クリスの部屋まで歩いてくる道すがら、イルはひとことも口をきかなかった。すぐ横にいる、いつも明るく元気なリオが、
何か悲しげな表情を浮かべて顔を伏せ、押し黙っており、その沈黙が重くて、自分から口を開くことが出来なかったのだ。
「私は一人暮らしだから遠慮しないで。さあ、入って……」
クリスの部屋は、先ほどの繁華街からさして離れていない。繁華街から住宅地に変わるあたりの高層マンションの一室
である。室内は1LDKで、一人暮らしの女性にはやや広いくらいである。
リビングに通されるのかと思ったら、クリスは、リオの手を取りつつ、イルを寝室まで招き入れた。イルにすれば、初めて
訪れる他人の家で、いきなり寝室に通されるのは初めてだ。いったいこれから何が行われるのかと思いながら、イルは
クリスに招かれるがまま寝室に入った。
(あれ?)
イルは寝室内を見て驚いた。一人暮らしの部屋には不釣合いな、ダブルサイズのベッドが置いてある。物珍しげなイル
の視線にクリスは気付いたらしい。
「フフ……びっくりした?いいのよ、ここは、そういうことをするための部屋なんだもの。狭いベッドじゃいろんなことができ
ないでしょう?……さ、イルちゃんはそこの椅子にでも座ってて……」
と言って、小さな含み笑いを浮かべた。
(何?……『そういうこと』とか『いろんなこと』って……)
何かいわくありげな言い方に引っ掛かりながらも、イルはクリスに促されるままに、椅子の上に腰掛ける。クリスはベッドの
上に乗ると、相変わらず顔を伏せて押し黙ったままのリオの手を取り、
「さあ、リオは私の隣に座って」
と言って、引っ張り上げようとする。
「ねえ、クリス……お願いだから……そんなこと、しないで……」
「ダメ、私に約束してくれたじゃない」
(『約束』……?)
さっき街中でもその言葉を口にしていたが、リオとクリスがいったいどんな約束を交わしているのだろう。イルにすれば、ます
ます訳がわからない。しかし、イルは、胸の中に今まで経験したことのない疼きが湧き上がってくるのを感じた。リオの、普段
決して見せたことのない悲しげな表情、切なげな瞳、露出の多い服装と、そして身体全体から醸し出される淫らな雰囲気……
リオとクリスの関係にどんな事情があるのかはまだ分からない。しかし、頭で理解できなくても、そこには何か、妖しく淫靡な
空気が漂っていることを肌で感じ取ることはできる。
「………」
クリスに促され、リオはきゅっと唇を噛みながらベッドの上の乗り、クリスの隣に横座りに腰を下ろした。
タイトなニットのワンピースの胸元で、両の乳房が大きく前に盛り上がり、裾丈は超ミニなため、裾が上体と腰の張りに引っ張
られ、パンストなしの素足がのぞき、白い太腿が付け根近くまであらわになっていた。
クリスが、寄り添うリオの肩を抱いた。
「あ……」
わずかに抗うように、あるいは怯えるように身体を縮こまらせるリオ。だがクリスはリオの身体を引き寄せ、顎に手を掛けると、
さっき同様、イルが目を見張る前で、おもむろにリオの唇を奪った。
「んん……mmm……」
リオは喉奥で呻くと、重ねられた唇を振りほどき、
「お願い、やめて!イルの前でこんなこと……」
と哀しげに訴えた。
(『イルの前で』って言うけど、じゃあ、あたしのいないところでは……)
リオはクリスの口づけを受け入れるっていうことなのか…?
