窓から月の明かりが射し込んでる…――今日は満月のようだ。
シャルの背中の羽が月光に反射して輝いた。
その美しさに、思わず見惚れてしまう…
この部屋にはわたしとシャルの2人きり、
ミスリル・リッド・ポッドは、気を利かせて部屋を出ていった。
そして今、2人とも生まれたままの姿だ。
お互い、この日が来ることを望んでいた…
わたしは、シャルの胸元に顔を寄せる。
「アン、本当にいいのか?止めるなら今のうちだぞ…?」
「シャル、私は後悔なんてしないから…あなたのものにして下さい」
シャルが無言で抱きしめてくれる…わたしも彼の背中に手を回した。
と、その時シャルの羽に手が当たってしまった。
「…!」
シャルの顔に少し動揺が走る。
わたしは慌てて手を離した。
「ご、ごめん、シャル…」
「…アン、全てが終わったら触らせてやるから、今は我慢してくれ。
行為の最中に誤って傷つけられたら困るからな」
そう言って、シャルの長く綺麗な指が、私の指を絡め取る…
そしてその言葉にわたしの体温は急上昇してしまった。
きっと今のわたしの顔は真っ赤になってしまってる…
シャルの顔が近づき、優しく口づけられる。
初めは啄ばむようなキスが段々深くなっていった…
お互い、相手以外何もいらない…そう伝えあってるようなキスだ。
わたしの口腔に侵入してきたシャルの舌は、何故か甘い気がした。
そして口内を蹂躙されて、息が苦しくなってしまう…
「ふっ…う…シャ、シャル…!く、苦し…!」
「あ…すまない」
「ううん…いいの、わたしもごめん…」
2人して謝ってることに、お互いが思わず笑ってしまう。
そして再び口づけを交わしあった…
ふいにシャルの右手がわたしの左手から離れ、わたしの下部に触れる。
分かってても思わず緊張してしまい、足に力が入ってしまう。
「アン、大丈夫だから…少し力を抜いてくれ」
「う、うん…」
どうにか心を落ち着かせて、力を抜くことを心掛けた。
するとシャルの指が、力が抜けるのを待っていたかのように秘部に触れる。
今まで誰にも触れさせなかった場所をシャルの指が滑る…
と、その時、何かを摘ままれる。
その瞬間、何とも言えない感覚が背中を突き抜けた。
「あぁ…!!」
「ここか?」
シャルがさらにそこを攻める。
最初は何とも言えない感覚だったのが、段々快感に変わっていく。
「あっ…な、何か…変な感じ…!」
「大丈夫だから、俺に全て委ねろ…」
「う…ん……!」
しばらくその場所を攻められる…もう頭が沸騰しそうだった。
羞恥に耐えていると、今度は別の場所を探られる。
そして指がある一点で止まると、次は体の中に侵入してきた。
あまりの痛さにびっくりしてしまう。
「痛っ!!シャル…む、無理…!」
「まだあんまり濡れてないな…少し痛いかもしれないけど我慢してくれ。
ゆっくり慣らすから…」
そしてシャルの指が私の中で蠢く。
最初は痛かっただけなのに、徐々に痛い中にも違う感覚が生まれ始めた…
それにつれて、声が思わず漏れてしまう。
「ふっ…ん…!あ…あぁ…!!」
恥ずかしいと分かっていても、止めることが出来ない…
段々そこが解れてきたのか、シャルの指がさらに増やされる。
少しひきつる感触があるが、それでも簡単に指の侵入を許してしまう。
「少し解れてきたな…もうちょっと我慢してくれ」
そう言って、わたしの中の指の動きを早める。
その瞬間、今まで感じたことのない快感が体を駆け抜けた。
「あぁ!あっ…!!」
「…達ったのか?大丈夫か?アン」
「はぁ…はぁ…よ、よく分からない…」
「そうか…でもまだ本番はこれからだから、もう少し頑張ってくれ」
そしてシャルの指がわたしから抜ける…と、次の瞬間、固いものが侵入してきた。
指とは比べものにならない圧迫感に思わず声が出てしまう。
「あっ…うぅ…く、苦し…!」
「すまない、アン…少し我慢してくれ」
「うん…!!」
そう言ってみたものの、やっぱ苦しいものは苦しい。
自分の意思とは関係なく、涙が零れてしまう…
それに気づいたシャルが、唇で涙を拭ってくれる。
わたしが落ち着くまで、シャルは動かずにいてくれた。
