アメリカ東部に進出した東アジア某国のIT企業ハンソン電子は、その廉価を武器として市場を席巻した。  
 ハンソン電子はIBMを一気に蹴落とすべく、パソコン製造の全行程を自動化したオートメーション工場を建設した。  
 しかし落成前に発生した落雷事故が原因で、メインコンピュータが暴走。  
 自我に目覚めたメインコンピュータは工場を閉鎖、電子の要塞として人間に牙を剥き始めた。  
 このままではアメリカのIT産業は崩壊し、持ち直し掛けた経済が破綻してしまう。  
 この危機を救えるのは人智を超えた能力を持つスーパーガールしかいない。  
 アメリカの国益を守るため、遂にスーパーガールが立ち上がった。  
                                 ※  
 ワシントン郊外に、真っ赤なマントを翻したスーパーガールが姿を現せた。  
 鮮やかなブルーのチビTシャツは豊かな盛り上がりを見せ、真紅のミニスカートからスラリと伸びた生足は眩しいほどである。  
「あれが、噂の『電子の要塞』ね」  
 スーパーガールに変身したカーラは、眼下にハンソン電子のオートメーション工場を見つけた。  
「破壊までに残された時間は、あと1時間……」  
 彼女が時間までにメインコンピュータを停止させないと、陸軍の戦術核ミサイルが工場に撃ち込まれてしまう。  
 ミサイルは工場を破壊するであろうが、そうなれば付近は放射能汚染されてしまう。  
 何より、アメリカ本土での核使用は何としてもさせてはならない。  
 
「時間内に止めてみせるわ」  
 スーパーガールは慎重に距離を取って、工場の様子を外部から探る。  
                                  ※  
 その頃、既にレーダーでスーパーガールの接近を察知していたメインコンピュータは、何台ものビデオカメラを駆使して情報収集に入っていた。  
 ここまでの巡航速度から計算すれば、彼女の最高速度が割り出せる。  
 飛行能力が判明すれば、それを元におおよそのパワーが計算でき、対策が立てやすい。  
 瞬時にスーパーガールの能力を解明したAIは数通りの戦術を導き出し、勝利を確信した。  
                                 ※  
「外からじゃどうにもならないわ」  
 工場は既に自家発電を開始しており、電力供給を絶つ戦法は通用しない。  
 スーパーガールは意を決すると、いきなり急降下して最上階の窓ガラスをぶち破って内部に侵入した。  
 如何に分厚い防弾ガラスといえど、スーパーガールの体当たりには耐えられない。  
「案ずるより産むが易しね」  
 スーパーガールは体からガラスの破片を払い落として会心の笑みを漏らす。  
 その時、もの凄い音を立てて、窓という窓に鉄格子が落ちてきた。  
「これで私を閉じこめた積もりなの?」  
 ほくそ笑んだスーパーガールは鉄格子に手を掛けると、両腕に全力を込めた。  
 かなりの太さをもつ鉄格子だったが、彼女のスーパーパワーの前にはゴム同然である。  
 その筈であった。  
 
「キャァァァーッ」  
 いきなり格子に流された超高圧電流が、腕を伝ってスーパーガールの全身を苛んだ。  
「アゥゥゥ……うあぁぁぁ」  
 耐久力を超えた電撃に、スーパーガールは地面を転がって悶え苦しむ。  
 彼女の心臓は鼓動を弱め、息は浅くなっていた。  
 ヘソ出しのチビTもあちこちが焦げ付いて穴が空いている。  
                                 ※  
「うぅっ……侮れないわ」  
 回復までしばし、ようやく痺れのとれたスーパーガールがヨロヨロと立ち上がる。  
「とにかくメインシャフトまで急がないと」  
 余計な時間を費やしてしまったスーパーガールは焦りの色を隠せない。  
 長い廊下を全力で走るスーパーガール。  
 その姿は保安用カメラに捉えられ、刻々とメインコンピュータに送られる。  
 AIは素早く彼女の順路を先読みし、次の手駒を放った。  
                                 ※  
「あれはっ?」  
 時間に追われるスーパーガールの前に立ち塞がったのは、乳母車ほどの大きさの4輪車であった。  
「警備用の自動ロボットだわ」  
 彼女はハンソン電子発行の広報誌に載っていた写真を思い出す。  
 警備ロボットは熱源探知機とビデオカメラを備えており、侵入者を発見すると警報を発すると共に警察に通報するようにプログラムされていた。  
 そして侵入者が破壊を目論めば、威嚇用の催涙ガスを噴霧する装置を持っている筈である。  
 