「ふふふ……だめ。そんなこと言ってても、どうせリオはすぐ感じてくるわ。ほら」
クリスがリオの胸元に手を伸ばすと、その豊かな膨らみを手のひらに包んだ。
「あ……だめ、だめよ……いや……」
クリスの手のひらで、リオの乳房がゆさゆさと揺れる。
「嘘。だって、リオの乳首、もうこ〜んなに勃ってるじゃない。ほら、イルちゃん、見て……」
(あっ……)
クリスが弄んでいた乳房から手を離し、イルを促す。イルは思わずリオの胸を見やった。
(ほんとだ……リオの乳首……)
それは照明の灯りの下ではっきりとニット地を突き上げて、そのぽっちりとした突起を浮き出させていた。
(……ってことは、リオはブラジャーを着けないで外を歩いていたの……?)
「いや、いやァ……イル、見ないで!」
同姓の愛撫で感じていたことを幼なじみの親友に悟られ、リオは恥じらいに頬を真っ赤に染めながら小声で叫んだ。が、その乳房
に再びクリスの手のひらが被せられ、揉みしだかれる。
「ね、イルちゃん」
「……は、はい?」
「イルちゃんは、リオちゃんのこと、どんなコだと思ってた?」
クリスはリオの乳房を服越しにむにゅむにゅといじりながら、イルに語りかけた。
「リオの……ことを……?」
「そう。そうね、きっと真面目で清純な女性、しっかり者のリオちゃん……そんな風に思ってたんじゃない?……」
「……ま、まあ…そうです……」
「じゃあ、さっき、街で歩いているリオを見たとき、どう思った?」
「どう、って……」
「『イヤらしそうな女が歩いてる』って、思ったんじゃない?」
「そ、それは……」
イルは口ごもった。そう、あのとき、確かにそう思った。
「私がリオにキスしたときはどう思った?」
クリスの口元がリオの顔に寄り、耳たぶから頬にかけて、ちゅっちゅっとキスの雨を降らせていくと、リオは「だめ、だめ」と呟きながら、
いっそう身体をすくませる。
「ど、どうって……ただ、びっくりして……」
「そうね、びっくりしたでしょうね。じゃあ、今は?」
「今?」
「そう、私とリオがこんなことをしているのを見て、イルちゃんは今、どんな気持ち?」
「今は……」
そのときになって、イルは自分の性器がしっとりと濡れているのに気づいた。目の前で、中学のときから恋心にも似た淡い感情を抱いて
きたリオが愛撫されているのを見て、自分は今、めしべが勃起していることに……
「イルちゃん……イルちゃんは、いま、いやらしい気持ちになっているでしょ?イルちゃんのアソコ……濡れているでしょ?ふふ……」
イルの額には、興奮でしっとりと汗が滲んでいた。その変化から、クリスは察したのだろう。クリスは妖しい笑みを浮かべると、
「それはね……リオも、同じ気持ちなのよ……ほら、見て」
……と言って、リオのワンピースの背中のジッパーを引き下ろした。
「あ、い、いや……や、やめて……!!」
リオがクリスの手を振りほどこうとしたときには、すでにジッパーは腰の辺りまで引き下げられていた。ワンピースの背中が大きく左右に
割れる。
「ちょ、ちょっと、クリス……だめ、だめえ!」
リオの訴えにかまうことなく、クリスはノースリーブの肩口をリオの肩から抜こうとすると、リオは両腕を己が乳房をかい抱くようにして
交叉させ、脱がされまいとする。
「だめよ、リオ。イルちゃんに本当のあなたを見せなさい」
クリスは、服を脱がせるのをいったんやめ、大きく開いたワンピースの背中から手を忍び込ませ、さらに前に回した。
「ひっ!」
布地の下で、リオの生の乳房がクリスの手のひらに包み込まれる。クリスはゆっくりとその乳肉を揉み始めた。
「はん……お願い、や、やめ……んんっ!」
哀願を封じ込めるようにしてクリスが再びリオの唇を奪った。
「んん……んくっ!」