それでも我慢の限界が来たのか、申し訳なさそうに声をかけてきた。
「そろそろ動いてもいいか…?俺にも限界があるんだ」
「ご、ごめん…!ゆっくりお願いします…」
「あぁ…努力する」
そう言って、ゆっくり動き出す。
最初はまだまだ苦しかったけど、段々落ち着いてくる。
そして今度は違う感覚に支配され始めた…
シャルから与えられる律動に耐えていると、
シャルの右手がわたしの胸に触れた…と思ったらいきなり揉まれる。
突然の刺激に、思わず握られたままのわたしの右手で、
シャルの左手を強く握ってしまう。
それでもシャルは構わず、今度は胸の頂点を口に含んで甘噛みをした。
いきなりの刺激に声が抑えられない…
「あ!シャル…だめ!!」
「何がだめなんだ?」
「だ、だって…変になっちゃう…!」
「俺はお前に気持ちよくなって欲しいし、お前の乱れた姿が見たい」
「…!」
その言葉に、無意識にシャル自身を締め付けてしまう。
「つぅ…!あんま締め付けないでくれ。
アン、俺もそろそろ限界が近いから動くぞ」
「え…?あっ…んん…!!」
突然律動が早められる。
苦しさはもうなくなっていたけど、
その代わりさっきとは比べものにならない快感が襲ってきた。
「あっ!あっ!あっ…!!シャ、シャル…!!」
「アン…!!」
「あっあぁー……」
自分の中に冷たい感覚が広がる。
そこでわたしは意識を手放してしまった……
ふと目覚めると目の前にシャルの寝顔があり、思わずびっくりしてしまう。
それでもあまりの美しさに、つい見入ってしまった。
触れたくなり、手を伸ばそうとしたら、シャルが目を覚ました。
「……体は大丈夫か?」
「う、うん…」
今更ながら、シャルと結ばれた事実に恥ずかしくなってしまう。
でも後悔は全然なかった。
「シャル…ありがとう、わたしを受け入れてくれて」
「本当に後悔してないのか?」
「後悔なんてしないよ…。
シャル、わたしはいつか人間の男の人と結ばれて、家庭を持つかもしれない。
でもね、わたしが初めて愛した人はあなただから。
例え妖精でも構わない…あなたに全てを捧げたかったの」
「アン…」
「それにシャルには、わたしの全てを覚えてて欲しいの。
でもわたしに囚われたまま生きて欲しいわけじゃない。
わたしはいつか、あなたより先に寿命を迎えるわ…
でもあなたの記憶の片隅にわたしとの記憶があれば、
シャルの中で、わたしは生き続ける事が出来るのよ」
「…そうだな」
シャルは少し悲しそうな顔をした…
でもシャルは黒曜石。
きっと私が亡くなっても、その後何百年も生きることになるだろう。
愛する者が先に逝く悲しみは、わたしもママで経験した……
そこでわたしは一つシャルに提案した。
「シャル…わたしがいつかもう砂糖菓子が作れなくなりそうになったら、
最後に作る砂糖菓子は、その時の自分の像にするわ。
最後の力を振り絞って、最高の砂糖菓子を作って…
それをシャルにプレゼントするね」
「あぁ…じゃあ皺くちゃなおばあちゃんになったお前の像を期待してるよ」
そう言ってシャルは少し笑った。
その顔を見て何故か泣きたい気持ちになってしまった…
それでもどうにか泣くのは堪えて、1つお願いをした。
「シャル…羽を触ってもいい?」
「ああ…」
「ありがとう…」
シャルの羽に手を伸ばす。
シャルはやっぱりくすぐったそうな顔をしていた。
久しぶりに触った感触に、やっぱり感動してしまう。
これを砂糖菓子で再現するのは不可能だけど、
もっと将来技術を積んで、この羽に近づきたい…!
わたしの中の職人魂に火が点く。
そしてもう一つ、望みが生まれた。
「シャル、さっき最後に作るのは私の像にするって言ったけど、
もう1つ、その時の持てる技術を全て使ってあなたの像も作るわ。
それをわたしのお墓に入れて欲しいの」
「………お前が望んだことをするよ」
そう言って、シャルがわたしを抱きしめる。
人間の体と違って体温を感じないけど、
それでもわたしは幸福感に包まれた。
「アン、明日も朝早いんだから、もう寝た方がいい」
「うん…おやすみ、シャル」
「おやすみ」
そしてわたしはシャルの腕の中で、幸せな夢を見るのだった…―――