「すっかり陽が暮れてしまったな……」  
 薪代わりの枯れ木を火に投げ入れながら、メノリはそう呟いた。  
「今夜はここで野宿だな。これ以上歩く力なんて、残っていないしな」  
「ああ。どんな動物がいるか分からないし、下手に動き回らないほうがいいだろう」  
 カオルの言葉に、メノリは無言で頷いた。  
 メノリの言葉どおり、既に陽は傾いて、いくつかの星が見え始めていた。普段な  
ら仲間と一緒に砂浜で夕食を取る時間だが、いま彼女は砂浜ではなく、山の中腹に  
いた。彼女の側にいる仲間も、カオルただ一人。携帯していた食料も、夕方までに  
食べ尽くしていた。  
 万が一のために、発火用具を持っていたのは幸いだった(といっても、木の棒と  
薄い板だけだが)。これがなければ二人は、寒さに震えるところだった。それに野  
生の動物は、本能的に火を怖がる習性を持つ。凶暴な動物から身を守るという意味  
でも、火は重要な要素だった。  
 二人は火の近くに腰を下ろしてから、ほとんどずっと無言のままだった。もとも  
とこの二人は口数が少ないタイプだし、他者と積極的に触れ合おうとするタイプで  
もない。そんな二人だから、ぜんぜん会話を交わさない状態が続くのも、当然と言  
えた。これでルナかチャコでもいれば、もっと話が弾んでいるだろうが。  
 永遠に続くかのような沈黙が、二人の間に流れた。そして、  
「なあ、カオル。私達、帰れるのかな?」  
 夜空に無数の星が輝き始めたころ、メノリが口を開いた。その声を聞いたカオル  
は、俯かせていた頭を持ち上げ、メノリと視線を合わせた。  
 
「どうしたんだ、いきなり? そんな弱気なことを口にするなんて、お前らしくな  
いじゃないか」  
「最近、思うことがあるんだ。私達はちゃんと帰れるのか、って。もしかしたら、  
このままずっと、この星で暮らさなければならないんじゃないか、って……」  
「おい、しっかりしろよ。お前はオレ達のリーダーなんだろ? リーダーがそんな  
弱気でどうするんだ? 普段の強気なお前はどこへ行ったんだよ?」  
「私だって普通の人間だぞ。迷うこともあるし、落ち込むこともあるさ。また家族  
に会えるかどうか、不安に思うときもあるしな」  
「家族に会いたい? お前、家族のことが嫌いなんじゃなかったのか?」  
「まあな。母は他界し、父はいつも私に厳しく接した。あんな家庭、なくなればい  
いのにと考えたこともある。でも、いくら嫌いでも、私にとっては唯一の家族なん  
だ。もう一度、どこかで会いたいという気持ちはあるさ」  
 メノリは枯れ木の枝を折り、火の中へ投げ入れた。夕方のうちに調達しておいた  
薪木も、もう半分以上使ってしまった。この量で一晩もつかどうか、少し微妙なと  
ころだった。  
「それで、カオル。お前には、元の場所で会いたい人はいるのか?」  
「会いたい人?」  
「ああ。お前、学校でもいつも一人ぼっちだっただろう? 一匹狼と言えば聞こえ  
はいいけど、あまりに非社交的なのは問題だからな。で、どうなんだ? 誰か会い  
たい人はいるか?」  
「………」  
 カオルは口元に手をあて、無言で考え込む仕草をした。  
 そのまましばらくの時が流れた後、カオルは口を開き、言った。  
「……いるよ。家族じゃないけど、戻ってから会ってみたい奴なら、一人いる」  
「へえ。いつも孤独な誰なお前にも、そういう人がいるのか。誰だ、言ってみろ」  
「なんでお前に言わなきゃいけないんだ? プライバシー侵害だぞ」  
「私は生徒会長だ。生徒が不純異性交遊に走らないか、ちゃんと監視する義務があ  
る。安心しろ、誰にもばらしたりしない。さあ、言ってみろ」  
「お前だ」  
 
