お風呂に入って寝巻きに着替えあとは寝るだけ、と部屋で読みかけのファッション雑誌を捲っていた、そんな時。  
夜凪君から急な呼び出しがきた。  
携帯のメールには「今すぐ来て」と一言だけ。  
どんな用があるのかはまったく書いていない。 まあ、いつものことだけど。  
 
なんだかよくわからないうちに告白させられて、二人が世間一般に言う恋人?らしきものになってから二ヶ月。   
キスとか体を触られたりとか……それくらいは一応あったりするけど、まだ深い関係ではないっていうか……。  
二人の関係は学園にいた頃から全然変わっていない。  
 
私はいつまでたっても夜凪君の雑用係。   
 
呼び出されたらすぐに駆けつけてお茶を入れるとか食事を用意するとか。  
急に呼び出されて雑用をする日々。  
……何もこんな夜中にまで呼びつけなくてもいいのに……。  
ため息をつく。  
でも、本当に嫌なら行かないはず。 こんな呼び出しでも呼んで貰えるのがうれしいなんて。   
彼の言動に一喜一憂する自分をバカだと思う。  
 
弟や母に小言を言われるのが嫌で、夜中にそっと家を抜け出した。  
息が白い。 耳が冷たくてジンジンする。  
こんな時間だからいつもはにぎやかな道も今は誰も歩いていない。  
一人で歩くのは怖いけど。  
等間隔に並んだ街灯の明かりだけを頼りに、  
小走りになりながら寒い石畳の夜道を歩いていく―――。  
 
☆★☆  
 
やっと夜凪君のマンションに着いた。  
合鍵を使って部屋に入ってみると、部屋の中は暗く、物音ひとつしない。  
明かりのついていない寒々としたリビングには当然誰もいない。  
そのまま廊下を歩いて今度はベッドルームの扉をそうっと開けてみる。  
と、広いキングサイズのベッドには誰かが寝ている気配がする。  
もしかしなくても、呼びつけておいて寝てるとか!? ひ、ひどい。  
「夜凪君?」  
小さな声でそっと名前を呼んでみるが返事はない。  
「夜凪君……。寝てるの?」  
もし寝ていたとしたら、起こした!と怒られるのを覚悟でもう一度先ほどよりもう少し大きめな声で声をかける。  
「……ん…、ああ。来たの」  
来たの、じゃないよ。 もう。  
でもけしてそんなグチを言える相手ではない。   
 
『夜凪君には絶対服従』。  
 
そう、これはもう学生の頃からの刷り込み。 今さら変わらない、変えられない。  
「あの、何かすることがあるの? あるなら私、早く済ませて帰りたいんだけど」  
「へー、いきなり帰る話? いい度胸だね」  
「だって……!? 夜凪君、明日仕事でしょ? 私だって仕事あるし……」  
私が帰りたそうなそぶりをすると、即座に不機嫌なオーラが漂った。 いつもと変わらないポーカーフェイス  
なのに空気が違う。   
いつの間にか、そういう空気を敏感に察知できるようになっているいじめられっ子気質な自分が悲しい。  
「あ、あの、べ、別にすぐ帰りたいってわけじゃ…な…」  
おろおろして言いつくろう私ににこやかな笑みで彼は言った。  
「そう。 まあいいや。 なら早く済ませようか。 その”用事”ってヤツを」  
にっこりと微笑んで彼が言った。  
 
「ベッドの中に入って」  
 
「へっ!?」  
「何を惚けた顔してるの。 早く」  
「ど、どうして!? 用事ってそれ!? そのために私を呼んだの?」  
「”そのため”ってなに? へー。 お前、期待してるわけ?」  
「え、だって、ベッドの中に入れって……今、夜凪君が……」  
「今日、寒いよねー。 先日まで暑いくらいだったのにいきなりこんな冬になっちゃうなんてさ。 まだ暖房も  
毛布も冬服も出していないし。 ベッドが寒くてちっとも寝られないよ」  
そうだった。 夜凪君は極度の低体温で低血圧だった。   
うららかな秋の陽気が一転して、冬の木枯らしが吹いた今日。 彼はそんな寒さがとても苦手らしい。   
学生の頃は冬の季節はいつも調子悪そうだった。  
まあ、夏だって春だって彼は常にだるそうなんだけど。   
 
それにしても暖房代わりか……。   
好きな人と二人でベッドに入って、何もされないで寝るだけなんて、辛すぎるよ。   
いや……夜凪君に何かされても困るけど。 恥ずかしすぎて憤死するかも。  
もちろん自分から「して」、なんて死んでも言えっこない。  
やっぱりこのまま家に帰りたい!!  
 
