「あれ、お姉ちゃん。なんかあった?」  
「は? なんかって、なによ」  
「なんか、いつものお姉ちゃんとちょっと違って見えたから。……百合奈の気  
のせいかなぁ」  
 別荘の朝の食卓。「おはよう」と言ったあとにいきなり百合奈に変なことを  
返されて、ドキリとした。先に座っていた彼へ目を向けかけて、どうにもぎこ  
ちなくなりそうで、あえてそっちは見ないことにする。「まったく百合奈った  
ら」と平静を装い、着席してパンに手を伸ばす。  
 静かに食事をしていても、心のなかはドキドキしっぱなし。  
 なにか違ったことがあるとすれば、昨日までの私はバージンで、今の私は体  
験済み。そのつもりで招待した彼と夜の部屋でふたりきりになり、想いを打ち  
明けて、彼も同じ気持ちでいることを確かめて、純潔を捧げた……。  
 初体験で女はまるっきり別人になる、といううわさを小耳に挟んだことはあ  
ったけど、まさかそれが本当だなんて。まだまだ子供な百合奈が感じるくらい  
なんて、びっくりしちゃう。  
 できたてのベーコンエッグを口にし、パンを頬張り、熱いコーヒーを飲んで、  
昨晩のことを思いかえしてしまう。  
 貴重な、まさに一生に一度の体験だった。私だけでなく彼も初めて。キスま  
では体験していたけれど、その先は……。  
 裸になった私の体がベッドの上で震えていて、まさぐろうとする彼の手も震  
えていた。敏感なところを触れられて、びくっとして、私がびくっとすると彼  
もびっくりしてすぐ手を引いて、「大丈夫だから」となんども口にした。彼の  
手首を握って、導きもした。  
 ふたりともなかなか慣れず、慣れないままに彼はペニスを私のアソコに入れ  
て……濡れてはいたけど、とっても痛かった。運動していれば膜が破けること  
もあるって本で読んでいたけど、あれだけ陸上部で走っている私なのにかなり  
の出血があった。  
 痛みを訴えても、興奮した彼はやめなかった。固い肉の棒を私のなかでひた  
すら動かす。うわごとのように私の名前を呼ぶ。  
 けだもの、と思ったりもした。でも、普段気弱に見えることもある彼が雄々  
しく、私の膜を破ったときは立派な男だった……。たくましく見えて、胸がキ  
ュンとなって、ぎゅって抱きついた。  
 夜のあいだに、初めてのそれも数えて、三回もしてしまった。彼に求められ  
たらもう拒めない。それに、初めてのときに最後のほうは気持ちよさが生まれ  
て、二回目のときは快感のほうが上まわって、三回目なんて私のほうから動い  
て、真っ白になって気が遠くに……あれがエクスタシー。ふわふわした心地の  
まま、彼の腕に抱きしめられて、幸せいっぱいのまま眠りに落ちた。  
 
 
「ねえ、お姉ちゃんったら」  
「は、はい?」  
「もう、ぼけっとしてる。寝不足なの?」  
 百合奈がにらんでいる。いくらにらんだところで子供っぽく、可愛くにしか  
見えない表情。  
 私の手がカップを持ったまま宙にとまっていた。これはさすがに、情けない。  
 すぐにテーブルの上に置いて、顔のほてりを息にして吐き出してから答える。  
「べ、別に……まあ、家と違うベッドだからちょっと慣れなかったかな」  
「ふーん」  
 百合奈は私の顔へ疑いの眼差しをしばらく向けて、やがてにっこり。  
「今日はどうするの? お兄ちゃんと遊ぶの?」  
「遊ぶ」という言葉にまたドキリとさせられる。もちろん百合奈の言う「遊び」  
は散歩したりプールで泳いだり、麻雀したりということ。でも今の私は、その  
言葉でエッチなことを連想してしまう。脱衣麻雀よりももっとエッチな、脱衣  
してから行う本番を……。  
 また淫らな方向へのめりこみそうになって、意識を引き戻して答える。  
「それは、そうよ。せっかく来たんだし、ねえ」  
 今日初めて彼へ振って、穏やかなほほえみとうなずきをもらう。  
「そうだな。もし良ければ、百合奈ちゃんもいっしょになんかするかい?」  
「えっ、いいの? わーい」「ええっ!? そ、それって……そ、そうね」  
 彼が言い出した中身にびっくりして声が上ずる。私だけでなく百合奈も混ぜ  
てエッチなことをするのかと思って、もちろんそれは勘違い。ひとり考えを突  
っ走らせたことを恥じる。  
「むー。お姉ちゃんったら、お兄ちゃんを独り占めする気だったんだ」  
「ひ、独り占めって、だいたい百合奈が『お兄ちゃん』って呼ぶのはなによ」  
「いいの。だって、カッコよくて、百合奈のお兄ちゃんになってほしいんだも  
ん」  
 私には到底できないコケティッシュな笑みを彼に向ける。彼はほほえみに苦  
みを混ぜながらも、満更でもない顔つき。まったく、でれでれしちゃって。  
 でも、私の心には余裕がある。だって私と彼はもう結ばれたから。たとえ百  
合奈がいくらじゃれようが、ふふふ、私は彼のものになっちゃったから。  
「あー、なに、その顔は」  
「さあね」  
 落ち着いて余裕を取り戻したら、百合奈がそれが気に入らないのか頬をふく  
らませた。私はへっちゃら。残り少なくなっていたコーヒーを飲み干すと、  
「じゃあ、部屋に戻っているから」  
 と先に立つ。ちらっと彼へ送った目線は、きっと媚びたっぷりだったろう。  
 彼がちょっとどぎまぎして、こくっとうなずいた。きっと私と同じ、今日の  
夜のことを考えたのに違いなかった。  
 
 
(終)  
 

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