「は?」  
「何度も言わせるな。オレが好きなのはメノリ、お前だよ」  
「なっ……何を言ってるんだ? 変な冗談はよせ!」  
「冗談じゃない。オレはずっと、お前のことが好きだった。入学したときからずっ  
と、お前のことだけを見続けていたんだ。お前はぜんぜん気付かなかったみたい  
だがな。でもこれが、オレの偽らざる気持ちだ」  
「カオル、お前……!」  
 メノリは立ち上がった。刺すような視線でカオルを見つめるその顔には、明ら  
かに怒りの表情が浮かんでいる。それを見たカオルは、困惑の色を顔に浮かべた。  
「何だよ、メノリ? 何か悪いことを言ったか?」  
「いったい何を考えてるんだ? そんなことを言われて、私が喜ぶとでも思った  
のか? こんな、いつ死ぬか分からないような状況の下で、そんなことを言うな  
んて……ふざけるのもいい加減にしろ!」  
「違う、そんなんじゃない! オレは本当に、お前のことを……!」  
「うるさい! 私に近付くな!」  
 メノリはカオルに背を向けて、どこかに走ろうとした。しかし地面の蔓に足を  
とられ、身体を大きくぐらつかせる。倒れそうになったメノリを、カオルは手を  
伸ばして抱き支えた。  
 メノリは膝を地面に付け、その後ろからカオルに抱かれる恰好になった。  
 
「大丈夫か、メノリ? 怪我してないだろうな?」  
「………」  
 メノリは何も言わなかった。その代わりに、無言のまま両肩を細かく震わせる。  
 その後ろ姿を見たカオルは、即座に把握した。メノリは泣いているのだ、と。  
「何だよ、泣くことはないだろ? そんなにオレのことが嫌いなのか?」  
「……違う。そうじゃない」  
「じゃあ、何だって言うんだ? 言ってみろよ」  
「分からない男だな、お前は!」  
 涙声になりそうなのを必死で抑え、メノリは大声で叫んだ。  
 カオルのほうへ振り返ったメノリの目に、大粒の涙が溜まっている。気丈な彼  
女が涙を流す姿は、意外なほど、そして驚くほど艶っぽかった。  
「分からないのか、カオル? 私もお前が好きなんだよ! 自分でもどうしよう  
もないくらいにな!」  
「なに……?」  
「でも私は、7人のリーダーだ。誰かを好きになったら、きっとその男のことだ  
けを考えてしまう。リーダーたる者、常にメンバー全員のことを考えなければい  
けないのに、一人の男だけを気にかけるようになってしまう……だからずっと、  
自分の気持ちを封じていたんだ! なのに、お前が変なことを言うから……私は  
自分の感情を抑えきれなくなってしまった……!」  
 メノリは両手で顔を塞ぎ、声を上げて泣き出した。堰が切れたかのように、いっ  
ぱいの涙を溢れさせながら、子供のようにむせび泣いた。  
 カオルは両腕を広げ、メノリの身体を抱きしめた。普段は強気な彼女だが、こ  
うして触れてみると、意外なほどに華奢な体付きだった。いつもハワードを罵倒  
しているメノリだが、もし喧嘩でもしたら、きっと負けてしまうだろう。もっと  
も、あのハワードがそんな行動に出るとは考えにくいが。  
 メノリはカオルに抱かれたまま、ずっと泣き続けた。やがて泣くのをやめると、  
メノリは涙の跡が残る顔をカオルに向け、言った。  
「……すまない。取り乱してしまったようだな」  
 