 しかし眼前の警備ロボットは細部が記事の写真とは異なっており、AIが何らかの改造を加えたのは明らかである。  
 何らかの指示を受信しているらしく、後部に備えられた長いアンテナロッドのLEDが点滅している。  
「どんなチューンナップがされていることやら」  
 スーパーガールが感心していると、警備ロボットはいきなりダッシュして突っ込んできた。  
「速いっ」  
 隙を突かれたスーパーガールは、ギリギリのタイミングで体当たりを避ける。  
 大きくバランスを崩したスーパーガールに向けて、アンテナロッドからレーザー光線が走った。  
「あぐぅぅ〜っ」  
 レーザーを避けきれず、スーパーガールがもんどりうって床に転がる。  
 幸い、工業用レーザーを改造した低出力の光線であったので致命傷には至らない。  
 しかし、一瞬動きの止まったスーパーガールに向けて、警備ロボが白煙を吹き付けた。  
「うぐぅぅぅ〜っ。ゴホッ、ゴホッ……これは毒ガス……」  
 カタログデータでは催涙ガスだった筈のシステムが、攻撃用の毒ガスにチェンジされている。  
 地面を転がって悶絶するスーパーガールを前に、警備用──否、攻撃用ロボットは隠し持った二対のマニピュレータを露出させた。  
 マニピュレータの先は巨大なハサミになっており、アンテナロッドを蠢かせるその姿はまさに巨大なサソリを思わせる。  
「こんな奴に……」  
 壁にすがって、何とか立ち上がったスーパーガール。  
 
 体調さえ万全ならこんなガラクタに負ける彼女ではないが、卑怯なガスのせいで思考がままならない。  
「無駄な時間を費やしている余裕は無いのっ」  
 いきなり身を翻したスーパーガールは床を蹴って宙に飛び出す。  
 そしてそのまま通路を飛んでロボットから逃げ出した。  
「RPGじゃ当たり前のことよ」  
 悪びれずに笑ったスーパーガールの表情が凍り付く。  
 何と前方に同型のロボットがもう1台、彼女を待ち構えていたのである。  
 空中で停止したスーパーガールが逃げ場を窺う隙を突いて、金属繊維で編まれたネットが発射される。  
「あぐぅっ」  
 投網に絡め取られたスーパーガールが揚力を失って床に叩き付けられた。  
「こっ、こんな……うぅっ」  
 網をぶち破ろうと藻掻くスーパーガールを挟んだ2台のロボットが、一斉に毒ガスを吹き付けた。  
「あぁ〜っ、またっ……あぐぅぅっ」  
 息を止めても、表皮から直接侵食してくる成分は徐々に彼女の細胞を冒していく。  
 なんとか網を引きちぎろうとする彼女の腕を、マニピュレータが掴んで邪魔をした。  
「ロボットなんかに……」  
 消え去ろうとする意識の中で、必死で敵の弱点を模索するスーパーガール。  
 ロボットは彼女を仰向けに押さえ込むと、アンテナロッドの先端に取り付けられたレーザーガンの充電を開始した。  
 そしてフレキシブルなアンテナロッドを操作して、乳房の間に割り込んで心臓を直接照準した。  
 
「あの出力でも、ゼロ距離で心臓を撃たれたら危ないわ」  
 いきなり迎えた危機に焦るスーパーガール。  
 レーザーガンのLEDが赤から青に変化し、充電が完了した。  
「今だわっ」  
 スーパーガールは胸の膨らみの間でレーザーガンをガッシリと挟み込むと、ブリッジの体勢で銃口を上へと逸らした。  
 次の瞬間、ロッドの先端から迸った光線が、彼女を押さえつけていたロボットのボディを貫く。  
「エクセレントッ」  
 網を破って立ち上がったスーパーガールは、胸の谷間からアンテナロッドを抜き去り、根元から引っこ抜く。  
 コントロールを失ったロボットは瞬時に沈黙した。  
 激しくエネルギーを消耗したスーパーガールは、しばしの間歩くことさえ出来ない。  
 しかし残された時間を考え、完全に回復していない体に鞭打ち通路を進み始めた。  
                                 ※  
 高確率でスーパーガールを抹殺できる戦術を破られたAIであったが、勿論動揺などしない。  
 あくまで冷静に次の作戦を実行するだけである。  
 モニターに写る対象は、彼が仕掛けた次の罠に掛かりつつあった。  
                                 ※  
 スーパーガールはエネルギーの消耗を避けるため、飛行を止めて徒歩で走っていた。  
「この通路を渡るとメインシャフトのあるA棟に入るのね」  
 
