背中に手を回し、つま先まで足をぴーんと伸ばした。  
「あっ! あっ! ああーっ!!」  
 映美が絶叫した瞬間、膣は、きゅーっ、と強く締まった。  
「うっ!! 映美さんっ!!」  
 源一郎は、ペニスを一番膣奥まで突き入れると、そのまま映美の上に体を密着させて強く抱きしめた。  
 ぶびゅうぅーーーっ!!  
 それは、射精というよりは、我慢を重ねた放尿のごとき勢いだった。  
 膣は射精に呼応し、小刻みに収縮しながらペニスを搾る。  
 びゅうぅーーーーーっ!!  びゅうぅーーーーーっ!!  
 源一郎も、我慢することなく映美の胎内へ精液を放つ。  
 お互いを強く抱きしめたまま、膣内射精は行われた。  
 射精が残滓を吐き出して落ち着くまでには、しばし時間がかかった。  
「……源一郎さん」  
 抱きしめあったまま、映美が話しかけた。  
「なんですか、映美さん」  
「また、いいですか?」  
 映美からの二回戦の申し出。  
「もちろんですよ」  
 源一郎に異論はなかった。  
 むしろ、妊娠させるためには、もっと膣内出ししななければと思っていた。  
 源一郎は、映美を抱き抱えたまま体を起こし、対面座位へと姿勢を変えた。  
 
「動きますね」  
 今度は、映美みずからが腰を上下させて、ペニスを刺激した。  
 源一郎は、映美の乳房を愛撫し、ときにはクリトリスを刺激して映美を愛した。  
「映美さん……そろそろ……」  
 二度目の射精が近い。  
「私も……」  
 映美も、ふたたびアクメを迎えるほどに昂ぶってきた。  
 映美は、腰の振りを一度速くしてから完全に腰を落として、子宮口でペニスを押さえると、そのまま腰を前後に振ってペニスを刺激した。  
「凄いです……映美さん……もう出ます!」  
 源一郎は、映美を強く抱きしめた。  
 びゅうぅーーーーーっ!!  
 今度の射精は、鈴口から直接子宮口へと精液を放った。  
「くうううっ!」  
 射精に子宮が強く反応し、電気信号が脊髄から脳へと駆け抜ける一方、膣は収縮を開始した。  
 びゅうぅーーーーーっ!!  びゅうぅーーーーーっ!!  
 一度目同様の、強い射精が続く。  
「凄い……搾り取られているよ……」  
 まるで、搾乳機でも付けられているかの如く、膣はペニスにリズミカルに刺激を与えて射精を促している。  
「出して……全部出して……妊娠させて……」  
 映美も、少しでも多くの精液を受け止めたかった。  
 源一郎はペニスに受ける膣の収縮を、映美は射精をしているペニスの脈動を感じながら、射精がおさまるまで、二人は抱き合ったままじっとしていた。  
 二度目の射精も落ち着くと、二人はキスを交わした。  
 舌を絡め、互いの唾液を交換しあった。  
 唇を離すと、名残惜しそうに唾液が糸を引いたが、その糸が切れぬうちに映美が口を開いた。  
 