「気にするなよ。オレもちょっと気配りが足りなかったようだ……メノリ、少し  
眠れよ。こういうときは、何も考えずに寝るのが一番だ。安心しろ、オレがちゃ  
んと見張りをしてやるよ」  
 カオルはメノリに背を向け、特製の槍が置いてある場所へ歩こうとした。  
 だが、そのとき突然、メノリがカオルの背後から抱きついた。メノリは両腕を  
カオルの胴体に回し、互いの身体を密着させる。メノリの胸の膨らみを背中で感  
じ、カオルは心臓を大きく鼓動させた。  
「どうした? 何か言いたいことがあるのか?」  
「ああ。頼みがあるんだ、聞いてくれるか?」  
「オレにできることならな。それは難しいことか?」  
「いや、簡単なことだ……私を、抱いてくれるだけでいい」  
「………!」  
 カオルの脳に、火花が走った。  
 私を抱いて欲しい……まだ中学生のカオルでも、その言葉の意味することは分  
かる。しかし、まさかあのメノリが、自分にそんなことを言うなんて……!  
「……何だよ。この島では私情を挟まないんじゃなかったのか?」  
「ああ。でもそれは、みんなの前での話だ。今ここには、私とお前しかいない。だっ  
たら、少しくらい自分の気持ちを押し出してもいいだろう?」  
「そうかもしれないけど……」  
「お願いだ、カオル。私は……お前が欲しい」  
 メノリはカオルの両手を握り締めた。真っ直ぐにカオルを見つめるその瞳は、冗  
談を言ってるようには見えない。そもそも、生真面目な性格のメノリが、こんな状  
況で嘘を言うはずがないのだが。  
 
「……本当にいいんだな、メノリ?」  
 カオルの問いかけに、メノリは無言で頷いた。  
 二人は顔を近付け、互いの唇を触れ合った。一度離し、再び重ね合わせると、今  
度は恋人同士の濃厚なキスへと移行した。カオルがメノリの唇を割って舌を差し入  
れると、メノリも舌を動かしてそれを受け入れた。二人の舌が絡み合い、流れる唾  
液が混ざり合っていくうちに、二人の吐息はどんどん荒くなっていった。  
 カオルはメノリの頬を抑えていた手を、下のほうへ動かした。首筋、肩口と指を  
這わせ、胸の膨らみの部分で停止させる。見た目以上に豊かな膨らみを確かめるよ  
うに、指先で撫で回しから、手を広げて片方の乳房を鷲掴みにした。  
「あっ、んんッ……!」  
 メノリはぴくりと肩を震わせ、カオルと唇を離した。二人の口を結ぶ唾液の糸が、  
火の照り返しを受けて赤く染まる。メノリの頬は赤く染まり、ハァハァと肩で息を  
していた。トロンと焦点の定まっていないその目は、「カオル、次はどうしてくれ  
るんだ?」と問いかけているかのようだった。  
 メノリの服は、前にボタンが並んでいるタイプだった。そのボタンを上から外そ  
うと、カオルは手を移動させる。ところが、  
「ま、待ってくれ、カオル」  
 メノリは、服のボタンに掛けられたカオルの手を握り締めた。  
 
「どうした、メノリ? やっぱりイヤなのか?」  
「違う、そうじゃない。カオルに言っておきたいことがあるんだ」  
「何だ? 言ってみろ」  
「実は、私……初めてじゃないんだ」  
 メノリはそう言うと、頬を赤らめてカオルから視線を逸らした。  
「少し前、バイオリンの練習が上手くいかないときがあってな。ヤケになって、部  
活の先輩の家に寄せてもらって、そこで関係を持ってしまったことがあるんだ。で  
も、そんなに何度もしてないし、もう別れてしまったから、今は連絡も取っていな  
いぞ。頼む、信じてくれ!」  
「信じるよ。お前は嘘を付くような女じゃないからな。それに、お前にどんな過去  
があろうが、オレには関係ない。オレは、今ここにいるお前が好きなんだからな」  
「……ありがとう、カオル」  
 ブラウスのボタンを外し終えると、薄青のブラジャーと、メノリの上半身がが露  
わになった。メノリの肌は雪のように白く、炎の明かりを受けてほんのり紅く染まっ  
ている姿が、このうえなく色っぽかった。傷一つないその身体は、上等の絹織物を  
連想させるほどに滑らかで美しい。芸術のようなその肢体を見つめるカオルは、溜  
め息を漏らしそうになった。  
「……綺麗な身体だな、メノリ」  
「それはつまり、顔の方は美しくないっていうことか?」  
「そういう意味じゃねえよ。変な邪推はやめてくれ」  
「ふふっ……冗談だ」  
 そう言ってメノリは、悪戯っぽく笑った。  
 カオルはメノリの胸に顔を埋め、先端の乳首に舌を這わせた。既に固くなって敏  
感になっていた尖りに柔らかな感触を受け、メノリは思わず吐息を漏らす。カオル  
が開いたほうの手でもう片方の尖りをつまむと、メノリは大きく全身を波うたせた。  
そこが性感帯なのか、カオルが指や舌を動かすたびに、メノリの喘ぎはいっそう大  
きくなっていった。  
 