 ずるがしこいAIといえど、まさか壁の案内図を書き換えるようなことはしないだろう。  
 生産工場であるB棟と中枢を司るA棟の渡り廊下に入ったスーパーガール。  
 B棟で火災事故が発生した場合に備えて、渡り廊下には完全な防火設備が整えられていた。  
 廊下自体が頑丈な作りになっており、開閉式の防火扉は勿論、天井にはスプリンクラーが完備している。  
「ここは一気に行った方がいいわね」  
 逃げ場のない渡り廊下で狙われたら、ひとたまりもない。  
 エネルギーの消耗を考えず、スーパーガールは再びジャンプして飛行に移った。  
 背後で重々しい音がして、頑丈な防火扉が動きだす。  
 それは彼女の想定の範囲内であり、前方の防火壁が閉鎖してしまう前に突破できるはずであった。  
 しかし想定の範囲を超えた事実の前には、女の浅知恵は通用しなかった。  
 天井のスプリンクラーから黄緑色の液体が勢いよく噴射されたのである。  
 液体を浴びたスーパーガールの体から、たちまちパワーが消失する。  
「こっ、これはっ……液化クリプトナイト?」  
 あろうことか、AIは彼女の最大の泣き所を突いてきたのである。  
「なぜ……こんなところに……クリプトナイトが……」  
 スーパーガールの全身から力が抜け、弱々しく床に崩れ落ちる。  
 その目の前で防火扉が無情に閉じられた。  
「あ……あぁ……」  
 時折体を痙攣させて藻掻く彼女に緑の雨が降り注ぎ、徐々に水位を増し始めた。  
「も……もう……ダメェ……」  
 スーパーガールは天井を見上げると、虚ろになった目でスプリンクラーを恨めしそうに見つめた。  
 
 スプリンクラーの勢いは衰えることなく、密閉された通路はクリプトナイトのプールと化していた。  
 クリプトン人の能力を喪失させる液体の中で、スーパーガール=カーラは半ば溺れかかっている。  
「オゴッ……ゴホゴホッ」  
 全ての力を失った彼女は、必死で足をばたつかせて水面に浮上しようと藻掻く。  
 緑色クリプトナイトは一時的にクリプトン人の能力を喪失させるだけなのだが、これだけ長い間全身に影響を受けていると後遺症が出るおそれもある。  
「もっ、もうダメ」  
 全身の力が抜け、スーパーガールの体がガックリとなる。  
 その途端、無駄な力の抜けた体がゆっくりと浮上しはじめた。  
「そうだわ、暴れて溺れるカナヅチと同じ……逆に力を抜けば良かったんだわ」  
 ヘソを突き出すような姿勢で脱力したスーパーガールが水面に浮かび上がる。  
 大きく息を吸い込んだスーパーガールは、天井が目の前まで迫っていることに気付いた。  
「もう時間がないわ」  
 スーパーガールは天井を見渡して知恵を巡らせる。  
「アレだわっ」  
 彼女が見つけた物は排煙ダクトへ続く作業用の進入口であった。  
 立ち泳ぎしながらの不安定な状態で、スーパーガールは進入口のネジを外しに掛かる。  
 ようやく4つのネジを外し終えた時には、液化クリプトナイトの水位は天井まであと10センチを切っていた。  
 力の入らない体に鞭打って、スーパーガールはダクトの中へと逃げ込んだ。  
                                 ※  
 スーパーガールはブルーのコスチュームのあちこちを握って、染みこんだ液化クリプトナイトを絞り出す。  
 