「最後に、後ろからお願い……」  
「後ろって、その、バックからですか?」  
 映美は、こくっ、と頷いた。  
「あの、後ろからだと、妊娠しやすいって聞いたんです。だから、最後に後ろからして欲しくって……」  
 すでに、妊娠するには充分なほどの精液が注がれている。  
 それでも、妊娠するかどうかは神様の知る世界。  
 いや、もしかしたら、神様も知らないのかも知れない。  
 それなら、出来る限りのことはしておきたい。  
 今は、少しでも早く妊娠をして、愛する人の子を産みたい。  
 それが、映美を大胆にさせていた。  
「判りました。もう、これ以上は出ないってぐらい、映美さんの膣内に出します」  
 二人は、フレンチキスをすると、ペニスが抜けないように注意しながら、一度側位を経てから、後背位へと転じた。  
 源一郎は、腰をしっかりと掴むと、最後の射精へ向けてのピストン運動を開始した。  
 すでに二度の射精により膣内は精液であふれかえり、べとべとぬるぬるしていて膣襞にカリがひっかかりにくくなっている。  
 それでも、後背位という体位は、それを補うほどに刺激的で快楽的だ。  
 しばらくして、源一郎は映美の背中に覆い被さると、両手で乳房を揉みしだいた。  
「あんっ! ああっ! んんっ!」  
 映美が喘ぐ。  
 獣の交尾のような体位は、本能に訴えかけるのか子づくりセックスであることを強く認識させた。  
 さらに、相手の顔が見えないことが、犯されているような錯覚さえ憶えた。  
 強く胸を揉まれ、子宮をぐいぐいと押し上げられる。  
 すでに室内には今まで嗅いだことがないほどの汗と精液の匂い。  
 映美は、今までに感じたことのない興奮の渦に溺れていった。  
 ずゅちゅっ! ぐちゅっ! ずちゅっ! ぐちゅっ!  
 腰を動かすたびに、性器の結合部は音を立て、体液の飛沫が散る。  
「うんっ! んんっ! あうっ! くぅっ!」  
 映美は、シーツをぎゅっと掴み、踏ん張っている。  
 ぽたぽたと全身からは汗が垂れ、あっという間にシーツが汗で染みる。  
「映美さん。出しますよ。イキますよ」  
 源一郎は、三度目の射精の予告をした。  
「んっ! 出してっ! あっ! 受精させてっ! んんっ! 妊娠させてぇっ!」  
 映美は、淫靡な空間の中で牝と化し、必死に孕まされることを望む。  
「出すよっ! 妊娠させるよっ! 赤ちゃん産んでっ!」  
 源一郎も、本能の赴くまま牡と化し、妻を孕ませようとする。  
 数回激しく腰を振り、一気に射精感が込み上げてくると、一気にペニスを膣奥まで突き入れた。  
 ぐぐぐ、と子宮を押し上げたまま、ペニスは鈴口を子宮口と合わせた。  
 ぶしゅうぅーっ!!  
 ペニスは、大きく脈動して三度目の射精を開始した。  
「あああんっ!!」  
 映美は、膣でペニスの脈動を、子宮で精液の流動を感じ、背を仰け反らせて喘いだ。  
 ぶしゅうぅーっ!!  ぶしゅうぅーっ!!  
 三度目の射精ともなると、その量と勢いは落ちるものの、それでも『孕ませる』という意思による効果は大きく、次々と濃厚な精液が子宮内へと注入されていった。  
「あ……」  
 射精が続く中、映美は腰が砕けてうつぶせになった。  
 体を密着させていた源一郎も、一気にのし掛からないように気を付けながら、映美の上に重なった。  
 びゅっ! びゅっ! びゅっ!  
 源一郎は、最後の最後まで映美の胎内で射精をした。  
「……赤ちゃん……欲しい……」  
 ほとんど、意識が飛んでいる状態の映美が呟いた。  
「大丈夫ですよ……きっと妊娠しますよ……」  
 源一郎は、優しく映美の耳元で囁いた。  
 映美は、幸せな笑顔を浮かべていた。  
 
 翌日は、非常に慌ただしかった。  
 疲れ切ってしまった二人は寝坊し、さらにシャワーを浴びなければならず、かなりドタバタしての出国となった。  
 機内では、昨夜の疲れも手伝ってか、二人ともよく寝ていた。  
 ようやく家に戻ってきて部屋の灯りを付けると、そこは先日までいたホテルとは違っての安アパート。  
 でも、源一郎の目には、出掛けるときとは明らかに違う輝きを放って見えた。  
「今日からまた、ここから二人で始めていくんだね」  
 コンテストでの入賞が、源一郎に自信を与えていた。  
「いえ。三人よ」  
 後ろで、映美が訂正を入れた。  
 振り向くと、映美は下腹部に手を当てている。  
 そこは、子宮の位置。  
「三人って……もう判るの?」  
 源一郎の問いに、映美は首を横に振った。  
「まだ判らないわ。でも、きっと、赤ちゃんがデキるわ。私達が望んで愛し合ったんですもの」  
 女のカンというやつだろうか。  
 しかし、映美の言葉からは、強い説得力が感じられた。  
「そうだね。これからは、赤ちゃんのためにも頑張らないとね」  
「源一郎さん……」  
 二人は、そっと抱き合うと、唇を重ねた。  
 このとき、映美の卵管内では、すでに受精を終えた卵子が卵割をしながら、着床するべく子宮へと移動を始めていた。  
 