「くうっ……そ、そんなにされたら……私は……」  
「どうなるんだ? 詳しく教えろよ」  
「それは……その……」  
「ようするに、こうなるんだろ?」  
 カオルはスカートの留め具を外し、下着の中へ手を差し入れた。まだうっすらと  
した毛に覆われたそこは、既にしっとりと濡れていた。カオルが手を動かすと、蜜  
が指にまとわり付いた。  
 カオルは二本の指でその部分をまさぐってから、亀裂の奥へと指を忍ばせた。メ  
ノリの身体の温もりが、内壁を通してカオルの指に伝わってくる。そのまま指を動  
かすと、メノリの亀裂はピチャリという淫靡な音を立てた。カオルがまさぐるたび  
に、奥底からねっとりとした蜜が溢れ出てきた。  
「ああっ……ダ、ダメだ、カオル。そんなにしたら、私は……」  
「へえ。じゃ、ここでやめてもいいのか?」  
「いや……続けてくれ」  
「いいんだな? よし、分かった」  
 カオルは服を脱いで、メノリと同じ一糸まとわぬ姿になった。そして固くなって  
いる部分を握り、メノリの亀裂にあてがう。そこが充分に濡れていることを確かめ  
ると、カオルは先端をメノリの体内へと押し入れた。  
 
「うっ、ああっ……くうっ……!」  
 メノリの顔に、苦痛の表情が浮かぶ。あまり慣れていないせいか、まだ痛みを感  
じるようだ。唇を強く噛み締め、額には脂汗が浮かんでいた。  
「大丈夫か、メノリ? 痛いか?」  
「ああ、少し……でも平気だ。カオル、お前が相手なんだからな」  
「そうか、分かった。それじゃ、力を抜いてくれ」  
 カオルの言葉に、メノリは目を閉じて大きく息を吐いた。それを見たカオルは、  
さらに奥へと突き進んだ。ぬちゃり、という音がして、カオルとメノリの腰が密着  
する恰好になった。  
「カオル……私達、一つになれたんだな」  
「ああ。それじゃ、動かすぞ」  
 カオルは腰を動かし始めた。まだ慣れていないメノリを気遣い、初めはゆっくり  
と円を描くように動かす。二人の肌が触れ合うたびに、溢れる蜜がピチャピチャと  
いう音をたてた。  
 怖さのせいか、メノリの身体はまだ強張っているようだった。それを解きほぐす  
ように、カオルはメノリの胸や腰に手をあて、揉みほぐすように指を動かした。指  
が触れ、力が加えられるたびに、敏感になっているメノリの身体は大きく震えた。  
「ああっ……はっ、はあっ……!」  
 メノリがまた声を発した。その声に苦しそうな様子はない。全身が心地よさに支  
配されたときに発せられる喘ぎ声だ。カオルが、ゆっくりと優しくしてきたのが良  
かったのか、いつしかメノリから痛みが消えていたようだ。それを見たカオルは、  
動きをさらに早めた。  
 いつしか二人は、自分達が見知らぬ無人島にいるという事実を忘れていた。死と  
紙一重の状況に置かれているということも、記憶の片隅に追いやられていた。いま  
彼らの頭にあるのは、感じたこともない心地よさと、さらなる快楽への欲求だけ。  
動きが激しくなっていくたびに、二人の頭から理性が消え、メノリの喘ぎが甲高い  
ものとなっていった。  
 
