「で、頼んでおいたものはどうなったんだ」
「なんとか、くすねましたよ。これが洗濯前の愛菜ちゃんのパンツです」
「おお。これが、そうか」
道端の、街灯の明かりが届かない暗がりでこそこそと話す、男ふたり。
ひとりは雀荘の常連。もうひとりはその雀荘でバイトしている男。
常連の男は三姉妹の末っ子、愛菜の隠れファン。まだ中学生の少女を本気で
口説くことはできず、ひたすら恋焦がれるばかりだった男はあるとき、「愛菜
ちゃんの下着でいいから、手に入らないかなあ」とバイトしている男へ向けて
冗談混じりにぼやいた。たわむれにぼやいただけだったのだが、「なんとかな
るかもしれませんよ」と返されたとたんに真面目に懇願し、しばらく日数が経
った今日になってようやく外で落ち合うことになったのだ。
密閉袋に白い布が入っている。待望のブツを受け取った男は胸に抱いて小躍
りしている。
「けっこう苦労したんですよ。このあとでバレるかもしれないし」
「わかってる。それなりの報酬は出すって」
御満悦の体でいる男は用意していた封筒を差し出した。フリーターの男は中
にあった札の枚数を数え、こくりとうなずく。
「じゃ、まだ仕事中なんで、これで」
家に帰って早く中身をおがみたいと顔をだらしなくしている男と別れ、仕事
先の雀荘に戻る。
雀荘が閉店時刻を迎え、バイトの男と香織が後片づけをはじめる。
片づけと掃除を終えて、一息ついていると、いったん奥に行っていた香織が
小さな袋を持って戻ってきた。
さっき外でやりとりしたのと同じ袋。でも、入っている布切れは違う物。
「はい。今度は悠のスポーツブラね。これもけっこういい値段で売れるはずで
しょ」
「まあ、そうなんですが」
すでに依頼を受けているから、さばくのはすぐ。フリーターの男は依頼主を
頭に思い浮かべながら、金額を胸算用する。
三姉妹は雀荘に来る男たちのアイドルであり、アイドルが身につけている物
を欲しがるスケベな連中は後を立たない。売った相手には固く口止めしている
が、その手の情報というのはひろがるところにはひろがるものだ。だからこそ、
現金が稼げるということにもなるのだが……。
「香織さん、バイト代をこういうので補うのもいいかげんにしてくださいよ」
ぼそっとつぶやくと、
「そうはいっても、不景気であまりお客さんが来てくれないの。我慢してね」
香織は苦笑する。
男がいまひとつ納得しきれずにいると、香織は目もとを赤く染め、しなやか
に彼へ近寄り、肩へ頭を乗せた。
「私の体での現物支給も、いいかげんにしたほうがいいかしら」
「それはいつでも、大歓迎です」
ひょいと首を捻って、唇を重ねる。ちゅ、ちゅっと数回はじけると、ねっと
りと絡みあい、舌も巻きつけ唾液も交換しあうディープなキスで性感を互いに
高めていく。
「……じゃあ、行きましょうか」
すっかりと上気して瞳をうるませる香織は、彼とともにベッドのある奥の部
屋へと向かった。
(終)