 15年後。  
 昼下がりの午後、とある一軒家。  
 その家の表札には『羽丘』の文字があった。  
 その玄関から、勢いよく少女が飛び込んできた。  
「ただいまー!」  
 少女は、ベレー帽を被り、髪は腰まで長く、その姿は映美を若くしたような子だった。  
「おかえりー、芽美」  
 出迎えたのは、エプロンをつけた映美だった。  
 先程飛び込んできた少女は、源一郎と芽美の子・芽美。  
 彼女は中学二年生の活発な女の子だ。  
「ねえ、ママ、聞いてー。アスカJr.ってば、ひどいのよーっ」  
 芽美が、愚痴り始めたところ、奥から源一郎がやってきた。  
「やあ、おかえり、芽美」  
「あ、パパ。そうだ、これ、ポストに入っていたの」  
 芽美は、源一郎宛の手紙を差し出した。  
 源一郎は、開封をしてざっと目を通した。  
「おおー」  
 思わず上がる歓喜の声。  
「どうしたの?」  
 手紙をのぞき見ようとする映美。  
「今度のFISMのニューフェイスコンテストでの、エキシビジョン出演の依頼だよ」  
「すっごーい!! 確か、それってパパが賞を取ったコンテストでしょ」  
「そうよ。パパ、とっても凄かったんだから。本当だったら、パパが優勝しているはずよ。いまだに二位だなんて、納得出来ないわ」  
 コンテストを思い出して、不満を垂れる映美。  
「パパは、ママがそう思ってくれるだけで充分だよ。それに、ママには怒った顔は似合わないよ」  
 源一郎は、そうって手から花を出して映美をなだめた。  
「あら、パパったら」  
 映美はそれを受け取ると、後はいつものラブラブモードに突入した。  
「はいはい。それじゃ、あたしはちょっと出掛けてくるね」  
「あ、芽美」  
 映美が呼び止める。  
「なあに?」  
「アスカJr.とは仲良くしなさいよ。出会ったのも何かの縁なんだから」  
「えーっ!? だれがあんなヤツなんか!!」  
 芽美は、露骨に嫌な顔をした。  
「そういうこと言うものじゃないの。人間、どういう縁で繋がっているか判らないんだから。たとえばママとパパのようにね」  
 確かに、映美のいうことには説得力があるが、だからといってアスカJr.が相手というのは願い下げである。  
「おいで、ルビー」  
 ルビーは、一鳴きして芽美の肩に乗った。  
「いってきまーす」  
 芽美は、その場から逃げるように玄関を出た。  
「もう、ママったら。アスカJr.との縁なんて、くされ縁にしかならないわよ。それに、あたしの旦那さんは、もっとかっこいい人なんだから」  
 そういいつつも、頭に浮かぶはケンカ相手のアイツの顔。  
「あーん、違う違う! ぜーったい、あんなヤツが相手なんかじゃないんだからっ!」  
 芽美は、速攻で想像の顔を消去した。  
 その芽美が、あんなヤツと結ばれるのは、まだ先のことだった。  
 
「本当、懐かしいわね」  
 映美は、当時のことを思い出していた。  
「あれからもう15年なんだね」  
 源一郎も、改めて振り返ると、あっという間の15年であったことを実感する。  
「あのときはまだ駆け出しで、これから先どうなるかと思っていたけど、あのコンテストがあったから、今のボク達があるんだ」  
「それと、あの日の夜ね」  
 映美は、子づくりの夜を追加した。  
「そうだね。あのとき、芽美を授かったから、頑張ってやってこれたんだ」  
 妻にも子にも、よりよい生活をさせて上げたい。  
 その一心が支えとなり、マジックの腕を磨き、一人でも多くの人たちが楽しんでくれて、それが結果として稼ぎに繋がっていった。  
「芽美もいい子に育ってくれたし、みんなママのお陰だよ。ありがとう」  
 源一郎の言葉に、映美は静かに首を振る。  
「あなたが頑張っているから、私はそのお手伝いをしただけ。わたしの方こそ、パパには感謝しているわ。こんなに幸せな家庭を持つことが出来て。怪盗をしていた頃には、考えられなかったことですもの。ありがとう、パパ」  
 二人は、どちらからともなく相手を抱き寄せると、いつまでも唇を重ねていた。  
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