「カオル……私、もうっ……!」  
「オレも……このままでいいよな、メノリ?」  
「ああ、そのままでいい……来てくれ、カオルッ……!」  
 メノリがそう言うと同時に、二人の頭に電気のようなものが走った。  
 ひときわ甲高いメノリの悲鳴が響き、二人の身体がピーンと硬直する。直後、彼  
らは全身の力を失い、倒れ込んだ。冷たい地面の上に、二人の身体が折り重なった。  
 はあっ、はあっ、はあっ……  
 気怠そうな二つの吐息が、辺りに響いた。夜になってだいぶ気温も下がったとい  
うのに、二人の身体は激しい熱を帯び、全身に汗をかいていた。それだけ燃えてい  
たということだろう。  
 二人は意識を失ったかのように、呆然とした目つきで虚空を眺めていた。その状  
態が数分ほど続いたのち、  
「ふっ……ふふふっ……」  
 突然、メノリが笑い始めた。どこか投げやりで、薄気味悪い笑いだった。  
「お、おい。どうしたんだ、メノリ?」  
「いや……好きな人との行為は、こんなに気持ち良いものだったのかって考えると、  
おかしくてな」  
「じゃあ、前の相手はあまり好きじゃなかったのか?」  
「まあな。さっきも言ったとおり、自暴自棄になった末での、投げやりな行動だっ  
たからな。痛かったという記憶しか残ってないよ。でも、今回は違った。なんだか  
空を飛ぶような感じだったよ。上手なんだな、カオルは」  
「メノリこそ、すごく気持ちよさそうだったじゃないか。意外と感じやすいんだな」  
「やめろよ、そういう言い方は……」  
 二人はどちらからともなく腕を伸ばし、再び抱き合った。  
 心地よい疲労の中、二人はいつしか眠りに入っていた。  
 
 
 翌日。目を覚ましたカオルとメノリは、食料を探してから山を下りた。そのため  
二人が砂浜に着いたのは、昼前になってしまった。  
 住処に姿を見せたとたん、一行は歓声をあげた。ルナやチャコは大はしゃぎし、  
シャアラは涙を流して喜んだ。きっと彼らは、一晩じゅう二人の身を心配していた  
のだろう。彼らの気持ちも知らず、自分達だけが快楽に溺れていたことを知り、カ  
オルとメノリは恥ずかしそうに苦笑いをした。  
「じゃ、その場所にはまだ食料が残っているわけ?」  
 少し落ち着いてから、ルナはメノリにそう尋ねた。  
「ああ。探せばもっと出てくると思う。あそこに行けば、二週間は食べ物に困らな  
いだろうな」  
「そっかあ。じゃ、明日はあたしとシャアラで行ってくるよ。メノリやカオルにば  
かり手間をかけさせたくないからね」  
「ああ、そのことなんだが……」  
 メノリは何か言いかけたが、すぐに口をつぐんでしまった。  
「? どうしたの、メノリ?」  
「いや、その……次も、私とカオルの二人で行かせてもらえないか? あの場所は  
地形が入り組んでいるから、迷う恐れがあるんだ。私とカオルはもう地形を覚えて  
いるから、迷う心配はないと思う。だから、次も私たち二人で行かせてくれ」  
「いいの? まあ、メノリがそう言うんだったら、別にいいや。二人とも疲れたで  
しょう? 食材はたくさんあるし、これからみんなで昼食にしようよ!」  
「さんせーい!」  
 チャコが声を上げると、一行は食事の準備に取りかかった。ルナとシャアラは食  
材を洗いにいき、ベルとシンゴは火を起こしに、ハワードはいつものようにブツブ  
ツ呟きながら食器を取り出しに行った。  
 メノリはカオルの肩に手を置き、言った。  
「そういうわけだ。今度もよろしく頼むぞ、カオル」  
「ふっ、お前がこんなに積極的だとは思わなかったよ。分かった、こちらこそよろ  
しく頼む」  
 二人は両手を差し出し、堅く握り締めあった。  
 メノリはカオルの耳元へ口を寄せ、そっと囁いた。  
「カオル……愛してるよ」  
 

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