彼になんとか考え直してもらうためにあれこれ代案を回らない頭で必死で考える。  
「じゃ、じゃあ私、クローゼットから毛布を出してくるよ」  
そういうと、はぁ〜とため息をつかれた。  
「あのさ。 今からクローゼットの毛布を出してどうする気? 俺、日光に干して無い毛布で寝るなんてやだから」  
「……じゃあ暖房を入れるから、もうちょっと我慢して」  
「却下。 いいから早くベッドに入ってくれる? 今から暖房なんか出すより、お前の体で暖めろ。 お前は体温が  
高いからベッドがすぐに温まるんだよ」  
「……そんな、人を湯たんぽみたいに…………」  
グダグダいい続ける私にうんざりしたような顔で夜凪君がため息をつく。  
「いやなら別に、帰ってもいいよ」  
「へ?」  
「俺のいう事が聞けないというのなら、お前がここに居る必要なんて無いよね。 こんな夜中に呼び出して悪かったね。  
早く帰ってね」  
「………………うん」  
 
本当にこのまま帰ってもいいの? それもなんだか悲しくて、脱いでしまったコートをもたもたと羽織りながら  
身支度を整える。  
 
いう事を聞かない人間はここに居る必要はないか……。   
もう私は要らないってことなのかな。 このまま別れちゃうのかな。  
奴隷は嫌だったけど、ひょっとして奴隷としてですらも、傍にいられなくなるのかな。  
どうしよう。 でも、夜凪君は何も言ってくれないで、布団にもぐりこんだままだ。  
 
「……じゃあ、私、帰るね。 夜凪君お休み…な…さい……」  
 
ぽろりと涙がこぼれた。 ハッとして、夜凪君に見られないように慌てて後ろを向く。  
やだ、鼻声になっちゃった。  バレたかな。 そんなのダメだよ、面倒な女だって思われちゃう。  
『泣くなんてサイテー。これだから女は』って言われちゃう。  
嗚咽しないように深呼吸して、必死で涙を止める。  
早く。 早く部屋を出なきゃ。  
あわててベッドから離れようとしたとき、腕を取られた。  
「そんな顔で、夜道を一人で帰るわけ?」  
やっぱりバレてた。  
「じゃあ最初からこんな夜中に私なんて呼ばないで…ください。 手を離して。 私、帰りますから」  
他人行儀に敬語で帰ると告げた。 すると夜凪君が一瞬、寂しそうな顔をした。   
あの俺様でクールでいつもどんなことにも動じない夜凪君が?   
今日はいったいなんの日なの? 寒波到来だけじゃなくてこのまま台風でも来るっていうの?  
すると聞こえるか聞こえないか、くらいの小さな声で夜凪君が呟いた。  
 
「……寒い夜くらいは恋人に甘えたいと思ったのに……」  
 
”恋人?” ”甘えたい?”  
夜凪君の口からこぼれた言葉に胸がきゅーっと締め付けられた。   
話してくれたことはないけど、小さい頃から両親は仕事でいつも留守がちで。   
だから彼はいつも一人ぼっちだったらしい。 彼は家族的な経験がまったくないようだった。  
 
私のことちゃんと”恋人”と思ってくれてるの?  
私に甘えたいと思ってくれてたの?  
ベッドの傍まで戻って立てひざをする。  
「ご、ごめんなさい。夜凪君がそんな風に思っててくれてると思わなくて」  
彼の冷たい手のひらを握り締めて言う。  
「夜凪君が傍にいてほしい夜はいつも傍にいるから。 ううん、ずっと傍に置いてください……」  
寂しさを誤魔化す為にずっとクールを装ってきた彼。 少しでもその寂しさを和らげてあげられれば……。  
そう思ってつい口から出た言葉だったのに。  
 
