「……見てください」  
 綾に乞われて、目を凝らす。口いっぱいに湧いてきた唾をごくりと呑みこむ。  
 部室に行くと、いたのは綾だけ。みづきも晶も今日は来ないと告げた綾は「お願い  
があります」と言葉をつなげた。「なに?」と聞き返したら、綾は耳まで赤くなって  
服に手をかけた。脱衣麻雀なしに脱ぎはじめ、ぽかんとなった俺の前で、腰近くまで  
あるロングブラジャーとビキニショーツだけの魅力的な姿になった。  
「な、なんのつもり?」  
 俺の内に満ちるのは、嬉しさととまどい。勝ったごほうびでもないのに白い肌とピ  
ンク色の下着を曝け出した彼女の意図がわからない。  
「私は体が弱いので……オナニーするのがいいそうです」  
 真っ赤な顔でうつむきながら、綾は蚊の鳴くような声で話した。  
 なんだそれはとつっこみそうになったが、よくよく事情を聞いてみると、それは晶  
の持論。シニョン髪の女は綾に対し、オナニーすることで女の体は強くなると主張し、  
男の前でして見せて興奮させれば完璧よと付け加えた。そう聞かされた綾は、見せる  
相手に俺を選んだという話だった。  
 今までも脱衣麻雀で肌を晒しているから、見せるに適当だというのはわかる。だか  
らといって、おとなしい綾がここまでするというのに驚きが隠せない。  
「つ、つまり俺は、綾のオナニーを見れば、見て、いいんだな?」  
 晶の理論には異を唱えたいが、それは晶に言えばいいだけであって、せっかくの嬉  
しい申し出にわざわざ水を差すような真似はしない。  
「は、はい……」  
 答えの声を響かせたはいいが、綾は脱いだ状態でかちかちに固まっている。俺が目  
でうながすと、ソファに浅く腰かけて、ようやく手を使いはじめた。  
 ブラジャーの上からふくらみにあてがい、揉んでいる。予想したよりもおとなしい  
揉みかただったから、  
「綾はオナニー、そうやってるんだ」  
 つい、聞いてしまった。  
「はふっ、は、はい。おかしいでしょうか?」  
「おかしくないよ」  
 男の俺が答えるのも変だが、いかにも綾らしい揉みかただったから、彼女に自信を  
持たせる声で返した。  
 安堵の息をついた綾が、あらためてふくらみを握りなおし、胸を揉んでいく。  
 最初は片方の乳だけだった胸揉みが、両手それぞれで揉むようになった。力もこも  
ってくる。  
 イヤらしさが増して、俺の目のぎらつきも増す。  
「んっ、ああっ」  
 ちらっと俺の顔を見て、綾はますます顔を赤くした。恥ずかしがりやの綾が顔を赤  
らめるのは珍しくないが、艶かしいこんな赤を見せることはない。赤みが濃くなって、  
愛撫も濃厚になっていく。  
 
 胸からおへそ近くまで覆うロングブラジャーはフロントホック。愛撫の手をずらし  
て、すぐにはずせる。綾は実演してくれた。  
 震える指でホックをはずし、覆いを左右にくつろげて、双乳が露わになった。  
「あっ!」  
 綾のオッパイを見るのは初めてじゃない。麻雀同好会に勧誘されたときの脱衣麻雀  
で、同好会ができてからも勝負に勝って脱がせて、見せてもらっている。  
 だがオナニーでほてる綾の胸は、今までにない艶かしさがあって、盛りあがった乳  
輪の中心で薄桃色の乳首がピンと勃起しているのがイヤらしくて、思わず叫んでしま  
った。  
 叫び声にびくっと肩をすくませたが、手のひらで直に覆って揉んでいく。熱っぽい  
息が間断なく吐き出される。  
 悩ましげな手つきにそそられる。普段からこんな手つきなのか、俺の目を意識して  
のものなのか。みづきや晶と比べて静かで慎み深い綾がこんなにイヤらしい手つきで  
揉むのだから、見ているだけでおかしくなってくる。  
「ああっ、ああっ、恥ずかしい、とっても恥ずかしいのに、感じます。感じて、熱く  
なってます」  
「熱くなって血行が良くなって、体も丈夫になるよ」  
 晶の理論が頭をよぎり、それっぽくコメントしてみる。綾は嬉しそうな顔をして、  
乳房を鷲掴みにして揉みたてた。  
 それだけ力がこめられるのなら体が弱いなんてことはないだろう、思いつつも口に  
は出さない。それだけ揉めば、もっと揉めば、みづきにも晶にも負けないバストサイ  
ズになるかもしれない、なんてことまで考える。  
 右手がふくらみからはずれて、そろりそろりと下へ降りていった。オッパイよりも  
大事な、秘密の場所へ辿り着く。  
「ああぁ……」  
 胸にかまけてばかりで放置されていた股間をまさぐりだす。こんもりした丘を指先  
で撫でまわし、熱くこもった吐息をひろげる。  
 アダルトDVDやネットの動画とは違う、生のオナニーシーン。胸と性器を愛撫し  
て喘ぐ女が目の前にいる。しかもそれは、清純な姿をよく知っている、綾だ。信じら  
れないという思いと、これが現実だという興奮がごちゃごちゃに混じっている。  
 