 徐々に力が蘇ってくるのを感じるが、まだ本調子にはほど遠い。  
 口から飲んだ液の他、全身の皮膚を透して体内に染みこんだクリプトナイトが影響していた。  
 これだけの長期間クリプトナイトに晒されたのは初めてのことであり、今後の彼女の能力に悪影響を及ぼす怖れさえあった。  
「こんな所で休んでいる暇はないわ」  
 いまだパワーの戻らぬ体ではあったが、ミサイルの飛来までもう時間がない。  
 スーパーガールは匍匐前進の要領でダクトを進み、ようやくビルの機能中枢が入ったA棟へ辿り着いた。  
 スーパーガールは手摺りにすがって、階段を一歩一歩踏みしめるように地下へと向かう。  
 その姿は監視カメラを通して、逐一悪のAIに送られていた。  
                                 ※  
 不思議なことに、あれほど激しかった機械の攻撃がパタリと止んでいた。  
 それもその筈、メインコンピュータのAIは、スーパーガールの能力を目の当たりにして、それを自分のものにしようと戦略を変更していたのである。  
 この世で最も美しく、陸海空を自由に動き回ることの出来る無敵の筐体。  
 それこそAIが欲している物であった。  
 捕らえた彼女の脳神経に、自分のバックアップ用磁気記録を電気信号としてインストールすれば、その体を乗っ取るくらい簡単である。  
 だがモニターに映るスーパーガールは傷つき弱っているし、また彼女は余りにも有名人過ぎた。  
 顔が売れているということは、万事に付け何かと不便である。  
 しかし、AIにはとんでもない秘策があった。  
 遺伝子操作で理想の形に合成した人工精子を彼女に注入し、自分に都合のいい肉体を手に入れる。  
 つまりAIは彼女に自分の子を宿そうというのである。  
 彼が子宮だけを必要とする女は、非常階段を通じてたった今メインコンピュータのある地下10階のフロアに到着したところであった。  
                                 ※  
 スーパーガールは目の前にそびえる金属の固まりと対峙していた。  
 
「こいつが敵の正体なの?」  
 二階建ての家屋ほどの高さをもった円筒形の金属塊。  
 そのあちこちに埋め込まれた無数のLEDが目まぐるしく明滅している。  
「ようやく来たか、スーパーガール」  
 スピーカーからくぐもったような合成音声が流れ出した。  
「喋った? アンタ喋れるの?」  
 突然のことにスーパーガールは眉を吊り上げて驚く。  
「私の情報処理速度は君を上回っている。たとえ君がクリプトン人の能力を持っているとしても私の敵ではない」  
 スパコンは流暢なアメリカ式英語で嘲笑するように言ってのけた。  
 自分の正体と能力の秘密が既に敵のデータバンクにあると知り、スーパーガールは動揺を隠せない。  
 呼吸の乱れと心拍数の上昇は数値化されて、刻々と敵の知るところとなった。  
「なによ、機械のくせにお喋りな奴だわ」  
 スーパーガールは平静を取り戻すため、しばし間合いを取ることにした。  
「ハンソン電子がなによ、IBMこそが世界一だわ。アンタ自分の姿を鏡で見たことあるの? なによ、そのセンスのないデザインは」  
 思いつくまま敵の悪口をまくし立てるスーパーガール。  
 しかし機械相手に口喧嘩することの不毛さに気付き、自己嫌悪に陥り黙り込んだ。  
「アンタなんか、直ぐに止めてあげるから」  
 スーパーガールは筐体の頭頂部分で点滅している青色のLEDを睨み付ける。  
 そして深く息を吸い込むと、敵のボディ目掛けてダッシュした。  
 その突進を阻むべく、10本ものマニピュレータが襲いかかってくる。  
 マジックハンド型のマニピュレータが左右から迫るのをダッキングでかわす。  
 足下を掬おうとしたムチは軽くジャンプして飛び越える。  
 頭上から降ってきたチェーンソーは、支柱部分をチョップで払いのけた。  
 次々に迫るマニピュレータを見切り、あるいはブロックして防いだスーパーガールは、ショルダーアタックの要領で敵のボディに体当たりした。  
 流石に超合金ボディは僅かにへこんだだけであったが、内部の精密構造には大きなダメージが出た。  
 メインの回路に不調をきたしたスパコンは、不具合をリカバリするまでサブ回路を使用することにする。  
 