「お前、それ……。 言ってる意味解ってる?」  
「えっ?」  
ぐるんと視界が一周して部屋の天井が見えた。 どうしてだか、ベッドに押し倒されて私の上に夜凪君がいる。  
「”ずっと傍に置いてください”ね。 ふっ。……ククク。 俺はただ、お前に自分から(SEXを)したいって言わせ  
たかっただけなんだけど、まさかそこまでねー。  ほんと参ったな、さき越されちゃった。 まあいいや」  
満面の笑顔で彼が私を見下ろして言う。  
「”プロポーズ”ありがとう」  
「はっ? えっ?」  
「うーん……。 そうだね。 お前が、そこまで言うなら結婚してやってもいいよ」  
「えええっ? ち、ちがっ! 私、そういう意味で言ったんじゃなくてっ……」  
「そう。 どうしてもこの俺と結婚したいの。 フフ、本当にお前は期待を裏切らない奴だよね」  
そう言って笑う彼の顔が、学生時代にたった一度見て以来一度も見たことが無い、私が絆創膏を貼ってあげた  
ときと同じ、心から嬉しそうな笑顔だったから、一瞬見惚れて、まあいいか、と思いかけたけど。  
 
夜凪君の事は好きだけど……。  
本当にいいの?サツキ。  結婚っていったら一生が掛かってるんだよ?  
うっかり流されたらこの先、寿命が尽きるまで奴隷生活が待っているんだよ?  
 
「え、えと、あ、夜凪君、今、凄くお仕事忙しいんでしょ? こんなに急に結婚なんてムリだよね?ね?」  
「ぜーんぜん。 明日早速指輪見に行こっか。 買ったらカナデやセイに見せびらかしに行かないと。 ……そうか、結婚か。  
これっぽっちも興味なかったし、一生しなくてもいいと思ってたけど、案外面白いかもね。 あいつらの顔が今から目に浮かぶよ」  
「そんな理由で結婚するのはやめてー」  
「もちろん、そんな理由だけじゃないよ。 『君の事を愛している』……これでいい?」  
何その棒読み。  
「う、うれしいけど、その、あの、でも、そう!まだご両親にもあったこともないし、こんな地味な私なんて、   
夜凪君、絶対にすぐに飽きると思うし……」  
「お前みたいに面白いヤツに飽きるなんてないと思うけどね。 ま、飽きたら別れればいいだけの事だし」  
「…………ヒドイ」  
私がよっぽど情け無い顔をしているのだろう。 彼が噴出す。  
「ぷっ。ウソだよ。安心して。…………………………………………絶対に逃がさないから」  
「っ!!ひぃっ!!」  
悪魔だ。 悪魔が目の前に居る。  
熱烈な告白に聞こえなくも無いはずの言葉が、この人の口からでると、なぜ?どうして?  
こうも恐ろしい事を聞かされている気分になるの?  
「フフ。 お前が自分から言いだした事なんだから、今更撤回はできないよ」  
何か言おうと焦ってパクパクと口を開け閉めするが、喉が詰まって言葉らしきものが一切出てこない。  
「あ、俺、お前の両親にそういうこと説明するの面倒だから、自分できっちり説得してきてね。   
……どうしてもって言うなら挨拶くらいはしてやってもいいけどさ。 ククク」  
本当に楽しそうな底意地の悪い笑い声。  
怖い。怖いよ。 なんでそんなに楽しそうなの? この笑顔は私よく知ってる。 夜凪君が悪巧みをしている時の顔だ。  
それもとびっきり悪い事を考えているときの顔。  
「や、……やだ! 絶対に嫌。 大体なんでいきなり結婚なの? 夜凪君、私なんて好きじゃないくせに……」  
押さえつけられた身体を必死でバタバタさせて抵抗する。  
もう死ぬ気で暴れて逃げて帰ろうと思った、その時。  
 