 胸を揉んでいるうちにブラジャーをはずしたくらいだから、このまま高まっていけ  
ばショーツも脱ぐかもしれない。脱衣麻雀では決してそこまで脱がない最後の一枚が、  
今日ここで剥かれるかもしれない。  
 俺の胸に期待の炎が燃えさかる。  
 しかし綾はショーツの上から押し揉み、こするだけだ。綾のやりかたがそうなら、  
仕方ない。  
 オナニーショーでの大興奮に、見せてもらえないというもどかしい思いが重なった。  
 俺の体も熱くなっている。大事な場所に血液が集中し、疼きに疼いている。ペニス  
がガチガチに張り詰めて、ズボンが破れるんじゃないかと思うくらい。  
「くっ」  
 もう我慢ならない。ジッパーを下ろし、せわしなく肉根を取り出す。赤紫色の先っ  
ぽが透明なカウパー液でぬるぬるになっていた。  
「お、俺もオナニーするぞ。俺のオナニーも、見てくれ」  
「え!? あ、はい」  
 勃起しきったペニスがにょっきり顔を出したのに綾はびっくりしているが、自分か  
ら見せただけに俺のオナニーを見ることをためらわない。  
 真正面に仁王立ちして、指を巻きつけたペニスを綾の瞳に映す。ぐい、ぐいっとし  
ごいてみせた。  
「お、男の人の性器……男の人って、そんなふうに、オナニーを」  
「そうだ。こうやってしごいて、しごいてしごいて、出すんだ」  
「出す……精液、ですね」  
 綾も、男の生理の基本的なことは知っているようだ。学校の性教育レベルなのか、  
こっそりといろいろ読んだりしているのか。なんにせよ、ペニスの実物を見たのは初  
めてのはずだ。  
 冷静ならば、女の子にペニスを見せるなんて気恥ずかしくてできない。だが今は、  
先に綾が下着姿のオナニーを見せてくれて、俺を昂らせている。オナニーにはオナニ  
ーを。男はこうして直に握って、しごくことを教えてやる。  
「お、男の人も、オナニーで、強くなるんでしょうか?」  
「お、男だって、強い、強いんだ。しごいて、しごいて強くなってやる」  
 もはや晶の理論もなにもなく、適当すぎることを口走りながら指でしっかり、しこ  
しこしごく。  
 俺の手コキに煽られたのか、ショーツの丘をいじる綾の指遣いが卑猥さを増した。  
押し揉むうちに股布に割れ目ができ、縦筋を小刻みに引っかいて色っぽく淫らな声を  
放つまでになってきた。  
 
 エッチすぎる光景に目を奪われていて、今になって気づく。鼻の奥へ淫らな匂いが  
届けられていることに。ショーツに浮かんだ卵型の染みから女の生々しい匂いがプン  
プンとひろがっていることに。  
 意識して、大きく息を吸った。鼻の粘膜を刺激し、肺を満たしていく淫気に内側か  
ら冒されて昂揚は留まることがない。目を見開き、鼻をひくつかせ、綾のオナニーを  
貪りながら手コキに興じ、際限なく高まってしまう。  
「はあっ、あっ、こんなに感じて……ああっ、あなたも、感じてますか?」  
「ああっ、とても、ううっ、こんなに気持ちいいの、初めてだっ!」  
 こちらを見る凄艶な顔に答え、手を往復させる。日頃はおとなしい綾がオナニーで  
激しく乱れているのを前に、いつペニスが爆発してもおかしくない。しごく力を弱め  
て長持ちさせたいが、出したいという欲望が勝って、逆に力が入ってしまう。  
「ううっ、精液、出していいか?」  
 肉根の根元を握って尋ねはしたが、ここまで高まりきって出さないという選択肢は  
ない。  
「は、はい」  
 おっかなびっくりの声を綾が返してきた。出るとはどういうことか、わかっている  
ふうじゃない。俺の勢いにそう応じるしかなかっただけ。  
 それでいい。俺はもう、出すしかないのだから。  
「俺が出すときに、綾もイッてくれ」  
「イッて……イク、イキます。あなたといっしょに、私、イキますから」  
 両瞳を輝かせた綾は、乳首をつまんでコリコリとよじりはじめた。それがきっと、  
一番感じる胸への愛撫。そうすることで綾は――  
「アッアッアアッ、アアーッ!」  
 ――イッた。スリムな身を反らせ、あごを突き出して可愛らしく艶かしく息を吹き  
出しながら、ぷるぷると身震いしている。透き通るほど白い肌に汗の玉が浮かび、濃  
厚な体臭が押し寄せてくる。  
「俺もっ!」  
 置いていかれるのは嫌だと、鋭角にそそり立つイチモツをぎゅぎゅっと強くしごき  
あげた直後、どぴゅっとザーメンが垂直に噴き出した。高く飛んだぶん距離は出ず、  
ソファにいる綾の手前に落ちた。次々に出る白濁流は足下のそばに落ちて、床を汚し  
ていく。  
「う、う、うあっ」  
 吠えながら、手筒を動かし、溜まっていた精をぶちまける。床に散らばった飛沫か  
らプウンと牡臭がひろがって、綾の牝臭を押しかえした。  
「……こ、この匂い、精液の、男の人の匂いなんですね。ああっ」  
 綾が鼻をひくつかせ、身悶えしながら両脚をよじりあわせている。太ももに銀色の  
ラインが光っているのを目にした俺はもうひとしごきして、精の残りを鈴口に盛りあ  
げた。握る手でペニスを振り、飛ばした最後の滴は綾の太ももへ届いた。  
 
 
(終)  
 

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