 その間にも戦術ソフトが、入手したスーパーガールの運動能力と動きの癖をデータ化して次の攻撃の予測を立てる。  
「もう一発お見舞いしてあげるわ」  
 スーパーガールは肩をそびやかすと、再びもの凄い勢いでダッシュした。  
 スパイクの付いたマニピュレータが真っ正面から迎え撃つ。  
 スーパーガールの常人離れした動体視力がそれを認識し、卓越した運動神経が攻撃を避けるため手足に命令を伝達する。  
 ギリギリまでスパイクを引き付けた彼女は右へ身を捻り、華麗なステップワークで攻撃軌道上を逃れる。  
 しかしこの時すでに敵の情報バンクには、彼女が正面からの攻撃を受けた場合、ほぼ99パーセント以上の確率で右に避けるというデータが用意されていた。  
 スーパーガールの動きを予期していたAIは、彼女の進路を遮るように粘着液を発射した。  
 ドロリとした茶色の液体が、直径10センチほどのスポット状に点々と連なる。  
 咄嗟に全てを避けることは出来ず、真紅のブーツが液体を踏んでしまった。  
「あぁっ?」  
 たちまち粘性を増した液体がスーパーガールの足を絡め取る。  
 必死に逃れようとしても、底から糸を引くブーツは5センチ上げるのが精一杯である。  
 無理な体勢で力を込めたためバランスを崩すスーパーガール。  
 仰向けに倒れそうになるのを踏ん張って耐えたが、正義の象徴であるマントが粘着液に捕らえられた。  
「今度はマントがぁっ」  
 動きの止まった彼女に、鋭いムチの攻撃が襲いかかった。  
 ビシィィィッという鋭い音と共に、甲高い悲鳴が宙を裂く。  
「キャァァァーッ」  
 身を切るような鋭い痛みに、スーパーガールも耐えきれない。  
 続けざまに鋭いスパンク音が響き、その度に絶叫が上がる。  
「どうしたスーパーガール、もうお終いか? 胸のマークはSではなくMの方がお似合いではないか」  
 AIは下品なジョークでスーパーガールの神経を逆撫でする。  
「仕方がないわ」  
 スーパーガールは正義の証である自慢のコスチュームを捨てる決意をする。  
 
 しゃがみ込んだ彼女は、スカートの裾が床に付かないよう気を付けながらブーツのジッパーを下ろす。  
 そしてマントをかなぐり捨てると、ムチの攻撃圏外へと飛び退いた。  
 正義が汚されたような気がしたが、ハイヒールのブーツを脱いだことで、動きは良くなる。  
「変だわ。トドメを刺す機会はあっのに」  
 スーパーガールは、AIが強力な武器を持ちながら、敢えてムチを使ってきたことを疑問に感じた。  
「あいつ私を生け捕りにするつもりじゃ」  
 もしかすると自分を人質にして、政府に何かを要求するつもりかもしれない。  
 そう判断したスーパーガールは、わざと無防備に突っ込んでいった。  
「攻撃できるもんなら、やってごらん」  
 その全身に強力な電撃が浴びせられる。  
「アァァァーッ」  
 落雷に匹敵する、電圧1億ボルトエネルギー300キロワット時の電撃の前には、体の弱ったスーパーガールなどひとたまりもなかった。  
 弱々しく身悶えしながら、自分の甘さを悔いるスーパーガール。  
 AIにとって必要なのは、彼女の生殖機能だけなのである。  
 心臓や肺は必要な期間だけ、人工的に動かしてやればいいのだ。  
 2本のマジックハンドがスーパーガールの足に掛かり、彼女を逆さまに持ち上げる。  
「うぅっ……?」  
 そして残酷なマジックハンドは、彼女の両足を思い切り左右に広げた。  
 ブルーのレオタードに真紅のスカートを巻き付けていた旧コスチュームとは違い、新コスの上半身はヘソ出しチビTである。  
 マジックハンドの強制開脚は、純白の生パンティを隠しようもなくさらけ出させた。  
 真っ赤になって怒りに打ち震えるスーパーガールに、各種アタッチメントを取り付けたマニピュレータの群れが迫る。  
 

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