「お前、それ本気で言ってる?」  
両手首を戒めている彼の手が急に力を強め、ビリビリとしびれてくる。 怒ってるの?  
掛けていたメガネをいきなり外された。 視界がぼんやりと歪む。   
「んぐっ……う、うぅ…ん……」  
罰するように強引にキスをされた。   
「お前、俺に捕まったと思ってるんだろうけどさあ……、本当に捕まったのは俺のほうだよ」  
耳に舌を入れられ舐められる。  
「ひっ!」  
「お前の唇が……。 お前の身体が熱すぎるのが悪い。 もう手放せないんだよ。 ……観念すれば?」  
そう悪魔が耳元で囁く。   
「……でも、っ!」  
「うるさい。 話はこれくらいでいいだろ。 それより寒い」  
そういいながら彼は私の身体から手際よくコートやセーターを剥いで、ベッドの中に引き込む。  
が。  
「………………………………何これ。 お前の身体、冷たい」  
「だ、だって、寒い夜道を歩いてきたら、いくら私だって身体が冷えるよ」  
「はぁー。 本当に、まったくお前は使えないね」  
「……ごめん」  
しょんぼりした私に  
「別にいいよ」  
「きゃっ!」  
いきなり二本の冷たい腕が私の体に絡みついて、そのまま広い胸に抱きしめられる。  
「……ん……」  
耳元に彼の息がかかって、身体が勝手にびくりと跳ねる。  
「何? お前、本当になんか期待してる? 素直じゃないなー。 したいならしたいってはっきり言ってくれたらいいのに」  
「っ!?そ、そんなことっ!? や、やっぱり私もう帰る!!」  
そう言いながらベッドから抜けだそうと必死で手足をバタバタさせるのに、硬く抱きしめられている  
その腕から抜け出せない。  
「……そうだね。 まだ体温がいまいちだから、お前、もっと暖まってくれる?」  
「な、離して、……あっ……っ!!」  
胸をふにふにと持ち上げられ、捏ねられ、首筋にキスをされる。  
「ひゃあっ!!」  
ブラウスの裾から氷みたいに冷たい手が潜り込んできて、その手が下着の上から胸を好き勝手に  
揉みしだく。  
 
「あ……あっ……ん、んぅ」  
下着越しに敏感な頂を擦られて甘い声が漏れる。  
夜凪君にほんの少し触られただけだというのに身体が勝手に喜んでどんどん熱を帯びていく。   
頬が熱い。 心臓の鼓動がドクドク煩い。  
私の身体の熱を奪って、彼の手が次第に温まっていく。 だからその手がスカートの裾から太ももを  
撫でさすっても、今度は悲鳴は上がらなかった。  
「や、ああっ……ん……」  
耳朶に歯を立てられ、また身体が跳ねる。  
布団の中で、服を着たまま体中を愛撫されているせいなのか、どこもかしこも熱くてたまらない。  
必死で抵抗して胸を押し返そうとする私の手首を夜凪君が掴んで、その指に口付けする。  
「………………はぁ」  
夜凪君がため息をついた。   
「ああ、やっと暖かくなってきた。 ……今日は機嫌がいいから、どれだけでも奉仕してあげるよ。  
どうされたい? 俺に命令してごらんよ」  
「そ、そんなの、できないよっ。 もう、やめて……んっ……ゃあっ!!」  
いつのまにかブラウスのボタンどころかブラのホックまで外されていた。素肌が空気にさらされて鳥肌が立つ。   
暴かれた胸が恥ずかしくて隠そうと両手で覆うと、その手を取られてシーツに縫い止められてしまう。  
「見ちゃだめ、……んっ! ん……ん……」  
まったく抵抗できなくされたまま、キスをされる。 冷たい唇が軽く触れたかと思うと、すぐさま深く合わさり  
私の口をこじ開けて、熱い舌が入ってくる。   
「う……ん、んっ……っ!」  
角度を変えて何度も何度もキスされて、身体がどんどん熱くなっていく。  
彼が首筋や耳の裏にキスをしながら脱がした、ブラウスとブラジャーをベッドの下に放り投げる。   
「……お前の匂いがする。 男を誘うような匂いだよね……」  
「そんな…ん……じゃ、な……やぁっ!だめっ」  
スカートを剥ぎ取られ、下着も脱がされて……いつの間にか全裸にされていた。  
「”だめ”じゃないだろう? こんなにとろとろにして……。充分乗り気じゃない」  
指が私の雫が滴る部分に触れ、彼がほくそ笑む。  
 