ちゅぷ、という音がして、クリスの舌がリオの唇を割った。リオが喉奥で喘ぐ。
「ん、んっ」
さらに舌先を口内深く差し込まれると、抗っていたリオの身体から力が徐々に抜けていった。その間も、クリスの手は絶え間なくリオの
豊かな両の乳房を優しく、ねっとりと揉みしだいている。
「んあっ……くはァ……」
リオの呻きが、甘く漏れてきた。きつく交叉させていた両腕が、だらりと下方に下りていった。布地の下に潜りこませていたクリスの手が動き、
内側からめくり上げるようにして、リオのワンピースを脱がしていった。
(リオ……)
イルの目の前で、リオの上半身から布地が剥がれ、乳房がぷっくりとあらわになった。学生時代以来、目の当たりにするリオの乳房だ。
(こ、これが、リオのバスト……)
中学のとき、一緒に温泉に入ったり、部活の後のシャワーのときなどに目にしたリオの胸は、ここまで大きくなかった。
(当時はお互いスポーツブラを着けていたくらいだったのに、いまではこんなに大きく育って……それに引き換え、あたしの胸はちっちゃくて……)
イルは懐かしさと甘酸っぱさと、そして官能で胸の鼓動がドクドクと高鳴っていた。
白く、そしてまろやかな曲線を描くその膨らみ。服を剥いでいくクリスの手の動きに揺さぶられるように身体が左右に揺れると、それに合わせて
左右の乳房もまた、ぷるんぷるんと揺れる。
「さあ、リオ……全部、脱がすわよ。身体を伏せて……お尻を四つん這いにあげて……」
「ああ……、い、いや……いやなの……」
イルは、ベッドの上の光景を凝視し続けている。リオは、言葉では拒否しているのに、身体の方はクリスに命じられるままに上体をうつ伏せに
這いつくばらせ、腰を浮かせた体勢をとり始めたのだ。
クリスはニットの収縮のままに、リオのウェストにまとわりついているワンピースを掴むと、スルスルと脱がせていく。リオの腰があらわになり、
そして、臀部があらわれ……
(あっ)
イルは思わず叫びそうになった。尻部からワンピースを脱がすと、その下から、何も覆うもののないお尻が現れたのだ。つまりリオは、ブラジャー
だけでなく、パンティーさえも身に着けていなかったのだ。
(これが、リオの裸……)
イルは、ベッドの上で四つん這いに突っ伏し、尻を掲げているリオのオールヌード姿を、まじまじと見つめた。がっくりと伏せているためにリオの
表情は見えないが、その肩が小刻みにわなわなと震えている。
クリスは、脱がせたワンピースをベッドのすぐ脇に放り出すと、身を屈めた。
ちゅっ
「んは、あはっ!」
小さな音を立てながら、クリスはリオの臀部から腰、そして背中へと、口づけを降らせていく。音が立つたびに、リオの身体がびくんびくんと震え、
そしてクリスが舌を伸ばし、舌全体を背中に押し付け、肛門まで、そして肛門から一気に肩まで舐め上げる。肛門がヒクヒクと痙攣し、、リオの唇から、
「んあ、ああんんっっ!」
という喘ぎ声が洩れ、ついに、尻を掲げている力が抜けてしまったのか、膝がずるずると崩れ、下腹がぺたんとベッドの上についた。いまだ、リオの
身体は断続的にびくんびくんと慄えている。
まだセックスを体験したことのないイルにとって、初めて見る、快楽に身をゆだねた生々しいセックスの営みであった。
「どう?イルちゃん……これから」
ぬめっとした舌で上唇を舐めながら、クリスがイルを見つめた。
「イルちゃんの知らないリオの恥ずかしい姿を、見せてあげる。ううん、リオだけでなく、私も併せてね」
(あたしの知らないリオと、それにクリスさん……?)
クリスの言葉を耳に収めながら、ガクガクと震え続けるリオのまばゆいばかりの裸身を、イルはゴクリと生唾を飲み込みながら見つめていた。
To Be Continued.