「これならこのままいける、かな」  
「え……」  
下のほうを見てみると、彼が自分の服を脱いでいるところだった。  
生暖かいものが私のあの部分に擦り付けられる。  
そして私の両足を割り裂いて身体を押し進めてくる。  
「や、ん、あぁあああっ!」  
引き裂くような痛みとともに、彼が中に入ってくる。  
「くっ……キツ……うっ!……なんだ、こ…れ……うぅっ……」  
凄く痛くて、早く終わってほしくて、ただ我慢して目をぎゅっと閉じていた。  
なのに自分の上から余裕の無い夜凪君の声がして、うっすらを目を開けてみると、涙に滲んだ視界の中で  
そこには見たことも無い夜凪君が居た。  
痛いような、苦しいような……汗を垂らして歯を食いしばって……。 私、どこか変なのかな。  
「ご、ごめんね……。私、……んっ、よ、よくな……い?」  
「バ、バカッ。……そんなじゃなくて……くぅっ……、いいからお前は、集中してなよ……」  
「んっ、んん、あっ、ん」  
入れられたばかりなのに奥まで激しく擦られる。 痛いのか気持ちいのか解らない。  
部屋にグチャグチャと濡れた水の音が響く。 その音が自分の身体から出ているのだと思うと  
恥ずかしくて堪らない。  
「はぁっ、ん、うぅ、……ん、あ?、ああっ」  
たまたま一部分に触れた途端大きな声が出てしまう。  
「ここ? ここがいいの? ……くっ……いま凄い、中が……うっ、うねって……っ!」  
「わ、わから…な……ああ、やぁっ!」  
ひときわ強く突き入れられて大きな声が出てしまう。  
暴かれてしまった気持ちいい部分を集中的に攻められて、中がヒクヒクと痙攣する。  
「凄いね……俺のこと、うっ…ぎゅうぎゅう締め付けて……そんなにいい?」  
「も、ゆる…して……あぅ……ああっ! んん」  
またキスで唇を塞がれる。  
「ん、ん、んんっ!!」  
キスされたまま身体を強引に揺すられて、息が苦しくて、頭がぼーっとする。  
早くこの甘い拷問から開放されたくて、もっと強い快感を得ようと勝手に腰が動いてしまう。  
「ちょ……お前……くぅっ!……まったく……恐ろしいヤツ……うっ……」  
「あ、ああ、夜凪…君……。 夜凪君……。 あ、ああぁ、私……やぁああっ!」  
「はうっ……あっ、くっ……シマまるっ!うあぁあっ」  
暖かいものが中に注ぎ込まれる。  
大好きな人と初めての絶頂を駆け上る。  
 
☆★☆  
 
告白のときも、昨日の”プロポーズ”?もそうだけど、結局、私っていつも夜凪君が言わせたい  
セリフを言うように誘導されている気がする。  
彼は演出家だ。  
私がそういう言葉を言うように場の空気を支配することなんてたやすいのだろうけど。  
なんだか釈然としない。  
 
……でもその結果がこれなら……。  
 
嬉しくて。 それがはまっているのが信じられなくて、何度も何度も眺めてしまう。  
左の薬指に輝くエンゲージリング。 彼は翌日、仕事場から出てきた私をそのまま拉致するように  
車に引っ張り込んでそのままお店に行き、本当にこの指輪を買ってしまった。  
 
「もう。 普通に、好きって言ってくれたらいいのに……」  
本当にいつもいつも肝心な事は私に言わせて。  
「何か言った?」  
私のちょっと前を歩く彼はいつものように誰もが振り返るようなハンサムでクールで。  
でもテレているのか、ちょっとそっぽを向いている。  
変なところで不器用なんだから……。   
もう、苦笑いするしかない。  
 
これから、いつものカフェで、仲間を呼んで婚約したと報告するつもりらしい。  
もうこれで私の逃げ道はまったくなくなるわけだ。  
 
 
ちゃんと愛されている、って思ってもいいんだよね?  
いつかちゃんと……言って貰えるよね?  
 
学生の頃、私は夜凪君の奴隷だった。  
いつも夜凪君の後ろをついて歩いていた。  
4年たった今もそれは全然変わらないけど。  
 
 
夕暮れの冷たい木枯らしの街中を。  
あの頃とは違って、私達は手をつないで歩いていく―――。  
 
 
糸冬  
 

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